
今年1月、Zeppダイバーシティ公演二日目で開催が発表された武道館。
あっという間にこの日が来た。
チケットも売れ、ボクがどうにか取れたのは「見切れ席」。
要は、通常の公演ではお客を入れないエリア(ステージが見づらい位置)にまで
客を入れて見させるのだ。立ち見席もあった。
*追記 ちなみに「見切れ席」は、正面ではないため音がフルには伝わらないのが残念なくらいで、
直線距離でいえばどの座席区分よりもメンバーに近く、ステージの構造もよく見えた。
不満はまったくない。
武道館内は、見渡す限りのほとんどのスペースが、観客でまんべんなく埋まっていた。
ここまで埋まっている・埋めている状態を目にするのは初めてだ。
6年前の結成当初は、当事者たちにも具体的な夢ですらなかったはずの「武道館」。
メンバーチェンジや状況の変化の末、でんぱ組はようやくたどり着いた。
参考記事
開場後の場内にはDJブースが設けられ、アリーナ席はオールスタンディング。
つまりライブハウスやクラブイベント的な見た目。アニソンやアイドルソングが次々流れ、
曲によっては客が合唱したり決めゼリフを叫んだりヲタ芸を打つなど。
アイドルの開演前って、緊張感より弛緩した空気が満ちていることが多く、
上の席のヲタと下の席のヲタの大声でのやり取りとか、やたら歩き回っている奴が
目に付くことが多かったので、こういうふうに事前に空気をあたため、
さらに客を退屈させないやり方はうまいと感じた。
武道館つながり…ではないのだろうが、'92年に瀬能あづさ脱退公演をしたCoCoの
「EQUALロマンス」が流れたときは高まった(そのときもボクは見ている)。
*追記 Priereのバージョンだと判明、ちょっとガッカリ(笑)
アリーナでは、でんぱ組のルーツであるディアステージのメンバー
(妄想キャリブレーションはど)が、サイリウムを客に手売りして回り、
これも雰囲気を上げるのにひと役買っていた。
開演予定より30分ほど遅れてスタート。
主観カメラ映像が流れ、その主が秋葉原のディアステージに
初めて入ってみる… というところから。
曲順(以下、先ほどの参考記事サイトのをコピー&一部追記↓)
1.Dear☆Stageへようこそ♡
2.1st ALBUMメドレー(Kiss+kissでおわらない/Mirror Magic?/ピコッピクッピカッて恋してよ
/わっほい?お祭り.inc/BEAM my BEAM/)
3.W.W.D
4.でんぱれーどJAPAN
5.VANDALISM
6.ファンシーほっぺ♡ウ・フ・フ
7.なんてったってシャングリラ
8.ナゾカラ
9.ノットボッチ…夏
10ときめき☆すちゃらかテキサス(成瀬瑛美ソロ)
11.あのね...実はわたし、夢眠ねむなんだ...♡(夢眠ねむソロ)
12.ニューロマンティック(最上もがソロ)
13.Promise of the World ~我コソ世界ノ救世主~(相沢梨紗ソロ)
14. P and A(藤咲彩音ソロ)
15.ソーリー、ロンリー。(古川未鈴ソロ)
16.IDOL
17.W.W.D Ⅱ
18.くちづけキボンヌ
19.キラキラチューン
20.強い気持ち・強い愛
21.Future Diver
22.でんでんぱっしょん
23.ちゅるりちゅるりら
(アンコール)
24.ORANGE RIUM
25.イツカ、ハルカカナタ
(Wアンコール)
26.サクラあっぱれーしょん
1曲目は武道館公演を記念してリリースされた新曲。
それとファーストアルバム曲のメドレーで、おそらく初期からのファンは涙腺崩壊。
ボクは、
「それまでにも対バンなどで見たことはあったが、ここ1年で急に
気になるようになった」ファンなので、そこらへんは想像するしかない。
とにかくこの日の選曲は、古参も新規も、今日初めて見る人でも心を打たれるような、
「偏ったところのない」見事な構成だった。
3曲目「W.W.D」はメンバーの内面を吐露する好き嫌いが分かれそうな歌詞で、
でもでんぱヲタではなかった層にも訴えかけるパワーを持った曲。
ボクの場合この曲から彼女たちへの視線が変わったのを覚えている。
今日のライブでは、間奏部で上のステージから下のメインステージに移動、
