電影フリークス ~映画のブログ~

電影とは、映画のこと。その映画を一緒に楽しみましょう。

鐵漢柔情

2007-06-29 23:11:16 | 嘉禾電影
ジョン・ウーの最初の監督作品(正確には、あともう一人と共同監督)が「過客」(73)になります。

映画は完成したものの上映禁止となり、嘉禾に売却されてしまいます。ジョン・ウーも嘉禾に入り、自らの手でこれに手を入れます。

しかし、なぜ自ら手を入れたのでしょう?“ジョン・ウーテイスト”が加味されたのは、共同監督した「過客」ではなく75年の改編後で、元は彼が意図しない多少なりとも違った内容だったのでは…?
それは後述しますが「鐵漢柔情」で完成されたのだと思っています。(監督もジョン・ウー1人に変更されています。)ある理由により上映禁止になったからこそ、それをきっかけに「鐵漢柔情」が生まれ、ジョン・ウーが本当に作りたかった映画にした・・のかも知れません。

この映画は、流れ者のユー・ヤンと警察官(劉江)の友情を描いており 「狼・男たちの挽歌最終章」で最高潮に達したジョン・ウー美学の原点だと思いますが、タニー・ティエンとフー・チンの2大女優が競演しているのも注目すべき点ですね。(彼女たちについてはNHK-BS2で放送された「香港映画のすべて第3部」で紹介されました。)

ところで、この映画に主演しているユー・ヤンは、なかなかの好漢だったのではないでしょうか。どこか影のある主役をいくつか演じており、巧い役者だったと思うのです。(しかし彼は私生活の問題が多かったので残念ながら成功とまでは行かなかったようですが…。)
日本では無名の彼の姿を確認出来るのは、たった数本だけで実に勿体無いところです。(「少林寺三十六房」の洪煕官役が一番分かり易いと思います。 )

さて、いきなり初監督作で上映禁止となっしまったオリジナルの「過客」。いったいどの辺が過激だったのでしょうか? 性描写?それとも残酷シーン?
デレデレの石天出演シーンはとても短いです。ここはカットの雰囲気は感じられません。
上映時間は「カラテ愚連隊」が87分。現在見られる「鐵漢柔情」は92分・・。

「過客」の方が約5分短かかったようです。過激なシーンが含まれているからそれを単にカットして後から公開したのなら後者が短くなると思います。しかし「鐵漢柔情」は長い。明らかにレイプシーンがカットされているのは分かりますが、あとから何かを追加しているのは確かでしょう。

結局、完成した映画が上映禁止となった理由は、具体的には馮克安の使った殺人グローブがネックになりますが、子供が真似すると危険だから…というのは、おそらく■●機関の●▲でしょう。ここを若干編集し、ウーらしい部分を追加して完成させたのでしょうか。

しかし「鐵漢柔情」は、正確には「カラテ愚連隊」(つまり「過客」)の再編集版でありますので、これを「カラテ愚連隊」と呼ぶのは、ある程度許せますが、やはりオリジナルの存在を忘れてはならないと思います。私が気に入っている英語題名もそうです。“Farewell Buddy”…という言葉の響きに酔いしれてしまう程です。(これはジョン・ウーが付けたものだと信じています)

「カラテ愚連隊」日本での初公開は74年夏、東映まんが祭りの裏番組として16日間上映されました。上野駅前にあった今は亡き上野宝塚もその上映館の一つ。何と日本語版で上映されたのですが、このとき同時上映されたのがトニー劉永の「電光飛竜拳」で、これも嘉禾から一緒に入って来たんですね。

オリジナル「過客」はどんな映画だったのか残念ながら詳細は分かりませんが、冒頭のシーン(タイトルバック)が違っていること、その後、当然ですが「過客」のタイトルが出るということは分かっています。ラストの描写もおそらくは違っているでしょう。

また、この映画の武師は2人いました。成龍もその1人。オリジナルの「過客」では成龍だけだったと思うのですが、今後も成龍のこの作品における武術指導はきっと注目されることでしょう。

実際、「鐵漢柔情」は衝撃的ですが、派手なアクションシーンよりもそのストーリー、人物の描き方が心に残る映画でした。オリジナル「過客」は幻のタイトルとなっていましたが「鐵漢柔情」が今回この度リリースされると言うことで個人的には物凄く良かったので少しでも面白さを伝えたかったところです。

(6/29修正)

コメント (1)
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嘉禾「鐵漢柔情」&「奪命金劍」発売!!

2007-06-28 23:35:36 | ソフト情報
ついに、ジョン・ウーの「鐵漢柔情」がJoysalesより発売されます。
”これを待っていた!”というファンも多かったのではないでしょうか。
当ブログでは紹介していなかったと思いますので、簡単に紹介します。
これはジョン・ウー初監督作品「カラテ愚連隊」の再編集版です。
素晴らしい内容なので是非!(詳しくは別途)

また、「奪命金劍」は黄楓監督の武侠片ですが、洪金寶が武術指導したことで良く知られています。
こちらで珍珠さんがレビューされています。
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JoySalesから永恆的經典系列VCD(香港版)

■「鐵漢柔情」(6/29発売予定)
■「奪命金劍」(6/29発売予定)

当ブログでも登場しました豊年影業のこちらも発売です!
■「雍正與年羹堯」(6/29発売予定)
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「鬼手十八翻」から「笑拳」へ

2007-06-27 23:51:15 | 成龍的電影
78年の韓国。ジャッキーは羅維監督の元で「鬼手十八翻」を撮影していたものの、途中でこれを放棄してしまいます。

