電影フリークス ~映画のブログ~

電影とは、映画のこと。その映画を一緒に楽しみましょう。

地獄から来た女ドラゴン

2019-04-30 15:39:00 | 七十年代作品【1972】

こんにちは、醒龍です。

こちらのブログ(gooブログ)をいつも利用させていただいていますが、最近システムが変わってしまい(スマホ用?)、記事が勝手に入力前の状態に戻ってしまったり、無駄な改行が挿入されたりといろいろ使い勝手が悪くなってしまいました。安定稼働するまで、また症状が改善されるまでは記事が読みづらかったりする等、ご不便をおかけするかも知れません。唐突にどうもすみません。

それでは今回の記事ですが、予告しました通りジュディ・リー主演「地獄から来た女ドラゴン」(以下、『仇』)です。

題名に”女ドラゴン”と付けられたのは、ジュディさんの映画が最初なんですよね。カッコいいですね。

この映画のオープニングは割と有名なもので、御存知「黒いジャガーのテーマ」より終盤の部分をカットして(つまりいいトコ取り)編集した音楽です。このシャフトを採用したことにより、他の映画でも使っていると思いますが、やっぱりこの映画こそがベスト・マッチング!間違いなく格が上がっていますよね。

片頭の構成は、70年代後半には良くみられるようになった赤バックの演武です。ジュディさんがスローモーションを交えながらクルクルと踊るように回って繰り出すキックと、束ねた髪の毛をまるで歌舞伎役者のようにクルッと回すなど、女性らしいアクションを披露します。この象徴的な赤バック・オープニングは、カンフー映画に無くてはならない要素の1つだと思います。これがどこから始まったか?という事になりますと、この『仇』ではないかと思うのですが。(間違っていたらごめんなさい)

この『仇』は御存知の通り、馬素貞の映画です。馬素貞の映画というと、龍君兒の『上海灘馬素貞』(以下、『上海』)と、ワン・ピンの『山東大姐(72)』(以下、『山東』)、そして、ナンシー・イェンの『馬素貞報兄仇』(邦題「ドラゴン覇王拳2」。以下、『馬』)の4本が同じテーマ、馬素貞(マー・スーチェン)の女ドラゴン映画なのです。(本当はもう1本あるのですが、ここでは割愛します。)こんな感じで72年は、これらの上海の馬素貞系列が群雄割拠していた時期でした。

特徴は、すべて女ドラゴン・馬素貞と共に闘う青年がいてタッグを組んでいます。そしてマフィアのボス・パイこと白癩痢の俳優さん。これも各タイトルとも多彩でして『仇』ではベテラン俳優の李影が演じてます。この人はヤン・チュンが第7回金馬奨で最優秀主演男優賞を受賞した『揚子江風雲』で、気のいいおっちゃん役を演じてたりしてましたので、起用はそのノリなんででしょうね。

『馬』ではジミーさんの映画でおなじみのマー・チーがパイ(趙正白)を演じています。『上海』では、易原扮する日本人と対決する珍しい功夫片『十面威風』(英題が"Shanghai Boxer"となっているため『上海』の別名として挙げられることもありますが、これは誤りでしょう。)に主演した楊洋(ヤンヤン)が若いパイ役。そして、あのチェン・ホンリエが出演しているのですが、少しアレンジしてあってドンデン返しが待っています。

そして最後、『山東』が趙強(チャオ・チャン)。『仇』では下っぱの子分だったのが、『山東』では出世してボスのパイ役に。この人、目がギョロっとしてて三星堆の銅人像みたいな顔(失礼)なのですぐ分かると思います。

それでは、簡単に映画をそれぞれ紹介しておきますね。

まず『馬』は死んだはずの馬永貞が生きていたとするストーリーです。これはこれで面白い話だと思いますが、やはりジミーさんですのでね^^。監督は、御存知テン・サンシー。このテン監督は36年青島生まれで、台湾ではのちに『英烈千秋』(74)や『八百壮士』などの抗日、愛国映画を監督、量産し、愛国片の巨匠と呼ばれていましたのでその方があちらでは有名ですね。もともとは邵氏で『大醉侠』(66)の脚本、監督補から映画人としてスタートしました。映画が作られた72年当時は一番多忙な時期でこの『馬』と同時に『天王拳』『英雄胆』の計3本の映画を同時進行で撮るほどの多忙ぶりだったそうです。この多忙な時期にはジミー出演作品も多く、見るべきものが多いですね。(愛国片はあまり観ませんが・・・)

