電影フリークス ~映画のブログ~

電影とは、映画のこと。その映画を一緒に楽しみましょう。

広東好漢

2009-11-29 01:02:55 | TV放送作品
今回は郭南宏が監督した「広東好漢」(73)を取り上げてみます。
日本ではその昔「怒れドラゴン」というタイトルが付けられていたがブームの真っ只中とはいえたまたまというかきっかけとか何か明確な理由がある訳ではないような形でオンエアされた。それがそのまま忘れ去られた状態になっていたように思う。

ところで郭南宏は好きな監督の一人であるが、何と言っても私の好きな郭南宏作品はコレです。

カラフルなので載せちゃいましょうかね(笑。

経歴等は公式HP”郭南宏的電影世界”(台湾のサイト。最新インタビューでは「少林寺十八銅人」の映像を交えながら元気な姿を見せています。)を御覧頂くとして同監督は傑出した多くの作品を世に示した。
私が興味を持っていることは郭南宏をはじめ台湾の映画監督が作品の中に潜ませている伝統的な精神についてである。
それを知ることは日本人にとっても心の中のどこかにきっとあるなつかしい故郷に近づけるような気がするのだ。日本人が香港や台湾映画を愛するのはそのためなのではないだろうか。
郭南宏作品を好む日本人ファンも私を含め相当多い。その郭南宏(お名前の通り台湾の人です)が「少林寺十八銅人」以前に撮った作品に「広東好漢」がありました(郭氏影業作品)。
きれいに整理された某リストより

旧作はなかなか見る事は出来ないのだが、その中でも武侠片なんてかなり興味のある部分である。(例えばまだその詳細が明らかになっていない『剣女幽魂』など。)私はこれらの鑑賞が出来る日を楽しみにしています。

さて、「怒れドラゴン」はどんな映画だったのでしょうか。主人公が道を歩く場面からスタート。(音楽から醸し出す雰囲気は例えば「少林寺木人拳」を思い浮かべて下さい。そんなイメージです。)


主人公・陸浩然(聞江龍)は旅の途中、敵に襲われた。陸は襲われる理由が全く分からない。敵を倒すと、また次の敵(蘇真平)が襲って来た。何とか打ち倒すが強敵ばかりで負傷して体力も限界に近い。誰の仕業なのか?敵の死に際、口を割らせると萬大哥と呼ばれる男が送り込んで来たらしい。一体、萬とは何者なのか?
身体をボロボロにしながら歩く陸。意識が遠のくが直前に起きた惨事が脳裏に浮かんできた。
外出していた陸が家に帰ってみると妹(揚珊珊)がさらわれ母親が何者かに殺されており、近隣の者たちが陸の家に集まっていた。弟の阿忠(若き日の何宗道)は未明に襲ってきた黒マスクの集団から一人では家族を守りきることは出来なかった…。
母親の死を思い出すと陸は意識を失って道に倒れた。すると、村の子供・小明が倒れている陸を見つける。父親に頼んで陸を助けることに。小明の父・曹海(魯平。奇峰名義)は陸を助け、しばらく面倒をみることにした。曹海の家には妻の雲娘と娘の秀琴(谷音)、そして小明がいた。

その頃、村に趙(劉立祖)と名乗る男が現れ、土地を売れと無理な注文を村人に押しつけていた。逆らうものなら酷い仕打ちをする有様だった。
曹海の家で療養して歩けるまでに回復した陸浩然は小明に川で魚を取ったり、木に綯っている蜜柑を取り小明を喜ばせるのだった。
萬という人物は陸の妹を誘拐した張本人、萬大哥こと萬金虎(苗天)の事だった。萬は牢屋で妹を拷問に掛けていた。

体の傷も完治して陸が旅立とうとした日、再び趙が現れた。村長(胡秋萍)家に行き土地を奪うのではない、萬が大金を払っていると言う。村長は断固として譲らない。言葉では解決しないと暴力を振るう趙。様子をうかがっていた曹海は黙っていられず大勢の敵の前に出て大暴れし趙たちは退散する。陸は見守るだけだった。

趙は腕の立つ男(黄飛龍)を連れ、曹海の家に大勢でやって来た。曹海は留守だったがすぐに駆けつける。話し合いなどでは到底解決するはずなどない。ケンカとなり男は腕を振り上げ曹海を殴り続けた。しかし、その腕を横からつかむ男がいた。陸だ。趙達の横暴に陸の怒りがついに爆発したのだ。

