もるるんのよくばりポケット

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こまつ座 第147回公演 「闇に咲く花」 見てきました

2023-08-26 14:58:15 | お芝居

こまつ座 第147回公演 「闇に咲く花」 紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA 2023.08.17 18:00~

こまつ座を見るのは意外にも初めて。
別に敬遠してたわけでもなく、気になった芝居もあったけど、タイミングが合わずといった感じ。
今回は松下洸平くん見たさにチケットゲットしました。

あらすじは、
「昭和二十二年、夏、東京神田。
焼跡の愛敬稲荷神社に、伝説のエース投手が帰ってきた。

進駐軍占領下、今日を生き抜くために人びとは闇の売り買いに必死だった。
一人息子の健太郎を戦地で失った愛敬稲荷神社の神主牛木公磨も、今では近くに住む五人の未亡人たちと寄り合って、闇米の調達に奔走している。
そんなある夏の日、死んだはずの健太郎が愛敬稲荷神社に帰ってきた。境内に笑顔は弾け、人びとは再会を喜び合う。しかしその喜びもつかの間、健太郎の背後には、巨きな黒い影がしのびよっていた・・・・。」(公式より)

終戦後の神田の神社が物語の舞台。
神主の牛木公磨(山西さん)は5人の未亡人の協力のもと、お面工場を経営しているが、、、それは隠れ蓑。
本業はヤミ米の売り買いだった。
地域の警官(尾上さん)もしっかりヤミ米の売買にかんでいる状態。
公麿の息子である健太郎(松下くん)は戦地で戦死したのだった。
ある日、健太郎の親友で、中学校の野球部でバッテリーを組んでいた稲垣(浅利くん)が復員してくる。
健太郎はピッチャーで剛速球。高校卒業後は職業野球の選手だった。
稲垣は精神科医であったが、しばらくは公麿たちを手伝うこととなる。
健太郎は実は神社に置き去りにされていた捨て子で、そのことを初めて公麿は稲垣たちに明かす。
健太郎自身も知らないことだった。

神社では、おみくじを作ることとなった。できたものを試しにみんなで引いてみると、、、、
なんとみんな「大吉」。みんなそれぞれ問題が解決したり、願いがかなったりする。
公麿も引いてみると「大吉」
彼の願いがかなうとは。。。なんと、健太郎が生還してきたのだった。
健太郎は記憶を失ったまま捕虜となり、収容所にいたのだが、近くで野球をしていたときに、
ボールが頭にあたり、その衝撃で記憶を取り戻し、生還できたのだった。

健太郎はプロ野球チームの入団テストを受け、入団も決まった。
しかし、健太郎の引いたおみくじは「凶」

公麿は喜んで、神社本庁の組織にも参加するようになる。これからの基盤を安定させようとしていたのだったが、
今までの神社の在り方と、違うことなので、それでいいのかと健太郎たちは心配する。
公麿は「昔のことは忘れた」と気にしないようだが。

しかし、健太郎のところにGHQの男がやってくる。
健太郎を戦犯容疑で逮捕するという。健太郎が捕虜の時、現地の人たちと野球をしていて、そのボールが青年の頭にあたり、
彼は脳震盪を起こして入院した。それが「虐待」にあたるのだという。
健太郎はショックを受け、また記憶障害を起こしてしまった。

記憶が戻ったら即連行されてしまう。稲垣は健太郎の主治医となって、記憶の回復に努めようとする。
公麿たちは回復すれば、つれていかれてしまうので、稲垣の治療を止めようとするが、
稲垣は回復したら、自分の田舎の秩父でかくまうつもりだと話す。
稲垣は、野球チームのメンバーのその後を健太郎に話す。全員が戦時中に亡くなっていた。
だんだんと、健太郎は記憶を取り戻していく。
戦争の記憶、そして自分が捨て子だった記憶。。。ここ神社の記憶。

記憶を取り戻した健太郎は公麿に神社の在り方を問う。
神社は本来、人々が集い、人々に寄り添い、生きる力を送る場所であったにもかかわらず、
戦時中は国家のための神道として利用され、出征する人を送ったり、遺体安置所になったりしていた。
それは神社のやることではない。そして公麿が、戦争の記憶を忘れて、忘れたふりをして、本庁の組織に協力することを
批判したのだった。
しかし、タイミング悪く、それを警官がもたされた盗聴器によって、GHQに聞かれてしまっていた。
健太郎は正気にもどったと判断され、そして自身も「僕は正気です」と認め、連行されてしまった。

健太郎はその後、裁判にかけられて処刑されてしまった。
公麿は神社を売ろうとしたが、盗聴の片棒をかついだ警官が、贖罪の意味か、警官をやめて神社の副宮司になって
切り盛りしている。
公麿は混血の子二人をみんなと育てていた。二人とも捨て子である。神社は何でも受け入れる場所だから。
稲垣が健太郎は本当に帰ってきてくれてたのかと問うと、
公麿は「ここは神社です。神社になったんです」という・・・

太平洋戦争からもう80年近く。戦争のことを知っている人は少なくなってしまった。
だからこそ、こういう芝居も大事だなと、今回痛感した。。。
正直、こういう系の芝居は苦手ではあるんだけど、それでも残していかないといけないものはあると。。。

神社というと、初もうで、おみくじ、絵馬、願い事。。。そういうイメージしかないんだけど、
その地域のよりどころとして、古くから存在しているもの。
だけど、戦時中は戦争のために利用されていた。。。国家神道ですよね。
健太郎は父公麿が、神社の本庁組織に入り、以前の神社と違ったものに取り込まれていくことを懸念した。
「つい、少し前におこったことを忘れてしまってはいけない」
これが、この芝居で一番伝えたかったことなんだなと、、、感じました。

今、この時代、戦争、核ミサイル、そういうことが繰り返されようとしているとは・・・
実際の当事者である日本が、もっと発信する必要があるのでは、と強く感じました。
忘れてはいけないことがたくさんある!

この芝居、ギターの加藤さんが、舞台下手の一段低いところで、ずっと演奏していて、
穏やかなギターの音色が、この芝居をとても温かいものにしてくれてたと思いました。


キャストの感想

健太郎の松下洸平くん
「僕は正気です」という声が響きました。凛と張った声が胸をうちました。
意外にも出番が少なくて、最初と最後はいないし。。。
でも、存在感はすばらしかったです。
GHQが来て再び記憶を失ったあと、赤ちゃん返りをしたかのような姿は全くの別人で
すごいな~としか思えなかったです。
復員してきたとの笑顔も素敵でした。
ホントにいい役者さんですね。。。次の芝居もまた見に行きたいし、ライブも行きたいです。

公麿の山西さん
何も言うことないですね。
ホントにすごい役者さんだなあと、つくづく思います。
途中コミカルな感じも、しっかり出しつつの、苦悩に満ちた表情とか。
舞台が締まるなって思いました。

稲垣の浅利くん
健太郎に、野球チームの面々の戦時中の話をするときは、怖かった。
健太郎を救おうと必死なのがわかるけど、、
そういう一生懸命な役って似合います。
健太郎の想いも受け取って、いいお医者さんになってほしいな~なんて
思わせてくれる浅利くんの演技でした。


カテコが、みんな神社に一列に正座してのあいさつで、なんかほのぼのしちゃいました。
最後に洸平くんが出てきてってのもよかったです。


いろいろ考えさせられた芝居でした。とても良い芝居で見に行ってよかったです。

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