そして『上海』。こちらは、星華公司の専属で看板女優だった龍君兒がヒロイン。兄・永貞の友人役で、聞江龍(マン・ゴンロン)が相手の青年・シャオホウ(嘯虎)役。デビューして間もない彼女がなかなかの演技力を発揮していて、シャオホウに会って事の事情を聴いて、兄の復讐を誓う場面が非常に丁寧に描かれており、馬素貞ものとしてはまぁまぁの内容です。シリアスな内容に彼、ゴンちゃんが入ることにより、随分と映画の雰囲気は変わるのですが、ゴンロンのファンなら十分楽しめる内容と思います。

最後は『山東』ですが、この映画は香港未公開のようですので、やはり一番地味な印象ですね。邵氏から台湾へ渡ったワン・ピンを起用して健闘した映画なのですが、相手役にチャールズ・チンを添えていてもどこか垢抜けない暗いイメージの映画になってしまっているのがちょっと残念ですね。冒頭の馬永貞殺害シーンは『仇』のほぼ焼き直し。舞台も"一洞天"の看板も全く同じ。

ちなみに例の分類法で『仇』は紛れもない香港映画、『馬』は実は香港映画で、『上海』は台湾映画となっていました。最後の『山東』だけ香港での記録が無く、国籍不明でした。(72年10月台湾で公開済み)興味深いのは、『山東』以外の3本の撮影時期が非常に近く、ほぼ同時期に公開されている点です。『仇』が5月末より少し前、月末に『上海』、遅れて翌月に『霸王拳』の正式な続編『馬』が公開されました。この様に同じテーマでせめぎ合いが続き、本家よりも先に作って公開という流れはよくあるパターンですね。この様子を見ると、『馬』も途中でシナリオの変更があった可能性も十分考えられますよね。

72年度の香港興収ランキング(外国映画含む全体)では、カンタイの『馬永貞』が11位でトップ、続いてジミーさんの『霸王拳』が25位となっており、『仇』は56位で3番手、馬素貞ものとしては一番でした。90位に『馬素貞報兄仇』が来ているので、これは『仇』の圧勝ですね。『上海灘馬素貞』は230位と落ち込んでおり、香港では全くヒットしなかった事になります。

以上、それぞれを簡単に解説してみました。でもやはり『仇』がマスターピース。ヤン・チュン夫妻の映画作りの巧さに圧倒されますね。同じテーマの映画がいくつかある中で実はウマづらの蔡弘(ツァイ・ホン)がこの系列で最多出場してます。(どの映画のどこに出ているか探してみてください)

それから主演男優の楊群(ヤン・チュン)について。この人はやはり「金瓶梅」での西門慶とか、古くは郭南宏先生の武侠片『劍王之王』(これも凜々しかった!)、そして「燃えよデブゴン」とまぁ要所要所に現れますね。あと、忘れてならないのは「プロテクター」ですね。とてもかわいらしかったムーン・リーの父親役で、もうこの頃は『仇』のような血気盛んな青年ではなくって、素敵なおじさまとしてチラっと出演されていましたね。

まぁとにかく芸歴長いですから出演作はいっぱいありますね。奥さま俞鳳至(フローレンス・ユー)も映画人ですが、詳しいプロフィールはグーグル先生に聞いてみるのもいいかも知れません。このご夫婦で映画会社を新たに設立して映画を作ることになっていったんですね。会社の名前には"鳳"の字が付いています。

奇蹟的ニュース映像、鳳鳴影業の設立当時の様子はこちら



鳳鳴影業では題名に漢字1文字を使うシリーズを何本か製作します。台湾の資料では71年に設立、『仇』の写真とともに紹介されていました。このあと、日本国内でもビデオ化されたことのある『忍』(これも賞を獲ってます)、そして『浪』と、題名が1文字という映画はあまり多くはありませんでしたので、ここに何かこだわりを感じますね。

日本での反響をネット検索してみると、当時テレビで放送された時のことを覚えていて(しっかりエアチェックも!)それをブログ記事にしている女性の方もいたりして、女ドラゴンとして日本で紹介されたジュディさんはさぞかし魅力あふれる、崇高な存在だったと想像出来ますね。