「お前は誰だ。」
「お前がマン・カムフーか?」
「俺は山東のヤウ・チーファイだ。」陸は名を名乗らずに男を叩きのめした。

萬は大金を積んで関東大侠と恐れられた強敵チョウを呼ぶ作戦を立てる。
一方、黒マスクの集団に小明もさらわれてしまっていた。小明の誘拐に村人たちは一致団結して萬に立ち向かう姿勢を見せるが曹海は村人を宥め、陸は一人小明救出に向かった。萬は陸の探していた人物だった。
陸が敵を薙倒し牢屋まで辿り着くとチョウが現れた。チョウの必殺ワザ鉄沙掌と陸の鷹爪功の力と力がぶつかり合う。
激闘の末、陸は強敵チョウを倒し牢屋に囚われていた小明と妹を救出。ここに英雄・陸浩然すなわち”広東好漢”が誕生した。村人達は勝利を称え行進するのだった。



うーん、自然体ですね。功夫片というか、ごく普通の毎日畑仕事しているような親父が、土地買収を企む悪者を退治しようと大活躍するというお話で、大勢を相手にケガはするしそこに魯平に助けられたなかなか怒らないドラゴン(苦笑)が満を持して登場!ってな展開であった。身をボロボロにして泥だらけになって闘う主人公。主人公が強すぎないのも良かったかも知れない。

こんな単純なストーリーだが郭南宏は何かを付け加えるべくなかば強引に奇想天外なアイデアつまり郭南宏テイストを盛り込むのだからたまらない。そして後半の展開はガラリと変わるのだ。少々の不満は弱すぎる苗天だが突然現れる強敵易原の存在がその独特なテイストだ。どこかで見たような石の壁に囲まれた廊下、部屋がラストの舞台となるがここで易原と聞江龍が対決。(このセットがのちの映画のヒントに繋がったとしたら面白いですね。)易原は言うまでもなく郭南宏の映画には無くてはならない存在である。絶招なる(つまり奥の手)人物を登場させて観客を圧倒させたという事だ。

74年初頭完成した本作品が日本に輸入され劇場公開まではされなかったものの同年秋にはテレビでオンエアされた。この時期に郭南宏の旧作が放送されたのは驚異である。オンエアについては当時の映画雑誌にも掲載されていたが(74年のキネ旬など)内容については不明だったのでどんな映画なのだろうかと気になっていました。

下から巨大な存在をアピール

主演の聞江龍は子供に人気のあるスターだったと思う。そう言えばこの映画では魯平の事を“小明の父”と頻りに呼んでいた。要は子供の視点で描かれていたりする訳である。郭南宏作品の中でこの映画が当時のテレビ映画劇場で最も適していたということか。聞江龍は劇中で小明を喜ばせたように当時「怒れドラゴン」を見たお茶の間の子供たちを喜ばせたことでしょう。終


次回は陳星VS倉田保昭『餓虎狂龍』を予定しています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

方世玉シリーズについて

2009-11-25 23:00:38 | その他・研究
順序が逆になってしまうが、孟飛主演「方世玉」のパート2に当たる歐陽俊監督「旋風方世玉」(又名:傳奇方世玉)と関連作品についてのメモを忘れないうちに・・・。

実際に映像をいくつか確認すると、新たに撮影した倉田さんの出演シーンは存在していない模様である。クレジット表記ではしっかりと倉田さんの名があるがこれを出演作に数えるのはどうかと思うのだが倉田さんのシーンが存在する以上は一応含めておくべきかと思う。また、香港公開版(77/3/17公開)の「旋風方世玉」とは編集が異なるverなどが存在するようだ。確認できた3本を整理してみると、

①香港公開版「旋風方世玉」
前作「方世玉」から挿入されたシーンは少なく、倉田さん演じる譚飛脚がやられるシーンなどを挿入している。香港題に併記された英語は"THE PRODIGAL BOXER ( II ) "で倉田さんのクレジットは単独での表示となっている。

現地新聞広告

②別編集Ver
①の香港公開版とは別編集となっているもの。クレジットは赤字で倉田さんのクレジットの隣には王青の名がある。前作「方世玉」から挿入されているシーンが「旋風方世玉」より多い。(苗翠花役・白虹の出演シーンなど)

③英語版
「Young Hero of Shaolin」と出るものが「旋風方世玉」英語版で、倉田さんの表記は"SHOJI KARATA SAN"である。これは香港公開版と編集が同じもので、クレジットと音声を英語にしたものであった。(よって"Young Hero of Shaolin"は英語版のタイトルだった事になる)

