電影フリークス ~映画のブログ~

電影とは、映画のこと。その映画を一緒に楽しみましょう。

無名英雄

2019-04-10 00:07:31 | 七十年代作品【1971】

こんにちは。醒龍です。

たまたま朝いつも利用するパン屋で、隣のテーブル席が外人さんのファミリーでした。英語と中国語を話していたのでそっちの国あたりと思います。上品なお店ではありますが、珍しいお客さんですね。白人の男性はパンを食べるのにナイフとフォークを使っていました。日本人にはなかなかできないですね。カトラリーは外人さん用に用意してあるのかもしれませんね。ちょっぴりカルチャーショックです。
 

今回は、おなじみ張徹監督の戦争モノで、主演の皆さんが軍人の格好で出てくる映画『無名英雄』(71)です。日本版のセレクションには落選してしまいましたが、まぁいっぱいあるので仕方なかったですよね。

 

ギャラリーはこちらへどうぞ。(Shaw Brothers Universe)

若々しいデイビット・チャン、ティ・ロン、チン・リー3人の青春活劇(・・という言葉が似あうなと思う)の1本です。

先月までは、本当に忙しくてキツイ毎日を送っていましたが、この邵氏メンバーの若い頃の映画がとても癒されますね。栄養ドリンクとか飲んでる気分です(笑)。リラックスすることが、ストレス解消への早道ですね。

音楽が無くて寂しいので、ここに町田義人の『戦士の休息』なんて流してたら、もう最高な気分になれます!!(キッパリ) 

物語は、ニー・クワンが脚本書いてるみたいなんで小説はあるのかしらん。たまにはこんな戦時中のお話もいいかも。

いつもの邵氏のファンファーレの後、オープニングは仏の皇帝・ナポレオンの最後の戦いを描いた伊・露合作映画「ワーテルロー」(70)のテーマに乗ってスタートします。これは映画の内容に近い選択だったのでしょうか。 

 

民初、大小様々な軍閥が群雄割拠していた時代。主人公・孟剛(姜大衛)は、木にぶらさがってサルのような真似をする遊び人だが町では名を知らない者がいないほど、自分の名を轟かせる存在であった。その仲間、流れ者のギャンブラー・鉄虎(ティ・ロン)は兄貴分。もう一人、紅一点の山椒みたいにぴりりと辛い"ペッパー"こと洪銀鳳(チン・リー)は、彼らと共に行動する謎の女性。

革命派の萬泰(谷峰)は、偶然見つけた孟剛をターゲットに選ぶのだった。萬アニキは、孟剛たちに接近して仲間となり、大量のライフル奪取の大仕事を依頼する。それは軍閥の保管する武器庫から銃器を奪って南鎮街(現在の安徽省西渓南鎮か?)へ移送する計画であった。

人一倍気の強いペッパー、実は隊長の娘であった。父親を口車に乗せてライフル輸送用のトラック2台をまんまと騙し取るペッパー。そして、実行部隊は軍需處長(司令官)の弱みを握って、厳重に警備されている武器の保管部署へ侵入し、作戦主任に3000丁のライフルと28000発の銃弾を要求した。しかし、公文書での払い出しを理由に断られてしまう。このミッションは失敗なのか!?険悪な空気が流れる・・。

 

ここからがこの映画の面白い部分だと思います。ベテラン俳優・井淼(チン・ミャオ)がコワーイ総司令官役なのですが、部下を激怒したり、厳しい事を最後まで一人で言っています。このギャップが、この映画には必要なのでしょう。毎回、参謀長(リー・ワンチュン)と電話で会話するシーンがちょっと笑えます(笑)。

途中、谷峰に入れ替わって今度はカンフースター、チェン・シンの登場だ。ここはやや違和感がありますね。(なんで急に交代するの??みたいな・・・。)この時期、現に4人の監督がそれぞれ邵氏で別の映画を撮っており、主演のお二人よりも谷峰の方が多忙だったと思いますので、スケジュールの関係でシナリオを変更した可能性ももしかしたらあるのではないでしょうか。