私、醒龍は幼少期で劇場はもちろん、テレビでもまだ見れる年齢ではありませんでしたので、『仇』を見たのは海外のDVDが最初でした。もちろんジュディさんの事はしっかり書籍で頭に焼き付けていますのでね(笑)。例えばドラゴン大全科や芳賀書店のシネアルバム・ドラゴン大全集など、これらを何度も眺めることによって擦り込んでいきました。

このシネアルバムにはいろいろ思い出がありますね。後ろの方がスチール写真が多くカラーページが少ないというのも、今となってはこれで良かったと思えてきます。「カラテ愚連隊」のページで黒いグローブをした主演のカン・ヤン(原文ママ)という人が印象的で、当時の独特なカナ表記(by日野先生)で名前を擦り込んでいくのですが、実はこの人がフォン・ハクオンであることを随分とあとになって知ることになります(苦笑)。

関係者であれば、そういったスチール写真を沢山持っていて、それを本に載せるのが可能だった時代だったんですね。よくロビーカードの写真も使われていたと思いますが、それらの資料を集めて編纂することにより素晴らしい内容の本が出来上がり、それを憧れの目で見つめていた子供がここに!

そのドラゴン大全集の巻末がドラゴン・レディの章となっていて、その最後を飾るのがジュディ姐さんでした。名前はよく知っていても当時はなかなか出演映画を観る機会なんて、ほぼ無かったんですよね。驚異的な写真が大きく載っていた『神環』という映画は、おそらく幻の映画であって残念ながら現在でも観ることが出来ないままですね。でも、そんな映画があった方が神秘的でいいと思います。

『仇』ですが、実際の映画はこんな展開です。

山東人の馬永貞(マー)は、やくざ者たちの組織が勢力争いする世界、上海へ。
ある日、ボスのパイが取り仕切る町の茶楼"一洞天"に1人でやって来たマー(唐威)。パイの部下たちは一斉にマーを取り囲み手斧を投げつけ、無惨に殺してしまった。

一方、飯屋で働くファン(役名:范篙頭。ヤン・チュン)はこの町に住み、同じ店で働く仲間のシャオ(役名:小楦頭。王若平)も兄貴分のファンを慕っていた。
兄殺しの犯人を探しに列車に乗って遠くから来たばかりの主人公スーチェン(ジュディ・リー)は、その店に入ってゆく。
子分を連れて暴れ者・リャン(役名:梁福。趙強)が店にいやがらせにやって来たが、腕っぷしの強いファンは、彼らをすぐに追っ払い、スーチェンを助ける。

近くで積み荷を運ぶ仕事の元締めルー(役名:羅昆。祖勃林)が労働者たちをこき使っているのをファンがやっつけると、働く者たちは皆、歓喜した。

ボスのパイ(李影)は、使い手の用心棒(役名:吐血四官。林有傳)を雇っていた。
リャンとルーは早速ボスに騒動の元、ファンの相談へやって来た。何とかしてファンを倒そうと企むパイ。
リャンたちは、たまたま道を通りかかったスーチェンに襲いかかろうとするが、コテンパンに逆にのされてしまった。そのまま手下の者たちの様子を探るスーチェン。
そしてパイは、町人たちを殲滅させようとし、シャオはファンの母と妹を助けられず、カジノ店主ツァオ(役名:曹龍。薛漢)に切られそのまま二人とも死んでしまった。シャオは駆け付けたファンに事情を話すが息を引き取った。そこに現れたのはスーチェンだった。ここで誤解を生み二人は分かれてしまった。

店の前でパイを見つけるや1人乗り込んで勝負に出るスーチェン。
前を通りかかったファンはスーチェンに協力し、パイの一味に共に挑んでいった。
ファンは白人の殺し屋の銃で撃たれ重傷を負う。スーチェンはファンの胸に撃ち込まれた銃弾を取り除く・・。

その後、ファンは倉庫で敵のワナにかかり手斧を打ち込まれ、ついに倒れてしまう。
場面は変わり、倉庫へ向かうスーチェン。しかし一足遅く、絶命していたファンを発見する。そしてスーチェンは泣き崩れ、やがて怒りを爆発させる。
雷が鳴り響く晩、兄・マーとファンの復讐を誓ったスーチェンは1人アジトに乗り込み、憎きボス・パイに勝負を挑んでいった・・・。


