電影フリークス ~映画のブログ~

電影とは、映画のこと。その映画を一緒に楽しみましょう。

獅子と呼ばれた女・宋慶齢

2011-06-30 00:00:00 | ドキュメンタリー

先日放送された、近代の中国の女性に関するドキュメンタリー番組「獅子と呼ばれた女・宋慶齢」を見ました。 慶齢は一時、来日もしていたとのことだったが日本にだって当然ながら関連があるでしょう。日本人の私はこの番組をどう受け取るべきか。

東京・日比谷には今でも慶齢の弾いたピアノが保管されているという。ピアノだって弾けた彼女は挫折した自分(私)からすればそんな才能も羨ましいけど、ピアノが残されているという事実は音楽家でもないのにどういうことなのだろう?(これはあとできっとわかる…)。

当時、アメリカの大学に留学していた慶齢はこの留学によって本格的に英語をマスターし、1912年に大学を出て帰国途中日本へ寄り、孫文の英文秘書となった。そして結婚する時には日本人・梅屋トクが孫文と慶齢の間を取り持ち、結婚したのだという。トクのひ孫の女性の方がインタビューを受けていました。そんな人までいるんですね。

慶齢の父をはじめ皆が結婚に猛反対したのは「宋家の三姉妹」でも描かれていた通りだった。唯一、結婚を認めてくれた妹・美齢が結婚した時の写真を見ると、映画では姉・靄齢を演じたミシェール・ヨーみたいな顔に見えてしまう。孫文は慶齢のために彼女の英名ロザムンドに肖り中国初の飛行機に”ロザムンド”号という名を付けたそうだ。年の離れた孫文は誰も真似の出来ないそんなプレゼントを彼女に贈った。
しかし、孫文は肝臓がんで1925年に亡くなってしまう。孫文の死後、慶齢は上海の家に引きこもったとか。

しかし、目が覚めたように政治活動を開始。やがて蒋介石と対立するようになった慶齢は声明文を次々に発表する。ひたすらタイプライターを打ちこの時の執念のように政治活動に打ち込む姿などからいつしか獅子の女と呼ばれるようになったという。(目の覚めた獅子は強いのだ。)獅子の女なんてそう易々とは呼ばれる訳はない。ピアノが弾けるひとりの女性なのだから。
そして、1927年にはモスクワへ行く慶齢。これは逃げたのではなく世界に革命は終わっていないと宣言するためだったと言います。新しいタイプの政治家だったと研究者は語っていたが必要とあらば自ら外国にも出向くのである。

姉妹の性格については、妹・美齢は表面は慎ましやかだが物欲があって野心的であり、姉・靄齢は富に執着する率直な性格だった。そんな姉の方を好ましく思っていたという慶齢。しかし、その想いとは裏腹に慶齢は美齢の結婚にあまりにも大きなショックを受け病に伏したそうです。
中国では慶齢の人気が高いそうですが、番組で中国人ジャーナリストが語っていた話で印象的だったのは中国の若い人の意見で女性の生き方としては美齢の方が良かったという意見があるんだそうです。(つまり慶齢ほど苦難を背負わなかったという見方から。)どこの地域か不明だったがそんな意見もありました。

また、専門家が慶齢の精神分析するという違った面からも中国の一人の女性を見つめる番組はつづく。彼女は革命だけではなく普通に福祉や教育もテーマだったというのも政治家の性質を持っていますよね。そして番組は慶齢についてもっと深く入り込みます。周囲の誰かに人柄について聞くと、心の内を話さない人だったそうです。(本当は誰かに話したいのに・・。)そして遠く離れてしまった妹・美齢にもう一度だけ会いたかったと言うのです。しかし、それはどんなに望もうともついに実現することはありませんでした。

生涯かかった数々の運動。孫文先生の夢。晩年、死を予感した慶齢は南京にある孫文の墓には入らないと言い残す。これはまだ活動をしていたときの事、極々僅かな身近な人間には本音をもらしていた。もう引退したいと。あれだけ中国の理想に燃えていた彼女も終盤には変貌してゆくのです。何か大きな使命を果たし終えたのでしょうか。番組はそんな人間らしい彼女の様子を映し出していました。

まずは存在を知って、彼女がどんな人物だったのかを知ることでその国や人々の動き・考えまでも分かる。それだけ大きな存在だった彼女は獅子と呼ばれるまでになった。映画だけではなかなか分からない慶齢の真の姿を反映したこの教養番組を通じ孫文の妻・慶齢の事が少しは理解が出来たのかも知れない。終

