日本ではNTTの首脳陣がskypeやGyaOといったブロードバンドサービスの普及について、インフラただ乗り論を展開しているが、これはどうやら日本にとどまらないようだ。CNETによると、「インターネットトラフィックの60%以上がPtoPによるファイル交換に占領されており、うち60%が映像コンテンツの交換に使われていると言う。これに加えて、Apple ComputerやMovieLink、Google Videoなどの企業による合法的なコンテンツ配信も、その量を増しており」、「AT&Tなどの大手ISP各社は、GoogleやYahooのような企業に追加サービス料金を課金できるようにするべきだと主張し」ているとのこと。
オンラインでも「交通渋滞」の懸念--ビデオ配信量の急増を受け
【集中連載 通信大改革の行方】(4)「インフラただ乗り」で始まるインターネットの新たな議論:IT Pro
ユーザー側の意見としては、「NTTは既得権益(電話)維持のために、skypeやGyaOを締め出そうとしている」とか「ISPの利用料は払っているのだから、インフラをちゃんとするのはISPの責任だ」とか「ユーザーに支持されているサービスを制限するのはひどい」とかいった無責任な意見が多いのだろうが、適切な費用分担がされていない現状があるのだから仕方がない。そもそもこうなることはある程度わかっていたことなのだ。
MS、Yahoo、AOLがIMで提携。NTTに未来はあるのか?
ここにきて急にこのような話が大きな課題として認識されたのは、インターネットがもう次の段階に入ったということなのだろう。10年前であれば、ISDN64kbpsが高速回線と呼ばれていた時代であり、「インターネット・マガジン」には膨大な数のミニISPがどのように他のISPと繋がっているのかがMAPとして描かれていた時代だ。その頃はISP間の接続でさえDA128クラス(128kbps)の専用線接続でも事足りていた。それくらいインターネット上のコンテンツも軽かったのだ。
最初の大きな進化は、Yahoo!BB、フレッツADSLの登場だろう。これによってそれまで企業の基幹網の接続で使われるくらいの通信速度が家庭からインターネットへのアクセスでも実現した。それによってそれまで56kbpsで配信されていた動画が300Kbps~500kbps、場合によっては1.5Mbpsクラスでの動画配信が始まった。また「楽天」「アマゾン」のようなインターネットショッピングが一般化し、WinnyといったP2Pサービスも登場した。これらが普及した要素の一つとして「高速化」と「定額性」というものが挙げられるだろう。
そして現在言われていることの問題というのは、この時からわかっていたといえる。「定額性」それも日本の場合、Yahoo!が極端なダンピング合戦を仕掛けたため、アクセス回線部分についても、ISP部分についても極端に値下げ合戦が進んだ。その結果、地域のミニISPの多くは設備投資に耐えられなくなり、大手ISPに吸収され、また大手ISPでも他の収入源を見出すか、スリム化を図るかしないと成り立たなくなった。
しかしユーザーからすれば、定額である以上、通信料などきにすることなくインターネットを利用する。その結果、ISPは膨大な設備を求められつつもそれに見合った収入がないという状況が生じ始める。
例えば既存の電話を考えてみれば分かるのだけれど、電話の料金体系というのは基本的に「通話距離×通話時間」で算出される。東京から大阪に電話するのと大阪市内で電話をするのであれば、当然利用する設備も違う。大阪市内であれば大阪市内の電話設備で済むが、東京から大阪であれば、東京と大阪とそれを中継するための設備が必要になる。また1分で話が済む場合と1時間も話をする場合では設備を利用している時間ももちろん違う。そう考えると、「通話距離×通話時間」で利用料金が決まるというのは、適正な利用料金を算出しやすいのだ。
これに対して「定額性」というのは、よく使う人とあまり使わない人がいてその平均的な利用度合いをもとに適正な利用料金を産出する必要がある(もちろん実際には最繁期の利用状況を踏まえてだけれど今は問わない)。しかしここで難しいのは、「平均的な利用度合い」は今後も維持されるのか、という点だ。つまりみんなが今のよく使う人並みに使い始めたり、全体的に使う量が増えたりした場合、適切な利用料金も変わらざろう得ないのであるが、現実的には値上げという選択肢はないだろう。つまり現在の利用状況が大きく変わるような「何か」があった場合、「定額性」というのは提供者側にとってはリスクとなるのだ。
SkypeやGyaOの登場とはまさにこのリスクが現実のものとなったことを示している。
これまでインターネットの場合、アクセス回線/ISP/サービスとそれぞれのレイヤーごとにプレイヤーが変わることが多く、各プレイヤーはそれぞれの分野においてビジネスを考えればよかった。例えばNTTからすればどこのISPだろうとフレッツサービスを利用してくれればよかったのであり、ISPにしても自社にいかに会員を囲い込むかを考えればよかった。サービスレイヤーのプレイヤーにとっては、ホスティング費用などは必要だとしても通信料という感覚は薄い。
ブロードバンド環境が普及したといっても有料の動画配信であれば利用者の数も限定的だったが、GyaOのようなモデルではインパクトが大きすぎたということだろう。またWinnyのようなP2Pサービスの場合、本来はこの手のヘビーユーザーに対して追加料金を負担してもらうべきなのだろが、現実的には難しい。
ブローバドバンドコンテンツを利用するユーザーの一般化とそれに伴う各プレイヤー間での適切なコスト負担。例えばYahoo!BBがNTTのに設備投資させた上で、自社はリスクを背負うことなくそれを「上手く」利用してきたように、これからの時代においては、まさに他のプレイヤーにコストを転嫁して、自分達だけがうまく儲けるといった意識ではインターネットビジネスはできない時代になったのだろう。
オンラインでも「交通渋滞」の懸念--ビデオ配信量の急増を受け
【集中連載 通信大改革の行方】(4)「インフラただ乗り」で始まるインターネットの新たな議論:IT Pro
ユーザー側の意見としては、「NTTは既得権益(電話)維持のために、skypeやGyaOを締め出そうとしている」とか「ISPの利用料は払っているのだから、インフラをちゃんとするのはISPの責任だ」とか「ユーザーに支持されているサービスを制限するのはひどい」とかいった無責任な意見が多いのだろうが、適切な費用分担がされていない現状があるのだから仕方がない。そもそもこうなることはある程度わかっていたことなのだ。
MS、Yahoo、AOLがIMで提携。NTTに未来はあるのか?