武術指導はいつもの唐佳と功夫良のコンビです。監督、主演、武術指導がお決まりのメンツなのですが、この構成はホント最強ですよね。監督さんとデイビッド&ティロンのミニマム3名を鉄三角と呼んだりするのですが、3つの役割それぞれも鉄三角だと思います。

ただコテコテのカンフー・アクションのようなものはこの映画には無いです。はい。

ファッションも今回は軍服ですので、ファッショナブルでかっっこいいお二人には軍服も超似合いますね。さすが、トップスターです。軍隊のドラマが進行しますが、時に楽しく、時にシリアスに、このバランスが絶妙で、デイビッド先生の笑顔も数分おきに見ることが出来ますよ(笑)。

途中、バイクを駆り出して乗り回すシーンとか、若さの象徴的な場面ですよね。私はオフロード・バイクでしたけども、あれには難しいコースを攻略する醍醐味があるんですよね。昔はそんな事もありましたね^^。

この映画は戦争モノなんで、コブシとコブシがぶつかり合う肉体的なものはほとんど無くてアクションと言ったら銃剣か銃撃戦ぐらいのもの。実際にライフルを使ったシーンも殆どないのですが、相手を倒すのは小型の銃で撃ってやっつけちゃうんですよね。

また、本物の機関車を使ったシーンがあるのは良いのですが、橋を通過するときの脱線シーンがアレですね(笑)。ちなみに、ここの鉄道を使ったシーンはタイで撮影され、『拳撃』と同時で2週間弱のロケが行われたんだそうです。

線路が続く道を戻ろうとしてトロッコのような台車を漕いで移動するのですが、ティ・ロン、なぜ一人で漕ぐのだ(笑)。ふたりでやればいいじゃないの。ふたりで。

あと、忘れてならないのがワン・チュン。ワン・チュンが非常に凛々しい程(チェン)という名前の高官役でカッコいいですね。このキャスティングは素晴らしかったと思います。そんなに出番は多くないのですが、邵氏作品にはこの顔が必須といえるでしょう。

↑でシナリオを改変した可能性ありと書きましたが、谷峰がいなくなってしまう直前、自分には仲間がいると告げるのですが、肝心のその仲間の名前を言わずに息を引き取るのです。これには実は意味があったんですよね。

そういえば、ティ・ロン主演の「野獣たちの掟」(原題『人民英雄』)という87年の映画がありましたけど、ティ・ロンの魅力が満喫できる作品で良かったですね。気取らない主人公、それでいて勇敢で面倒見のいい男。そんな彼を人々は人民英雄と呼んだという映画なのですが、これがすごくいいんですよね。社会派ドラマですが、これを当時見たときにはティ・ロンの持つ頼もしさ、その優しいキャラクターに引き込まれてしまいましたね。
 
『人民英雄』は、この『無名英雄』とまったく同じです。のちに英雄片が登場、大ヒットしたのもジョン・ウーはもちろん、發仔とティ・ロンの影響が大きかったと思います。そういう意味ではティ・ロンが『無名英雄』に出演した事は非常に重要な意味を持っていたと思います。
 
流れ者を演じた本作品で、のちの英雄片以前に周囲から英雄と呼ばれるようになる温かい、いえもっと熱い人間を演じていたティ・ロン。割と自然な様子で、この時はまだ初々しく役にもそれ程入り込んでいるようには見えなかったですが、『無名英雄』から数えて16年後、再び英雄が映画の中でよみがえった瞬間だったのです。
 
『無名英雄』の最後のところで、それまで目的のために突っ走ってきた3人が銃殺されるという衝撃的な場面を迎えます。これが3人の運命だったのですね。

そして、迎えたラストシーン。何とも微笑ましい場面が映し出されます。余韻にひたる、私。

これでこのドラマは、The End.

"無名英雄"、青春編。そんな感じのする1本でした。



The Anonymous Heroes(1971)


Chang Cheh


David Chiang

Ti Lung

Ching Li

Wong Chung

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DVDが品切れ、VCDが軒並み残っているという面白い現象が。Yesasiaなどは既に廃盤になってますので買えませんので、ebayでというのもOKですが、どうしても購入したい方は、たった8ドルで(送料無料)タイ語VCDが買えるeTHAICD.comがおすすめです。販売サイト

The Anonymous Heroes Shaws Brothers VCD By IVL by Chang Cheh
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野獣たちの掟(87) イー・トンシン監督作品。超オススメです!