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ロケ地へ行こう! 韓国編その2

2011-06-24 00:07:37 | その他・研究

「ジャッキーチェンの醒拳」のロケ地であった南漢山城道立公園は
よく映画やドラマなどで撮影が行われる場所であります。

http://www.panoramio.com/photo/15347641?source=wapi&referrer=kh.google.com

民族村から北へ25kmほど移動した場所に南漢山城があります。展望台などもあり、ソウルが見渡せる高い土地です。

南漢山城・守御將台

守御將台は文化財として指定されており、木造建築で歴史的価値が高い建物です。
南漢山城が出来たとき東西南北に4つあった將台の中で唯一現存するものだそうです。(注:將台=司令官が指揮を執る場所)


78年頃、撮影に南漢山城を訪れたジャッキーはこの守御將台の前などで
映画の一部を撮影しています。こんな広くて見晴らしの良い土地での映画撮影は気分も良かったんでしょうね。


『龍騰虎躍』より

この数々の文化財を残す南漢山城が世界文化遺産に登録される日も近い(?)。


Google Earth 守御將台目印
http://maps.google.co.jp/maps?q=http://milano.cafe.coocan.jp/map/west.kmz
または下のファイルをダウンロードしてダブルクリック
http://milano.cafe.coocan.jp/map/west.kmz

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宋家の三姉妹

2011-06-22 00:00:01 | その他・研究

「宋家の三姉妹」原題:『宋家皇朝』
(1997年 日中合作)
監督:メイベル・チャン
出演:マギー・チャン/ミシェール・ヨー
   ヴィヴィアン・ウー

20世紀初頭の中国で波乱の人生を送った三姉妹の姿を描いた大河ドラマ。
神保町にある岩波ホールの冊子を読み返してみると、金像奨6部門受賞って、97年に香港でそんな沢山の賞を取ってたのかと思ってしまう。(活字の量も多くて勉強になる…。)
これに書いてある衣装担当のワダ・エミのぼやきが面白い(笑)。
今ならツイッターで「レイン・オブ・アサシン」の衣装をつぶやいてくれないだろうか。

孫文は、ウィンストン・チャオである。
最新作「1911」でも孫文役をやるそうで(もう1本『夜・明』にも孫文役で出演)孫文俳優として何本もの映画に出演するなんて彼はどんな性格で、どんな俳優なのだろう。

三姉妹は、長女の靄齢(あいれい)は財閥と結婚、次女・宋慶齢は孫文と結婚。三女・美齢は蒋介石と結婚と、中国にとってこの姉妹はとてつもなく大きな存在なんですね。

日本人も絡んだりするような伝記物というか歴史を描いた映画というのはこんな時代だからいま観るのが面白いと思う。(だから映画館なんかで上映されれば客の入りも凄いことになるのだ・・と思う。)

ウィンストン・チャオが子供の頃の三姉妹に会う。こんな小さいのに将来結婚することになるなんてね。
この子たちの母親がどっかで見たことあるなと思ったらエレイン・ジンじゃないの。(「野獣たちの掟」がとてもなつかしい・・。)
まぁそれにしても父親・チャーリー宋という人はまだ子供の姉妹をアメリカへ子供たちだけで行かせるなんて危険なことをしたのだろう。でも、チャーリーさん。孫文以上に熱演してる!

やがて辛亥革命が成立してチャーリーさんがはさみを持って弁髪を切るシーンが出てきます。髪を切り落とした人々がすごい事になってましたが(時代が変わるんだぞという象徴的な場面。でも『少林門』の譚道良を思い出したりして^^。)、こんなシーンは映画じゃないと見れないですね。

私が見たのは字幕版でしたけど、日本語吹替のビデオも存在してたというかあったのね。(マギー・チャンとかミシェール・ヨーを誰がアテたのだろうか?ちょっとだけ興味が・・。)
とにかくマギー・チャンが孫文を”おじさま”って呼ぶんですよ。
この映画の孫文を中国のリンカーンなんて呼び方あってユニークですが、この映画では素敵なおじさまを演じているウィンストン・チャオが良く映ると思います。
3人の女優たちが熱演しているのですが、男3人(孫文・蒋介石・孔祥煕)がどんな計画を立て何をやろうとしていたのか。女優3人の持ち味を活かしてそれぞれの役(革命に燃える男たちを支えるという存在)を演じることが出来ていたのはとてもよかったなと思います。