"一洞天"という店が最初の舞台となります。"洞天"という名前が付いた中華料理店が日本にもありますね。ここで馬永貞が斧頭党に36本もの手斧を打ち込まれたという設定でした。実際に36本が体に突き刺さっている訳ではないのですが、 ラスト大勢の敵の中に飛び込んでいく姿は圧巻ですね。『仇』はこの場面が実に見事で優れているのです。

この映画は顧問だったウー・ミンシュンの役割が非常に大きいでしょうね。彼の姿はパンフを見ると分かりますが、表紙の裏側にモノクロで大きく写っているのが彼、巫敏雄です。(ジュディさんの左に立っている人です。)

役者としても活躍していましたが、やはり監督業に進出してからの方が、彼の才能が十二分に発揮されていると思います。例えば、後にメガホンを取った「ドラゴンの逆襲」(73)や、「子連れドラゴン女人拳」(73)もそうですね。私が好きなのは武侠片だと『頭條好漢』(71)とか変わってて好きですね。功夫片では「少林寺秘伝拳」(76)でしょうか。これは、ホント名作ですよね。

カンフー・マニアを唸らせる物がこれだけあるんですから、執行導演してる本作『仇』が面白く、ヒットに繋がったというのもある意味当然であったと思いますね。劇中、誤解していたジュディさんとヤン・チュンの二人がやがて協力していくプロットは本当に素晴らしかったです。

私が観たDVDですが、"Queen Boxer"のタイトルで英語版でした。ランニング・タイム84分と短くカットされていました(NTSC)。劇場版は英語版だったようなのでフィルムの再生速度はNTSCと同じでしょう。現在PALで89分のものがあるので、ノーカット版はNTSCに換算すると約93分になります。劇場では88分だったと資料に記載があるため、5分程度カットされていたかも知れませんね。


ということで、今回が平成最後の記事になります。ついに平成も今日で終わってしまいますね。私は昭和生まれで平成、そして新しい元号・令和と3つの元号を通過、実感することになります。来月からはその令和の時代に突入します。昭和の和と同じ令"和"です。どんな時代になるんでしょうか。きっと新しいドラゴン達もまたどこかで現れてくれることでしょう。私はまた継続してこんな記事を書いていきたいと思います。それではまたお会いしましょう。

 


The Avenger(1972)

Florence Yu(D)

Cast: 

Judy Lee

Peter K. Yang

Lee Ying

Tang Wei 

 

  (c)Fong Ming Films(HK)


【作品DVD】

英語音声ショートバージョン ※字幕は付きません。

ノーカット版ご希望の方はドイツのamazonなどで購入できます。(リンクは作成できません)

 

 

【サントラCD】

こちらはデジタル・サウンドです。(Pod cast対応)

試聴は♡マークの右の「・・・」をクリックし、何度か「類似した楽曲を再生」を押すと聴けるかも?!

 

黒いジャガーのテーマ(映画「黒いジャガー」から)
ブラノン・ウインド・アンサンブル
レッドブリッジ

 


無料体験実施中

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

狂風沙

2019-01-04 00:09:56 | 七十年代作品【1972】

こんにちは。醒龍です。

今日はジミー・ウォングの古い映画です。(ジミーさんの72年の作品)

メディアは現在ではほぼ絶滅状態のVCDです。VCDは大抵2枚組となっており、1本の映画が1枚目と2枚目に残念ながら分割されてしまいます。この切れ目が一定でなく、VHSからメディア・コンバートしたような粗悪品のディスクとなっていました。なので価格は安いものが大半でした。当時は大陸盤として多数のカンフー映画がリリースされていました。香港でよく売られていたのは割と品質も良い物でしたが、私はパッケージを見て何が入っているのか分からない大陸盤VCDが好きだったのですw。

ジミー・ウォングのDVDも2タイトルが1枚に収録された格安DVDもよく買いましたが、この『狂風沙』もそんな海外のシリーズに入っていました。こんな映像ソフトは英語音声であるケースが殆どで海外から送ってもらうと、黒いプラスチックのDVDパッケージ・ケースが頻繁に割れていたりしてましたねw。(しかも安っぽいプラスティック!!)幸運(?)にもDVDが見れない事は1度も無かったのですが・・。