野獣たちの掟 [DVD]
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ラインコミュニケーションズ

 

【サントラCD】

映画音楽の巨匠ニーノ・ロータの楽曲。

 Titoli-Ritorno Dall'elba (※試聴はできません)

WATERLOO
LEGEND
LEGEND

【参考】CD(アルバム) 

もし宜しければこちらも。

日本の歌謡曲ですが、この映画にぴったりマッチすると思います。(個人的意見です)

「 笑って死ねる人生。それさえあればいい。」


町田義人 スーパーベスト
コロムビアミュージックエンタテインメント
コロムビアミュージックエンタテインメント



 

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悪客

2019-03-07 08:15:53 | 七十年代作品【1971】

こんにちは。醒龍です。


朝起きたら、たぶんコーヒーの飲みすぎだとは思いますが、急に胃の痛みが起きたんです。でも薬局で処方してもらった富山の散剤がとてもよく効いて驚きました。水とかお湯で飲むと書いてはありますけど、顆粒をそのまま飲むと喉もスーっとして一気に治った気がしてきました。労わらないといけないですねぇ。

本日はまたまたチャン・チェ監督、デイビッド・チャン&ティ・ロンの黄金コンビの映画『惡客(悪客)』です。今回はそこにゲスト・スターとして倉田先生もご登場です。 

またこんな記事が少し書けると思うと、うれしくてうれしくて。どうしてかと言いますと、この映画が邵氏作品中でも作風に気品があり、以前から圧倒的にランクが上だったからなのです。あくまで個人的な意味でですが。

途中からは昔の日本映画みたいな感じになっちゃいますが、そこがまた良いのかもしれません。あとは監督がイメージする日本の文化そのままを表現します。とにかく監督自らヤクザの組長やっちゃうような映画なのです。日本も同じアジアの一国ですので監督は日本人ならこうやるというストレートな表現ですね。

音楽もジャズっぽいのが劇中随所に流れてますが、これも邦画っぽいですね。東京の街を車で走るシーンなんかにかかったりしてますね。例えば、こんな曲とか。モダン・ジャズの名曲ですね。




この映画の視聴に関しては、個人的にはビデオ全盛期(ダビングした物が流通していた時代・・)に店頭で購入した英語版ビデオも観る機会が無くなって来てしまっています。画質は最悪だったのですが、当時はもうそれしか無い、他に手段がない時代でしたのでこのビデオをいつも観ていましたね。

なので、この『悪客』のDVDが以前すんなりと発売されたとき(邦題は「続・拳撃 悪客」となっていました)は大変うれしかったです。前作『拳撃』が先に国内でリリースされていたからでしょうか。しかし、廃盤のため中古市場では現在かなりの高額で取引されています。オークション・サイトでもし1万円台で出品されていたら即ゲットなアイテムでしょう。

ずっと『悪客』に前作があったなんて思ってもみませんでしたが、以前にこのDVDを見た時には英語版との編集の違いに結構驚いたものでした。デイビッド・チャンがノリにノっている様子がきれいな映像で蘇ったんですからこれは大変良かったと思います。

前作を見ている人は分かると思いますが、マフィアのボス・強人(チェン・シン)がつかまって、タイの刑務所から脱獄するところからスタートします。(しかし、チェン・シンは誰かと代わるかのようにそのうち静かにフェード・アウトしていきます。。)

途中、ヤン・スエを筆頭に大勢で日本人観光客に扮して道場を荒らしに来るモブシーン。運転手の役でも登場する若いラウ・カーウィンがいいですね。この頃は邵氏だとこんな感じの顔も分からないようなチンピラの役とか多かったのかも知れませんが、この映画では顔もハッキリ分かりますし、日本人らしからぬ(?)、キレのあるカンフー・アクションを披露していました。

東京に舞台が移り、見慣れた光景も目にすることが出来ます。例えば国会議事堂や新宿の駅周辺などです。西新宿は昔から馴染みがあり、とても好きな場所で私もよく出没しますが、当時香港映画のロケ現場となっていたのですよね。駅の改札前あたりはだいぶ老朽化してますが、ずっと変わらないで欲しい場所ですね。

