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春の小川

2014-05-14 19:56:45 | 日記
 東京・渋谷駅周辺の再開発に伴って今春、渋谷駅東口駅前広場の地下を北から南に流れる渋谷川の暗渠が半世紀ぶりに地上に姿を現しました。かつて渋谷川に流れ込んでいた支川は、唱歌「春の小川」のモデルといわれています。再開発によって、現在はほとんど水がなく干上がった渋谷川に清流を復活させ、川沿いに新たな水辺空間を創出させます。
 渋谷川は、JR渋谷駅のすぐ東側を“最上流”とする長さ約2kmの二級河川です。下流で名前が古川に変わり、長さ約4kmの開水路を通って東京湾にそそぎ込みます。渋谷川のうち、バス乗り場などがある東口駅前広場を横断する250mほどの区間は、長らく暗渠となっていました。
 2014年1月、この暗渠の内部を目にすることができると話題になりました。暗渠の蓋として架けられていた桁の一部が撤去されたからです。この工事は、「駅街区開発計画」で実施しているものの一つです。同計画は都市再生特別地区の再開発事業として東急とJR東日本、東京メトロが東京都に提案し、都が13年6月に都市計画決定しました。この再開発事業によって、渋谷駅の東口には高さ約230mの駅ビルとなる東棟が建つ予定です。渋谷川は暗渠区間を現在よりも東側に移設し、駅前広場の地下に雨水の貯留施設を設けるそうです。
 移設する渋谷川の水路は、東棟と地上部、13年3月に地下化した東急東横線の地下駅などとを垂直につなぐ「東口アーバンコア」のそばを通る計画となっています。エスカレーターやエレベーターといった上下の動線を設ける東口アーバンコアの地下1階付近を水路が横断します。水路の構造は鉄筋コンクリート(RC)造のボックスカルバートで、内空断面は幅が約10m、高さが約4m。この水路への切り替えは15年4月ごろを予定しています。切り替え前の渋谷川は、東口駅前広場のほか東急百貨店東横店東館の地下1階部分を流れていました。東京都建設局河川部によると、渋谷川の流路を変更するのは「再開発の工事に支障がないようにするため」です。
 暗渠であり、かつ平常時に水流がない現状に合わせて、移設する約250mの区間は河川から下水道に法的な位置付けを変えます。東京都は09年6月に都市計画変更を決定しました。同区間の渋谷川について、都市計画河川の指定から外しました。
 東京都は、流路を切り替えた後のできるだけ早いタイミングで、管理を都の建設局河川部から下水道局に引き継ぐ予定だそうです。雨水の貯留施設などと組み合わせて、総合的な治水対策を講じます。
 東口駅前広場の地下に設ける雨水の貯留施設は、RC造で平面が約20m×約50m、深さが約25mの大きさです。最深部が地下を通る東急東横線の軌道とほぼ同じ位置となるようにつくる計画です。集中豪雨などで1時間に75mmの雨が降っても、雨水を一時的にためることで、渋谷駅周辺の地下街などが浸水しないようにします。
 元々の渋谷川は、渋谷駅から3kmほど北側にある新宿御苑の湧水などが水源です。渋谷駅のすぐ北側で支川と合流した後、東口駅前広場のある場所を南に向けて流れていました。合流する支川の一つが唱歌「春の小川」のモデルといわれています。かつて小川が流れていた小田急小田原線の代々木八幡駅近くには歌碑が残っています。
 長らく水の流れなかった渋谷川ですが、95年3月に水流が復活しました。渋谷駅東口駅前広場から500mほど南にある並木橋付近に下水の高度処理水を放流し始めたからです。渋谷川の同橋から下流側に水が流れるようになりました。
 これは東京都の清流復活事業によるもので、水を失った河川や用水路に水流を復活させます。
 高度処理水は、東京都新宿区にある「落合水再生センター」から供給しています。並木橋付近の護岸に設けた放流口から、1日当たり約2万m3を放流しています。ただし、並木橋より上流側に恩恵はなく、豪雨時以外はほとんど干上がった状態が現在も続いています。
 渋谷駅周辺の再開発の一つとして現在、JR渋谷駅よりも南側の渋谷川沿いのエリアで「渋谷駅南街区プロジェクト」が計画されています。同プロジェクトは、都市再生特別地区の再開発事業として東急が提案しました。東京都が13年6月に都市計画決定しました。 同プロジェクトでは、今でもほとんど水流のない渋谷川の並木橋から上流側に水辺空間を創出します。そのために今後、下水の高度処理水を放流するための管路を、並木橋から500mほど上流側に移設。護岸の壁伝いに高度処理水を流す「壁泉」と呼ばれる水景施設を整備する計画です。
 さらに、渋谷川をまたぐように2カ所の広場を整備して、イベントなどにも活用します。渋谷川沿いの600mの区間には遊歩道を設けて高木を植えたり、ツタで護岸を緑化したりするそうです。
 清流復活事業に供給する下水の高度処理水は、沈殿処理や微生物を利用した反応処理といった通常の下水処理に加え、紫外線を使って殺菌処理したものとなります。「春の小川」の歌詞に出てくるメダカやコブナが泳ぐには、水質の問題はなさそうです。 しかし、計画している放流量は1日当たり約2万m3で今と変わらず、メダカやコブナの復活には水量が足りそうもありません。 渋谷区も清流の復活とはいえ、メダカやコブナが泳ぐ小川の実現までは想定していません。個人的には、魚が泳ぐ川を目指してほしいですが。
 まずは、水が流れる渋谷川沿いに、歩行者が快適に通行できる遊歩道を設けます。豪雨時の安全などを確保するため、歩行者が直接、渋谷川の水に触れることのできる親水空間の整備も難しいそうです。都市再生特別地区では、地域のまちづくりの考え方と整合することなどを条件に、地域再生への貢献度に応じて容積率などが緩和されます。渋谷駅南街区プロジェクトでは広場などの整備によって、容積率が現在の平均716%から1350%に緩和されます。
 渋谷駅南街区プロジェクトにおいて、東急は計7棟のビルを建設するそうです。13年3月の地下化によって不要となった東急東横線の高架橋を生かして、国道246号の上空に渋谷駅と南街区とをつなぐ歩行者専用の横断デッキを整備するそうです。 渋谷川の右岸には、旧東横線の高架橋の跡地があります。14年4月末時点で高架橋の撤去をほぼ終えた状態です。渋谷駅南街区プロジェクトは、都市計画決定した13年6月時点で18年3月末までが工期です。一方、駅街区開発計画に位置付けられ、東口アーバンコアなどを設ける東棟は20年の開業を予定しています。