LITALICOサイトより引用
ADHDを発症している子どもの20~56%は二次障害として反抗挑戦性障害を発症するとされ、発症する確率は3歳の子どもが一番高いといわれています。 他にも、不安症群やうつ病との合併のリスクも高いといわれています。反抗挑戦性障害の怒りっぽい、気分の波が激しいなどの症状が、これらの疾患と重複する傾向にあるからです。
ADHDと反抗挑戦性障害の関わり
反抗挑戦性障害とADHDは強い関わりがあり、年齢を重ねるとともに合併する可能性が高くなると指摘されています。そのときは、元々ADHDがある人が“人間不信的行動”という二次障害として反抗挑戦性障害を発症する場合が多いです。 人間不信的行動とは、自尊心・自己肯定感が低下して「自分はダメな人間かもしれない」と思い、そんな自分のことを誰も理解してくれないという気持ちから、周囲の人を信じれなくなったときに起こしてしまう行動のことを指します。 ADHDのある人は、自分自身がADHDであることを認識していないケースも多く、周りから理解が得られていない場合も多いです。そのため知らない間に人間不信になり、反抗挑戦性障害を発症しているということも少なくないのです。
またADHDには主に、不注意優勢型、多動性・衝動性優勢型、混合型の3つのタイプがあります。
その中でも、不注意優勢型のADHDのほうが反抗挑戦性障害の症状が比較的軽い傾向にあります。
ADHDの二次障害としての反抗挑戦性障害の症状 ADHDのある子どもとその家族の間でおこる衝突の多くは、合併症としての反抗挑戦性障害が関与している場合があります。そこで衝突・喧嘩をする回数が過度に多いときはADHDではなく、反抗挑戦性障害が原因かもしれないと考えることが重要です。
ADHDに反抗挑戦性障害が合併すると、対立や怒りの感情の発生、コミュニケーションの障害によって、単なる衝突・喧嘩にとどまらない対人関係への悪影響が多く発生します。
ADHDと反抗挑戦性障害のある10代の子どもの多くは、その子の症状に加え母親の精神的苦悩が加わり、親子間の対立や悪影響を及ぼし合う状況が発生することが分かっています。
反抗挑戦性障害が気になったときの相談先 反抗挑戦性障害は素行症(行為障害)やADHD、うつ病などの、さまざまな合併症と関わりあっている場合が多く、年を重ねるにつれ症状が複雑化しやすい傾向があります。 また、年齢が上がってからの治療は、本人が治療に抵抗することがあるため、早期の診察・治療が望ましいとされています。 感情の波が激しく怒りっぽかったり、口論が絶えなかったりする場合は以下の相談先に相談するか、医療機関の受診をおすすめします。
反抗挑戦性障害の治療法
反抗挑戦性障害の治療は
・症状を緩和すること
・患者が社会生活を送る上で発生するトラブルを少なくすること
・家族のストレスを軽減すること
・行為障害への進行を予防すること
を目的として実施されます。
治療法として主に薬物療法、社会技能訓練、認知的技能訓練、ペアレント・トレーニングなどがあります。
薬物療法に関しては、反抗挑戦性障害の原因に直接的に効果がある薬がまだ開発されていないため、興奮や衝動性などの症状を抑える薬が処方されます。 社会技能訓練は、反抗挑戦性障害のある人が、大人や友達がいる場で周囲のサポートを受けながら行う、社会での過ごし方を取得する訓練です。正しいコミュニケーション方法のとりかた、怒りや拒絶の感情が発生したときの対処法、目上の人との適切なやり取りのしかたなどの練習を行います。 また、否定的な物事の捉え方や考え方を修正し、トラブルが起こらない意見の言い方を獲得するための治療を認知的技能訓練といいます。トラブルを起こさないように、自分で課題解決が行えることを目的としています。 反抗挑戦性障害のある本人ではなく、その保護者が子どもとの関わり方を訓練する、ペアレント・トレーニングという支援もあります。主に、保護者の対応方法を変えられるようになることを目的としています。 保護者は子どもの反抗的な行動の動機・行動のパターンを理解し分析することによって、問題行動に対して上手く対応し、子どもの反抗的な行動を減少させることを目指します。 日本ではアメリカで開発されたペアレント・トレーニングを日本向けに改良した治療法が実施されており、訓練を受けたトレーナーの指導の下で行われています。
反抗性挑戦性障害がある子どもへの対応方法・接し方
タイプ別対応方法 3つのタイプ(過興奮型、すね型、マイペース型)別に、対応法を解説します。
■過興奮型
過興奮型の子どもは指示に素直に従えず、無視するか、返事はするものの結局やらない傾向があります。このような状態にもかかわらず指示を繰り返すと、興奮して暴言を返してくるなど、売りことばに買いことばとなってしまいがちです。 「指示に従ったら自分の負けだ」と、誰に対しても、勝ち負けの気持ちが働いてしまうことが主な原因です
このような過興奮型には、前もって約束する方法が適切です。その場ですぐに「~しなさい」と命令するのではなく、前もって約束したことを思い出させるようにします。そうすることで子どもにとって親との戦いではなく、約束を守るかどうかという「自分との戦い」となるように誘導します。 具体的なポイントとして、子どもが約束を思い出せないときは、「何を約束したっけ?」と内容を聞き出すのではなく、まず約束したという事実を伝え、「お風呂、遊ぶ、どっちかな?」と二択の質問にします。ことばだけでは伝わらないときには、絵カードを用いて選ばせることもおすすめです。
ADHDと反抗挑戦性障害を合併している子どもへの家族の対応
ADHDと反抗挑戦性障害を合併している子どもと家族がうまく関わっていく上で、重要な4つのポイントを紹介します。
1. 感情的に対応しない: 子どもが感情的に話をする場合には「静かに話すこと」を促し、落ち着くまで相手をしないようにしましょう。ちょっとしたことでも感情的に反応してしまう傾向があり、周囲の人々がそれに対して感情的に接すると状況が悪化してしまう恐れがあります。
2. 父親に理解してもらう 多くの家庭は子どもと多くの時間を過ごすのは母親である場合が多いです。そのため、たとえ子どもと母親の関係が悪化しても父親はあまり状況をつかめず、子育てから離れるようになってしまうケースも少なくありません。 一方、子どもは普段一緒に過ごす時間が少なく、あまり反抗する相手とはならない父親の話にはよく耳を傾けることも多いため、父親が話し合いに加わることで冷静な話し合いができるということも考えられます。 思春期を乗り越えていくときのことも含めて子どもを上手に育てていくには、父親の理解を得てみんなで協力していくことが重要です。
3.約束を守りきる経験を積ませる: ADHDと反抗挑戦性障害を合併している子どもは約束したことをなかなか守れないという傾向があります。 しかしそのような傾向があるからといって諦めたり大目に見続けたりすると、子どもはどんどん約束を守ろうとしなくなります。そのため子どもの特性を理解し守りきる約束をすることが大切です。 守れたらたくさん褒める、破ったらなんで守れなかったのかきちんと話し合うとあらかじめ明確に決めておくことがポイントです。また約束を守れなかったときには簡単に許さず、譲らないようにしましょう。
4. 子どもに期待し、ポジティブになる: 過去のことを責めても子どもの自尊心が低下し、状況や症状が悪化する場合が多いです。これからの成長に期待しネガティブになりすぎないことが子どもの心の健康のために重要です。