ずいぶん前から探していた斉藤環「戦闘美少女の精神分析」ちくま文庫を本日書店で入手し、読み始めた。しかし、本書は、「おそ松くんの精神分析」とか「オバQの精神分析」などなら、何とかイメージできるかもしれない者には、おそらく難解なのだろうと思う。
「戦闘美少女」の該博的知識やイメージなしに読むのは、「鉄人28号」を読んだことがないひとが、「正太郎くん」について語ろうするぐらい困難であろう。
「精神分析」は、イメージを直接扱うと言うよりは、その枠組みで語りうる言葉を提供するものだとすると、たとえば「セーラームーン」の「ラム」ちゃんに「ファリック・ガール」という概念を付与することにより、その戦闘美少女全般について語ることを容易にした点で、すぐれている。
どうも「ファリック・ガール」は、「ファリック・マザー」からの援用であるようだ。
父と母と子の三位一体が、精神分析の出発点であることからすると、第三の概念として説明されるのかというと、そうでもないらしく、「ヒステリー」概念にリンクさせ、ここは、多くの読者が大きく頷くところなのだろうが、まさに、そういうキャラクターとして理解すれば、分かりやすいのかもしれない。
「ヒステリー・ガール」のリアルは、アイドルに代表されるものなのだろうが、そこから、さらに聖域まで近づければ、「戦闘美少女」までいくのかもしれない。
本書は、アマゾンなどで頼めば、すぐに送られてくる類いの書物であったが、内容が内容だけに、即時購入はためらわれていた。しかし、付属の年表や多くのちりばめられた図版に魅せられたのと、あとがきや解説を読んでも、読んでためになるものなのかも判断しかねたし、他では手に取れないかもしれないという思いから買ってしまった。