旧新橋停車場 鉄道歴史展示室で開催の「没後20年 工業デザイナー 黒岩保美展」を見てきました。
黒岩さんのお名前を知らない方でも、グリーン車のマークは国鉄が民営化されてからも使われているデザインなので、皆様もご存知かと思います。そのグリーン車のマークをはじめ「ゆうづる」、「出雲」、「瀬戸」などの列車の先頭を飾るヘッドマークをデザインされたのが黒岩さんです。
本展覧会では、黒岩さんが国鉄に入るきっかけとなった「連合軍客車内見取図」の原画が展示されています。戦後、連合軍のために客車が接収され、内装、外装に手を加えれられているのですが、それを彩色された精密な見取り図として記録したものです。図の精密さ、美しさもさることながら、歴史資料としても貴重なものとなっています。
また、各種トレインマークの図案は採用されなかった案も含めて展示されています。先のグリーン車マークとご本人が大変気に入られていた「ゆうづる」のマークは原図が展示されています。人の手によって描かれた図面は、デザインした人の思いが伝わってくるような感があります。「ゆうづる」の赤を基調としたデザインは、牽引する蒸気機関車の黒い車体にマッチするように考えられたものだそうで、蒸気機関車のヘッドマークの中でも秀逸ですね。他にも、「こだま型」電車特急や20系客車などの塗装案が展示され、デザインが決まるまでの過程もうかがい知ることができます。
私はこうした国鉄時代の黒岩さんの仕事もさることながら、国鉄を退職された後、「とれいん」誌上で明治時代の機関車や海外の古い車輛たちを描かれていたことも印象に残っております。古典機や外国型への関心が深くなったのも美しい絵を通してだったわけです。そういえば、サントリーウイスキーの広告ポスターにも英国型の機関車の絵画が使われていましたね。
生前の黒岩さんには、個展が開催されたときに一度お会いしたことがあります。私のような若造にも丁寧に接してくださり、画集「鉄路の名優たち」にサインをいただきました。私の蔵書の中で、特別な一冊となりました。
黒岩さんは、悉皆屋(しっかいや。デザインから洗い張り、しみ抜きまで着物に関するすべてを引き受ける職能~展示会図録より~)の家に生まれ、日本画を学ばれた方でもあります。ヘッドマークなどのデザインに違和感なく溶け込んでいる和のテイストは、こうした素地から生まれたものなのかもしれません。また、欧米(特にイギリス)では、鉄道を題材とした絵画をよく見る機会がありますが、黒岩さんの描く絵画はこうした欧米のものとも違う空気感や美しさを持っていました。今日ではパソコンがあれば絵を描ける時代ではありますが、黒岩さんの後を継ぐ鉄道絵画を描ける才能が出てくることを願って、結びとしたいと思います。
黒岩さんのお名前を知らない方でも、グリーン車のマークは国鉄が民営化されてからも使われているデザインなので、皆様もご存知かと思います。そのグリーン車のマークをはじめ「ゆうづる」、「出雲」、「瀬戸」などの列車の先頭を飾るヘッドマークをデザインされたのが黒岩さんです。
本展覧会では、黒岩さんが国鉄に入るきっかけとなった「連合軍客車内見取図」の原画が展示されています。戦後、連合軍のために客車が接収され、内装、外装に手を加えれられているのですが、それを彩色された精密な見取り図として記録したものです。図の精密さ、美しさもさることながら、歴史資料としても貴重なものとなっています。
また、各種トレインマークの図案は採用されなかった案も含めて展示されています。先のグリーン車マークとご本人が大変気に入られていた「ゆうづる」のマークは原図が展示されています。人の手によって描かれた図面は、デザインした人の思いが伝わってくるような感があります。「ゆうづる」の赤を基調としたデザインは、牽引する蒸気機関車の黒い車体にマッチするように考えられたものだそうで、蒸気機関車のヘッドマークの中でも秀逸ですね。他にも、「こだま型」電車特急や20系客車などの塗装案が展示され、デザインが決まるまでの過程もうかがい知ることができます。
私はこうした国鉄時代の黒岩さんの仕事もさることながら、国鉄を退職された後、「とれいん」誌上で明治時代の機関車や海外の古い車輛たちを描かれていたことも印象に残っております。古典機や外国型への関心が深くなったのも美しい絵を通してだったわけです。そういえば、サントリーウイスキーの広告ポスターにも英国型の機関車の絵画が使われていましたね。
生前の黒岩さんには、個展が開催されたときに一度お会いしたことがあります。私のような若造にも丁寧に接してくださり、画集「鉄路の名優たち」にサインをいただきました。私の蔵書の中で、特別な一冊となりました。
黒岩さんは、悉皆屋(しっかいや。デザインから洗い張り、しみ抜きまで着物に関するすべてを引き受ける職能~展示会図録より~)の家に生まれ、日本画を学ばれた方でもあります。ヘッドマークなどのデザインに違和感なく溶け込んでいる和のテイストは、こうした素地から生まれたものなのかもしれません。また、欧米(特にイギリス)では、鉄道を題材とした絵画をよく見る機会がありますが、黒岩さんの描く絵画はこうした欧米のものとも違う空気感や美しさを持っていました。今日ではパソコンがあれば絵を描ける時代ではありますが、黒岩さんの後を継ぐ鉄道絵画を描ける才能が出てくることを願って、結びとしたいと思います。