ここにきて急にこのような話が大きな課題として認識されたのは、インターネットがもう次の段階に入ったということなのだろう。10年前であれば、ISDN64kbpsが高速回線と呼ばれていた時代であり、「インターネット・マガジン」には膨大な数のミニISPがどのように他のISPと繋がっているのかがMAPとして描かれていた時代だ。その頃はISP間の接続でさえDA128クラス(128kbps)の専用線接続でも事足りていた。それくらいインターネット上のコンテンツも軽かったのだ。
最初の大きな進化は、Yahoo!BB、フレッツADSLの登場だろう。これによってそれまで企業の基幹網の接続で使われるくらいの通信速度が家庭からインターネットへのアクセスでも実現した。それによってそれまで56kbpsで配信されていた動画が300Kbps~500kbps、場合によっては1.5Mbpsクラスでの動画配信が始まった。また「楽天」「アマゾン」のようなインターネットショッピングが一般化し、WinnyといったP2Pサービスも登場した。これらが普及した要素の一つとして「高速化」と「定額性」というものが挙げられるだろう。
そして現在言われていることの問題というのは、この時からわかっていたといえる。「定額性」それも日本の場合、Yahoo!が極端なダンピング合戦を仕掛けたため、アクセス回線部分についても、ISP部分についても極端に値下げ合戦が進んだ。その結果、地域のミニISPの多くは設備投資に耐えられなくなり、大手ISPに吸収され、また大手ISPでも他の収入源を見出すか、スリム化を図るかしないと成り立たなくなった。
しかしユーザーからすれば、定額である以上、通信料などきにすることなくインターネットを利用する。その結果、ISPは膨大な設備を求められつつもそれに見合った収入がないという状況が生じ始める。
例えば既存の電話を考えてみれば分かるのだけれど、電話の料金体系というのは基本的に「通話距離×通話時間」で算出される。東京から大阪に電話するのと大阪市内で電話をするのであれば、当然利用する設備も違う。大阪市内であれば大阪市内の電話設備で済むが、東京から大阪であれば、東京と大阪とそれを中継するための設備が必要になる。また1分で話が済む場合と1時間も話をする場合では設備を利用している時間ももちろん違う。そう考えると、「通話距離×通話時間」で利用料金が決まるというのは、適正な利用料金を算出しやすいのだ。
これに対して「定額性」というのは、よく使う人とあまり使わない人がいてその平均的な利用度合いをもとに適正な利用料金を産出する必要がある(もちろん実際には最繁期の利用状況を踏まえてだけれど今は問わない)。しかしここで難しいのは、「平均的な利用度合い」は今後も維持されるのか、という点だ。つまりみんなが今のよく使う人並みに使い始めたり、全体的に使う量が増えたりした場合、適切な利用料金も変わらざろう得ないのであるが、現実的には値上げという選択肢はないだろう。つまり現在の利用状況が大きく変わるような「何か」があった場合、「定額性」というのは提供者側にとってはリスクとなるのだ。
SkypeやGyaOの登場とはまさにこのリスクが現実のものとなったことを示している。
これまでインターネットの場合、アクセス回線/ISP/サービスとそれぞれのレイヤーごとにプレイヤーが変わることが多く、各プレイヤーはそれぞれの分野においてビジネスを考えればよかった。例えばNTTからすればどこのISPだろうとフレッツサービスを利用してくれればよかったのであり、ISPにしても自社にいかに会員を囲い込むかを考えればよかった。サービスレイヤーのプレイヤーにとっては、ホスティング費用などは必要だとしても通信料という感覚は薄い。
ブロードバンド環境が普及したといっても有料の動画配信であれば利用者の数も限定的だったが、GyaOのようなモデルではインパクトが大きすぎたということだろう。またWinnyのようなP2Pサービスの場合、本来はこの手のヘビーユーザーに対して追加料金を負担してもらうべきなのだろが、現実的には難しい。
ブローバドバンドコンテンツを利用するユーザーの一般化とそれに伴う各プレイヤー間での適切なコスト負担。例えばYahoo!BBがNTTのに設備投資させた上で、自社はリスクを背負うことなくそれを「上手く」利用してきたように、これからの時代においては、まさに他のプレイヤーにコストを転嫁して、自分達だけがうまく儲けるといった意識ではインターネットビジネスはできない時代になったのだろう。
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