この後、台湾へ向かって「笑拳」(最初は“怪招”が付いていない“笑拳”)を一転してジャッキーが監督として撮ることになるのですが、そこで喜怒哀楽をモチーフとした独自の“エモーショナル功夫”を考案し、見事オリジナルの型を完成させます。確かにエモーショナル~は素晴らしいアイデアだったと思います。

ところで「龍騰虎躍」を見れば田俊や陳慧樓が「鬼手~」に出演予定であったことは明白だと思います。またそこには「鬼手~」における出演予定者の役柄の片鱗が窺えます。

元の「鬼手~」のストーリーは今の「龍騰~」と「笑拳」を合わせたのとほぼ同じだったことでしょう。

勝手ながらもう少し想像してみますと…、
賭事に明け暮れる遊び人の若者阿龍が獣拳鬼手の達人・程と出会う。その後阿龍の父親は謎の男に殺されてしまう。特訓につぐ特訓でついに十八の技をマスターする。町で偶然知り合った程の娘・リンは実は従兄妹で、阿龍の父親を殺した犯人を探していた。鉄の爪・任はその真犯人で、阿龍はリンと協力して任を倒すのだった。(これはフィクションです。)  

半分は「笑拳」に近いものだったと思うのですが、例えば今の「笑拳怪招」で見られる陳慧樓は「鬼手~」で成龍と同じ画面に映っていますが、ほぼそのままの姿で「笑拳~」にも出演しているのですから当然ながら“鬼手十八翻”から“笑拳”へシフトしたのですね。シフトしたので「鬼手~」はもうそれで終わってしまい、たとえ羅維が半年後に「次は醒拳だ!」と言い出したところでジャッキーにとっては「笑拳」が既に完成している訳なので「鬼手~」の続きを撮る気はなかったでしょう。

出来上がった「笑拳」は「笑拳怪招」に改名され、翌年の公開で興業的にも成功したのは御存知の通りです。
完成した時期が果たしていつだったのか。これが大変気になる部分であります。
78年中にほぼ完成している事は容易に想像出来るのですが、まず「鬼手~」が8月終わりか9月初め開始だったとして9月中旬か下旬には台湾へ向かっているのではないでしょうか。
もしかしたら台湾で9月末に公開された「酔拳」がヒットしたこともこの逃亡劇に影響しているのかも知れません。

主演映画がヒットすれば心境の変化もあると思いますし、より羅維との関わりをなくそうとする気持ちが強くなります。
「蛇拳」ではまだ自信が無かったようでも「酔拳」では自信に満ち溢れた演技で手応えを掴んだかのような演技だったと思います。
また、丁度この「酔拳」ヒットを受けて劉家良が「中華丈夫」から酔八仙拳の盗用を訴えたのもこの時期でした。
「笑拳怪招」はこう言った様々な騒動の中、着々と進行していたのでしょう。

ところで、「鬼手~」が中途半端になってしまった為に「陰陽十八翻」「五爪十八翻」「鬼手龍虎闘」など似たようなタイトルのものが次々と現れたのも香港(台湾)らしい現象ですね。

龍方と本当の醒拳については次回に続きます。

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電影フリークス、イチオシの「山東響馬」発売中

2007-06-10 22:26:46 | ソフト情報
JoySalesから永恆的經典系列VCD発売中(香港版)

■「山東響馬」(5/21発売) ※黄楓監督作品
■「中泰拳壇生死戰 」(5/23発売)※黄楓監督作品
■「鰐譚群英會」(5/23発売)
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■「艷窟神探」(6/8発売)
■「刀不留人」(6/8発売)

※ご注意
JoySales盤VCDは、例えば天映娯楽・邵氏出品必屬佳片と比べ、CD媒体そのものが軽量(コストダウン)又はその他の理由等により再生環境によってはノイズが発生しやすいようです。
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龍騰虎躍

2007-06-08 00:45:14 | 成龍的電影

「龍騰虎躍」は86年に日本で劇場公開されました。
(「北斗の拳」と同時上映し、8億円を超える興行収入をあげたようです。)
この時の邦題が何と「ジャッキー・チェンの醒拳」でした。

この映画が本来の「醒拳」でないことは御存知の通りですが、なぜ東映は「龍騰~」を「醒拳」として公開してしまったのでしょうか?

これは以前から(79年「蛇拳」、80年「笑拳」劇場公開の頃)、本当の「醒拳」を劇場公開予定と謳ってしまったからかも知れません。(その後、本当の「醒拳」は未完成となってしまった訳なのにですが。。)


そして「龍騰~」は、もちろん本来の「醒拳」ではないのですが、実は原名が「鬼手十八翻」だったのです(!)。(これは香港で83年に公開された時、副題として”鬼手十八翻”が付けられています。)
なぜ「龍騰~」に改題されたのか分かりませんが、本来は「鬼手~」だったというアピールなのでしょう。

78年、思遠影業の「酔拳」を撮り終えた成龍は、羅維監督の次回作のため韓国へ行きます。
この時、一部撮影していたのが「龍騰~」で見られるものだったのです。
羅維は、これを「鬼手十八翻」として撮影していたはずです。
(まだ「醒拳」という名前は、この時には全く関係ないので当然ながらありません。「笑拳」もまだ始まっていないでしょう。)
「龍拳」で共演した林銀珠も、「龍拳」で成龍に認められ、次回共演を約束してもらいます。
そして、この「鬼手十八翻」で共演することになった訳でした。


本来の「醒拳」については別途触れたいと思います。


【作品DVD】

日本語吹き替えです(珍しい劇場用)。是非とも石丸ジャッキーをご堪能ください!!

醒拳 [DVD]
ジャッキー・チェン
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン

【作品ブルーレイ】
永久保存版の劇場公開テレシネ・バージョン。一家に1枚どうぞ。

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ジャッキー・チェン
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