可能性は高いだろうな、と思っていた人も多いだろうけど、やはりソフトバンクがボーダフォンを買収するようだ。買収額は1兆円~2兆円規模とのこと。この金額が高いのか、妥当なのかは計算してみないと分からないけれど、まぁ、かわいそうなのは現・日本ボーダフォンのスタッフたちだ。つい先日、ボーダフォンは2006年度の製品やサービスの展開計画について発表したばかり。津田会長も2006年度を「本格成長への正念場の年」として位置付け、第3世代携帯電話(3G)端末向けに複数の新サービスを展開すると宣言したばかり。それをいきなり出鼻をくじかれてしまった。
英ボーダフォン、日本法人をソフトバンクに売却へ--株式譲渡交渉を認める
「2006年度は正念場」--ボーダフォン、新サービスを一挙に披露
そもそもソフトバンクはいわゆる「通信業界」の文化・体質を守らない会社であり、また3G携帯を主力に据えたいと考えているわけではないだろう。「通信業界の文化・体質」と書くと一般の人からは「許認可行政・免許制度」に守られた旧い体質と見る人も多いかもしれないが、事実そのような側面もあるわけだけれど、通信という公共性の高い社会インフラを維持するという責任感・自負を併せ持っているのも事実だ。10年ほど前のISP競争のように単なる価格競争だけではその社会的役割を果たすことができないし、そのかわりに阪神大震災のようなことがあっても比較的早く対応することができる。こうした前提を、ボーダフォンは共有できるだろうが、ソフトバンクでは共有できないだろう。
またボーダフォンとしては3Gで巻き返す、として様々な取組みをしている最中にもかかわらず、3GよりもWIMAXでこそはじめてソフトバンクの強みが得られると考えている孫正義の下では、3Gはあくまで「つなぎ」としての位置付けしか与えられないだろう。ボーダフォンのスタッフからすれば、Jフォンからボーダフォンになる時に「グローバルスタンダード」を追求するあまり、最先端の機能で勝負をしなければならない国内市場で完敗した記憶が蘇ることだろう。
まだまだボーダフォンの迷走は続きそうだ。
では、ソフトバンクの狙いは何だろう。
1)モバイル顧客基盤の確保
2)電波帯域の確保
3)FMC・統合されたサービスの実現
ソフトバンクの携帯参入が認められたとはいえ、既に市場は飽和状態。ことモバイルに関して言えば、既存キャリアから奪い取ることしかない。しかし当初スタートがデータ通信のみだとすると、ここはHOTSPOT陣営、PHSとも競合するところ。しかも全国展開するためには多額の設備投資が必要だ。こうなると第3位とはいえボーダフォンは1500万台以上の利用者がいる。金で解決できるならという思いもあるだろうし、このユーザーをYahoo!会員、Yahoo!BB会員に結び付けたいという気持ちもあるだろう。
また「電波帯域」の問題もある。早くから孫氏は電波帯域が不足していると主張している。まぁ、Yahoo!BBの時も「いずれ使うから」としてNTTのコロケーション・スペースを占有した挙句「空スペース」がありながら、他ISPが利用するできないといったこともあったので、本当に必要かどうかはわからない。ただ孫氏の主張を信じるならば、既にボーダフォン社に与えられた電波帯域を利用できることも大きいだろう。
で、これら1)、2)の延長線上にあるのが、モバイル(第4世代・WIMAX)/IP電話(固定電話)/ISP/TV(放送・VOD)を統合したサービスの提供だ。当然、これらのサービスを全て多重化し提供できるIP基幹網を用意し、かつセット割引きのような形で提供することで、ユーザーを一気に囲い込みたいところだろう。統合されたIP基幹網という考え方自体は新しいものではないけれど、これだけのものを統合したものはまだない。特にNTTや古くからのキャリアは「音声」=レガシーというイメージがあるため、不安定なIP網に対する潜在的な拒否感がある。
実際、IP化したとしてもこれら性質の異なる「情報」を完全に統合したネットワーク上で扱うことが効率的なのかというと、判断は難しいところだ。下手するとオペレーションコストの増加やネットワーク効率が悪くなることだって考えられる。
