工作台の休日

模型のこと、乗り物のこと、ときどきほかのことも。

コールサインはユニコーン チャールズ国王とジェット・プロヴォスト

2023年05月06日 | 飛行機・飛行機の模型
 本日(5/6)は新しいイギリス国王・チャールズ三世の戴冠式でした。夕方からBBCを観ておりましたが、絵巻物を見るようなきらびやかな式典でした。王冠を被る前のさまざまな儀式の中で「法律に則り・・・」といった文言が出てくるところも、800年以上前にマグナ・カルタを承認して以来の立憲君主国という感がしましたし、伝統的なものの中にゴスペル風のハレルヤなど、現代を取り入れているところもありました。近衛兵をはじめ三軍の将兵、グルカ兵、カナダの騎馬警官、英連邦各国の軍人らが参加したパレードも圧巻でした。宮殿のバルコニーで空軍の展示飛行を見守ることになっていましたが、あいにくの空模様で時間が短縮されたそうで、チヌークなどのヘリコプターの航過と、レッドアローズの航過が行われていました。戴冠式に雨というのは、エリザベス2世、ジョージ6世でも同じだったようです。
 さて、イギリスに限りませんが、いくつかの国では君主が名目上の軍の最高指揮官となり、王族自らも軍務に就くといったことが見られます。アフガンに派遣されたハリー王子、フォークランド紛争でヘリパイロットだったアンドルー王子のように実戦には関わっていないものの、チャールズ国王も皇太子時代に軍人として訓練を受け、パラシュート降下なども行っています。ジェット機の操縦訓練も受けており、1971年にクランウェルにある空軍士官学校で操縦課程を受けています。この時に使用したのはジェット・プロヴォストT5という機体でした。もともとハンティング・パーシヴァルというメーカーのプロヴォストというレシプロ練習機があり、それをにジェット化したのがジェット・プロヴォストでした。1956年初飛行ですので、日本のT-1よりも少し先輩です。生産と共に進化を遂げ、メーカーもBACに統合されましたが、T5と言われるモデルでは風防が洗練された形となり、コクピットも与圧されていました。また、軽攻撃機版のストライクマスターという派生型もあります。
 チャールズ皇太子(当時)の話に戻りますが、機体はXW322とXW323というナンバーのものが割り当てられていました。塗装などは他の機体と特段変わるものはありませんでしたが、インテークには皇太子を示す紋章が描かれ、コールサインは「ユニコーン」だったそうです。XW323については引退後に英国空軍の博物館で展示されています。私も訪れたことがありますので、その時に見た一機がそうだったのかもしれません。
 ジェット・プロヴォストについては模型でもいくつか製品化されています。1/72ですが、かつてはエアフィックスのT3(T2とも)型があり、グンゼ版が日本でも発売されていました。70年代にT5についてもエアフィックスからリリースされていましたが、私は見かけたことがありません。イギリス機らしいデザインが好きで、いくつかのアクロチームでも使われており、キットが出ないかなあと思っていたところ、T3(及びT4)については近年、エアフィックスの「赤箱」と呼ばれる新金型キットでリリースされ、私もいくつか組みました。

(「赤箱」のT3)

(別売りデカールを使いアクロチーム「レッドペリカンズ」仕様としたもの。後にエアフィックスからそのものずばりの仕様で製品化されました)
 T5についてはスウォードというメーカーから簡易インジェクションに近いキットが出ています。ということでスウォードのキットを組んでみました。

 翼の後縁を薄くしたり、必要に応じて加工と「各自工夫」が必要なキットではありますので、簡単にはいきませんでした。製品は主翼端の増槽がついた状態でパーツ化されていますが、写真で見る限り増槽をつけたものが見当たらず、切り取ってキットに入っていた翼端につけるパーツを接着しました。射出座席はレジン製のため精密ですが、脚周りなどは如何ともしがたく、きっちり組み付けることを優先としたため、あまりきれいではありません。また、水平尾翼は左側に長いリブのようなものがついているのが正しいようですので、間違いがないようにしてください。
 ジェット・プロヴォストの塗装については時期に変遷がありますが、1971年当時の塗装ということで、後述するこの機体の別売りデカールの説明書も参考にしました。
 胴体は白と赤の塗り分けです。赤はMr.カラー108・キャラクターレッドにしました。隠ぺい力がそれほど高くないため、丁寧に塗り重ねていく必要があります(私の作例は少々ムラが生じています)。主翼部はライトグレーで、Mr.カラー332・ライトエアクラフトグレーBS381C/627です。

(主翼端は赤にしましたが、グレーの写真もあります)

(主翼下面)
 マーキングについてはエクストラデカール・X72236 Jet Provost T.5にXW322そのものが入っており、これを使っています。ほぼ問題ないデカールではありますが、胴体後部に貼る空軍士官学校のペールブルーのバンドがうまく機体のラインに合いません。同じ色のいくつかのデカールを切り貼りして、ようやく貼れましたが、お見苦しくなってしまいました。インテーク横の紋章もちゃんとデカールが入っていました。

 4月上旬から組み始めて、当初は4月中に楽勝、と思っていたのですが、土日に雨続きだったり、自分が寝込んだりで進まなくなってしまい、ようやく戴冠式の日にギリギリセーフ、ということになりました。最後に向かえば向かうほど苦労する工作ではありましたが、なんとか完成しました。お恥ずかしい出来ですのでここで公開するのも・・・というところではありますが、日本では珍しい機体ですので、お目にかける次第です。
 ジエット・プロヴォストは1990年代初頭まで使われ、輸出されたものも多かったため、中には湾岸戦争の頃、イラク空軍が所有していたという記録もあるそうです。英国でも時代で塗装が変わったりしていますので、そういった楽しみもあります。エアフィックス版のT5も、もし見かけたら組んでみたいものです。

 さて、英国王と戴冠式で思い出しましたが、ジョージ6世の戴冠(1937年)では、まだテレビもない時代ですので、戴冠式の動く映像は映画で、ということになります。そのフィルムを日本に持ち帰ったのが、朝日新聞の訪欧飛行で東京を発ってロンドンに到着した「神風号」の復路の仕事となったことは、飛行機の歴史に詳しい方ならご存じではないかと思います。この戴冠式では昭和天皇の弟宮である秩父宮親王が列席したほか、記念の観艦式も行われ、日本からは重巡洋艦「足柄」が参加しました。

(こちらはハセガワ1/72の神風号です。97式司令部偵察機としてリリースされた旧マニアホビー製のかなり古いキットですが、私は好きです)


(本稿の参考文献 WARPAINT SERIES №82 BAC JET PROVOST & STRIKEMASTERS また、ウェブサイト"JET PROVOST HEAVEN"も参考にしました)

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