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青い花

読書感想とか日々思う事、飼っている柴犬と猫について。

冷たい熱帯魚

2015-03-29 07:58:00 | 日記
昨日は娘が半日出かけてくれたので、前から気になっていた、園子温監督『冷たい熱帯魚』を観てみました。この映画は、埼玉愛犬家連続殺人事件を下敷きにしているのですが、周囲一貫クレイジー。まともな人が一人も出てこないのです。

小さな熱帯魚店を営んでいる社本 (吹越満)の娘・美津子がスーパーで万引きをして捕まる。後妻の妙子(神楽坂恵)とともに謝罪に向かう社本。店長はカンカンで、娘は不貞腐れている。にっちもさっちもいかなくなった社本に、思いがけない人物から救いの手が差し伸べられる。
それは、その町で大型熱帯魚店を営んでいる村田(でんでん)だった。初っ端からハイテンションで馴れ馴れしい村田と、むやみに色っぽい妻・愛子(黒沢あすか)。怪しさ満点の夫婦だが、娘の非行と冷え切った夫婦仲に悩む社本に、まともな判断力はない。渡りに船とばかりに村田夫婦の申し出を受け、娘を彼らの店に住み込ませてもらうことにする。そして、あれよあれよという間に、連続殺人グループの一員に組み込まれてしまうのだった…。

この作品の魅力は、村田(でんでん)の清々しいまでの外道ぶりにつきますね。
得体の知れない人生哲学を緩急自在に捲し立て、相手に冷静に判断する隙を与えない。言っている内容はサイコパスそのものなのだが、なぜか筋は通っている。相手の表情の変化や言葉尻を逐一逃さず、何を恐れているのか何を望んでいるのかを的確に把握し、自分にとって都合よく動いてくれるように誘導する……プロですね。
村田は独特の愛嬌でターゲットに取り入り、金を搾り取り終えると、躊躇うことなく殺害します。邪魔する者もまた然り。村田の言う「ボディを透明にする」とは、本作のモデルとなった埼玉愛犬家連続殺人事件の主犯が実際に口にしたセリフで、被害者の遺体を跡形も無く消去するという意味です。鼻歌混じりギャグ混じりで、手際よく遺体を解体する村田夫妻。そのノリノリっぷりは、「この夫婦は、被害者の金よりもボディを透明にする行為そのものが目的なのでは?」という疑念を抱かせるくらいです。被害者の腕時計を社本にプレゼントしたり、吐きそうになっている社本を労わったりと、妙に親切なところも不気味ですね。人生流されっぱなしの社本に「やりたいことをやれ!」と喝を入れ、「オレや愛子がいなくなったら、お前一人でやらないといけないんだぞ~。コツさえ覚えたら、一生食っていけるからな~」とか何とか言いつつ殺人のノウハウを伝授する様は、さながら面倒見の良い親戚のおじさんであります。

子供と一緒に観るには差し障りのある内容だし、友人知人に勧められる内容でもない。でも、私は面白かったですよ、この作品。変な人たちの変なテンション、変な会話に笑わせてもらえたので満足しています。園子温監督のほかの作品も観てみようと思いました。
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