まちの安全管理センター

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ひび割れ原因も判明! 進化するICTによる維持管理

2014-05-08 19:20:02 | 日記
 トンネルや橋梁、下水道管など構造物の、ある時点での状態をいったんデータ化し、解析によって劣化箇所の発見や原因究明を行う維持管理手法が登場してきました。データ計測には3D点検車やUAV(無人飛行体)、点検ロボットも活用します。維持管理業務の効率化に役立ちそうなこうしたシステムは、これからもっと進化しそうです。
 これまでの維持管理業務は、技術者が現場に出向いて構造物を自分自身が目視点検やハンマーによる打音調査、そして写真撮影を行うという地道な作業が中心でした。しかし、膨大な量の社会インフラを管理していくためには作業効率の面で課題も多かったようです。
 そこで最近、構造物の現状をデジタル写真や3Dレーザースキャナー、電磁波レーダーなどで計測し、データ化した後に、データ解析によって異常箇所を見つけたり、原因を探ったりする維持管理手法が登場してきました。これらの手法は、道路の交通規制が不要、作業のスピードアップ、そしてデータによる異常原因の解明などのメリットがあります。そして、その性能は日々進化を続けています。
 ある会社で4月から運用を開始する新型のトンネル点検車「MIMM-R」は、トラックに3Dレーザースキャナーやデジタルカメラ、そして電磁波レーダーを搭載しています。計測検査が画像技術、三菱電機が3Dレーザースキャナー技術、ウォールナットが電磁波レーダー技術を持ち寄って共同開発したものです。
 一般の車両と同じようにトンネル内を走行しながら、内壁の形状やひび割れ、そして内壁の裏側の状態を同時に計測し、データ化するものです。そのため、従来のようにトンネル内の車線を規制することなく、維持管理の基本的なデータを取ることができます。大幅なコスト削減です。
 また、車体の前後には移動計測が可能な3Dレーザースキャナーを1台ずつ搭載しているほか、最後部には毎秒200回転しながら毎秒100万点を計測できる高精度3Dレーザースキャナーを搭載しています。
 高精度3Dレーザースキャナーは、トンネル内壁の形状を3次元データとして周方向に4mmピッチで計測するため、細かい凹凸もデータから判別できます。
 デジタルカメラと3Dレーザースキャナーだけなら、前機種の「MIMM」も搭載していました。今回の「MIMM-R」には、車体の上に電磁波レーダーを搭載しました。トンネルの頂部に向けて電波を発射し、その反射波を解析することで、内部の空洞や覆工コンクリートの厚さなどを計測することができます。
 時速50kmのスピードで走行しながら、トンネル内壁から60cm~1m奥くらいまでを“透視”する能力を持っています。
 MIMM-Rの特徴は、トンネル全長にわたるデータを連続して収集できること、そして複数のデータを重ね合わせて比較できることです。そしてデータはグラフや色分けなどでわかりやすく“見える化”できます。
 例えば、電磁波レーダーのデータからは、トンネル覆工のコンクリート厚や空洞の大小、そしてその分布などをグラフ化できます。トンネルの現状を知っておくことは、異常が発生したときの対策や改修計画の検討などを行ううえでとても重要です。目に見えないコンクリート内部の点検は、今まで打音と目視による検査しか出来なかったので。
 また、3Dレーザースキャナーの計測結果は、以前の測定結果と比較することで、各部分の変位を求めるのに役立ちます。変位の方向や大きさなどを色分けして面的な分布として表示できます。
 トンネルの覆工コンクリートには、ひび割れが発生することがよくあるが、その原因は地盤の外力による変形なのか、乾燥収縮によるものなのかは見た目だけではなかなか分かりません。後者の場合は大きな問題ではないが、前者の場合は対策を考える必要があるため、ひび割れの原因はできるだけ早急に突き止める必要があります。
 こんな場合は、ひび割れの位置や形状とトンネル内壁の変位を重ね合わせて見ることで、ひび割れの原因を知ることができます。内壁の変位が大きい部分とひび割れが重なるように伸びている場合は外力が原因と考えられます。一方、変位と全く関係がないひび割れは乾燥収縮によるものと考えられます。
 0.2mm以上のひび割れを検出でき、ひび割れ幅や長さ、位置などを正確に捉え、ひび割れ図を作成できます。
 また、コンクリートのはく離部分なども3D化されているので、かぶりコンクリートがはがれた部分など、凹凸の寸法を1mm単位で測定できます。すごい技術です。
 日本の下水道管路の延長は約45万kmとなります。このうち約1万kmが、下水道の耐用年数とされる50年を経過しています。老朽化対策のためにも、下水道管路の調査や改修は待ったなしの状態です。倒壊する前に早急な点検・補修が必要です。
 そこで、日本下水道事業団と日本電気は、千葉県船橋市の下水道管路を対象に管路マネジメントシステムを共同で開発し、現場でのフィールドテストを行っています。その主役となる調査ロボットは全長約120cm、高さ約15cmで重さは約30kgだ。速さは毎分10mで、ゲームパッドを使って簡単に操縦できます。
 これまでのロボットによる下水道管路調査は、技術者がロボットから送られてくる管内の映像をモニター画面で見ながら、異常箇所を見つけるというものでした。また、ロボットの長距離走行が難しいため、1日の調査は200~300mが一般的でした。
 その点、今回の調査ロボットは、映像を画像解析することにより、不具合箇所を効率的に見つけられます。また、小型・低消費電力のCPUを採用し、ロボット内部の情報処理を省エネ化するとともに、内蔵バッテリーで長時間駆動を可能にしたことなどにより、調査できる距離は1日1000m程度まで延びたようです。日本の最新技術は凄いです。
 さらに、地上と調査ロボットをつなぐケーブルの強靭化も図られ、従来のケーブルより細いにもかかわらず、数百キログラムの荷重に耐えられるようになりました。