そうそう、ロケ地に関しては面白い動画がありました。あの”24時間営業あなたのお部屋"の看板でおなじみのあのバーが実際のどこにあったのか、とてもよく観察されています。(パート1~7までに分かれてます。"Angry Guest 1972"で検索するとヒットするかも?)他にもこの映画に出てくる東京のロケ地をくまなく探索されています。まぁよく調べましたね。一見の価値ありと思います。

劇中、しっかり監督は日本的ハラキリ・シーンを挿入しています。これはある意味仕方ありません(ちょっと多用しすぎかな??)が、この映画でも監督のこだわりを見せつけています。英語版は出来るだけシンプルとなるよう余計な部分がカットされコンパクトにまとまっているように思います。過激なベッドシーンも無くかなりオススメでありますね。

さてこの映画には、先述の通り日本が生んだアクション・スター、倉田保昭さんが出演なさっています。彼の自伝には詳しく書かれていますが、海外での映画出演にあたり倉田さんはきっと最善を尽くして挑んだと思います。

結果は見事オーディションをパスして香港でのデビュー作『悪客』に無事出演することができたんですよね。香港のスターやスタッフ(というか監督)の倉田先生に接する態度・様子を見れば、この映画での倉田さんの扱いが分かるではありませんか。自伝には現場のオフショット(武術指導したトン・ガイ、ラウ・カーリョン含めての)もありましたが、皆温かく迎え入れてくれたんですね。

一方、本編では悪客という招かれざる客、もちろん倉田さんを表現しているはずですが、映画のタイトルにもなっている悪客として登場するのです。倉田先生が映画のタイトルになっているなんてスゴいですよね。チン・リーさん演じるユーラン救出後、建築士のファンことデイビッド先生が言うセリフ。ここのシーンが好きですね。


 ファン「近いうちに客人がやってくる。」


ユーラン「客人?」


 ファン「悪客さ。」

長い間眠っていた邵氏帝国が2002年に覚醒した時、この瞬間は今でも忘れることができませんね。それ程多いわけではありませんが、倉田先生もチェンチェ監督作など数本の作品に出演されました。少ないと言ってもややマイナーなタイトル『四騎士』があるものの、これらは結果的に日本では優遇されることになるのです。

自伝にて当時の心境を語っていた通り、香港での第1作目から堂々とした演技を披露されていましたので、すべてが安心して見られる良作ばかりです。

それでは倉田先生の邵氏作品を挙げておきますね。

『惡客』(71) Angry Guest ※本作品

『四騎士』(72) Four Riders

『少林寺VS忍者』(78) Hero of the East

最後の3番目の作品が商品化されたワーナーホームビデオ印のビデオテープも忘れられない映像ソフトということになります。VHSもデッキが壊れてしまったら終わりですが、それまでは生き延びてもらいたいですね。もうちょっと頑張ってもらいましょう。英語版のVHSなんかも今だと逆に手に入らないかもですね。

ラストの工事現場での攻防。セットは邵氏の撮影所のすぐそばでしょうか。沢山出てくるティ・ロンの弟子たち。ここで決着をつけます。そして一人ずつ上着を脱ぐシーンへ。「こいつら誰だよ??」とかなんとか脱ぐ度に一人ずつツッコミを入れつつも(笑)、鉢巻きしながら格闘するシーンは和洋折衷と言いいますか(和中折衷か?)不思議な格闘シーンでありました。こんなバトルはなかなかないでしょうね。

やっぱり古いビデオを引っ張り出してこようかな。時間に余裕があればビデオテープの整理とかやりたいんですよね。休日に少し片付けしたいと思っています。うまい部屋の整理の仕方とかあればいいんですけどね。定期的に不要な物は処分するとか、ちょっとの時間でも意識しておけばもしかしたら出来るかもしれない(笑)。皆さんはどうされていますか?

それではまたお会いしましょう。See you next time!!