となる。また、台湾の資料によれば南海影業では倉田さんの出演作として3本が記録されていた。「方世玉」(72)、『方世玉打雷台』(76)と『少林絶學一傳人』(77)の3本である。(すべて台湾公開時のもの)
『少林絶學一傳人』が香港の「旋風方世玉」に当たるが、問題は76年の『方世玉打雷台』という作品である。
これは殆ど「方世玉」と同じ出演者のためおそらく「方世玉」の単なる再映か若干編集が加えられたものになるのだろうか。(まぁそれにしても台湾になるとどうしてこうも題名が変化するのだろうか?公開は香港より2ヶ月ほど早いが・・。)

他にも同じ歐陽俊監督(台湾では陽明で通っているらしい)で洲威公司の「方世玉大破梅花椿」も台湾で2ヶ月早く公開されているが、こちらは勿論倉田さんが劇中”日本人”として出演されていましたね。(余談だがこれの原著はなんと古龍だった。孟飛はこの頃から古龍と縁があったのかも。)

以上の3本は順番にすれば
「方世玉」(72)
「旋風方世玉」(77)
「方世玉大破梅花椿」(77)
こんな感じでよいと思う。(何れも香港公開年)5年も間が空いているのは長い気もするが、私は最初の「復讐のドラゴン」の若かりし頃の倉田さんが一番好きです。

今回メモ程度ではあるが、日本人・倉田保昭フィルモグラフィーの一部を整理してみた。自分なりに整理してみるのも楽しいと思います。倉田さんは今後も話題になっていくでしょうから将来忘れたらこの記事を再度読んでみたいと思う。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

兩虎惡闘

2009-11-17 22:33:23 | 七十年代作品【1973】
七十年代總覽看倉田のコーナーその4です。ファースト・フィルム社の『死對頭』に次ぐ金剛・倉田主演映画第2弾。今回はTシャツ姿の倉田さんだ!これは若くないとちょっとできませんよね~。(最初で最後かな?ホントにラフな格好の倉田さんであります。)

そういえば倉田さんのフィルモってどの映画も大きく扱われているからか割合作られた事が明確になっている方であり、抜けというものが殆どない。(本人が知らないところで勝手に作られたものを除いて)これはご本人も100本単位の本数に出演とかではないので殆どは記憶に残っているのでしょう。

不明瞭である為、よく名前が挙がる作品は『除暴』や『上海猛虎』、『猛男』といった辺りだろうか。これらも機会があれば取り上げてみたい作品である。

もしかしたらあと1本ぐらいはあるのかも知れないなと思ったので、パラパラと台湾の資料をめくってみると、美鴻公司の『一對一』という作品があった。
ここには倉田さんの名前がはっきり書いてある。他の出演者には林鳳嬌と董力だけ記されていた。(監督は林福地)現状はこれだけだ。実際にその映像を見た訳ではないので詳細は不明だが74年に公開されていることやがいるところから類推すると、これは董力が出演した林福地作品のシーンを編集、挿入した別映画なのかも知れない。

編集して別映画になったもので有名なのは南海影業の『旋風方世玉』という作品。
これは「復讐のドラゴン」から流用されている。(「ドラゴン少林拳」では倉田さんのシーンはカットされている)
確かにクレジットには入っているが・・。

また、激突ドラゴン武術に載っていた『鳳舞雲天』は香港長江電影公司の『一鳳東飛九萬里』(81年。但し、台湾題)という孟飛主演の作品である可能性が高そうだ。
これにはご本人のお言葉の通り、倉田さんは出演していないと思われる。
そのシナリオ本がコレ。古龍原作の陸小鳳の話のようだ。これがどうして紛れ込んでしまったのか謎である。


こういったつなぎ合わせた映画ではなく純粋な一本の映画ということで言えば上記の理由から現在挙がっているものがほぼ全てであり、残るは他国の別題の別verがあるか先の紛い物のどちらかになるだろう。

そして本作。
香港でお蔵入りになってしまった前作で剣龍監督は表現方法を考えさせられたのでは?と思う。折角苦労して撮ったのに公開されないなんて映画を作った側からすればかなりのダメージだ。