現在はかなりご高齢になってるジミー先生ですが、数年前に倒れる前の舞台でのトークショー映像なんかを観たりすると、うれしくなりますね。また元気な姿で登壇してもらいたいものですね。

この映画『狂風沙』は、分類学上ではカンフー映画ではありません。これは民初動作片になります。ガン・アクションがありますから西部劇のような映画と言えるでしょう。原作が台湾の小説家によるもので、同名の小説が出版されています。

エスキモー・ハットをかぶり、『狂風沙』の文字通り、狂ったような強風の砂漠の中を馬に乗って登場するジミー・ウォングはメッチャ恰好いいのです。もちろんジミーさんが主人公で名前は関東山という名です。

共演者には田野(ティエン・イエー)がいます。この田野さんはジミーとの共演が本当に多いですね。ぴったりの好敵手です。貫禄のあるお顔をしてるので、この方が出てくると安心します。台湾で活躍されていたので香港の監督作品ではお目にかからない人です。この映画では朱四という冷酷な匪賊の役です。

物語は、十年前に匪賊の長、朱四によって六合幇の老大らが殺害され唯一の生き残りとなった主人公・関東山が復讐を果たそうとします。やがて土地の有力者グループ萬家楼の権力をめぐって内部の闘争が勃発するというストーリーです。後半ではスリリングな展開となり、次々と登場人物が倒れていきます。

中盤でマンディンゴの曲("Invocation To The God's")がかかる場面がありますが、よく見られる1対1、サシの対決です。ここが見せ場ですね。ブーツに何本も差したナイフを抜いて勝負に挑むジミーさんは必見。全編を通して西部劇っぽい展開で結構盛り上がります!

原題にある言葉、Adventureと言いながら何のアドベンチャーなのかと思ったら、フタを開けてみればキーワードは"traitor"(反逆者)だったりするのですが、別名のIron Fistから悪人へ鉄拳を振るう主人公の姿をモチーフとしているのではないでしょうか。後年、映画を買い取った某カンパニーが補足する意味でIron Fistを付け加えた可能性もあるでしょうね。

ラストでジミーさんと死闘を繰り広げるのは、劉維斌(リュウ・ウェイビン)という珍しい俳優さん。ジミーさんは血を大量に流しながら彼のナイフ攻撃に耐え、形勢逆転の機会を窺います。どんなに斬られようとも不死身のジミーさんは立ち上がって敵に向かってゆくのでした。

 

『狂風沙』(72)

The Adventure (AKA The Iron Fist Adventures)

Jimmy Wang Yu

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

香港過客

2010-12-05 10:08:18 | 七十年代作品【1972】
本日は邵氏の『香港過客』(72)について書いてみます。
英題をStranger in Hong Kong と言い、香港に来た旅人の話という様な事は想像できます。
しかし、この映画は以前から(って、たぶん中坊の頃だけど・・)どんな映画なのか気になっていましたけど長い間情報も得られず今まで内容は全くわからない映画なのでした。

やっと見れました!

また、以前こちらの記事にも怪しいタイトルであることを書きましたが、
この映画はジャッキー・チェンのフィルモグラフィーに掲載されたことがある作品でした。
本当にジャッキーは出演していたのでしょうか?

この映画を実際見てみると、ジャンルとしては犯罪映画になるのだと思います。ストーリーはこんな感じです。

飛行機で香港へとやってきた男・張山(金峯)は妻(鄭文静)と子供を連れて観光中、実は観光客を装っていた女(丁珮)の事が気になってその女の事が頭から離れない。その夜、観光客のバスがホテルに到着。
ホテルのエレベータの中で女からルームナンバーを書いた紙を渡される張山…。
女の誘惑に負けてベッドイン。そして女と同伴でポーカーを楽しむ男だったが、賭けに負け乱闘騒ぎとなった。
犯罪組織のボスのところへ連れて行かれた張山はルビー強奪計画の実行を強要され抵抗するが女との情事の証拠写真を突きつけられ犯行に及んでしまう。実は職業柄、金庫破りの名人だったのだ。
こういうのよくありますよね。
厳重な警備を潜り抜け目的の巨大ルビーの置き場への侵入に成功。


