宮崎駿監督・・・先週末引退発表の記者会見をされましたね。
その後、いろいろ監督の記事を見て、とても共感してしまいました。
きっと皆さんもお感じになっていることだと思います。
今日はその中から、少しだけ気になったところ。。。
。。。
僕自身は日本のアニメーションはどんずまりにきていると思っています。
これは僕よりも二十も若い庵野っていう監督が自分で言ってるんですけれども、
「自分たちはコピー世代の最初だ。
その後の世代は全部コピーのコピーだ。
今やコピーのコピーのコピーになっている。
それがどれほど歪んで薄くなるかわかるだろう。
自分の目で見たものを拾ってきたんじゃない」
っていう言い方をしています。
それは、若い人達と僕は日常的につきあっていますから、僕自身も痛切に感じていることですね。
たぶんこれは日本のアニメーションとかなんとかっていうことだけに限らないで、今の日本で一番はやっている生活の仕方に、なにか根本的に問題があるんじゃないかなっていうところにたどりつかざるを得ないですね。
こんなだらしない国、いったいどうなっちゃったんだろうって思うんです。
よってたかってこの国をこうやってきた。
僕らもアニメーション作って、ビデオをずいぶん売って、いまでも売ってますけども、それでその一端を担ってるんですが……。
うちの子は一日三度は必ずトトロを観ますとかね。
トトロを三回、もしつけとくとですね四時間か五時間位はテレビの前にいることです。その子が。その五時間の間にその子が本当ならどれだけの体験ができるのかってことですね。
トトロに抱きついてブラウン管にキスしたって何も学ぶことはないですよ。そこまでは…、まあトトロのパッケージに書きゃいいのかもしれませんけど、誕生日だけ観て下さいとかね。
そんなことやっててまともな子が育つはずないんだよね。そりゃ、人も殺すしバットで殴るよ。
そんな当たり前のことをなぜ指摘しないんだろうと思うんです。
これは一軒の家庭の親がなんとかして自分の子どもだけまともにしようとしても無理なんですよ。
これは。みなさんわかると思うんですけど。なんとかして地域や子ども達の育て方や、環境、子ども達の感覚がもっとバランスをもって発達できるような空間を意識的に作らなきゃならない。
株価がいくら上がったかなんてそれはどうでもいいことなんです。子ども達が元気かどうかってことだと思うんです。
僕は児童文学の多くの作品に影響を受けてこの世界に入った人間なので、基本的に子どもたちに
「この世は生きるに値するのだ」ということを伝えるのが自分たちの仕事の根幹になくてはいけないと思ってやってきました。
それは今でも変わっていません。
火を消せない、ナイフを使うこともできないのに、キーボードのキーは扱えるような民族が、健康に生きていけるわけがないと思います。
もっとバランスのとれた生活をしないと。
経済よりも、子供が元気に育つかどうかが大切です。
僕のビデオが喜ばれれば喜ばれるほど、僕はジレンマに陥ってしまいます。
。。。
どこかでブレーキをかけなくちゃいけない。
ともおっしゃっています。
世界の舞台で認められ、受賞された時も、
こんなケチくさい事のためにやっているんじゃないんですよ。自分が今までやってきたことの先にこういう賞が待っているとは思いません。子供たちが喜び、たくさんのお客さんにみてもらった時点で、この映画は報われたと思っています。でも色々な賞をいただいたので、盆と正月とクリスマスが一緒に来たような気分です。
むろん監督としては、晴れやかな喜ばしい気持ちであるに違いないんです。
待てよ。。と。。
そんなことの評価に踊っていてはいけないのだと、ご自身でも戒めていらっしゃるのではないでしょうか。
今回の「風たちぬ」の映画が公開されるまでの何年かを追ったドキュメンタリー番組がNHKで放送されたのをご覧になった方もいらっしゃるかと思います。
印象深いところはたくさんありましたが、公開初日の大盛況・・・多くの人を動員した華やかな劇場の様子とは裏腹に、自分のオフィスの片隅で、自分で買ってきたと仰る、玉ねぎ入りのカレーラーメンを自身で作られ食べながら「これで日常が戻ってきた」・・・と・・・
何が自分の本当の「仕事」なのか、本当に深く考えていらっしゃるのだと思います。
それが世界の宮崎駿監督たる「所以・・ゆえん」なのでしょう。