まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

Q.もしも動物が言語能力をもったら?

2012-09-22 17:06:59 | 人間文化論
これは三中ではなくて、看護教員養成講座でもらったんだったと思いますが、
こんな質問も頂戴していました。

Q.もし他の動物も言語能力をもち、人間の社会に動物が出てきたら、
  [人間は動物に] 支配されますか?
  それとも、支配されずに、人間が権力を持ち続けることができますか?

これは三中でのQ.4の続きの質問になっていますね。
日光の猿が進化して猿でなくなってしまったらどうなるのか、ということでしょう。
これはたいへん難しい質問です。
質問のなかで 「もしも言語能力をもったら」 と仮定しているのが重要です。
言葉を操れるようになる、それはすなわち、理性 (=考える能力) をもつということです。
さまざまな進化のしかたが考えられますが、
言葉をもち、理性をもつようになるということはまさに、
他の動物とは別格の、人間と同格の存在者になるということでしょう。
(私が人間中心主義者という意味でのヒューマニストであることはバレバレですね)
そうなったとき、当然、人間とその新しい生物とのあいだに抗争が生じることはたしかでしょう。
一般的に抗争が生じた時、その決着のしかたは3種類あると思います。

①一方が他方を絶滅させる。
②一方が他方を従属させ、支配する。
③両者が平和共存する。

①だと結果がクリアでわかりやすいですね。
生き残るのはどちらか一方だけです。
はたして人間が勝つのか、新生物が勝つのか。
これはやってみないことにはわからないでしょう。
新生物がどれほどの知能を備えているのか。
勝敗はそれ次第だと思います。

もしもこの路線で行くのだとしたら、新生物があまり知能を発展させないうちに、
あまり知識や経験を蓄積させないうちに早めに叩くことが必要でしょう。
しかし、なかなかそういうことはできないかもしれません。
話しはじめの赤ちゃんってカワイイですよね。
それと同様に日光の猿が話しはじめたらけっこうカワイイだろうと思うのです。
世界中のワイドショーで取り上げられて、それはもう人気者になってしまうと思います。
それを 「今のうちに絶滅させるべきだ」 と私が正論を唱えても、
だれも耳を貸してくれないでしょう。
そうこうするうちに敵は知能や知識を発展させて、
こちらの予想を超えた力を身につけてしまうかもしれない。
そうなったあとに抗争が勃発したら、やっぱり結果はどうなるかわからないですね。
人間が勝つか、新生物が勝つか、五分五分といったところでしょう。

質問者は②を前提で質問していらっしゃるようでした。
相手を絶滅させてしまわずに支配下に置くという方法です。
闇雲に①を考えるよりも②のほうが真っ当な考え方だと思います。
なぜなら相手は言葉を話すからです。
言葉をもっているのならば、それは大枠の部分で翻訳可能なはずで、
となるといずれ相互に意思疎通が可能になるはずです。
意思疎通が可能な相手を有無も言わさず絶滅させるというのは倫理学的に許されません。
ですので、②か③が倫理学的に許容されうる選択肢となります。

②の路線で行く場合、これもどちらが勝つのか答えはありません。
新生物の進化具合によりますし、時の運とかもあるでしょう。
そして、②の場合①のときと比べてさらに難しいのは、
ある時点での勝敗がその後もずーっと続くかどうか定かでないという問題があります。
一時的に人間が新生物を支配できていたとしても、
あるときに反乱が起きて逆転してしまう可能性があるからです。
人間の中でも長らく白人が黒人を、男性が女性を支配してきて、
未だにその支配は根強く残ってはいますが、
しかし少しずつその支配力は弱まりつつあります。
このように歴史のなかで支配―被支配関係は変更が可能なのです。
だから、人間が相手をずーっと支配し続けられるかというと、
なかなかそうはいかないだろうというのが私の予想です。

最後に③ですが、私はけっきょくこれに落ち着くのではないかと思っています。
以前に宇宙人問題をちょっとだけ論じたことがありますが、
実は今回の問題は宇宙人問題とまったく同じだと思っています。
つまり、理性をもつ人間以外の存在者とどのように接するべきか、という問題なのです。
そして、①絶滅させるか、②奴隷のように服従させるか、③平和共存するかという、
3つの選択肢があるとしたら、最終的に第3の道を選ばざるをえないと思うのです。
①は論外で、②は逆転可能なわけですが、
②で逆転したとしてもその支配もいつかまた逆転させられるかもしれません。
それを永遠に繰り返すかというと、人類史を見ているとそうはなっていないように思うのです。
各国、各民族は戦争を繰り広げて支配したりされたりを繰り返してきましたが、
けっきょくのところ国境を定めて平和共存に落ち着かざるをえないように思えます。
人種問題、男女問題はよりいっそう顕著ですが、
長年支配されてきたほうが支配を脱して、自らが支配する側に立とうとしているかというと、
けっしてそうではなくて、平等に共存することを目指しています。
したがって、プロセスにおいては支配したりされたりという関係が成り立ったとしても、
それが永続することはできず、けっきょく最後は平和共存に落ち着かざるをえないと思うのです。
というわけで、今回のお答えは以下の通りです。

A.人間が新生物を支配し続けるということは難しいでしょう。
  長い時間ののち、最終的には両者が平和共存するようになると思います。