映画公開から6年。美齢は2003年10月23日、ニューヨーク自宅で106歳で亡くなりました。映画では美齢の最後は描かれませんでしたけど、姉妹が引き裂かれてしまう運命を描いた映画でした。監督のメイベル・チャンは香港返還のときに自分自身を見つめ直してこの「宋家の三姉妹」を作ったのです。そうすることによりまだ知らなかった中国を理解したそうです。日本人には理解しがたい部分がありますが、こういったドラマも必要なのではないかと思います。

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洪拳大師(79)

2011-06-21 00:09:24 | 七十年代作品【1979】

劉家勇主演の79年版『洪拳大師』 The Fearless Duo です。 
 
 
この映画は当初、郭南宏による『洪拳鐵橋三』として台湾で製作され、実質的な監督に方偉翔(方翔)を起用するなどして、香港での公開時はその題名も『洪拳大師』に変更されている様です(香港版と台湾版でスタッフの表記が異なる)。郭南宏と言うと同時期には『五爪十八翻』も同じく劉家勇と黄正利主演で作られてますね。

※参考『五爪十八翻』は当初『[虫禽][虫渠]散手』という題名でありました。ちょっと読めませんが(汗)。 
 

これがなぜ『五爪十八翻』に変化したのか非常に興味深いところなのですが、他にも『龍形蛇?』(?=「蛇拳」の刀に似た文字)なんてのもありタイトルに関しては本当に謎が多いところであります。

『洪拳大師』の製作時期は79年6月の映画雑誌に新作紹介記事があるため、この作品の製作年度は79年が有力と思われます。(推測に過ぎませんが『五爪十八翻』→『洪拳大師』の流れではなかったかと。)
また、香港および台湾の公開日は判明しておらず、台湾ではもしかすると79年公開の可能性もあるのですが確固たる証拠はありません。一応、iMDbには1979/7/1がリリース日として記載されていました。但し、信憑性がなくどこの地区なのかも不明のようです。

この映画を製作したプロダクションは香港の嘉氏影業というところでここは他にも『迷蹤霍元甲』(80)などを製作していました。

デザインはそっくり

こちらも黄正利主演であり、ネームバリューの高い韓国人・権永文も参加していますね。『迷蹤霍元甲』にはこの大物二人が実際に対決しています。この黄正利VS権永文戦は他の映画でも十分ありそうですが、それが何であるかパッとすぐに思い浮かばず、これを何とか機械的に調べられないものかと日頃から悩んでいます。(各作品において対戦歴が簡単に調べられるような仕組みを考案中です。是非実用化させたいと思っております。)

今回の『洪拳大師』。この手のアクション物は狭い画面ではダメなのでワイドスクリーンなら、この通り見易くなるのでうれしいものです。 
 空が澄んでてきれい。特訓日和だな。

本編は唖然としてしまうほど突っ込みどころ満載の超おバカ映画になってしまっているケド・・。

 ほんとアホだね~

この映画のDVDを購入される方はおそらくマニアと思いますので、特に黄正利ファンでしたら既に入手済のことだと思います。入手方法はオンラインショップなど製品版を販売しているところがないため今のところブートを扱う業者に頼るしかなさそうです。


それにしても今回黄正利が鬼脚七だったというのには驚きました。
 
 
見よ!これが黄正利の鬼脚だ。
 鬼・鬼・鬼

ストーリーより彼の足技にだけ酔いしれたい作品でした。

ところで、鬼脚七を演じたスターといえば、やはりこの人、ワンチャイのくまきんが筆頭にあげられますね。(これを見ちゃったら他が見れない・・)ドニーの『蘇乞兒』(93)も見たくなっっちゃいますね! 


他にはユンピョウが『黄飛鴻之鬼脚七』(93)で演じてみたり、古くは元祖・黄飛鴻俳優クワン・タクヒンが出演した『黄飛鴻與鬼脚七』(80)とか。(これは白彪)
おっと、忘れてはいけない。梁小龍サマの『黄飛鴻四大弟子』もそうでした。
誰だったのか改めてみると、熊欣欣・ブルース・リャン・白彪・元彪、そして黄正利と鬼脚七を演じてきた歴代のカンフースターはなかなかのメンツだったんですねー。

今回はONI-ASHI”鬼脚七”について少し考えてみました。

ワンチャイより

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「少林寺英雄伝」と遙かなる少林寺

2011-06-17 00:50:21 | 七十年代作品【1979】

     シャオ リン イン ション バン
原題   『少 林 英 雄 榜』     Abbot of Shaolin

公開日 1979/7/11(水)   邵氏兄弟有限公司 作品
               116,880HK$ 1979年度第99位

スタッフ&キャスト

監督 何夢華(ホー・メンファ)

