日比谷線は通勤客でぎゅうぎゅう。
小さいわたしは谷の底から乗客を見上げる感じ。
夫の手を必死に握りしめていた。
電車が揺れるたび体が倒れかける。
そのたびに夫の手に力が入って引き寄せてくれる。
やっと仲御徒町で下車。
大江戸線に乗り換え。
いつもの決まった乗車口で乗ろうとした。
なんとなく同じ車両に乗りたくない人がいた。
車両を一つずらして乗車。
若松河田で下車。
エレベーターに向かった。
エレベーターの前に先ほどの人がいた。
わたしの足は反射的に階段へ向いていた。
しかし、夫が出かけに膝が痛いと言っていた。
思い直してエレベーターに乗り込んだ。
あとから5、6人無理に。
これ以上は無理とおもった。
身のおきどころがない。
開閉ボタンを押すにも隙間がない。
誰かが叫んだ。
改札口のボタンを押すように。
たまたま夫の前がかろうじて開いていた。
夫が改札口へのボタンを押した。
動かない。
夫が間違って押したのかと内心ハラハラしていた。
数分間何度押しても、閉じたドアは開かない。
7~8分身動きできないまま不安がつのる。
だんだん汗ばんでくる。
ときおりギィという鋭い音。
やっと解放された。
映画でよくエレベーターに閉じ込められる場面がある。
特に印象に残っているのは「死刑台のエレベーター」
数分間の出来事だったが二度と味わいたくない。
これからはできる限りエレベーターは避けることにしよう。
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夫の手を必死に握りしめていた。
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