ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

ソフトバンク、ビクター買収?!何故、家電メーカーは手放すのか

2010年04月18日 | 音楽
名門・ビクターエンターテイメントがJVC・ケンウッド・ホールディングスからソフトバンクに売却されるとのこと。まぁ、昨今のCD不況の影響で多くのレコード会社が厳しい状況にさらされているわけで、EMIといった大手メジャーはもちろん、avex以外の国内組みのレコード会社はいつどうなっても可笑しくない状況だろう。(もっともavexも映像事業の失敗やらCD不振やら大変そうですが…)

ソフトバンク:ビクター子会社買収 ネット配信に活用へ - 毎日jp(毎日新聞)
ソフトバンクがビクターとテイチク買収か 広報担当者は否定せず : J-CASTニュース
「和製レコード会社が消える!?」長期化する音楽不況で業界存亡の危機...... - 日刊サイゾー

ビクターは、サザンオールスターズやSMAPといったメジャー級はもとより、UAやくるり、斉藤和義、LOVE PSYCHEDELICOなど個人的には好みのアーティストも多い。とはいえ、一発当てればビルが建つくらい博打性の高いこの業界において、くるりや斉藤和義らは一定のコアファンを獲得しているものの爆発的なヒットを生み出すようなアーティストではない。

サザンオールスターズやSMAPといった「大物」も存在するけれど、サザンオールスターズは無期限活動停止となり、またいずれも事務所の力が強く収益源である「原盤権」を押さえられているようで、ヒットの割りには実入りは少なかったようだ。その結果、1度は「コナミ」への売却話があったものの立ち消えとなり、今回のソフトバンクへの売却となった。

そういう流れを見ていると、ソフトバンク自体にとってのメリットがどれだけあるかは疑問だけれど、ビクターエンターテイメント側にとってはプラスなのではないかと思う。

ビクターエンターテイメントにとっては、結局のところどれだけCDが売れるか、楽曲が売れるかが全てであり、そのためにはアーティストや楽曲のプロモーションが大事となる。80年代~90年代であればTVドラマとのタイアップ、CMとのタイアップでガンガン楽曲を流せば、ほっといても売れたのだろうが、今ではこうした効果に期待はできない。既存のプロモーション手法がマンネリ化し、代って口コミで一躍大ヒットが生まれる時代。相対的にネットのメディア力が高まってきている。

そんな中で、今回の買収の結果、Yahoo!やGyaoのメディア力を活かせるのだとしたら、これはビクターのアーティストにとっては大きなメリットだろう。YouTubeのようなCGM型のサービスであればプロモーションのインフラ部分としての役割にしかならないが、Yahoo!トップやGyaOは提供者側がプロモーションを仕掛けることが可能なメディアだ。積極的な露出機会が与えられれば、楽曲やアーティストの認知度を高めることが可能だろう。

考えて見れば、日本のレコード会社というのは家電メーカーとの結びつきが強かった。SONYはSMEを傘下におさめているし、東芝はかってEMIを傘下におさめていた。コロムビアは日立グループであったし音響メーカーDENONを傘下におさめていた。バブル期には松下電器産業がMCA(現ユニバーサル)を傘下に収めていたこともある。

これらはやはりソフトウェアとハードウェアの両面を戦略的に提供していかねば、ともに普及していかなかったからだろう。しかし今、それらのうちSONY以外は傘下から離れている。これはデジタル家電の主戦場において、もはや「音楽」というソフトウェアを自社で抱え込んでも仕方がない、それだけのシナジーを期待できないからだ。

もちろん今でも「音楽」はキラーになりうるコンテンツだ。とはいえ「音楽」は既に産業としても1つのジャンルとして成立してしまっており、自らの意思で様々なビジネスチャンスへの挑戦を行っている。またデジタル家電メーカーからすると、「映像」であれば市場規模の面でも、技術面でも取り組む価値があるだろうが、「音楽」というのは中途半端な存在だ。

例えばBlu-Ray vs HD-DVDの戦いでも、「映像」コンテンツをどれだけ囲い込むかは覇権争いの1つのポイントになった。これは両陣営にとって、次世代のDVR市場の生き残りをかけた戦いであり、それぞれが互換性のない規格をめぐる争いだったからだ。しかしiPodとWalkmanをめぐる戦いでコンテンツの囲い込みが主戦場になっているだろうか。SONY/SME陣営はiTSへの提供はしていないものの、EMIにしろワーナーにしろ、ユニバーサルにしろ条件面さえ折り合えばどのような配信サイトにもコンテンツを提供するというスタンスだ。

Blu-Ray/HD-DVDではどちらか一方の規格しか生き残れなかっただろうが、音楽に関しては複数の規格が並存せざろうえない状況だ。もっとも普及しているのがMP3であり、iTunesで提供しているAACやマイクロソフトのWMAなども存在している。CDよりもクオリティの高い「ビートルズ USB BOX」ではFLAC形式で提供されているし、CDの後継版と目されたのはSACDだ。

またこうした音声圧縮技術はBlu-Ray/HD-DVDの音声圧縮技術の一部を構成してもいる。つまり大きな視点からみれば、「音声」だけの技術で優劣をはかるだけでなく「映像」技術の一要素として組み込まれることで、技術開発が進められているのだ。

今後、音楽業界はどのような陣営と手を組んでいくのだろうか。

CDの売上不振の原因でもあるのは、ネットを通じた違法なコンテンツ流通であり、YouTubeのような無料モデルの存在だ。言い換えると、ネットを通じたフリーモデルでの音楽需要は大きいといえる。「音楽税」のような話が一方であり、あるいは「着うた/うたフル」のような話があり、今後も音楽業界はネットとの結びつきを強めていくことになるのだろう。ソフトバンクがどのようなモデルを作り上げるかはわからないが、今後もキャリアやネット事業者との結びつきは強まっていくのだろう。

※ 現時点では、ソフトバンクもJVCもこの件を否定しているようです。


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