金剛&倉田の刑事コンビが送るバイク、カーアクションも全開!の痛快アクション映画となっている。

いつものように習字の練習、練習っと。今回は横に長い半紙を使用してみました。


さてストーリーのはこんなところ。

電気工事夫に変装した金剛は電灯を修理するフリして高いところから凶器を投げ、ボス(馬驥)邸宅のプールにいた手下を抹殺。
オフィスビルにクレーン車で侵入。逃げ込んだ敵をやっつけ、クレーンで脱出・・。と思ったら車を相棒(倉田保昭)に乗っ取られ、クレーンにしがみ付いたまま道路を爆走する。敵も後を付けて来た。クレーン車を止め、すぐに乱闘がはじまって追っ手を蹴散らした。
上司は自動車整備士のおじさん(魯平。奇峰名義。この人ってなんかこの時期も好きですねぇー)に扮し、ヤクザ(山茅。コワーイ顔。本物っぽい(笑))から狙われる。そこに相棒が駆けつけ悪党一味をやっつける・・・。



倉田さんはあっという間に敵を倒しながら金剛ともバトルをひたすら繰り返すのです。

若い衆の一人には、龍方も・・。(李健民。この時期には多数端役で出演!金剛さんの足技の餌食になっていましたが。)



高飛も若いなぁ~。


今回は大細眼(宋莱名義)にボコボコにされてしまった倉田さん。毎度こんな役ではありませんがいろんな役を演じられていた事が見る側にとり嬉しく思いました。
(そういえば金剛って倉田さんと共演する前は何をしてたんでしょうね?)
尚、龍飛(ロン・フェイ)はオリジナル・ポスターに金剛、倉田と並んで名前が記載されていたが本編には出演していなかった。クレジットにも名前が無かったから予定変更されたのかも。また次も楽しませていただきます。終


次回は、テレビ放映された郭南宏監督の「怒れドラゴン」を取り上げます。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

黒帯仇

2009-11-12 23:56:42 | 七十年代作品【1973】

今回は73年の協利電影公司作品『黒帯仇』についての感想などを書いてみたいと思います。

 バックが黒帯になってます

いまファンの間で一番旬な話題となるとやはり協利作品になりますか。しかし私の場合、今までは一本を最初から最後まで通して見たことはありませんでした(苦笑。
ちら見したのは後期のものばかりでしたが、最近書いた記事の自然な流れで行くとどうしても72、3年頃の作品がターゲットになる。興味を持てるのはこの時期だとほかに『賊殺賊』や73年製作の噂のあった『冲天炮』(陳鴻烈の初監督作で実際に73年に製作)ぐらいであろうか。今回はそんなこんなで一応のところ、協利作品を取り上げてみました。

オープニングはいかにもヨーロピアンな音楽でテンポのよい低音の旋律が耳に残るフランス映画「華麗なる大泥棒」(71)のテーマ曲に乗って始まり、これは十分過ぎる程のインパクトがあった。空手のデモンストレーションの樣に進行し、組手や板割り、ヌンチャクの演舞などで構成されている。

ちなみに曲の方は香港映画では頻繁に流用されていたモリコーネの作曲によるもので(演奏は「シバの女王」で有名なレイモン・ルフェーヴル)仕事が終わった後のリラックスしたい時などには持ってこいのイージーリスニング的なもの。私はこの曲がとても気に入っていて何度も聴いていました。なかなかいい曲ですので是非聴いてみてください。(youtubeで‘Le Casse intro’と検索すれば仏語Verのオープニングが出てくると思います)現在もこの映画のサントラ人気はかなりのものでオークションサイトではLPレコードが約4万円で落札されるなんてこともあったりしてます。

この映画は民初功夫片ではなく時装片でありますが、このオープニングの方野がとても格好良くみえるのだ。表情も本編ではジジくさいのだが冴えた表情をしている。このオープニングを見て方野を見直してしまった位だ。風貌から時装片が丁度よく似合う俳優ではないのかな思う。キザな役が本当にお似合いで『黒人物』なんてどんなのだろうかと期待してしまう。

オープニングがとても良かったので本編も期待させられるのだが。

黒帯の腕前を持つ曽威(方野)は空手の大会に出場し入賞を果たす。
仲間の瘤子(山怪)と小呉(解元)は曽威から食事に誘われるが、足の悪い瘤子は曽威を待たせていた。テーブルについて瘤子が新聞の記事を見せようと夕刊を広げると驚くべきニュースが曽威の目に飛び込んだ。それは海外で開催された東南アジア選手権で曽威の親友・楊倉盛が袁鷹(白鷹)に敗れ負傷したとの記事だった。なぜ彼を支持しているのか不思議に思う二人に曽威は1年前に起きた話を打ち明ける。

1年前、曽威は女の恨みを買い暗闇で数人から殴る蹴るの暴行を受けていたが、近くに居合わせた楊倉盛(張力)に運良く助けられた。彼は格闘家でシンガポールから香港に移住して来ていたのだった。楊に助けられた曽威はそれ以来親交を深め親友となっていた。

