鬼塚専務がまるで鬼のような形相で迫ってきました。
「加藤…極秘だぜ」
わかっていんな!
顔で物を言う凄みです
「はい」
ごくりと唾を飲み込んで加藤課長は覚悟を決めました。
だいたいが総務の仕事は立場上極秘が多いのですが、
会社のトップから依頼されるのはさすがにそうはありません…
へたすりゃあこっちの首が飛ぶかもね 、
加藤課長は鬼塚専務を負けずに見返しました。
うん、 専務もうなずきます。
沈黙の喫煙室はファンが低く唸っているだけです。
紫煙のたなびきが流れ始めています。
「実はなぁ沢田の事だが…」
ようやく漏れた専務の口から思わない名前が上がりました。
沢田さんは言わずと知れた総務の一社員でした。
さっきの河田部長の騒動も沢田さんが原因でしたが…
しかし専務ともあろう人がわざわざ平の社員に拘るのだろうか… まさか「俺の女だから便宜を図れ!?」
なんて話じゃあないだろうなぁ(苦笑)
加藤課長の思惑は見事にハズレでした。
「あの沢田はうちの創立者の孫なんだよ」
「そうりつ…まご…」
あまりに突拍子過ぎて加藤課長は理解できませんでした。
「うちの会社の筆頭株主なんだよ」
「そうか…」
確か株主名簿のトップは個人名だったぞ。
けど沢田、じゃあなかった気がするが…
そこまで思い出しましたが、
果たして、専務は「あれは母方の苗字を名乗っているからだ」
加藤課長の考えているのを先回りしていました。
「…」そうか…だから役員は誰もが沢田さんには丁重に対応しているんだな
はじめて気がつきました。
「これがわかったのは去年なんだ…」
創業家は一昨年当主が亡くなりました。お家断絶かと思っていたら、末の子が母親の生家に養女で残っていたのでした。 それを探し当てた結果直系にあたる沢田さんが生きているのが判明したのです。
沢田さんは残された株式を全て相続しました。つまり一躍一部上場企業の筆頭株主に躍り出たのです。
会社は既に創業当時から大変貌を遂げ今や日本を代表するまでになりました。
創業者一族は株式の保有は堅持していましたが、経営には一切タッチしてきませんでした。 年商一兆円を超える規模になれば、世継ぎ制度に無理があると賢明な判断があってのことなのでしょうね。 ダイエーなどはその典型的でしたね(苦笑)会社の規模が大きくなるにつれ資本金も増します。従って創業者一族の株式の保有比率は下がっていきますが、それでも12%を誇っています。
これはやはり無視できる数字ではないのでしょうね。
ただしこの件はトップクラスのシークレットです。
問題は今までの創業者はタッチしていませんでしたが、今回相続したのは紛れもなく社員でした。
それも総務に所属する普通のおばちゃん♪でしたから始末が悪いのです。
株主でこれくらい保有していると、その発言力は抜群で、平取り(平取締役)なんか簡単に首のすげ替えが出来るほどです。
果たして専務は弱った顔に変わります。
「いいか!!加藤…この話はオフレコだぞ!!漏れたりしたらこれだからな!」
右手の人差し指が加藤課長の目の前でシューと走ります。
「はいわかりました、」乾いた唇を舌で舐めると加藤課長は聞き返しました。
「それで私の仕事は!?」
「ああ…沢田さんの動きをよく観察していて欲しい何か変わったことがあれば高辻さんか俺に連絡してくれ!」高辻役員は唯一この営業所にいらっしゃる取締役でした。
何度も出てこられましたが、鬼塚専務の盟友であります。
「それで近々彼女を連れて…いや総務課全員で飲み会をやれよ」
「経費は高辻さんに回したらいいから… 」
「飲み会で探るわけですね♪」
「ああ…何か不満があるかそれとなく探ってくれ!」
それだけ言うと専務は喫煙室を出ていきました。
それを見送る加藤課長…
「ああ…厄介な猫はここにいたのか…」
「加藤…極秘だぜ」
わかっていんな!
顔で物を言う凄みです
「はい」
ごくりと唾を飲み込んで加藤課長は覚悟を決めました。
だいたいが総務の仕事は立場上極秘が多いのですが、
会社のトップから依頼されるのはさすがにそうはありません…
へたすりゃあこっちの首が飛ぶかもね 、
加藤課長は鬼塚専務を負けずに見返しました。
うん、 専務もうなずきます。
沈黙の喫煙室はファンが低く唸っているだけです。
紫煙のたなびきが流れ始めています。
「実はなぁ沢田の事だが…」
ようやく漏れた専務の口から思わない名前が上がりました。
沢田さんは言わずと知れた総務の一社員でした。
さっきの河田部長の騒動も沢田さんが原因でしたが…
しかし専務ともあろう人がわざわざ平の社員に拘るのだろうか… まさか「俺の女だから便宜を図れ!?」
なんて話じゃあないだろうなぁ(苦笑)
加藤課長の思惑は見事にハズレでした。
「あの沢田はうちの創立者の孫なんだよ」
「そうりつ…まご…」
あまりに突拍子過ぎて加藤課長は理解できませんでした。
「うちの会社の筆頭株主なんだよ」
「そうか…」
確か株主名簿のトップは個人名だったぞ。
けど沢田、じゃあなかった気がするが…
そこまで思い出しましたが、
果たして、専務は「あれは母方の苗字を名乗っているからだ」
加藤課長の考えているのを先回りしていました。
「…」そうか…だから役員は誰もが沢田さんには丁重に対応しているんだな
はじめて気がつきました。
「これがわかったのは去年なんだ…」
創業家は一昨年当主が亡くなりました。お家断絶かと思っていたら、末の子が母親の生家に養女で残っていたのでした。 それを探し当てた結果直系にあたる沢田さんが生きているのが判明したのです。
沢田さんは残された株式を全て相続しました。つまり一躍一部上場企業の筆頭株主に躍り出たのです。
会社は既に創業当時から大変貌を遂げ今や日本を代表するまでになりました。
創業者一族は株式の保有は堅持していましたが、経営には一切タッチしてきませんでした。 年商一兆円を超える規模になれば、世継ぎ制度に無理があると賢明な判断があってのことなのでしょうね。 ダイエーなどはその典型的でしたね(苦笑)会社の規模が大きくなるにつれ資本金も増します。従って創業者一族の株式の保有比率は下がっていきますが、それでも12%を誇っています。
これはやはり無視できる数字ではないのでしょうね。
ただしこの件はトップクラスのシークレットです。
問題は今までの創業者はタッチしていませんでしたが、今回相続したのは紛れもなく社員でした。
それも総務に所属する普通のおばちゃん♪でしたから始末が悪いのです。
株主でこれくらい保有していると、その発言力は抜群で、平取り(平取締役)なんか簡単に首のすげ替えが出来るほどです。
果たして専務は弱った顔に変わります。
「いいか!!加藤…この話はオフレコだぞ!!漏れたりしたらこれだからな!」
右手の人差し指が加藤課長の目の前でシューと走ります。
「はいわかりました、」乾いた唇を舌で舐めると加藤課長は聞き返しました。
「それで私の仕事は!?」
「ああ…沢田さんの動きをよく観察していて欲しい何か変わったことがあれば高辻さんか俺に連絡してくれ!」高辻役員は唯一この営業所にいらっしゃる取締役でした。
何度も出てこられましたが、鬼塚専務の盟友であります。
「それで近々彼女を連れて…いや総務課全員で飲み会をやれよ」
「経費は高辻さんに回したらいいから… 」
「飲み会で探るわけですね♪」
「ああ…何か不満があるかそれとなく探ってくれ!」
それだけ言うと専務は喫煙室を出ていきました。
それを見送る加藤課長…
「ああ…厄介な猫はここにいたのか…」