日本語の「使役」とか「使役受身」とかいう一番ややこしい動詞の形を教えるとき、「誰かに何かすることを強制する」という例文でなぜかよく出てくるのが、
(子供のころ)両親は私にピーマンを食べさせた。「使役:食べさせる」
(子供のころ)私は両親にピーマンを食べさせられた。「使役受身:食べさせられる」
…なのだが、よくメキシコ人生徒に、「なぜピーマンなのか?」と聞かれたものだ。日本では子供が嫌いな野菜代表はピーマン、それは私の思い込みなのかもしれないが、実際のところ私は子供のころピーマンが嫌いだった。メキシコで、子供が嫌いな野菜と言えばブロッコリーなのだそうだ。これも一生徒個人の思い込みなのかもしれないが。
最近、英語のアプリ(たぶんアメリカ製)でリピーティングなどしていたのだが、英語の使役文の中にこんな例文が出てきた。
My parents make me eat broccoli. :私の両親は私にブロッコリーを食べさせる。
Ohhh! アメリカ人もブロッコリーなのか! 驚きである。
実はワタシ、AIチャットに、子供の嫌いな野菜は何かと問いかけてみたことがある。すると数種の野菜の名と、なぜ嫌われるのかの理由を長々と答えてくれた。ところがその中にピーマンは入っていなかったのだ。よく覚えていないのだが、「ゴーヤ」など私が子供のころには見たことも聞いたこともなかった野菜も入っていた。時代とともに、日本の野菜も変わってきたらしい。海外から入ってきて定着したもの、地方から全国に広がったもの、などである。
ブロッコリーも、私は子供のころに食べた記憶がない。大人になってから出会って感動したので、嫌いになる理由がわからない。「マヨネーズをつけたらおいしいじゃない?」と私がいうと、メキシコ人生徒は「ブロッコリーにマヨネーズはつけない」という。つけてみてほしい、ぜひ。
ちなみに、英語には「使役文」の主語をひっくり返して「使役受身」を作る発想はないらしく、「両親は私にブロッコリーを食べさせた」も「私は両親にブロッコリーを食べさせられた」も、翻訳機にかけると、
My parents made me eat broccoli.
…の一本やりなんだよね~。