Angry Guest (1971)

Director:Chan Cheh

Staring:David Chiang

Ti Lung

Kurata Yasuaki

Ching Lee




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こちらは高価なのでおすすめしません。なので海外盤がおすすめ(リンクはありません)。


続・拳撃 悪客 [DVD]
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【関連書籍】

・Part I 未読の方は、是非ご一読を。倉田先生唯一の自伝。


和製ドラゴン放浪記
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・Part II 倉田先生の詳しいフィルモが載ってる参考本 (いまなら安いです!先着1名様)。


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埋伏

2019-02-22 07:50:26 | 七十年代作品【1971】

 

 

こんにちは、醒龍です。

レコード・コレクターズ誌2月号はYMO特集ですよ~。昨年40周年を迎えたYMOですが、続々と復刻盤がリリースされるのはうれしいですね。今月も残りの復刻盤が発売されますね。これで寝ても覚めてもテクノですよ!

さて、今回はあの怪作『液体人間オイルマン』(コレ好き)や76年版キングコングに肖った香港&日本コラボの特撮スペクタクル『北京原人の逆襲』、デイビット先生が至善禅師に扮した『少林寺英雄伝』、そしてカンタイの『空とぶギロチン』などで知られる何夢華(ホー・メンファ)監督が71年に撮った『埋伏』です。これはもちろんSBマークでおなじみの邵氏作品です。

ホー・メンファと言えば、あの『Black Magic』シリーズなんかもありますが、そのホー監督がいわゆる降頭系列電影に開眼してしまう前、当時誰もが通ってきた道でありました武侠片を撮っていました。その中の1つがこの『埋伏』なんですね。そうだ忘れてました。カンフー全盛期の『マッドカンフー地獄拳』なんかもそうでした。これは監督らしさ(?)があまり感じられないのでここでは触れませんが、後年はカンフー映画も当然のように撮ってましたね。

同じホー監督の『金毛獅王』(71)にはジェームス・ナムがいましたが『埋伏』とほぼ同じスタッフ、キャストでしたので立て続けに監督は2本の映画を撮っていたんですね。『埋伏』のパッケージ解説によれば"イースタン・ミステリー・ムービー"だそうですので、ただの武侠片とはひと味違う様ですね。

ミステリー要素のある武侠片って珍しいですよね。確か『金毛』は小説でこの『埋伏』の方が引き込まれやすく単純に面白そうですよね。(詳細はのちほど)この映画は71年5月には『埋伏』の新作紹介記事が出てましたので撮影はこの頃ですね。但し、劇場公開は出遅れてしまっているという良くあるパターンです。

この映画の胆、実は悪役のイメージが強烈な趙雄(チャオ・ホン)さんの何と準主演映画なのです。(あくまで表記上の話。。)例えばジミーさんの『吼えろ!ドラゴン 起て!ジャガー』のあとなんかに見ると悪役映画の方がしっくり来るチャオさんのちょっといいトコが見れます。非常に味のある俳優さんなんですよね。彼については『金毛獅王』の回でまた詳しく触れてみたいと思います。

主演の李菁はお人形さんみたいにかわいらしい女優さんでしたね。その通り"娃娃影后"と呼ばれた彼女は昨年惜しくも亡くなってしまいましたが、羅烈の初期のマスターピース『鐵手無情』、あれに若い頃出演してたんですよね。ちょっと古い映画だとあれがダントツに好きでした。ジミーさんとの共演なんかもあったと思いますが、この『埋伏』とかホー監督の映画に出演することも多く、気に入られていたかも知れませんね。

オープニングには前年に公開されたイタリア映画『夕陽のギャングたち』より、そのサントラの中からテーマが選曲されていますね。(曲名は"Rivoluzione Contro")この曲は功夫片のオープニング曲としてよく使われてました(流用)。こっちの西部劇も最高なのですが、コバーンの映画はやっぱり渋くていいですよね。

とにかくモリコーネの楽曲は癒されますよね。心地よい曲が揃ってて疲れた時なんかにゆっくり聴いているとジワーっときて、ついでに映画のシーンなんかも浮かんできて、とってもリラックス出来て最高な気分になりますよね!現代劇になるとまた格調高くなり、必ずと言っていいほどヘビロテしちゃいます。