少し過去から、より現在へ現れたような演出。
ソロコーナーは各自ワンコーラス程度にまとめていて、コンサートの流れを
止めてしまわなかったのは正解。
みりんちゃんが、肩に吊ってはいるが全然さわらない赤いギターを、最後の最後に
「じゃらーん!」と鳴らしたときには場内がどよめいた(笑)。
ソロコーナー明けは力で揺さぶり、そしてスムーズに流れに乗せていく。
この場で聞く「W.W.DⅡ」。
特に終盤の「あーよっしゃいくぞー」以降にはカタルシスがあふれていた。
カップヌードルCMソング「ちゅるりちゅるりら」での連続パイロの炎演出は
すごかった。空気が(比喩ではなく)一瞬にしてあたたまった。
でんぱ組武道館公演は、1曲1曲がどうというよりもコンサート全体が
ひとつのかたまりとして完成されていた。
でんぱ組はスキルやスペックの類で勝負するアイドルではないが、
長く孤独を感じていたという彼女たちだからこそなのだろう、
観客とステージ上とのパッケージ力、総合力が素晴らしいのだ。
彼女たちは、カワイイジャパンの象徴、海外でも人気、オサレでポップで~
といったイメージで紹介されることが多いが、コンサートにはそのイメージは
さほどない(客席に女の子比率が高いのはあるし、音響や映像の演出は上手だ)。
どちらかというと、「いまどきのアイドルにしてはヲタが純粋、無邪気」な印象。
見た感じ客層は明らかに若いのに、ピンチケ感がない。
もちろんコアなヲタもそれなりにいるのだが、全体の印象としては
とにかく「屈託がない」のだ。
'90年代初頭くらいまでのアイドルのコンサートに近い雰囲気。
もちろんそれはいいことばかりではなくて、例えばメンバーが思いを語る場面。
メンバーそれぞれが自分の言葉で伝えようとするのだが、こみ上げるもので
言葉が出なくなったりする。若干の間が生じる。
そういう場合、ボクはその「間」には何も加えず見守るべきだと思うのだが、
屈託のないヲタはおそらく純粋な善意で、「がんばれー」と言って埋めてしまう。
誰かが言うと次々とかぶせてしまう。そして、せっかくメンバーが語っている
フレーズがかき消されてしまう。
武道館公演では、ここが唯一にして最大の残念なところだった。
「そういうことになっている世界」にボクが割り込んだだけなのかも知れない。
けれども、静寂は静寂として味わおうよ。
メンバーみな説得力のある言葉を残したが、
特にりさちーの「でんぱ組を見つけてくれてありがとう」、
ここしばらく喉を傷め、ようやく完全復活したねむきゅんの、
「みなさん一人ひとりが、私たちを武道館に連れてきてくれた自覚はありますか?」
そしてみりんちゃんの、「私たちがやってきたことは間違っていなかった」
というのはずしっと響いた。
でんぱのメンバーはしばしば
「ファンからしたら、でんぱは遠くへ行ってしまった気持ちがあるかもしれないが、
そんなことはない、ファンがブログへのコメントやツイッターのリプ(ファンレターも)で
伝えようとしている声は届いている」という意味のことを言っている。
そして、今回えいたそが言った、
「みんなも夢を大なり小なり持っていると思う。その(ための)力に
(でんぱ組が)なれたら嬉しいし、私たちもアイドルを続けていきたい。
これからも応援してほしい」(概略)
ということに象徴されるように、演者とファンが、手応えある形で力を
与え合っている印象がある。
こういった屈託のなさは大切にしてほしい。
奇をてらったこともなく、肩に力を入れ過ぎることもない。
できることを最大限にやってみる印象の、アイドルのコンサートの到達点の
1つだと思える素晴らしい時間だった。
17:35頃から20:20過ぎくらいまでの時間を、ゲストや無理な演出に頼らず、
退屈させることもなくやり切った。
来年は全国ホールツアーやアリーナでの公演も予定されているという。
チケット獲得が難しくなるだろうが、楽しみは続く。
終了後、九段下駅方面への路上では、BiSスタッフによるチラシ配り、
つばさFlyメンバーによるサンプルCD配布などを目撃。
他にもアイドルちゃんは宣伝活動のために集結していたと思う。
そういった人たちに遭遇した方はいるだろうか?