電影フリークス ~映画のブログ~

電影とは、映画のこと。その映画を一緒に楽しみましょう。

『鐵掌旋風腿』のつづき

2014-08-16 13:55:39 | 映画のスターたち

『鐵掌旋風腿』の面白さをいま実感しておりますが、何が面白いって、この映画、大変なシロモノだったのですよ!
よく考えてみたら、まるで後年の功夫片を予期していたかのように私の好きなシーン、情景が満載ではありませんか。

例を挙げると、謎の老人、夜の焚き火、薬の調合、秘伝書の伝授、主人公の特訓風景などになります。ここまで揃うことはなかなかありませんし、況してこの『鐵掌』が作られた時期となると尚更です。ドラマが展開される場所も、カジノや河原といったシーンが出てきます。すべてがきれいに揃った形、簡単に言えばお手本の映画のようなものですね。

この映画の脚本を書いたのは華台忠という聞き慣れない名前の人物ですが、これは監督した黄楓が名前を変えて兼任している可能性があるのでしょうね。いかにも取って付けたような名前ですし。

ストーリーは復讐劇の構成ですが、単純ではなく、その出来栄えは見事ですね。この映画を作り上げた黄楓監督やサモ・ハン、他のスタッフの功になるのでしょうけど。そのスタッフに期待されて主演したスターたち、その中の一人、チャン・イーは俳優として『鐵掌』という作品で主人公を演じきりました。が、武道の腕前はかなりのものだったらしいので、本作ではあまり手応えを感じなかったかも知れません。英語のプリント、つまり海外向けの表記ではアンジェラ・マオがトップに位置づけされ、海外ではそういう形でのセールスとなっていることがあったりして、同じ学校出身だとしてもチャン・イー自身が何かを感じていたとも思えてきます。(この映画の出演後の彼の様子からの想像になりますけど。)

そして、ここから前回のつづきになりますが、この映画に出てくる白鷹がコロコロと掌で回していた小道具にちょっと注目してみます。

 コレ。

どこかで見たことありますよね?(笑)。
そう、これは『蛇鶴八歩』(1977)にも登場した小道具ですね。

この球が『鐵掌』に出てきたときに、このあとどうなるのかな?と正直、心配になりました。(心配というか動向が気になりました。)

結局、『鐵掌』ではその後、この鉄球を使う訳でもなくボスの白鷹演じる東谷は倒されるのですが(苦笑)、『蛇鶴八歩』ではご存知の通り、主人公・徐英風がラスボスの金剛にこの球を使ってハデな効果音(ここがミソ!)とともに太陽穴をはじめとする急所攻めをした訳なのですが、あれは劇中登場したアイテムをラストで効果的に利用するという映画的手法がまんまと成功した例ですね。70年代の作品を見ていると、そういったアイテム効果が後になってくるにつれて顕著になってきます。この映画の作られた72年頃ではまだそんな描写はあまりなかったように思います。

さて、この映画の話に戻りますが、気になる出演者はと言いますと、韓国ロケということで見慣れない女優2名もそうでしょうけど、現地で調達したような人物が出てきますね。


例えば、この男。金男一。
確か『烈日狂風』でも見た顔なのですが、名前が違う。別人なのか?

ちなみにチャン・イーを支える王霜霜役で好演した呉京兒は20本以上の映画に出演しているとKMDbにも記載されていますが、女ボスの方はどうも引っかかりませんですね。呉京兒の役は日本語ではシュアンという名前になっていましたが、霜霜と書いて英語だとスペルがHsuang Hsuangと書くようですので、それがシュアンという役名につながったのでしょうか。あと、老道士の俳優は、誰だか不明ですが、朴金植という役名から韓国人なのでしょうね。

こんなメンツを起用するというのも面白さの要素の一つだと思いますが、何を盛り込めば魅力がアップするのでしょう。黄楓(ファンフェン)氏の映画作りを真面目に辿っていけば、功夫片はこうであれば楽しく、強く、エンターテイメントとして完成させられるのだと思えてくることでしょう。黄楓はちょうどこの頃から成功片を撮るようになり、『合気道』(アンジェラ・マオの女活殺拳)なども作っていく時期であります。 

折角なので、ほかの『蛇鶴』との共通点も解説してみましょう。ロケ先についてですが、韓国の河川など特定の地域でロケを行っているという共通点があります。(これはちょっと意外でしたね。)

下の写真を見ていただきたいのですが、赤くなっている部分、赤マルのところを見ると同じ場所であることが分かると思います。(右:鐵掌旋風腿 左:蛇鶴八歩)

(←画像をクリックして拡大)これは韓国のどの辺りになるのでしょうか。

これら映画的に似ている部分が見られます。偶然なのかも知れませんが、有名なロケ地とかだったりするのでしょうか?もちろん『鐵掌』が祖先に当たりますから、誰かが後の『蛇鶴』製作過程で、ロケ地も含めて大いに(積極的に)参考としているのだと思います。撮影師もその一人だとは思いますが。