音楽の話であれば、この映画の題名は当初『十面埋伏』であったのですが、同名で十面埋伏という曲がありますね。有名な中国の古い楽曲の1つですが功夫片でもたまに聴く機会があるかと思います。映画の中でこの曲が使われると非常にドラマティックなシーンとなります。西楚の覇王・項羽と、漢の劉邦の両者の戦いをテーマにしたのが十面埋伏ですね。戦争の最中、漢軍が待ち伏せするのです。しかも怒涛の攻撃で。("十面埋伏"より"四面楚歌"の方が有名ですね。)激戦の末、項羽軍は漢軍に包囲されてしまいます。この琵琶曲は本当に素晴らしい完成度でダイナミクスをしっかり感じさせてくれます。しかし、残念ながら本編では使われることはありません。タイトルが変わってしまったからでしょうか。

では、映画の筋を追ってみましょう。 

ここは鏢頭・樊芝龍(楊志卿)が取仕切る鎮北鏢局である。
威遠鏢局の萬恭武(李鵬飛)と手下の2人(元華、徐忠信)が遠方からやって来た。
萬鏢頭は従弟の樊鏢頭に鏢師を数名貸して欲しいと依頼しに来たのだ。
理由を説明し、樊は承諾した。
そして杜槐(李廣)、雷強(小麒麟)、郭勤の3名が選ばれ鏢頭に同行する事に。

荷車に宝石箱を積んでおり、一行は厳重な体制で宝物を運んでいる。
千絶谷にさしかかると、物陰に隠れて待ち伏せしていた驚くべき者たちがいたのだ。

次の瞬間、その中の一人が矢を放つ。
矢は命中した!敵の奇襲である。
隠れていた者たちは一気に表に出て襲撃を開始した。
この襲撃で萬鏢頭は赤い羽の暗器によって刺され、あえなく倒れてしまう。

やがて、捕頭の萬超凡(趙雄)たちが事件の現場であるへ検証にやって来ていた。
無残な光景だった。無数の死体が横たわり、片足だけ残っていたりもした。

すると超凡は見事な刀を発見する。それは超凡の父が持っていた"金臂刀"であった。
しかし父・萬恭武の死体は無く、行方もわからない。

戸惑う超凡に李都頭(李笑叢)は疑いをかける。
それは萬父子の犯行であるとのダイイング・メッセージが残っていたからだ。

・・・なかなかの展開ですね。

現場検証でチャオさんが真剣に芝居しているうしろで何かしゃべってるのが誰あろう若い頃のサモハンです(笑)。なんかサモハンらしくていいですね。この官服らしい群衆の中には、サモハンや錢月笙、唐偉成(!)、そしてジャッキーの顔が確認できるのはDVDならではですね。古いVHSしかないようなケースだったら顔は絶対にわからんでしょう。

はっきりジャッキーと判るのは冒頭のシーン、王俠や西門三虎と一緒に弓持って待ち構えているのがジャッキーでしたね。珍しくかなりのアップで映るのですぐ判ります。他にも中盤のシーンで超凡を包囲して李都頭の一員として斬りかかる場面、最前列で火鉢が当たる位置にいた人物がそうです(他のアクション場面にも登場します)。これらを見ていると危険なシーンなどを買って出るという感じですよね。

要するにサモハンたち七小福メンバーも参加していた映画ってことですね。当時、徐二牛のグループに属していたのですが、その徐二牛のアクションで忘れてならないのが、ロープ・アクションです。ジャッキーもおそらく影響を受けたらしく以降の映画でも何度か見ることが出来ます。この頃の経験を活かしてその技術を応用したという話になりますね。映画の中でどんなアクションを構築するか。当時からメンバーで考えてそれを実践していたんです。

ロープアクションのシーンは、おそらく設定が日没に近い時間のシーンとなりますが、フィルターがかかっているので見た目は暗くなっています。しかし、よく見れば顔を確認することができます。一人を取り囲んでロープで縛りあげてその周りを回るのですが、下っ端の十数名が囲ってサモハンはロープを持たずに立って様子を監視しているような立場であった事が確認できますね。

では、再開。 

李都頭は超凡を捕らえようとするが無実の超凡は抵抗し、その場を切り抜けることに成功する。物陰からその様子を冷面劍客・康烈(石天)が見ていた。

ここで登場する男前の石天がまたいいですね!!そしてコミカルな役ではなくシリアスな役なのです。この映画での彼のアクションは非常にいいものを出しています。誰のおかげかなと考えると、武師たちの協力があってこそですね。