出演 姜大衛(デビッド・チャン)
   羅烈   (ロー・リエ)
   李麗麗(リリー・リー)
   徐少強(ツイ・シウキョン)


解説

少林寺を舞台に少林寺の英雄と呼ばれた主人公・至善禅師が混乱の時代を生き抜き、強敵・パイメイ(=白眉道人)との戦いを描くドラマ。監督は「北京原人の逆襲」のホー・メンファ。至善禅師を演じるのは『惡客』『新獨臂刀』「ドラゴンVS7人の吸血鬼」のデビッド・チャン。「キル・ビル2」にも登場したタランティーノ監督お気に入りのキャラクター"パイ・メイ"を演じるのは「キングボクサー大逆転」「少林寺三十六房」のロー・リエ。パイ・メイはこの作品のほか『洪煕官』『洪文定三破白蓮教』でも登場。これら3本の作品すべてにおいてパイ・メイを演じきったロー・リエは、見事なまでの人気キャラクターを確立した。このパイ・メイと至善禅師に馮道徳、五枚尼姑、苗顯を合わせた五人は”少林五老”と呼ばれている。

ストーリー
清朝打倒と明の復興をめざす少林寺の僧侶たち。しかし、武器を持つことを禁じられていた。至善(姜大衛)は、地下にいる管長から峨眉山の文殊道観へ行くように命じられる。重要な任務を任された至善は早速、明の将軍・無塵道人(楊志卿)を訪ねる。そして数ヶ月の間、銃の設計図、製鋼法を集めると同時に武術の鍛錬も行うこととなった。しかし、弟子の馮道徳(顧冠忠)や白眉道人(羅烈)は少林寺の僧は朝廷の逆賊であり、滞在すべきではないと言い放ち、縁を切って出て行ってしまう。
一方、至善は鍛錬に励む。中でも”一指禅功”は1本指で鐘を突くという凄まじい威力を持つ技であった。半年後、無塵道人の元で修行をし数々の秘技を身に付けた至善は少林寺へ戻る。
その頃、清朝皇帝から少林寺を全滅せよとの命令が下され、チベットのラマ僧・広元(江島)らは少林寺を襲撃。これが正に焼き討ちであった。至善は管長を連れて井戸から逃げ出すが、瀕死の管長は南方の広東に行って仲間を見つけるように言い、そのまま息を引き取る・・・。至善は燃え上がる少林寺を後にして少林寺再建を誓うのだった。
逃げた白眉道人は朝廷から道教の最高師範に任命されると、弟子を連れて文殊道観へ行き、無塵道人を殺してしまう。広東の町で騒いでいる李巴山(強漢)を懲らしめた至善は弟子たちを探していた。無塵道人の弟子・五枚(李麗麗)も至善を追って、静塵道観に身を潜めていた。やがて、後に少林十虎と呼ばれた李錦倫(徐少強)、洪熙官(唐炎燦)、鬼脚七(郭恩治)、童千斤(呉杭生)らが至善の弟子となって決戦の準備は整った。至善たちは力を合わせ金鐘罩の白眉道人に立ち向かうのだった…。


「潜入!少林寺・知られざる教練洞窟」ご覧になりましたか?
つい先日放送されたばかりですが、日本人俳優・北村一輝(「龍が如く劇場版」)が実際に少林寺の高僧から少林拳を習うというドキュメンタリーでした。
http://www.bs-j.co.jp/shorinji/
 
こちらの少林寺は河南省に実在する北の少林寺(嵩山少林寺)のことですが、この少林寺に日本の取材班が潜入出来たのはホントに凄いなぁと思います。嵩山少林寺も少しずつオープン化されつつあるのかも知れませんね。この番組の良さは少林寺の修行僧はなぜ闘うのか?という疑問を持つ北村一輝がその答えを探すところにあります。

さて、こちらも少林寺。その名を「少林寺英雄伝」(原題『少林英雄榜』)という少林寺映画の登場です。
今回は、映画と少林寺や中国の寺院について書いてみたいと思います。

