ついにiTMS(iTS?)で映画のダウンロードサービスがスタートするとのこと。先日はamazonが映画ダウンロードサービスをスタートということで、戦場は「音楽」から「動画」へと移ってくる模様。しかし日本ではこのサービスにまだまだ課題があるだろう。
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先日のアマゾンの映画ダウンロードサービスの開始の時に指摘した課題は大きく3っ。
1)30cmメディア、50cmメディアといわれるPCで「映画」をそもそも見るのか、という問題
2)ダウンロードに要する時間の問題。換言すれば品質と圧縮効率の問題。
3)価格設定の問題
PCというのは所謂「30cmメディア」「50cmメディア」と言われており、1mメディアと呼ばれるTVとはメディアとしての特性が変わってくる。こういう言い方をすると小難しいが、要はTVは家族みんなでくつろいで見ることができるけれど、PCは画面にかじりつきながら個人が見るものである、ということ。映画のように長尺ものでかつ、没入性が高いコンテンツの場合、ある程度、くつろぎながら見ることができる環境の方がむいているに決まっている。
この点について、Appleはどうやら無線を通じてTVに映し出すことができる装置(iTV?)も検討しているとのこと。iPodの時もそうだけれど、インターネットはあくまでも効率的な伝送媒体であり、販売したコンテンツを利用するデバイスは(iPodやTVのように)それに応じたものと考えているようだ。このあたりはマイクロソフトとはちょっと違うのかもしれない。
次にダウンロードに要する時間、あるいはエンコードの問題であるが、報道によると、DVD品質で5Mbps回線で30分ほどとのこと。アマゾンが1.2GB/Hであるのに対してiTSでは1.3GB/2H。一見するとiTSの方が品質が悪そうであるが、アマゾンがWMVベース、iTSが圧縮効率の高いH264ベースということで、「品質」そのものの差は意外とないのかもしれない。但し一般のDVDがMPRG2ベースでも5~9GBであることを考えると、まぁ、DVD並みとはいえないだろう。
そこそこの品質であったとしてダウンロードにかかる時間が35分ほどということなのだが、この時間を「妥当」とするのかどうかは微妙なところ。日本の場合、ストリーミング配信が中心ということで、まさにオンデマンドのサービスが主流なわけで、見たいと思ってから35分かかるというのはどうだろうか?ダウンロードしながら再生可能といったものならまた違うけれど、意外と気になるところではある。
そして最後に価格設定の問題。アマゾンの時にも書いたけれど、日本には「レンタルビデオ」が存在している。映画ダウンロードサービスをセルDVDを競争相手と捉えるならば、9.99ドル(約1200円)~12.99ドル(約1600円)というのは妥当かもしれないが、レンタルビデオの180円~330円/8日というものと比べるとやはり割高だ。
ましてレンタルビデオは家族やカップルでお出かけする「場」としての意味もあり、また本当に欲しい作品だと「パッケージ」として手元に残したいという所有欲の問題もある。この映画ダウンロードサービスのターゲット層やターゲットとなる作品は意外と限られるのではないだろうか。
またこれらに3っの課題に加えて、4)課金手段の問題と5)既存デバイスへの対応という問題もある。
日本のiTMSの苦戦ぶりにも現れているように、クレジットカードを決済手段として新規に登録することの障壁はやはり高い。アマゾンの場合、「書籍」販売を中心に既に登録ユーザーがいるわけで、あのiTMSでさえ思ったようにクレジットカードを登録させることに苦労をしている。このあたりの課題は以前残ったままだ。
もう1つアマゾンとの対比で行くと、これまでのQVGA(320px×240px)という画面サイズからTVの解像度(640px×480px)に切り替えたわけだけれど、ということは、QVGAにしか対応していない既存のiPodユーザーは「to GO」のサービスを利用できなくなる。
アマゾンでは両方のサイズをセット販売することで、DAPやWMV対応の携帯電話などでも利用できるのだけれど、今回の報道ではそうした既存ユーザー、既存デバイスへのフォローはなされていない。そのあたりも利用者にとっては障壁となるだろう。