とはいえ、上記のようなモデルを構築しようとすると、伸び悩みが見えているADSLをベースにしたYahoo!BBでは限界があるし、モバイルからも顧客獲得のアプローチが必要になる。そうした戦略的要素を含めての今回の買収劇なのだろう。
英ボーダフォン、日本法人をソフトバンクに売却へ--株式譲渡交渉を認める
「2006年度は正念場」--ボーダフォン、新サービスを一挙に披露
そもそもソフトバンクはいわゆる「通信業界」の文化・体質を守らない会社であり、また3G携帯を主力に据えたいと考えているわけではないだろう。「通信業界の文化・体質」と書くと一般の人からは「許認可行政・免許制度」に守られた旧い体質と見る人も多いかもしれないが、事実そのような側面もあるわけだけれど、通信という公共性の高い社会インフラを維持するという責任感・自負を併せ持っているのも事実だ。10年ほど前のISP競争のように単なる価格競争だけではその社会的役割を果たすことができないし、そのかわりに阪神大震災のようなことがあっても比較的早く対応することができる。こうした前提を、ボーダフォンは共有できるだろうが、ソフトバンクでは共有できないだろう。
またボーダフォンとしては3Gで巻き返す、として様々な取組みをしている最中にもかかわらず、3GよりもWIMAXでこそはじめてソフトバンクの強みが得られると考えている孫正義の下では、3Gはあくまで「つなぎ」としての位置付けしか与えられないだろう。ボーダフォンのスタッフからすれば、Jフォンからボーダフォンになる時に「グローバルスタンダード」を追求するあまり、最先端の機能で勝負をしなければならない国内市場で完敗した記憶が蘇ることだろう。
まだまだボーダフォンの迷走は続きそうだ。
では、ソフトバンクの狙いは何だろう。
1)モバイル顧客基盤の確保
2)電波帯域の確保
3)FMC・統合されたサービスの実現
ソフトバンクの携帯参入が認められたとはいえ、既に市場は飽和状態。ことモバイルに関して言えば、既存キャリアから奪い取ることしかない。しかし当初スタートがデータ通信のみだとすると、ここはHOTSPOT陣営、PHSとも競合するところ。しかも全国展開するためには多額の設備投資が必要だ。こうなると第3位とはいえボーダフォンは1500万台以上の利用者がいる。金で解決できるならという思いもあるだろうし、このユーザーをYahoo!会員、Yahoo!BB会員に結び付けたいという気持ちもあるだろう。
また「電波帯域」の問題もある。早くから孫氏は電波帯域が不足していると主張している。まぁ、Yahoo!BBの時も「いずれ使うから」としてNTTのコロケーション・スペースを占有した挙句「空スペース」がありながら、他ISPが利用するできないといったこともあったので、本当に必要かどうかはわからない。ただ孫氏の主張を信じるならば、既にボーダフォン社に与えられた電波帯域を利用できることも大きいだろう。
で、これら1)、2)の延長線上にあるのが、モバイル(第4世代・WIMAX)/IP電話(固定電話)/ISP/TV(放送・VOD)を統合したサービスの提供だ。当然、これらのサービスを全て多重化し提供できるIP基幹網を用意し、かつセット割引きのような形で提供することで、ユーザーを一気に囲い込みたいところだろう。統合されたIP基幹網という考え方自体は新しいものではないけれど、これだけのものを統合したものはまだない。特にNTTや古くからのキャリアは「音声」=レガシーというイメージがあるため、不安定なIP網に対する潜在的な拒否感がある。
実際、IP化したとしてもこれら性質の異なる「情報」を完全に統合したネットワーク上で扱うことが効率的なのかというと、判断は難しいところだ。下手するとオペレーションコストの増加やネットワーク効率が悪くなることだって考えられる。
とはいえ、上記のようなモデルを構築しようとすると、伸び悩みが見えているADSLをベースにしたYahoo!BBでは限界があるし、モバイルからも顧客獲得のアプローチが必要になる。そうした戦略的要素を含めての今回の買収劇なのだろう。
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