まず、邵氏であの恐怖片『油鬼子』を撮ったホー・メンファ監督はどういう訳か少林寺物を撮ることになり、しかも御存知パイメイを使って映画を一本作っちゃいましたね。この映画はパイメイが売りなのかも知れないですけど白髪のパイメイが、こっちも頭が真っ白の無塵道士の弟子なんて設定はちょっと無理があるんじゃない?(笑)まぁドラマなんでいいですけど。
この映画に出てくる北少林寺の焼討ちとか南少林寺の建設の経緯とか混乱に継ぐ混乱の時代で、史実にしても結局のところ今一つはっきりしませんね。
なので、パイメイの年齢設定など細かいことは監督にでもお任せするとして、よく分かっていない、そういった動乱の時代を映画化したのは当時としてもやはり難しいところだったと思います。
それにしても本当にあるのかどうかもよく分からない福建少林寺の跡地はどこにあるのでしょうか?先の番組のように日本の取材陣が福建少林寺を探るドキュメンタリーなんて制作してくれると面白いかなと思うんですけどね。

映画そのものについては私の書いた解説、物語などを参照して戴くとして、映画「少林寺英雄伝」の展開はびっくりする程、駆け足で進行します。(時間も短め。ちょっと物足りないかも??)
少林寺の映画やドラマは本当に沢山ありますが、この「少林寺英雄伝」は洪家拳のルーツ、至善禅師に焦点を当てた珍しい映画になっていると思います。(江島扮するラマ僧なんてのも途中に登場したりしますがそんな奇抜な演出にはちょっと吹いてしまいますけど。)ちなみに有名な蔡李仏拳の”李”の部分の李家拳は、蛾嵋山の白眉道人より拳法を学んだ李巴山が創始したと伝えられています。李巴山は本編にもしっかり登場していますし、他にも”少林五老”や”少林十虎”などの人物たちを交えて、ニ・クアンによる脚本でうまく配置されています。
映画の作りはいかにも邵氏らしい作りであり、例えば崖のある山道のセットを作ってしまうあたりも邵氏らしかったですね。お寺はセットになりますが、今回は地下に隠し部屋を作ったりして、工夫が見られました。

役者については主演のデビッド・チャンは妙な落ちつき感さえ見えましたが、彼なりの落ち着いたアクションで対処して、設定はスーパーマンですが、立派な少林僧をこなしているなぁと感じました。(まぁベテランですもんね。)デビッド・チャンだって少林寺のお坊さんを演じられるんですなぁ。リュー・チャーフィと比べるといつもニコニコのお師匠様で可愛いらしさもありました。厳しい目を持って見れば一つ一つのアクションはゆっくりとしていて迫力に欠けるかも知れない。ティロンのように達人クラスの腕前なのか、それともジミーさんタイプなのか。
ラストはパイ・メイとの一騎打ちになり、一指禅功で突きまくる様子には何かを覚えました。どうしてそこまでするのか。なぜヒーロー(英雄)なのかと。

考えてみればヒーローは、中国では少林寺を逆賊だと言って官についた白眉道人ではなく、至善禅師や少林寺の僧がヒーローなのです。

しかし、少林寺とはもうオサラバ。デビッド・チャンはどうやらこの作品を最後に邵氏を後にしたようですね。本編を見る限りこれが最後だなんて微塵も感じませんでしたが、そこに役者の根性を感じます。この後、共演した徐少強(ツイ・シャオキン)と揃って"The Challenger"や"The Root"に出演します。この邵氏を去ったときの心境はどんなものだったのでしょうか?専属俳優がフリーになって生き生きと・・という風になったのかどうかはよく覚えていませんがまた新たな道を歩むことになります。ちなみに監督ホー・メンファも邵氏をそろそろ去ろうかという時期で「マッドカンフー地獄拳」やらなんやらと邵氏以外で映画を作っていくことにもなります。(この辺りを研究するのも面白いかも・・・。)

ところで、嵩山少林寺は今では観光客が大勢押し寄せる人気スポットになっているみたいですが、やはり一度は行ってみたい場所ですね。冒頭のドキュメンタリー番組を見てまた余計にそんな気持ちにさせられました。でも、日本にも素晴らしいお寺があります。明の混乱の時代、中国から日本へ渡来した隠元禅師が開いたお寺が京都宇治にある萬福寺です。少林寺とは直接関係無いものの、私はこのお寺へ参拝した時のことをふと思い出しました。人の気配も少なく静かなお寺でしたが、どこか雰囲気が違う…。そうなんです。ここは中国のお寺そっくりに作られている中国風の寺院なのです。中を歩いていると中国にあるお寺に行ったような錯覚に見舞われます。拳法の修行僧こそいませんが寺の随所に不思議な部分があったりするのです。もう何年も前の話ですが、とても良い所でしたね。もやもやとしたものが無くなり、頭の中がスッキリするような、これもこのお寺が持っている魅力なのかとその時感じました。また、十八羅漢がいるということでとても興奮したのを覚えています。日本にはこういったお寺は少ないと思いますが、宇治方面に行ったらまた訪問してみようと思います。そして、遥か彼方の少林寺は遠く離れていますが、中国にある寺院も同じ様な気持ちにさせてくれるきっと素晴らしいところだと思います。