いずれにしろ、日本でのiTS映画ダウンロードサービスの成功にはまだまだ課題が多いだろう。
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2)ダウンロードに要する時間の問題。換言すれば品質と圧縮効率の問題。
3)価格設定の問題
PCというのは所謂「30cmメディア」「50cmメディア」と言われており、1mメディアと呼ばれるTVとはメディアとしての特性が変わってくる。こういう言い方をすると小難しいが、要はTVは家族みんなでくつろいで見ることができるけれど、PCは画面にかじりつきながら個人が見るものである、ということ。映画のように長尺ものでかつ、没入性が高いコンテンツの場合、ある程度、くつろぎながら見ることができる環境の方がむいているに決まっている。
この点について、Appleはどうやら無線を通じてTVに映し出すことができる装置(iTV?)も検討しているとのこと。iPodの時もそうだけれど、インターネットはあくまでも効率的な伝送媒体であり、販売したコンテンツを利用するデバイスは(iPodやTVのように)それに応じたものと考えているようだ。このあたりはマイクロソフトとはちょっと違うのかもしれない。
次にダウンロードに要する時間、あるいはエンコードの問題であるが、報道によると、DVD品質で5Mbps回線で30分ほどとのこと。アマゾンが1.2GB/Hであるのに対してiTSでは1.3GB/2H。一見するとiTSの方が品質が悪そうであるが、アマゾンがWMVベース、iTSが圧縮効率の高いH264ベースということで、「品質」そのものの差は意外とないのかもしれない。但し一般のDVDがMPRG2ベースでも5~9GBであることを考えると、まぁ、DVD並みとはいえないだろう。
そこそこの品質であったとしてダウンロードにかかる時間が35分ほどということなのだが、この時間を「妥当」とするのかどうかは微妙なところ。日本の場合、ストリーミング配信が中心ということで、まさにオンデマンドのサービスが主流なわけで、見たいと思ってから35分かかるというのはどうだろうか?ダウンロードしながら再生可能といったものならまた違うけれど、意外と気になるところではある。
そして最後に価格設定の問題。アマゾンの時にも書いたけれど、日本には「レンタルビデオ」が存在している。映画ダウンロードサービスをセルDVDを競争相手と捉えるならば、9.99ドル(約1200円)~12.99ドル(約1600円)というのは妥当かもしれないが、レンタルビデオの180円~330円/8日というものと比べるとやはり割高だ。
ましてレンタルビデオは家族やカップルでお出かけする「場」としての意味もあり、また本当に欲しい作品だと「パッケージ」として手元に残したいという所有欲の問題もある。この映画ダウンロードサービスのターゲット層やターゲットとなる作品は意外と限られるのではないだろうか。
またこれらに3っの課題に加えて、4)課金手段の問題と5)既存デバイスへの対応という問題もある。
日本のiTMSの苦戦ぶりにも現れているように、クレジットカードを決済手段として新規に登録することの障壁はやはり高い。アマゾンの場合、「書籍」販売を中心に既に登録ユーザーがいるわけで、あのiTMSでさえ思ったようにクレジットカードを登録させることに苦労をしている。このあたりの課題は以前残ったままだ。
もう1つアマゾンとの対比で行くと、これまでのQVGA(320px×240px)という画面サイズからTVの解像度(640px×480px)に切り替えたわけだけれど、ということは、QVGAにしか対応していない既存のiPodユーザーは「to GO」のサービスを利用できなくなる。
アマゾンでは両方のサイズをセット販売することで、DAPやWMV対応の携帯電話などでも利用できるのだけれど、今回の報道ではそうした既存ユーザー、既存デバイスへのフォローはなされていない。そのあたりも利用者にとっては障壁となるだろう。
いずれにしろ、日本でのiTS映画ダウンロードサービスの成功にはまだまだ課題が多いだろう。
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