ルビーが置いてある金庫のダイヤルを必死に回す張山。そして金庫のロックを外した途端、張山は逃亡を図るのだったが・・。

一見何の変哲も無い男が旅行中に大ハッスルしてルビーを盗むという展開でした。
(監督は桂治洪と劉芳剛)主人公がホント逃げまくっちゃうんですけど
飛行場のシーンで始まり、最後も同じ飛行場のシーンで終わるという
コメディっぽい演出は昔の映画らしさを感じますね。最初と最後にあの田豊が出てきます。
主役の金峯の映画なんて殆ど見たことがありませんが60年代には邵氏などで活躍した俳優さんでしょうか。(昔出てた香港スターの本にいかにも載ってそうな感じ??)
また、当時のファッションリーダー、ベティ・ティンペイが魔性の女を演じていたのが印象的でした。

そして、ジャッキーの出演に関して。
残念ながらジャッキーは出演しておらず、その隙は全く無いようでした。
この映画の武術指導は鹿村。(若き日の染野さんも端役で出演なさっていましたけど)
(右:染野氏)
それらしいシーンはカジノでの乱闘シーンがある程度のもので映画の内容からも
ジャッキーが出演するような映画でないことが分かりました。
長年の疑問もこれでスッキリしました!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

硬漢

2009-11-06 23:40:01 | 七十年代作品【1972】
劇場公開された香港映画を見るのは楽しい。私のお気に入りは「吼えろ!ドラゴン起て!ジャガー」「空手ヘラクレス」「カラテ愚連隊」などである。まだ見てない映画もいっぱいあってどれも見たくなってしまうけれど、これが趣味なんだから仕方がない。その映画がいっぱい載っているチラシ大全集なんてもう目の毒である。

74年に劇場公開された”ドラゴン映画”はシネアルバム1975によれば27本もあった。当時の宣伝費も含めた総費用が1本あたり約3000万円と少ない方であった為これ程の本数の映画が公開出来たのだそうだ。単にブームの波からと思っていたがこんな話まであったとは今まで知らなかった。全く客が入らなかった映画から興収ランキングで上位に入る作品まで満遍なく輸入され、そこそこの売上げだったのだから凄い。

その中の1本に「危うし!タイガー」(以下、「硬漢」と略す)があった。
巻末のフィルムリスト’74はアイウエオ順に並んでいるので最初に出てくる。
ここの製作プロダクションの記述は誤りで富國影業の製作である。

タイトルカット

またこの本には当時の上映された状況について興味深い記述があった。
以下引用。

封切られた中国功夫映画は日本語に吹き替えられた3本と原盤のまま上映された1本を除きすべて英語版である。

というものだ。確かに日本語はいくつかあったが、原版とは北京語のままという意味なのだろうか?
また日本の時代劇との違いなどについても触れられている。復讐ものが多くてネチネチしていて陰湿であり、また東南アジア諸国は暴力や残酷描写には検閲がうるさいからマカロニウエスタンほど残酷さを徹底できない、とあった。確かにそうだ。私が現在見ているものも残酷過ぎず鑑賞には丁度合っていて都合がよい面もあるのだと思う。

公開当時は表に陳星(サイン入り)、裏面が香港空手スター名鑑と称したミニポスターが配られていたようである。このスター名鑑は読み始めると面白くて止まらない内容だ。(山形の香澄堂書店さんどうもありがとうございました)
これに載っているスターの名前を是非書いておこう。

チェン・シン、ブルース・リー、チェン・カンタイ、倉田保昭、チャーリー・チャン、リー・フォアマン、ジミー・ウォング、フーシェン、ブルース・リャン、カオ・チャンの10人。
この年代(74年)のスターだとこうなるようだ。(うーん、納得。)あれ??カオ・チャンだって。マニアックではあるが、厳選してうまくまとめられておりこれを書いた人も偉いと思います。

ところで米・伊合作映画「ウエスタン」(68)を御存知だろうか。
これは復讐を代行するガンマンを描いた西部劇でワンチャイじゃなくてアメリカの方のシリーズ第1弾であった。「硬漢」にはこの「ウエスタン」のサントラ(モリコーネ作曲)からBGMが流用されている。
サントラCDはココ↓(試聴可)
http://www.neowing.co.jp/detailview.html?KEY=BVCM-35317

この「ウエスタン」にはブロンソンが出演し、監督のレオーネは先に出来上がったモリコーネの曲をイメージしてブロンソンの映画を作り上げたという。富國影業の「硬漢」製作者たちはどうだろうか。ブロンソンのイメージをそのまま陳星に当てはめこれを具象化したのではないだろうか。そして流れるテーマソングはシャイアンではなくて最早チェン・シンのテーマと言ってもいいほど良くかかっていた。

庄司じゃありません。陳星です!