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ジャッキー・チェンとカラテキッドたち

2011-06-05 23:59:45 | ソフト情報

 VIDEO ASIAから"JACKIE CHAN AND THE KARATE KIDS"という英語版の2枚組DVDが昨年(?)出てました。これを実際に見てみましたのでご紹介しておきます。これは「ベストキッド」に合わせた商品になるでしょうか。
いつものように両面ディスクなのですが、2本×2面×2枚=8作品という収録になっています。


収録リスト
1.Young Dragons:Kung Fu Kids
2.Young Dragons:Kung Fu Kids 2
3.Incredible Karate Kids
4.Kung Fu Kids
5.Jackie Chan:The Invincible Fighter
6.Old Master
7.Killer Meteors
8.Kung Fu Cook


 ここから内容を少々。

1.Young Dragons:Kung Fu Kids
『好小子』カンフーキッド
これは第1作ですね

2.Young Dragons:Kung Fu Kids 2
『好小子第2集』「カンフーキッド続集」
(「カンフーキッド2・悪ガキ6人衆」ではありません)
ディック・ウェイが出演した第2作です。
シリーズはパート6まで制作されています。

3.Incredible Karate Kids
これはどの映画なのか非常に分かりにくいですが、『舞拳』(79)や『好小子的下一招』(79)で副監督をつとめたチェン・チューファン(陳朱煌)が監督に回った「キョンシーVS五福星」(87)(原題:『歡樂五福星』)です。「カンフーキッド」「カンフーキッド続集」同様、劇場公開されています。
※HKMDBには現在登録されていません
金帝、リー・クン、ウェイ・ピンアオなどが揃って出演してます。(金帝は監督のお気に入りかも?)

4.Kung Fu Kids

ただ"Kung Fu Kids"だと何だか分かりませんが(苦笑)、カンフーキッドシリーズではなく、もしかして"Little Rascals of Kung Fu"(原題:『臭小子』(80))かなと思われますが、実際は"Kung Fu Kids Break Away"(原題:『三毛流浪記』(80))の方になります。

この"Kung Fu Kids Break Away"はかなり出回っているので容易に見れますが、
『臭小子』の方は見かけないですねぇ。(どこかでリリースされているのかな?)

5.Jackie Chan:The Invincible Fighter
こちらはジャッキーが羅維時代に出演した初期作品8本を集めた「死闘伝説ZERO!!」です。各作品のダイジェストを見るならちょうどいいですね。
ちなみに「拳精」「少林寺木人拳」「龍拳」「成龍拳」「天中拳」「蛇鶴八拳」「新精武門」「笑拳」がみれます(ワイドスクリーン)。

6.Old Master
CSでも放送済みの『師父出馬』(79)。
もはや説明不要ですが、これはジャッキーの恩師・于占元の主演映画になりますね。

7.Killer Meteors
「キラードラゴン流星拳」(76)(「ファイナル・ドラゴン」)
なんと初期プリントが収録されたDVDです。

羅維影業の旧ロゴで始まります

これだけフルで収録されたのは謎ですが、もしかして死闘伝説ZEROに無かったからとか?(笑)

8.Kung Fu Cook

唐炎燦の『イ火(にんべん)頭小子』(製作年度不明。79?)。ジャッキーのお父様がチョイ役出演した映画です。

ジャッキー・パパ

でも蛇鶴のニセ夫人(劉雅英)の方がなんか目立ってましたねー。

ビデオからのコンバート収録で『決鬥死亡塔』などのトレイラーも入ってます。


「カンフーキッド」などシリーズ物を全て揃えるのではなくて中途半端な状態で
いろいろ寄せ集めたDVDにジャッキー初期作のダイジェストをやや強引にくっ付けた形になっていますので当然おすすめは出来ません!
最後のKung Fu Cookは抱き合わせ感が滲み出ています(爆)。

日本の桃太郎とか猿飛なんたら的な子供のヒーローや中国で有名な”自古英雄出少年”や”紅孩児”を紹介した「キョンシーVS五福星」の冒頭にあるような映画が
集まったDVDなんてあったら面白そうですね。でも、このDVDに収録されている「キョンシーVS五福星」英語バージョンではその紹介の部分が見事にカットされていました(苦笑)。ガイジンさんには説明がややこしくなるから要らないのか・・。