そして、未成熟ながらまだまだ『鐵掌』には見るべきポイントがありますね。後半、謎の老人が現れます。主人公・世豪は、山中で見かけた怪我を負った老人を助けたことで、老道士から「先天太極譜」なる秘伝書を伝授されます。つまり、秘伝書というアイテムです。これが秘技”鐵掌金刀”を繰り出す超人に成長させたのです。修行を終えた世豪は無敵となり、敵をあっという間に片付けていきます。

功夫片にはこうしたスーパーテクニックも時には必要ですが、人間VS人間のぶつかり合い、対決が必須となります。対決の面白さとは、見せ方を少々工夫して、海外の面子などを使って固めるような映画的手法、演出となりますね。例えばプロ野球で言えばホームランを量産する助っ人外人のような大物を登場させて対決させます。『鐵掌』では一番の見せ場がド派手なアクロバットを使ったアンジェラVS日本人武道家の対決となっていましたが、これはどちらかと言うとプロモーションですね。この映画では役名すらも無い端役のブルース・リャンがチャン・イーと対決する場面があって、その直前にブルース・リャンの顔が一瞬アップになり時間的にはとても短いものですが、思わず息を止めてかなり見入ってしまうということもあったりするのですが。

『鐵掌』の製作プロは正確には嘉禾ではありませんが、嘉聯影業(ゴールデン・フィルム)という会社(設立は1971年7月16日)が製作(=出品)しています。より完成度の高い70年代後半の嘉禾作品ですと、(例えば同じ黄楓作品なら77年の『四大門派』等々・・。)それには遠く及びませんが、前述のようなキャストを採用しています。では実際に『鐵掌』で張翼が誰と対決していたかという点に注目してみましょう。

対決という定義がムツカシイのですが、当サイトでは基本的に「瞬間的にサシでの勝負となる状況、又は、役のある者同士の対峙、一部例外あり。」と定義します。勝敗は途中の結果も含めたいところですが最終的な結果のみとしておきます。
張翼は設定上、主人公なので当たり前ですが殆どが勝利となります。ちなみに共演という言葉・単語とは明確に異なります。あとから継ぎ足したフッテージで無理やり同じ映画に出演とかっていうケースも多々ありますが、現場に両者が居合わせなくては共演したとは言えませんね。また対決がないのであれば単なる共演だと考えます。

ただ共演というだけなら機械的に検索出来るかと思います。しかし、実際の対決は?となると、世界中どのデータベースを見回しても見られないと思います。そこで、こんなデータを整理してみました。その前に注意したいのは勝敗の結果ではなく、誰と誰が対決したのかということが重要であり、そのデータを整理、蓄積することを目的としています。

■対決リスト(◎:勝利 ×:敗戦 △:引き分け)

張翼(世豪)◎ VS サモ(洪)×
アンジェラ(田麗英)◎ VS サモ×
金男一(石平)× VS 錢月笙(文田一郎)◎
張翼◎ VS 金男一×
柳阿娜× VS アンジェラ◎
アンジェラ◎ VS 錢月笙×
張翼◎ VS ※ブルース・リャン×
白鷹(東谷)× VS 張翼◎
アンジェラ△ VS 張翼△

最後のアンジェラVSチャン・イー。結果はどうであれ、これに尽きると思います。邵氏で活躍してきたチャン・イーがアンジェラと対決です。この後の映画でもあったのかどうか、今後順に見ていこうと思いますが、複雑な心境だったと想像できます。

そもそもチャン・イーはデビューから在籍した邵氏を離れる時、親交の深かったジミーさんとともに嘉禾へ赴いたそうです。(嘉禾の最初の映画は日本でも劇場公開された「新・座頭市破れ!唐人剣」ですね。)。チャン・イーは、その嘉禾で何本か映画に出演した後、この『鐵掌』で功夫片の主役を手に入れたのですが、会社的に受け入れられなかったのか、本人の問題なのか、黄楓の許、つまり嘉禾を去ってしまうのです。

チャン・イーという人はアンジェラがそうしていたのとは逆に特定の監督に恩義を感じたりしなかった人だったのでしょうか。

香港映画のスターたち・・・・・・・。
今回は特別な理由がある訳ではありませんが、俳優チャン・イーを取り上げました。いかがでしたでしょうか?せっかくですのでチャン・イーについては今後も引き続きシリーズ化して記事を書いていきたいですね。

次回はどうしましょうか。今回の記事に出てきたキーワード。例えば”蛇鶴”といえば・・・、そう。もうひとつ”蛇鶴”という名を冠する作品がありましたね。この作品も確かまだ記事を書いていなかったと思います。しばらく更新を停止していましたので、その間にいろいろ調べた内容なども忘れずに書いておきたい記事などもあります。”蛇鶴”ネタについては、また近いうちにということで、次回はどうなるのか??ですが、どうぞお楽しみに!

 

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おまけ:この映画の各メディア、各バージョンをチェックするという作業もやっていますが、先日たまたまですがこんなのを見つけました。最後に出てくる"THE END"と中文の”劇終”と"The End"が珍しく被っていました。国内盤のDVDには無かったのですが、こんな事になるなんていったいどうしちゃったんでしょうね?こんなミスはあまり見たことはありませんでしたけど、どうやったらできるんでしょうね。

 

コメント
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