対戦相手の袁鷹は元警官で曽威たちとは過去に因縁があった。楊が負ける理由は考えられない。試合で袁鷹が不正をしたに違いないと瘤子が吹き込むと曽威は頷き、袁鷹打倒を決意する。曽威は胴着を着て黒帯を締め袁鷹の家に向かった。

家に乗り込むとまだ袁鷹は帰国しておらず留守だった。家には就寝中の母親と袁鷹の妹、袁小紅(歐陽佩珊)が家にいたが、袁鷹不在で娘の様子から彼女が盲目と分かると曽威は小紅に暴行し、騒ぎに目を覚ました母親は黒帯で絞殺されてしまった。

翌日帰国した袁鷹が自宅へ戻ってみると母親は既に亡く、妹がただ一人待っていた。母親の遺影の前で崩れる袁鷹であった。警察に捜査を依頼するが、被害者は盲目故に捜査は困難を極め簡単には犯人を捕まえられない。袁鷹は自分で探すと言い放つと警部の陳志遠(高遠)に問題を起こすなと警告された。

袁鷹は友人の刑事(秦沛)に相談し情報を聞き出す。手がかりは犯人が現場に残したコートで、住所らしき文字の一部が書かれた紙の断片がポケットに入っていたのだった。これを頼りに袁鷹は捜索を開始、車を走らせ必死の捜索で住所らしき場所を発見する。その近くにはとある住居があった。実は若い女性を匿っている別荘で曽威がマネージャー(李香琴、孫嵐)に任せている隠れ家だった。袁鷹が門番(元奎)を破って家の中に入ると、監禁された女性の中に一際気の強い賀珍珍(馬海倫)も混じっていた。彼女は連行される女性を目撃、後を追う際に一緒に捕まっていたのだった。そこへ陳警部らが到着。監禁者は無事解放された。

一方、コートを置き忘れたり、別荘が警察に発見され曽威の身の危険を心配する瘤子達だったが、曽威は袁鷹の母親殺害も娘の小紅が盲目だったから捕まるはずなどないと言う。

ある日、賀珍珍が有名な鍼灸師の父祥平(馮毅)を連れて袁鷹の家にやってきた。救出のお礼のためであった。妹の小紅が盲目と知って驚く珍珍だったが、小紅の純真無垢な人柄から安心して打ち解けるのだった。珍珍と小紅の二人はレストランへ食事に出かけた。丁度その頃楊倉盛が香港へ帰国し、曽威が食事に招待するところだった。

小紅たちがレストランで食事をしていると、後から入ってきた客の声が衝立を隔てた隣から聞こえてくる。小紅はその中の一人の声に過敏に反応した。忘れもしない犯人の声。それは紛れもなく曽威の声だった。声を聞いただけで曽威を察知したのだ。珍珍に事情を話し、兄に連絡を取る小紅。袁鷹が現場へ急行すると近くに不審な人物瘤子を発見、追跡する。瘤子は必死に逃げ回り道路で事故に遭い死亡した。

事態を知った曽威は袁鷹を倉庫へ連れ出し呉と対決させるが、袁鷹が留守の間に小紅は誘拐されてしまう。曽威は誘拐した小紅を楊に合わせることに。しかし楊は本人から事情を聴き、小紅を家へ帰すからと曽威とケンカになるが家に帰すことを許した。楊は肩の治療のため賀祥平鍼灸院へ向かう。治療が終わると珍珍が現れ小紅はどこにいるのか問い詰めるが、曽威の部下(陳嶺威)が突如拳銃で襲って来た。楊は咄嗟に鍼を投げ、部下の後を追って倒すと、車で曽威の居場所へ向かった。既に呉を倒した袁鷹も曽威を追って来ていた。袁鷹と曽威に楊倉盛が加わり三つ巴の争いになるが、さて結末は・・?


ストーリーはやや暗く退屈させられるが(「華麗なる大泥棒」のプロットをそのままいただいちゃった方が良かったりして・・。)当時の珍しいコラボ作品としてなかなか楽しめたと思う。明星から悲劇のヒロインを演じた歐陽佩珊に馬海倫と高遠、張力をはじめ富國、開發公司のメンバーたち、そして黒いサングラスの似合う白鷹だ。(元奎、元華なんかも混じっています)
この映画のポイントはハンディーキャップ。盲目の女性や足の不自由な男、鍼治療が必要な格闘家にあると思う。それをどうやって映画に組み込んでいるかだ。例えば母親殺しの犯人が方野の犯行であることを声で察知したのは盲目である分、彼女の聴覚能力は人一倍高かったという訳であり、足を引きずる山怪は白鷹にやられた後遺症だったという訳だ。この辺りは監督張森の力量で上手く表現出来ている。
途中、車に乗ったハゲのおじさん(何柏光)が登場してアップになる場面では一人爆笑してしまった。やっぱり香港映画はこうでなくっちゃね(笑)。
もう一つ。ラストシーンが面白いというか最後の最後、シメの部分が何とも言えない場面で終わるのだ。(これは実際に見るとちょっと笑えるかも)