 

 

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ワンチャイ天地大乱&谷垣健治トークショー

2011-06-04 23:32:50 | 劇場鑑賞

香港電影天堂SPECIALが閉幕しました。ラストを飾る「ワンチャイ・天地大乱」が終了すると拍手が巻き起こってました!(この拍手にはイベントの司会者の方も感激されていたようでしたね。)

そして、天地大乱上映後に谷垣健治さんのトークショーがありました。
ギリギリの時間で四国から飛んできたという超多忙な健治さんでしたが(天地大乱もどこかで見ていたそうです。)会場は満席に近かったですが、トークの方は共演者のユンファのお話とかジミーさんのモノマネ(?)まで披露されていました(笑)。普通なら最新情報とかに神経がいくと思うのですが(そんなキーワードが出れば拍手喝采!・・ですものね)テーマが「私と香港映画」ということでいつもきっかけとして有名なあの話はきっと出るなぁと思っていました。(よく聞いていないと聞き漏らしちゃいますが、私はしっかり聞きました。)
あと、背中のキズも見せてくれてましたけど、これはやっぱりスタントマンの勲章ですね!!
小一時間でしたが健治さん本当にサービス旺盛でとても楽しい時間でした。どうもお疲れさまでした。こんなイベントをまたやって欲しいですね。

ワンチャイ天地大乱も久々に見たのですが、こちらもかなり楽しめましたね。
笑いの要素が多くて会場も笑いに包まれていましたね。(仕事の疲れも癒されるというものです。)ドニーは清朝の提督でしたので「孫文の義士団」とは逆の立場になりますが、ジェット・リーVSドニー・イェンはいつ見ても興奮させられますね!
ツイ・ハーク作品は随分久しぶりになりますが、飽きさせない作りなのであっという間に時間が過ぎていました。(やっぱりこの頃の映画はいいなぁ。)
あと、忘れてましたが「天地大乱」にも孫文がしっかり出て来て医者として描かれていましたね。(孫文を演じたあの俳優さんはなんて人なのかな??)

ちなみにこの天地大乱ではデビッド・チャンも途中死んでしまいますが重要な役を演じ、好演してましたね。・・・という訳で(笑)、デビッド・チャンの79年製作「少林寺英雄伝」の記事も後日アップしたいと思います。

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孫文と辛亥革命 その2

2011-06-03 23:59:16 | その他・研究

先週は「カンフーパンダ2」がアメリカ本土など世界各国で公開され、あちらの公式サイトを見るとfacebookのいいね!数が400万超とものすごい数字になっているみたいですね。(これは1+2の数字?)http://www.kungfupanda.com/
日本は少し遅れて今年の夏休みに公開予定ですが、アニメって事で日本語版も用意されると思います。
http://www.kungfupandainternational.com/intl/jp/
そうなるときっとジャッキーのボイスアクター石丸さんの出番になりますね。アニメだからって軽視は勿論しませんけど有名スターも起用したりとかアニメ大国日本にも負けてはいられないというアメリカ・ドリームワークスの意地も感じますね。石丸さんにはジャッキー同様、いつまでも現役でいてもらいたいです。

さて、今回書きたかったのは前回の孫文&辛亥革命の続き、その2です。

今回は映画「1911」の背景などについて考察してみます。ジャッキーが歴史上の人物を演じるということでどうしても演技力に期待しちゃいますが、ピーター・チャンの「孫文の義士団」という映画がかなり良かっただけに「1911」の方もどんなテーマを秘めてるとか、どこまで迫力のある映画に出来ているかなどにも注目したくなる今日この頃であります。

ではここでほんのちょっとだけその歴史、史実の方の確認をしておきますね。
映画がどんな風になっているのかについては実際に目にするまで無論分かりませんが、史実の要点を簡単に解説してみますので映画の参考にでもなれば・・・。(注意:映画を見てから知りたいという人は↓を読まないでください)