以下は各スタッフについて。
監督は江洪である。70年代を中心に活躍したこの人の名前を聞いたことがあると思うのだが、この「硬漢」をキッカケに当時新人だった張力との関わりが多くなり、張力は江洪監督作品に毎回出演するようになる。江洪は不思議な事に「硬漢」から突如監督として現れた。この名前はこの映画が作られた時点ではまだ誰も知らない名前であった。
それもそのはず実は邵氏で脚本を書いていた人物だったからで「キングボクサー大逆転」『埋伏』『金毛獅王』などの脚本を担当していた江揚、その人なのである。
つまり彼は定評のあった脚本家であったのにそれを隠し、監督昇進にあたって江洪と改名してこの映画の監督を務めたのだ。邵氏では「キングボクサー大逆転」の脚本を最後に富國の監督に進出したと思われる。そして映画に初出演した張力を育てることを決意したのかも知れない。

また、副導演には趙魯江の名が・・。こちらではお馴染みの魯江ですが、彼も邵氏から富國への移籍組だったんですね。

武術指導は袁和平で、単独の武術指導としてはこれが最初の作品ではないだろうか。(とは言っても袁祥仁も出演しているので、どこまでが単独でどこまでが共同なのかの解釈が非常に難しい。。)また、クレジットでは火星がLeoと表記されているのが?なのと、陳雄(英名:Kent Chen)が誰の事なのかが不明であった。(これもパズルね^^;)

「硬漢」は御存知"シャフトのテーマ"に乗ってはじまる。

民国初年。劉山虎(孫嵐)をボスに据えた麻薬密売組織を壊滅させる目的で秘密捜査官・陳強(陳星)は警察局長から潜入捜査を命じられた。陳強は刑務所に潜入し計画通り組織の唐龍(山怪)に接触。唐龍には全く怪しまれずに二人で脱獄することに成功した。

小さな港のある村で陳強は腕の立つ青年張平(于洋)に会う。張平たちは埠頭に到着した船から荷物の陸揚げ作業をしていた。陳強もその一員となって村に潜伏中であった。作業を取り仕切っていた組織の曹彪(馮克安。馮堅名義)は大牛(火星)に暴行を働き、手下に大牛を片付けるよう命令、乱闘騒ぎになる。そこに張平に続いて陳強が加わってさすがの曹彪も怪力の持ち主、陳強の剛腕にはかなわなかった。

張平が陳強を家に連れて帰ると張平の妹(凌欣)が待っていた。妹は腕っぷしの強い陳強に想いを寄せる。家を去って大牛とも分かれた陳強は突然男に襲撃される。必死に応戦する陳強だったが顔を見合わせると男は唐龍だった。二人は再会を喜ぶが陳強は刑務所仲間の顔を見せ芝居を打っておいた。襲わせたのは曹彪の悪巧みだったが、唐龍は再会に気を良くしこれにより陳強は組織の仲間に入ることに成功する。だが曹彪は陳強を不審に思っていた。一方、陳強の部下の雷峰(張力)も漁民に扮し潜入を開始する。

その頃組織の幹部、方世雄(方野)とその手下(王青)らが密売品を積んだ船で港に到着した。早速出くわした大牛と妹に搦む方世雄だったが、丁度通りがかった陳強に割って入られ蹴り合いを始める。方世雄はボスの劉山虎がやってくると喧嘩を止め皆に紹介されるとアジトへ行く。これで組織の主要な人物はすべて集まった。
その後、陳強は一人外へ出て何処かへ向かう。曹彪が陳強を尾行すると陳強が雷峰と連絡を取っているところを目撃した。