そして出演者の一人、解元のフィルモグラフィーを見ていたら不思議なことに気付かされた。それは73年の殆どが開發公司の作品ばかりなのだがなぜかこの『黒帯仇』一つだけが協利なのだ。
『黒帯仇』出演者は殆ど富國にいた人間ばかりでかなり不自然に見えてしまう。とても協利とは思えないメンバーであった。異質なのは張森監督と主演の白鷹であり白鷹は一人浮いた形にさえ見える。これについて資料を調べていたら協利という会社は当初、自社の作品を製作する傍ら他会社の映画も代理で製作していたらしいことが分かった。なので当時は富國や明星など独立プロの代理で製作を受け持ったと思われます。(これなら上記の疑問も納得できます)

また、この映画の殺陣師は袁和平で時装片だがこれも彼が殺陣をつけていた。
倉庫での白鷹VS解元や張力VS陳嶺威などの対決シーンがなかなか良い。
この頃各社で殺陣師グループが存在していたが、これをグループで分類していけば当時の状況が整理できようというもの。これはとても一人では手に負えないレベルではあるが、うまく整理できれば面白い資料が出来上がるかも・・。

結局のところタイトルが表している通り、黒帯の使い手が仇(=方野)のシンプルなストーリーなのである。大変分かりやすいのであるが、映画の持つタイトルの意味について・・となるとやはり淀川長治先生のこの2つのお言葉を思い出します。

”タイトルを楽しもう。”・・・映画はタイトルから始まる。
”映画の原名をさぐること。”・・・原名がその映画の狙いを示している。

単純明快。今回は黒帯が仇という映画でした。

次回はまたまた倉田さんの作品を書いてみたいと思います。終

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

硬漢

2009-11-06 23:40:01 | 七十年代作品【1972】
劇場公開された香港映画を見るのは楽しい。私のお気に入りは「吼えろ!ドラゴン起て!ジャガー」「空手ヘラクレス」「カラテ愚連隊」などである。まだ見てない映画もいっぱいあってどれも見たくなってしまうけれど、これが趣味なんだから仕方がない。その映画がいっぱい載っているチラシ大全集なんてもう目の毒である。

74年に劇場公開された”ドラゴン映画”はシネアルバム1975によれば27本もあった。当時の宣伝費も含めた総費用が1本あたり約3000万円と少ない方であった為これ程の本数の映画が公開出来たのだそうだ。単にブームの波からと思っていたがこんな話まであったとは今まで知らなかった。全く客が入らなかった映画から興収ランキングで上位に入る作品まで満遍なく輸入され、そこそこの売上げだったのだから凄い。

その中の1本に「危うし!タイガー」(以下、「硬漢」と略す)があった。
巻末のフィルムリスト’74はアイウエオ順に並んでいるので最初に出てくる。
ここの製作プロダクションの記述は誤りで富國影業の製作である。

タイトルカット

またこの本には当時の上映された状況について興味深い記述があった。
以下引用。

封切られた中国功夫映画は日本語に吹き替えられた3本と原盤のまま上映された1本を除きすべて英語版である。

というものだ。確かに日本語はいくつかあったが、原版とは北京語のままという意味なのだろうか?
また日本の時代劇との違いなどについても触れられている。復讐ものが多くてネチネチしていて陰湿であり、また東南アジア諸国は暴力や残酷描写には検閲がうるさいからマカロニウエスタンほど残酷さを徹底できない、とあった。確かにそうだ。私が現在見ているものも残酷過ぎず鑑賞には丁度合っていて都合がよい面もあるのだと思う。

公開当時は表に陳星(サイン入り)、裏面が香港空手スター名鑑と称したミニポスターが配られていたようである。このスター名鑑は読み始めると面白くて止まらない内容だ。(山形の香澄堂書店さんどうもありがとうございました)
これに載っているスターの名前を是非書いておこう。

チェン・シン、ブルース・リー、チェン・カンタイ、倉田保昭、チャーリー・チャン、リー・フォアマン、ジミー・ウォング、フーシェン、ブルース・リャン、カオ・チャンの10人。
この年代(74年)のスターだとこうなるようだ。(うーん、納得。)あれ??カオ・チャンだって。マニアックではあるが、厳選してうまくまとめられておりこれを書いた人も偉いと思います。

ところで米・伊合作映画「ウエスタン」(68)を御存知だろうか。
これは復讐を代行するガンマンを描いた西部劇でワンチャイじゃなくてアメリカの方のシリーズ第1弾であった。「硬漢」にはこの「ウエスタン」のサントラ(モリコーネ作曲)からBGMが流用されている。
サントラCDはココ↓(試聴可)
http://www.neowing.co.jp/detailview.html?KEY=BVCM-35317

この「ウエスタン」にはブロンソンが出演し、監督のレオーネは先に出来上がったモリコーネの曲をイメージしてブロンソンの映画を作り上げたという。富國影業の「硬漢」製作者たちはどうだろうか。ブロンソンのイメージをそのまま陳星に当てはめこれを具象化したのではないだろうか。そして流れるテーマソングはシャイアンではなくて最早チェン・シンのテーマと言ってもいいほど良くかかっていた。

庄司じゃありません。陳星です!


以下は各スタッフについて。
監督は江洪である。70年代を中心に活躍したこの人の名前を聞いたことがあると思うのだが、この「硬漢」をキッカケに当時新人だった張力との関わりが多くなり、張力は江洪監督作品に毎回出演するようになる。江洪は不思議な事に「硬漢」から突如監督として現れた。この名前はこの映画が作られた時点ではまだ誰も知らない名前であった。
それもそのはず実は邵氏で脚本を書いていた人物だったからで「キングボクサー大逆転」『埋伏』『金毛獅王』などの脚本を担当していた江揚、その人なのである。
つまり彼は定評のあった脚本家であったのにそれを隠し、監督昇進にあたって江洪と改名してこの映画の監督を務めたのだ。邵氏では「キングボクサー大逆転」の脚本を最後に富國の監督に進出したと思われる。そして映画に初出演した張力を育てることを決意したのかも知れない。

また、副導演には趙魯江の名が・・。こちらではお馴染みの魯江ですが、彼も邵氏から富國への移籍組だったんですね。

武術指導は袁和平で、単独の武術指導としてはこれが最初の作品ではないだろうか。(とは言っても袁祥仁も出演しているので、どこまでが単独でどこまでが共同なのかの解釈が非常に難しい。。)また、クレジットでは火星がLeoと表記されているのが?なのと、陳雄(英名:Kent Chen)が誰の事なのかが不明であった。(これもパズルね^^;)

「硬漢」は御存知"シャフトのテーマ"に乗ってはじまる。

民国初年。劉山虎(孫嵐)をボスに据えた麻薬密売組織を壊滅させる目的で秘密捜査官・陳強(陳星)は警察局長から潜入捜査を命じられた。陳強は刑務所に潜入し計画通り組織の唐龍(山怪)に接触。唐龍には全く怪しまれずに二人で脱獄することに成功した。

小さな港のある村で陳強は腕の立つ青年張平(于洋)に会う。張平たちは埠頭に到着した船から荷物の陸揚げ作業をしていた。陳強もその一員となって村に潜伏中であった。作業を取り仕切っていた組織の曹彪(馮克安。馮堅名義)は大牛(火星)に暴行を働き、手下に大牛を片付けるよう命令、乱闘騒ぎになる。そこに張平に続いて陳強が加わってさすがの曹彪も怪力の持ち主、陳強の剛腕にはかなわなかった。

張平が陳強を家に連れて帰ると張平の妹(凌欣)が待っていた。妹は腕っぷしの強い陳強に想いを寄せる。家を去って大牛とも分かれた陳強は突然男に襲撃される。必死に応戦する陳強だったが顔を見合わせると男は唐龍だった。二人は再会を喜ぶが陳強は刑務所仲間の顔を見せ芝居を打っておいた。襲わせたのは曹彪の悪巧みだったが、唐龍は再会に気を良くしこれにより陳強は組織の仲間に入ることに成功する。だが曹彪は陳強を不審に思っていた。一方、陳強の部下の雷峰(張力)も漁民に扮し潜入を開始する。

その頃組織の幹部、方世雄(方野)とその手下(王青)らが密売品を積んだ船で港に到着した。早速出くわした大牛と妹に搦む方世雄だったが、丁度通りがかった陳強に割って入られ蹴り合いを始める。方世雄はボスの劉山虎がやってくると喧嘩を止め皆に紹介されるとアジトへ行く。これで組織の主要な人物はすべて集まった。
その後、陳強は一人外へ出て何処かへ向かう。曹彪が陳強を尾行すると陳強が雷峰と連絡を取っているところを目撃した。

組織の有能な部下曹彪は用心棒数人を手配し埠頭の警備をさせた。
陳強から情報を得た雷峰は劉山虎を逮捕する為、密売の証拠品を船の積荷から何とかして発見しようと試みる。雷峰は敵に見つかってしまうが、大勢の敵を相手にヌンチャクを使って応戦する。この騒ぎに張平と大牛の二人は感づいて様子を窺っていた。そこに陳強もひとり現れた。さらに劉山虎たちも部下からの報告で現場へ急行。陳強の取る行動を監視していた。

陳強は騒ぎを解決させるため、雷峰を倒すフリをし、うまく海中へ連れ込み死んだ様に見せかけた。物影から見ていた張平、大牛の二人は陳強が曹彪の味方になったのを見て不満が募る。陳強が一人になるところを待って張平は陳強に手を出した。しかしその場は駆けつけた妹に止められる。

陳強は人気のない山で雷峰と合流した。雷峰はもちろん無事であった。その夜、陳強たちは証拠探しに倉庫へ忍び込んだ。しかし、これはワナだった。劉山虎に今迄取った行動から捜査官であることを見破られてしまったのだ。雷峰が助けに入るが陳強は捕まり、鎖で縛られた挙句拷問にかけられる。雷峰は大牛に身分を明かし、陳強救出に向かう為、張平の手も借りる。すると方世雄とその部下(王青、袁祥仁) が家を襲ってきた。大牛は殺害され、妹も組織の手下(袁日初)にナイフで刺されてしまう。

その頃、鎖を引きちぎって脱出した陳強は劉山虎のアジトへ向かう。まずは得意技の頭蓋骨割りを浴びせ曹彪は陳強の怪力の前に倒れた。そのまま陳強、雷峰、張平の三人は組織との決戦に縺れ込む。張平は方世雄。雷峰は方世雄の手下(王青)、そして陳強は唐龍が相手だ。死闘を繰り返した結果、一人また一人と倒れていくが、陳強は強敵・唐龍を打ち負かした。最後に残った劉山虎だが、逃亡は許されず陳強に捕まって物語は幕を閉じた。


硬漢の陳星が悪者を倒していく姿はやはりブロンソンのイメージに近い。"鷹爪功"を使うブロンソンもいいではないですか。
陳星も組織と村人の間に挟まれ戸惑いながらも捜査を進めるなんて展開でかなり好演していたと思うのだ。一見、重要でないと思える火星や于洋の妹、馮克安など全ての人物が絡んでおりスムーズな展開もなかなか面白い。

有名なシーン。相手は李超と判明

ただ『蕩寇灘』と似た雰囲気を持つが同じ製作会社でも呉思遠のものとは違う。監督が変われば当然ながら印象も変わる。これは余談だが、ちょっと気になる編集があった。冒頭に波のシーンがあるが、ほんの一瞬だけわざわざ南海影業のオープニングを本編に流用していたのである。こんなことまでするとはある意味凄いことだと思う。

見せ場であるラストバトルは袁和平の殺陣が光る素晴らしい出来。さすがは袁和平だ。『蕩寇灘』と同じBGMで猛ダッシュする陳星も健在である。ラスト近くは中国の有名な山で撮ったそうなのだが、熱気が伝わってくる格闘シーンは微笑ましいものです。現場の気温も相当高く暑そうだがとても見応え、そして感動があると思う。とにかく陳星はサイを持たせたら世界一似合う男(当時)である。(十手じゃありませんぜ。>日野先生)サイが陳星の手に渡るまでの展開も面白く山怪のバタフライソード戦は最も迫力のあった一番の見せ所であったと思われる。
音楽も周福良ワールド全開な作品であることは間違いないところ。このサントラを聴けばその世界にどっぷりと浸れるのだ。
香港では確かに『蕩寇灘』や『黒名単』に比べヒットしなかった(それでも80万香港ドルを叩き出したが)。日本ではこちらが劇場公開されてしまった。やはり『黒名單』などではなく「硬漢」が公開された理由も分かるような気もした。(同じ富國の『蕩寇灘』より格闘シーンが多く全体の質が上がっている感がある。)
また、陳星の代表作として揺るぎない作品と確信できました。
次回は協利作品を取り上げます。ー終ー


 劉山虎め。貴様は許さん!

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする