今日は作品のご紹介はお休みで、弊店のお客様のお話しをさせていただこうかと思います。立ち話で聞いたお話なので、多少記憶違いがあるかとは思いますが、大変興味深かったのでご紹介をさせていただきます。
自分は自分の事を語るより、人の話を聞く方が好き。
一つには自分は話しが得意ではないということと、人の話を聞くことは勉強になるし、人の人生を知る事はとてもワクワクする。それは何も人生の先輩の話だけではなく、自分より若い人の話しでも同じ事が言え、一人一人が違った生い立ち、そして人生が有り、どの人生も興味深い。
あるお客様(女性)は近くの歯医者にいらっしゃると必ず弊店に寄ってくださいます。今の場所に移転してからなので、もう7年くらいになるでしょうかね。
いつもちょこちょこっと買ってくださり、そしてちょっと雑談をしてだけの関係でしたが、先日今の会社を定年退職をするのでお世話になった同僚達にプチギフトをあげたいとのことで、人数分のタオルを買ってくださった。とても定年されるような年には見えず、素直に驚いたのと退職後の展望をチラッと語ってくださったのがとても印象的で、目をキラキラさせて笑顔で話してくださったのがとても前向きに見えて素敵だなって思った。
退職後にはここ数年続けている俳句を師範クラスになるまで頑張る事、そして昔からやりたかった絵本作家になる為に勉強をし、いつか絵本作家としてデビューをしたいという夢を語ってくださった。定年してからの夢ですよ。
そしてまた昨日歯医者の帰りに寄ってくださったので、その後どうされているか気になりお聞きしてみました。
すると俳句のいつもの集まりに加え、日本全国の方とネット上で集まる会に月1回更に参加しだしたのだけれど、とても周りのレベルが高く自分の語彙力の低さに危機を感じ、まず本を読みあさって日本語のレベルを上げるところから始めたのだとか。
会社勤めをしていたときには管理職で教える立場だったけれど、俳句の世界では私なんて下っ端の下っ端で周りは熟年の経験を積んだ人ばかりで、まずは1日2冊の本を読む毎日。でもチャレンジが好きなのでしょう、学ぶことに喜びを感じ、毎日充実した日々を過ごしているのだけれど、忙しくて絵本作家としての勉強に着手できていないのだとか。まぁまだ退職したばかりですし、これからですよね。でも素直に凄い方だなぁって圧倒された。
どうもお勤めをされていた会社が外資系だったとのことで、普段の社内のやり取りは全て英語で、現役時代にはイギリスやアメリカにも一人で出張に”行かされ”て客先に英語でプレゼンテーションを”させられ”たり苦労の連続だったそう。英語が本当に苦手でと仰る割には、定年まで勤め上げられたそうですが、英語ばかりの環境の中で日本語の本を読むことが精神的に拒まれずっと読めなかったのだとか。だから尚更今の日本語の本漬けの毎日が楽しい。
英語が苦手なのに外資系の企業でずっと勤められたのは専門的な技術職だったから。でも学校を卒業をしてからずっと同じ会社だったのですか?と言う私の質問に彼女は更に過去の話しを聞かせてくださった。
卒業をしてからある企業に勤めた彼女は、仕事に打ち込めず30才の時にそこを退職された。
そして時間を持て余した彼女は、ある趣味のお教室に通われることになりました。そのお教室が後の彼女の人生を大きく変えます。そのお教室の講師をされていた女性が、ある有名な映画監督の奥様で、顔がとても広い方で熱心にお教室に通われる彼女を見て、また別の更に専門的なお教室に通うことを薦めてくださった。
その専門的なお教室はある企業が主催する初めての試みで、専門的な事を一般の方でも楽しめるお教室として開講されたばかりで、生徒も先生も手探りで授業が進められる中、その企業の開発部門で人出が足りなくなったのでパートで働かないかとお誘いを受け、更に彼女の人生を変える部長とそこで知り合うことになったそう。
その部長は面倒見が良く、一生懸命パートに励む彼女を見て更に専門的な知識を得たいのなら社内で先生を紹介してあげるから勉強をしなさいと言ってくださったのだとか。その先生というのが業界でもレジェンド的な凄い方で、その方に指導していただき、仕事の後にはその先生と会社の図書室で過ごす毎日。しかしあるときその会社が遠くに移転してしまうことになり通うことが困難になってしまいます。そこで心優しい部長がある外資系の企業が技術員を探しているとの情報を教えてくださり、めでたくその外資系企業に就職ができたとのことでした。
ところがその外資系企業に就職したときには英語が全くできず、何百万円も自費を叩いて英語学校に通いなんとか英語を習得しようと頑張っていたのだけれど一向に英語が上達せず、3年勤め上げた後に一念発起して一旦退職をし 一人渡米して英語を勉強することに。その時既に彼女は36才。英語学校に通い、そして学生の頃には親に反対されたアートを勉強したくアート系の大学に入学し卒業した頃には40才。全財産を勉学につぎ込んで日本に帰国した頃にはすっからかんとなり、なんとかなるだろうと日々過ごしていたところ、それに見かねた元同僚がある外資系の企業で産休を取る方の後釜を募集されているから応募してみろと言われたことにより、先日退社された会社に就職できたのだとか。
その再就職した際に仕事を引き継いだ産休で会社を一時退社された方が、実は彼女が渡米する際に退職をした別の外資系企業でその時の彼女の仕事を引き継いだ女性だったと言うのも驚きです。
米国留学もしたのにどうして前述の通り一人海外出張に”いかされ”、そしてプレゼンテーションを”させられ”たという表現になるのだろうか?英語嫌いは留学を終えた後でも変わらなかったようで、仕事はできたけれどやはりネイティブと肩を並べて仕事をするのは大変だったのでしょう。
彼女には退職後の夢があったから退職をするときには笑顔で辞められた。辞めることが嬉しくて嬉しくて、そして退職は彼女にとってまた新たな挑戦の始まりでもある。
凄いなぁ~。格好いいなぁ~。
前にもチラッと書いた事があるけれど、最近の人は若いのに断捨離だとか身辺整理を意識するもので、自分の周りの40代でも同じような事を言う人が本当に多い。確かに人はいつこの世から去るかもわからないし将来を考える事は大切な事ではあるけれど、終わりばかりを考えて生きる人には魅力を感じないし可哀想だと思う。
常に前を向いて成長し続けようとする人って魅力的だと思うし、一緒に居て楽しく刺激を与えてくれる。だからこの彼女には今後も頑張って欲しいし、また次に会うことがとっても楽しみ。
終わりを意識して過ごす人生より、先を描く人生の方が素晴らしい、そんな気がします。
まぁ人それぞれの人生なので、どれが不正解でどれが正解なんてものは無い。だから1万人がいれば1万通りの人生があり、それぞれの人生がユニークであるから人の人生を聞くのは毎回楽しいのです。