ジャッキーが今回の映画で演じるのは黄興(こうこう)という人。この人物に少し目を向けてみましょうか。
辛亥革命の本を読んでいると普段あまり使わない聞き慣れないちょっと難しい言葉とか沢山出てきますね。ではその用語の中から少々解説を。
まず、蜂起という言葉が頻出すると思います。これは反乱とか叛乱の意味ですが革命運動を表すときによく使われるようです。つぎは“武昌蜂起”。武装蜂起なら何となくわかります。でも突然出てくる、武昌蜂起って何なんだよって頭の中を駆けめぐりますが(苦笑)、これは武昌という土地で起こった蜂起の意味でした。わかってしまえば、なーんだってな感じになっちゃいますがこれで少し飲み込みも早くなったと思います。
黄興という人は辛亥革命のリーダーの一人でした。辛亥革命という名前は清朝が滅亡した1911年の干支が辛亥だったので辛亥革命と呼ばれます。
革命を起こしたグループは3つあり、孫文の興中会、黄興の率いる華興会、章炳麟(しょうへいりん)の光複会の3つからなります。ちなみにこれらのグループは地下組織であり秘密結社の要素が強いのですがいまだその詳細はわかっていない部分が多いとされています。
まず最初に動いたのは孫文で、1905年には日本へも来日して様々な活動していました。いざ革命をするにはどうしても1つのグループでは困難なので3つの会派が結集する必要があったのです。そこで新しい同盟組織”中国同盟会”が結成されますが、やはり孫文が頭領になるには第2の人物、即ち黄興の協力が必要だったのです。黄興は日本で孫文と会い、孫文をリーダーとして認めたのです。彼がいなかったら革命はどうなっていのか分からなかったでしょう。

1874年、湖南省長沙で生まれた黄興は本名を黄軫(こうしん)と言いました。革命活動をするにあたり名前を黄興と変えたそうです。彼は5人兄弟の末っ子で、面白いことにカンフーの練習にとても熱心だったと言います。(まるでジャッキーみたいですね!)彼は18歳で結婚してその後、2児をもうけていました。武昌にあった最高学府・両湖書院で学びながら日本へも留学して、この留学を期に革命家として開眼するのです。黄興の出身地・湖南には情熱的な人が多かったそうです。(あの『截拳鷹爪功』で唐炎燦が演じた人物・左宗棠も湖南出身でした。史実では彼も激情家だったのです。映画でも左宗棠の性格が巧く表現されていたと思います)ここの土地の人間とはケンカをするなと言われるほどでした。義和団の乱の頃、清はロシアから七ヶ条の要求をされます。これは一部の省をロシアの勢力圏とする条項でした。そして1903年、日本への留学生だった黄興は反ロシアの集会に参加したのち、上海に移動します。日本より自国で運動すべきだと悟ったのです。上海で教員となった黄興は革命運動をしながら名前を広めていきました。留学生と秘密結社との間に亀裂が生じないよう配慮したりして誠実な人柄で人々から尊敬されていた黄興は秘密組織・華興会のリーダーになったのでした。
しかし、清政府から逮捕命令が下り、日本に亡命しました。1905年7月、横浜に来航した黄興は宮崎滔天を介してようやく孫文と初めて会うことになります。この時、同盟を結んだのです。その後、孫文が革命資金調達を諸外国で展開している頃、一切の軍事を託された黄興は蜂起準備などのため香港へ向います。広州での武装蜂起失敗などを経て、1911年10月10日、武昌蜂起が起こりました。これにより300年続いた清はついに滅亡する事となったのです。

史実をみる限り孫文たちは革命運動、資金集めなどに奔走し、日本や東南アジアを何度も渡航して(孫文はマレーシア、サイゴン、シンガポールそしてヨーロッパなど諸外国へも)目まぐるしく見えますが映画という限られた短い時間の中でこれらを事細かく再現するのは無理がありますし、悠長にそんな細部までの描写は必要ないと思います。しかし、映画では史実も踏襲しつつ、ジャッキーをはじめとするアクター諸氏がどんな工夫をしてみせているのかとてもワクワクさせられます。

黄興はクリスチャンだった孫文と衝突したりして内紛もあったそうなんですが、リーダー3人の人間模様はどんな風に描かれるのでしょうか。辛亥革命は、孫文が現場から遠く離れていようともその指揮官としての指導力が発揮され成し遂げられたのですがそのリーダー孫文にしてもケンカ番長・安部氏が著書で論述していますようにその実体はいわゆる洪門の人でもあり、他にもバツイチ、短気な性格、そして収賄容疑と人間臭さ、多様さが当然ながらあったりする訳なのでドラマなんかももっと作られるかも知れないですね。(作られるにしても日本への輸入はいつも遅いんですが・・・) ほかにも浅井三姉妹じゃなかった(笑)、あの「宋家の三姉妹」も孫文に大いに絡むストーリーでありますし(そういえばこれってミシェール・ヨー、マギー・チャンという豪華なキャストでしたね。これは探さねば!)「1911」も今からとっても楽しみなのですが、まだ間がしばらくあるのでそういった関連作品なども見ながら秋のロードショーを迎えたいと思います。終

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