超凡はとある客棧へ逃げ込んだ。給仕が注文を取り、料理と酒が運ばれてくるが、どうも様子がおかしい。

ワナだ!酒には毒が盛られていたのだ。
回りにいた客たちも超凡を襲う。

序盤の客棧でのバトル・シーン。やっぱり客棧アクションは面白いですよね。『大酔侠』をはじめとしてキンフーの作品群など、要するにハン・インチェの影響があるかと思います。

番頭に扮装していた賊のリーダー・韓沖を演じた詹森(チャン・シェン)はすぐに正体をばらしますが、坊主頭の彼がまた楽しいですね。彼もなくてはならない存在ですよね。ここでまた七小福メンバーが登場します。派手な青い服を着た人物は1階のみで途中から元奎にバトンタッチし、舞台は2階へ移りますが以降その人物は登場しません。元奎は、チャオさんが蹴っ飛ばした刀が刺さって倒れるという大役を果たします。

多数の敵を相手にして苦戦するが何とかその場を脱した超凡だった。 

その後、超凡は敵に囚われてしまうが、康烈に助け出された。息も絶え絶えのまま何とか超凡が鏢局に帰ると、父親の幻影が現われた。怪奇!!


ここでようやく李菁が登場する。
 
実は赤い羽の暗器を使っていたのが父・樊芝龍であった。
樊芝龍は何者かに殺されてしまう・・。
 
洞窟に不気味な姿が!
超凡は従妹の秀秀(李菁)と不気味な地下室に入って行く。
棺を開けて死体を確かめる。

その時、入り口で人影が見えた!すぐ超凡が追いかける。
残された秀秀は、しばらく様子を見ていたがやはり怖くなって逃げようとする。
しかし、中に閉じ込められてしまった。そして、死体が動き出す・・・。

超凡に救出される秀秀。たまたま通りかかった片足が義足の男を目撃する。
超凡の脳裏には即座に千谷で斬られて残された片足が浮かんだ。何と、秀秀はこの男の顔を知っていたのだった。
 
この男の家へ尾行し、事件の真相を追及する超凡。
しかし、白状する前にまたしても赤い暗器によって阻止された。
康烈が現れ、超凡に協力しコンビを組む。暗器それはある高名な3人が使う武器・追魂鏢だった。西門三虎の本拠地へ乗り込んで行く超凡。
 
西門三虎の一人が火星(マース)です。彼はいつもの通りセリフもあるような目立った役をこなしています。また、3人衆のトップが実は程寶山(チン・ポーサン)です。70年代後半のカンフー映画全盛期では、その彼は脇役として顔を出す人ですので、覚えておいて損はないです。
 
ラストは、チャオさんとベテラン俳優・楊志卿(ヤン・チーチン)との風車小屋での8分間の大詰めバトルです。このどこかで見たような機械仕掛けの小屋。ちょっと思い出せませんが、大きな歯車を使ったダイナミックなラストに相応しいセットですね。その後、ミステリーらしく意外な人物が登場し、映画は想いもよらぬ結末を語っていきます。
 
やっとの思いで、宝物箱を取り戻した超凡だった。

が、瀕死の彼の前に秀秀を従えたある人物が現れる。
彼が黒幕だったのか!

 

という訳で今回はミステリー武侠片でした。そして、若きジャッキーカメオ出演のおまけ付き。もう言うことありませんね。(終)



「埋伏」(71) Ambush 

邵氏出品
監督:何夢華
脚本:江揚(江洪)

音楽:周福良 

武術指導: 徐二牛

 

出演者:
李菁 趙雄 楊志卿 王俠 佟林 
江玲 石天 李鵬飛 詹森 陳濠 李廣 彭鵬 

※以前の記事を一部加筆訂正しています。(環境によっては繁体字が文字化けしますのでご注意を。)

 

【サントラ】

Giu' la testa (Edizione speciale 35 anniversario)
クリエーター情報なし
Cinevox

【関連DVD】

夕陽のギャングたち [Blu-ray]
クリエーター情報なし
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

 

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