組織の有能な部下曹彪は用心棒数人を手配し埠頭の警備をさせた。
陳強から情報を得た雷峰は劉山虎を逮捕する為、密売の証拠品を船の積荷から何とかして発見しようと試みる。雷峰は敵に見つかってしまうが、大勢の敵を相手にヌンチャクを使って応戦する。この騒ぎに張平と大牛の二人は感づいて様子を窺っていた。そこに陳強もひとり現れた。さらに劉山虎たちも部下からの報告で現場へ急行。陳強の取る行動を監視していた。

陳強は騒ぎを解決させるため、雷峰を倒すフリをし、うまく海中へ連れ込み死んだ様に見せかけた。物影から見ていた張平、大牛の二人は陳強が曹彪の味方になったのを見て不満が募る。陳強が一人になるところを待って張平は陳強に手を出した。しかしその場は駆けつけた妹に止められる。

陳強は人気のない山で雷峰と合流した。雷峰はもちろん無事であった。その夜、陳強たちは証拠探しに倉庫へ忍び込んだ。しかし、これはワナだった。劉山虎に今迄取った行動から捜査官であることを見破られてしまったのだ。雷峰が助けに入るが陳強は捕まり、鎖で縛られた挙句拷問にかけられる。雷峰は大牛に身分を明かし、陳強救出に向かう為、張平の手も借りる。すると方世雄とその部下(王青、袁祥仁) が家を襲ってきた。大牛は殺害され、妹も組織の手下(袁日初)にナイフで刺されてしまう。

その頃、鎖を引きちぎって脱出した陳強は劉山虎のアジトへ向かう。まずは得意技の頭蓋骨割りを浴びせ曹彪は陳強の怪力の前に倒れた。そのまま陳強、雷峰、張平の三人は組織との決戦に縺れ込む。張平は方世雄。雷峰は方世雄の手下(王青)、そして陳強は唐龍が相手だ。死闘を繰り返した結果、一人また一人と倒れていくが、陳強は強敵・唐龍を打ち負かした。最後に残った劉山虎だが、逃亡は許されず陳強に捕まって物語は幕を閉じた。


硬漢の陳星が悪者を倒していく姿はやはりブロンソンのイメージに近い。"鷹爪功"を使うブロンソンもいいではないですか。
陳星も組織と村人の間に挟まれ戸惑いながらも捜査を進めるなんて展開でかなり好演していたと思うのだ。一見、重要でないと思える火星や于洋の妹、馮克安など全ての人物が絡んでおりスムーズな展開もなかなか面白い。

有名なシーン。相手は李超と判明

ただ『蕩寇灘』と似た雰囲気を持つが同じ製作会社でも呉思遠のものとは違う。監督が変われば当然ながら印象も変わる。これは余談だが、ちょっと気になる編集があった。冒頭に波のシーンがあるが、ほんの一瞬だけわざわざ南海影業のオープニングを本編に流用していたのである。こんなことまでするとはある意味凄いことだと思う。

見せ場であるラストバトルは袁和平の殺陣が光る素晴らしい出来。さすがは袁和平だ。『蕩寇灘』と同じBGMで猛ダッシュする陳星も健在である。ラスト近くは中国の有名な山で撮ったそうなのだが、熱気が伝わってくる格闘シーンは微笑ましいものです。現場の気温も相当高く暑そうだがとても見応え、そして感動があると思う。とにかく陳星はサイを持たせたら世界一似合う男(当時)である。(十手じゃありませんぜ。>日野先生)サイが陳星の手に渡るまでの展開も面白く山怪のバタフライソード戦は最も迫力のあった一番の見せ所であったと思われる。
音楽も周福良ワールド全開な作品であることは間違いないところ。このサントラを聴けばその世界にどっぷりと浸れるのだ。
香港では確かに『蕩寇灘』や『黒名単』に比べヒットしなかった(それでも80万香港ドルを叩き出したが)。日本ではこちらが劇場公開されてしまった。やはり『黒名單』などではなく「硬漢」が公開された理由も分かるような気もした。(同じ富國の『蕩寇灘』より格闘シーンが多く全体の質が上がっている感がある。)
また、陳星の代表作として揺るぎない作品と確信できました。
次回は協利作品を取り上げます。ー終ー


 劉山虎め。貴様は許さん!

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする