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種苗法改定案が衆院農林水産委員会で可決。

2020年11月18日 | 野菜・花・植物

衆議院農林水産委員会種苗法改正法案参考人陳述

2020年11月12日、衆議院農林水産委員会での種苗法改正法案に関する審議で参考人として招致され、陳述してきました。その発言内容は時間の関係もあって、以下の通りではないのですが、とりあえず準備した原稿を以下に掲載します。

 

 このような機会を与えていただいたことに感謝いたします。これまで国内外の食について研究してきました。その観点から今回の種苗法改正法案が持つ問題について話します。
 まず農水省・政府はこの法改正の必要性を日本の優良な品種の海外流出を避けるために国内における自家増殖を規制しなければならないからと言います。これは逆に言えば、日本の国内の農家が国外に流出させている犯人だということになります。しかし、その確たる証拠は出されていません。根拠の乏しい説明になっています。
 そして農水省自身が海外での不正な使用を止めるためには海外での登録こそが唯一の解決策と明言されている通りであり、この説明はあまりに取って付けた説明といわざるをえません。
 また農水省は自家増殖を止めないと種苗企業が新品種開発する意欲をなくしてしまうから、自家増殖は規制するとしますが、これまたおかしな説明であり、配布させていただいたこのグラフをご覧いただければわかる通り、現在の品種登録が始まる1978年以来、新品種は毎年順調に増えてきました。自家増殖が可能であるにも関わらずです。しかし、10年前から伸び悩みになりました。近年では自家増殖できる余裕のある農家はむしろ減っているにも関わらず、新品種の登録数が伸びていないのです。説明になっていません。

 今回、法案の説明でさらにおかしいのが農家にどのように影響を与えるかに関するものです。登録品種は1割程度しかない。9割は自由に自家増殖できる一般品種だから影響を与えないと農水省は説明しています。しかし、果たして登録品種は1割か、調べてみると異なる事実がわかります。5ページを見ていただければわかりますが、現在、お米は都道府県ごとに産地品種銘柄が策定されていますが、選ばれた銘柄を調べてみますと、その半数以上が登録品種になっています。実際に生産されている銘柄を品種検査で調べると品種の数の上では64%が登録品種です。生産量で比較すると一般品種が多くなるのですが、それでも登録品種は33%を占めています。

 お米以外でも各県で力を入れているたとえば沖縄のサトウキビのような品種では登録品種の割合がきわめて高いと考えられます。

 このように登録品種は農水省が宣伝されているように1割くらいしかない、という説明とは異なり、日本の農業に大きな存在感を持っているのが現実であり、登録品種はわずかしかないから農家には影響がないという説明はまったく現実と異なるものになっているといわざるをえません。

 登録品種の自家増殖は規制されるのがグローバルスタンダードであるかのような説明を聞きますが、しかし、実際には世界ですべての登録品種の自家増殖を規制している国は存在しないと思います。EU諸国では小麦などの主食、ジャガイモなどの重要食はその例外に設定されており、自家増殖が認められています。許諾料の支払いが必要になりますが、穀類92トン、イモ類185トン未満の小規模農家は支払いが免除になります。どれくらいの規模かというと、だいたい15ヘクタールから18ヘクタール未満の農家は支払免除になると考えられます。これが小農だということになりますと、日本の農家のほとんどは小農であり、免除されるべき対象となります。
 米国では、自家増殖禁止となるのは特許の取られた作物のみで小麦など特許の取られていない作物はすべて自家増殖が可能になっています。それなのになぜ日本だけ、例外なしの許諾制にしてしまうのでしょうか? 世界に類のない法改正案といわざるをえません。

 農水省は許諾料はとっても安いから農家に影響を与えないと説明しています。しかし、許諾料に関する規定は種苗法改正案には存在していません。現在は地方自治体が作っているものが多いので、その許諾料は安いかもしれませんが、地方自治体から民間企業への移行が進められたら、安いままですむとは考えられず、そもそも許諾を与えないケースも増えてくると懸念せざるをえません。そもそも生産資材の低廉化を目的とした農業競争力強化支援法に反する立法といわざるをえません。

 農水省の説明では日本の優秀な品種が海外流出するという懸念が強調されます。しかし、世界の現状は農水省の説明とは大きく異なるものになってしまっているといわざるをえません。以下のグラフはUPOV同盟のデータですが、日本は20年前までは世界第2位の新品種を作る国でした。しかし、世界の他の国が伸びるのに対して、日本だけが純粋に減少を続けています。中国には2009年に抜かれ、韓国にも2015年に抜かれています。2001年-2018年で36%の減少です。一方、韓国は2.8倍、中国は22.8倍に増えてしまっています。この原因は何でしょうか?

 日本の国内市場は今、安い海外産の農産物であふれかえっています。これは農業を犠牲にして進められたさまざまな自由貿易協定の結果です。そして離農者は毎年増えるばかりです。離農者が増えれば種苗の買い手がどんどん減ることを意味します。そして、農村の衰退に伴い、新品種の育成に必要な人材も得がたくなってきています。
 そして、1998年まで地方自治体には補助金という形で種苗事業に安定財源が確保されていました。しかし、それは地方交付税となり、種苗事業に安定的な投資が行われていないというのが現実だといわざるをえません。
 外国産品と競合を迫られる農家にとってさらにその負担を増やす種苗法改正はさらなる離農者を増やすことでしょう。地域の種苗市場はさらに狭くなります。地域の育種農家、種苗を買う農家を増やし、支える政策が欠如していたことがこの停滞の最大の原因と言わざるを得ません。

 今、日本が唯一、種子を自給可能であるのが稲です。お米は日本の食料保障の最後の砦であり、今、この砦を守ってきた外堀は埋まり、今、内堀が埋められつつあります。米国は大豆やトウモロコシは民間企業まかせにしていますが、主食である小麦は農家が自家採種を行い、公共機関も安価な品種を提供できるからこそ、安定した状況を継続できています。日本もそうでした。しかし、今や、この最後の砦にも手がかけられようとしています。もし、公的種苗事業が衰退していき、民間企業に委ねられた場合、これまで地域を支えていた多様な品種は失われてしまう可能性があります。稲の多品種供給する民間企業は存在しないからです。
 食は社会の基盤であり、それを失うことは独立国としての体裁すら奪ってしまうことにつながります。現在でも日本に登録される品種での外国法人の割合は激増しています。現在はお花の品種に特化していますが、今後、公的種苗事業が衰退すれば、米を含むその他の品種にも広がっていくでしょう。

 農水省は2015年に知財戦略2020を策定しました。その中で種苗の知的財産権が大きな柱に位置づけられました。知的財産権では育成者権と特許法の特許権の2つの形態がありますが、この2つとも農水省は強化していく姿勢を示しています。これは種苗法の枠を越す話ですが、知的財産権を強化することは何をもたらすか、注意が必要です。

 このグラフですが、米国でも登録品種が増えているのは特許ではない、通常育種での種苗になります(上左)。特許を取られた新品種はこの20年間、ほとんど増えていません。しかも、その特許を取られた品種登録の6割は外国企業となっています(上中)。あの米国ですら自国の種苗事業者の割合が4割になってしまうのです。もし日本で知的財産権を過度に強化していった場合、それは圧倒的に外国企業に日本の種苗市場を握られる結果にならざるをえないでしょう。

 看過できないのが種苗表示です。今回の種苗法改正で種苗への表示は強化されるとのことなのですが、その表示義務項目に「ゲノム編集」などの遺伝子操作の表示義務がありません。これは深刻な話です。普通の大豆の種子と思って買ったら、それは「ゲノム編集」されていて、知らない間に遺伝子操作された種子を育ててしまったということが起こりえるわけです。有機認証もできなくなってしまうでしょうし、どれが「ゲノム編集」されているのかいないのか、農家すらわからないという状況になります。

 EUやニュージーランドは「ゲノム編集」は従来の遺伝子組み換えと同等として規制する予定ですし、韓国や台湾などがそれに追従する可能性もあります。しかし、日本の農産物は区分できないので、日本の農産物は輸出すらできないという事態になりかねません。さらには日本食を忌避する、日本への観光を避けるということにもなりかねません。これは日本の食への信用を大きく失わせるものといわざるをえません。

 これまでの種苗法は新品種を育成した育成者とそれを使う側の農家の権利をバランスさせることに大きなエネルギーを注いで作られたと伺っております。現行種苗法を作られた方々のご努力には強い敬意を表せざるをえません。

 しかし、今回の種苗法改正はそのバランスを壊してしまうものです。農水省によれば在来品種・一般品種があるからバランスはそこで取ればいいというのですが、登録品種は法律で守られているのに在来品種を守る法律はこの日本にはありません。もし、このような種苗法改正をするのであればその前に在来種を守る法律を作ることは不可欠だと考えますが、それは提案されておらず、今回の法改正はまったく法的にバランスを失わせてしまうものといわざるをえません。自家増殖は農業の根幹技術であり、それが規制されることは日本の農業の未来に大きな制約となってしまいます。

 今、この停滞している種苗育成をどうしていくべきでしょうか、その鍵は以下のように育種家農家、買う側の農家の双方を底上げする政策ではないでしょうか? それがなければ日本の新品種はアジア諸国に追いつくことも不可能でしょう。これをバランスを壊した改正種苗法に変えてしまったら、なおさら厳しい状況が日本の農業にもたらされざるをえません。

 今、種苗の多様性が危うくなっています。多様性を失うことで今、わたしたちのこの地球の生態系はかつてない危機に瀕していると言われています。これに対してFAOはローカルな多様な食を守ることが今後の人類の生存に欠かせないとしています。現在、日本では地方自治体がお米で300近い品種を作っており、在来種を守る農家は1000品種近い多様な品種を守っていると言われています。まさにこの多様性を守ることこそ、日本の食と農を守る上で本質的に重要であるといわざるをえません。

 これまで多様な品種を作ってきた地方自治体、そして農家の方たちが作る種苗が民間企業の専売に変わっていけば品種の多様性は劇的に奪われてしまいます。日本の未来が奪われるに等しいと思います。

 今、必要なのはこの種苗法改正ではなく、この日本が持つ伝統的在来種や一般品種を含む多様な種苗を保全し、活用する政策ではないかと考えます。そして世界はすでにその方へ足を踏み出しています。ブラジル、韓国でも進んでいますし、そしてイタリアでは生物多様性を守るために中央政府が地方自治体に権限を移譲し、トスカーナ地方などは在来種保全政策を進めていると聞きます。米国でも昨年、先住民族が守ってきた種子を守る法案が提案されています。

 最後に、世界では食料・農業植物遺伝資源条約においても、2018年に成立した小農および農村で働く人びとの権利宣言においても農家は種苗を守ってきた貢献者とされています。登録品種を著作物にたとえるならば農家はその著書の共著者なのです。その権利を守ることが世界の常識となりつつある中、その権利を世界で類例のない形でその権利を奪うような法改正はありえないといわざるをえません。

 この10年、世界は大きく変わりました。各国政府も大きく政策を転換させています。しかし、残念なことに日本政府は古い考えにしばられたままのようにみえてなりません。

 残念ながら賛成も反対もまだ農家の中に浸透していません。過半数の方は知らないし、関心がないのが現実です。このような中で拙速に、当事者である、権利者でもある農家を置き去りにこのような審議が急がれることに対しては強い違和感を表明せざるをえません。地方の農家がすべて参加できる地方公聴会の開催は不可欠であると考えます。
 今回の種苗法改正は22年ぶりの歴史的な改正となります。おかしな説明のみで採決することは歴史的な汚点を作り出すことになるでしょう。

 国民の食糧と健康を守る賢明な議論が行われることを心から祈念して、こちらの報告を終えます。


    種苗法改定案が衆院農林水産委員会で可決された。
農家は畑の土や気候などの状態に合わせて畑にあった種を育ててきた。一つの品種でも作る人によってさまざまな形態になりうるのです。砂地にあったもの、粘土地にあったもの温度、湿度、風、様々な要因で自分にあった種を育てるのです。
 コロナ禍のドサクサに誰のための改正なのでしょうか?
国民の食糧と健康を守るために、廃案に追いこみましょう!


バイデン勝利。しかし米国には不穏な空気が漂い始めた。(想田和弘)

2020年11月16日 | 野菜・花・植物
  映画作家 想田和弘

 米国民主党のジョー・バイデンとカマラ・ハリスのコンビが、次期大統領・副大統領にそれぞれ就任確実となった。

 しかし予想した通り、現職大統領のドナルド・トランプは選挙に負けたことを認めようとせず、「不正選挙が行われた」と主張し法廷で争う構えだ。無論、不正選挙が行われたという具体的証拠などない。証拠はなくともそう強弁することで、大統領の座に居座ろうという魂胆である。

 僕はかねてから、このシナリオを恐れていた。トランプが選挙で負けてもあれこれイチャモンをつけてホワイトハウスを去ろうとせず、大勢の共和党議員や支持者たちが彼に同調したら一体どうなるのか。内乱が勃発するのではないか。

 共和党の主要人物たちはしばらく沈黙を守っていたが、この4年間のパターン通り、案の定、トランプに同調し始めた。

 マコーネル上院院内総務は「大統領には法的措置を取る権利が100%ある」などとトランプの行動を擁護した。

 ポンペオ国務長官は「トランプ政権2期目に円滑に移行するだろう」などと、あたかもトランプが勝者であるかのような発言をした。

 加えてバー司法長官は、選挙での不正に対する調査を容認する異例のメモを全米の検事らに送った。そしてそれに抗議した司法省高官が辞任した。

 トランプが赤信号を渡るならみんなで渡ろう式の、恥知らずな連中である(辞任した高官除く)。

 更に不穏なことに、トランプは反人種差別デモに対する米軍の投入に慎重だったエスパー国防長官を突然、解任した。

 なぜこんなタイミングで解任するのだろうか。

 控えめに言って、不穏である。

 少し希望が持てるのは、トランプが台頭して以来の約5年間で、米国のメディアがトランプ発言の報じ方を学んだことである。

 象徴的だったのは、11月5日の夕方、トランプが会見を開いたときの出来事だ。彼が「民主党によって選挙が盗まれようとしている」と陰謀論を展開し始めるや、米3大ネットワークのABC、CBS、NBCは、揃って中継を打ち切ったのである。嘘をそのまま垂れ流し、ディスインフォメーションに加担することは、報道機関としてするべきでないとの判断からである(その点、日本のテレビ局はまったく何も学んでいないようで、トランプの会見を最後まで中継したようである)。

 トランプの弁護士、ルーディ・ジュリアーニが先月「ウォールストリート・ジャーナル」に持ち込んだ、バイデンの息子に関するスキャンダル情報でも、同様のことが起きた。トランプ陣営は、選挙直前に不利な情勢をひっくり返す「オクトーバー・サプライズ」として期待していたようだが、ジャーナルの編集者たちは根拠が薄いと判断して、結局報じなかった。困ったトランプ陣営はタブロイド紙「ニューヨーク・ポスト」に持ち込み、同紙は報じたが、効果は限定的だった。ジャーナルとポストではメディアとしての信頼度がまったく異なり、他のメディアも続報をしなかったからである。4年前、ヒラリー・クリントンに関する根拠の薄いスキャンダルを各メディアが垂れ流し、トランプのディスインフォメーションに貢献してしまったのとは対照的である。

 ツイッターの対応も、今回は違った。開票が始まってからディスインフォメーション合戦が始まると予期したツイッターは、不確かな情報が含まれるツイートには警告を付与し、拡散しにくいようにした。その結果、トランプが発するツイートの多くに警告が付き、拡散が抑制された。

 「メディアが発信を制限・抑制せずとも、読者や視聴者が判断すればよいのでは」という意見も、相変わらず根強い。

 しかしそれはあまりに素朴すぎる考えである。少なくとも、ひとたびデマが広まってしまうと、完全に取り除くことは事実上不可能だということを無視している。デマ記事と、それを訂正した記事では、前者の方がはるかに広まりやすいというデータもある。残念ながら、嘘は「言った者勝ち」なのである。

 トランプはそのことを熟知していて、自己利益のため故意にデマを流す。彼の発言をそのまま流すことは、彼の犯罪に利用されることであると、アメリカのメディアはようやく悟ったのだと思う。

 嘘ばかりついてきたトランプは、今や悲しきオオカミ老年である。嘘が「言った者勝ち」であるのは実は最初だけで、最後には負けるのだと、イソップ童話と同様、今回の選挙結果は教えてくれている。

 しかしその選挙結果を、トランプとその一派は受け入れようとしない。そして米軍や司法省含め、絶大な権力を握っているのは、依然として彼らなのである。

 バイデン勝利の喜びもつかの間、米国の民主主義は、もしかしたら絶体絶命のピンチに突入しようとしているのかもしれない。

 僕の懸念が杞憂に終わることを、切に願う。


今日の散歩道。

今日は比較的に暖かい。

園地内を整理しているとキノコがたくさん。

クレソンとキノコで鍋か・・・
クレソンについての記事、以下ご覧ください。

最強の野菜

2018年10月17日 | 野菜・花・植物

最強の野菜に輝いた”クレソン”


雨宮処凛がゆく! 第538回:アメリカ大統領選と、法廷でトランプ礼賛を続けた植松死刑囚。の巻

2020年11月15日 | 野菜・花・植物

マガジン9 2020年11月11日

https://maga9.jp/201111-1/

 

 アメリカ大統領選が終わった。

 バイデン次期大統領の誕生が決まり、4年間にわたる分断と対立と憎悪と差別を煽るトランプ政治が終わることに今、ひとまず胸を撫で下ろしている。

 「私は分断ではなく結束を目指す大統領になると誓います」「対抗する人を敵扱いするのをやめましょう」「人種差別を根絶します」、そして「私に投票しなかった人のためにも働きます」。

 このような「マトモな」言葉を聞いて、この4年間、随分異常な言葉に慣らされてきたのだということに気づいた。そうして思い出したのは、相模原事件の植松死刑囚のことだ。

 この連載でも相模原事件の裁判に通ってきたことは書いてきた。7月には、傍聴記録をまとめた『相模原事件・裁判傍聴記 「役に立ちたい」と「障害者ヘイト」のあいだ』を出版もした。そんな横浜地裁の法廷で、植松はトランプ氏の名前を何度も口にした。

 例えば初めての被告人質問(1月24日)では、突然トランプ氏の礼賛を始めている。

 「とても立派な人。今も当時もそう思います」

 弁護士に「どこが?」と聞かれると、「勇気を持って真実を話しているところです。メキシコ国境に壁を作るとか」。「それはいいこと? 悪いこと?」と弁護士に問われると、「わかりませんが、メキシコマフィアが怖いのは事実です」。

 その後も植松は続けた。

 「トランプ大統領はカッコ良く生きてるな、生き方すべてがカッコいいと思いました」

 「見た目も内面もカッコいい」

 「カッコいいからお金持ちなんだと思いました」

 そんなトランプ大統領からの影響を聞かれた植松は、言った。

 「真実をこれからは言っていいんだと思いました。重度障害者を殺した方がいいと」

 トランプ氏は「障害者を殺せ」などと一言も言っていないのだが、植松はそう「受信」したのであろうか。

 また、事件前、植松は多くの友人たちに事件の計画について話しているのだが、その際、以下のように述べている。

 「知ってるか、世界でいくら無駄な税金が使われているか。世界に障害者が〇〇人いて、そのために〇〇円も税金が無駄になっている」「殺せば世界平和に繋がる。トランプ大統領は殺せば大絶賛する」「トランプを尊敬している。自分が障害者を殺せば、アメリカも同意するはず」

 なぜ、凄惨な事件を起こすことでトランプ氏が「評価」してくれると確信していたのか。

 事件を起こす5ヶ月前、植松は衆院議長に「障害者470人を殺せる」などと書いた手紙を出したことで措置入院となるのだが、退院数日後にも異様な行動をとっている。友人の結婚式の二次会に、植松は「トランプをイメージした」という服装で現れ、人目を気にせず大麻を吸い、「障害者はいらない」と話し続けて友人たちをドン引きさせたのだ。

 ちなみに「トランプをイメージした」格好とは、髪は金髪、黒いスーツに真っ赤なネクタイという姿。事件直前、植松はTwitterに同じような姿の自身の写真とともに「世界が平和になりますように beautiful Japan!!!!!!」と投稿しているが、あの姿はトランプ大統領のコスプレなのだ。

 また、事件が起きたのは2016年7月だが、植松は裁判で、アメリカの大統領選がその年の11月に行われたことに触れ、その後に自分が事件を起こすと「トランプみたいな人が大統領になったからこんな事件が起きたと言われるのでは」と思ったので、その前に事件を起こしたとも述べている。日本で起きた障害者殺傷事件を「トランプが大統領になったからだ」と考える人などいないと思うのだが、植松は、自らが事件を起こすことが「トランプに迷惑をかける」と思い込んでいた。見る人が見れば、「この事件の犯人はトランプの影響を受けたのだろう」と気づくと思っていたのである。

 あの事件がトランプ氏のせいで起きたなどと言うつもりは毛頭ない。しかし、トランプ氏の「剥き出しの、暴力的な本音」とも言える発言は、何かのタガを外したのは事実だと思う。「綺麗事や建前を言ってた奴らが何かしてくれたか?」と理想を語る人を陳腐化し、連帯ではなく分断の種をばらまき続けた4年間。

 友人や元カノの証言によると、植松は16年頃からトランプだけでなく、イスラム国やドゥテルテ・フィリピン大統領に関心を持つようになったという。イスラム国に関しては、「恐ろしい世界があるなと思いました」と否定的に見ている様子だ。一方、トランプやドゥテルテ大統領のことは高く評価している。ドゥテルテ大統領については、裁判で「覚せい剤を根絶するのは大変な仕事だと思いました」と話している(そのせいで、無実の人が大勢殺されているのだが)。

 両者に共通するのは、賛否が分かれながらも支持する人々は「誰も言えなかった、できなかったことをやった」と熱烈に支持する点だろう。排外主義で、「敵」を設定して憎悪を煽るやり方も似ている。

 そんなふうに事件前、世界情勢に興味を持ち始めていた植松は、ヤフーニュース等のコメント欄にたくさんの書き込みをしていたことは有名だ。「イイネしかできないSNSと比べてワルイネ(BAD)が新鮮」だったという(『開けられたパンドラの箱』より)。

 もう一点、注目すべきは事件前、植松は動画投稿サイトに自らの動画を投稿していたことだ。現在は全編を見ることはできないが、そのサイトでは彼の過激な発言が多くの賛同を得たようだ。ヤフコメの差別やヘイトに満ちたコメントや、自分の動画の過激な発言(おそらく「障害者を殺す」などだろう)に賛同する人々のコメントを見るうちに、「これくらいやってもいいんだ」「これがみんなの本心なんだ」「これこそが世論なんだ」と思っていった可能性は否定できない。

 おそらく免疫がなかったゆえに、彼はネット上の悪意を真に受け、また「イルミナティ」などの都市伝説に容易に感化された。そんな時、トランプ氏が大統領選に出馬し、過激な言動を繰り返す姿が連日テレビで報じられた。その姿に、「これからは真実を言っていいんだ」と雷に打たれるように閃いたのではないだろうか。

 そのような著しく歪んだ「受信」をしてしまったのは、彼の普通ではない精神状態ゆえだと思う。

 しかし、トランプの発言や振る舞い、分断を煽るやり方は、植松だけでなく、世界中の悪意に火をつけた。例えば4年前、トランプ大統領が誕生してからのニュースを思い出してほしい。それはアメリカでヘイトクライムが急増しているというものだった。また、18年のBBCニュースは、17年にアメリカで通報されたヘイトクライムは7157件で、前年比約17%増となったことを伝えている。それだけではない。トランプ氏は新型コロナウイルスを「中国ウイルス」と呼び、欧米ではアジア人に対するヘイトクライムが急増した。

 さて、そんなふうに大統領選の結果が出る数時間前、私は興味深い体験をしていた。

 この日、渋谷のロフト9でよど号50年のイベントに出ていたのだ。よど号ハイジャックから半世紀というイベントには、北朝鮮からよど号グループの小西隆裕氏も電話出演。ゲストには森達也氏や孫崎享氏、元日本赤軍の足立正生氏や元連合赤軍の植垣康博氏も登壇したのだが、平壌から電話出演していた小西氏の話に私は密かに驚いていた。内容にではない。その、ゆっくりとした朴訥な話し方にだ。

 そのような話し方は、久々に耳にするものだった。噛みしめるようにゆっくり話す彼の言葉はわかりやすいものではなく、話はなかなか終わらない。会場の観客たちも途中から話の長さに失笑し始め、思わず「結論は?」「要約すると?」と突っ込んでしまいそうな衝動に駆られた。

 そんなふうに「話の長さ」に辟易している自分に気づいて、思った。

 小西氏は50年前に日本を離れ、ずっと北朝鮮で暮らしている。いわば彼の話し方は、50年前の日本人のものではないだろうか。それが今、私たちにはものすごく遅く、まどろっこしく聞こえてしまうのだ。申し訳ないけれど、苛立ちさえ感じるほどに。その背景には、私たちの社会の何もかもが50年前と比較して格段にスピードアップしたことや、140文字のTwitterに慣れたこと、長い記事の最初に「要約文」が表示されることに抵抗がなくなったことなんかがあるのだと思う。

 それだけではない。討論番組でもワイドショーでも、熟考などは求められず、とにかく条件反射のように「間髪入れず」「すかさず」相手を言い負かす人間が「勝ち」で、発言内容なんか問われないというテレビ的な「言い切り」に慣れてしまったこともあるだろう。そんな中、ゆっくりと議論することは「時間の無駄」とされ、最初に結論を言わずダラダラ話を続ける人間は「ダメなやつ」の烙印を押されるようになった。そんな時代に「デキる人間」としてもてはやされるのは、即断即決、時短の人間だ。とにかく何かを瞬時に判断し、断言することで相手を黙らせた人間が勝ちになる。そんなコミュニケーションの行き着いた果てが、私には植松のようにも思えるのだ。

 なぜなら彼は、あまりにも思考をショートカットしすぎたからである。

 障害者施設で働いた当初は、障害者を「かわいい」と言っていたものの、2年目からは「かわいそう」と言うようになる。かわいそうだと思うのならば、待遇を改善するよう職場で提案したり、上の人間と掛け合ったり、場合によっては内部告発やメディアに訴えるなんて手もある。しかし、彼はそれらすべてをすっ飛ばして、何段階もショートカットして、突然「殺す」に飛躍した。その振る舞いの影にちらつくのは、やはりトランプ政治的なものが作り出したある種の「空気」だ。熟考や「葛藤」を放棄させ、正しさや公正さに重きを置かず、過激なこと言ったもん勝ち、やったもん勝ちという作法は、どこかで確実に植松に影響を与えたのだと思う

 さて、とりあえずトランプ政治は終わる。かといって、バイデン大統領の誕生で薔薇色なんて思うほど楽観もしていない。この4年間で荒廃してきたものを修復していくには、長い時間がかかるだろう。アメリカの影響を大きく受ける日本社会にも負の遺産が山ほど残っている。ここからどうやって公正さや連帯を取り戻していくか、排外主義や分断を乗り越えていくかが大きな課題だ。

 トランプの敗北を、植松は獄中でどう思っているのだろう。聞いてみたくても、死刑の確定した彼とは以前のように面会することはできない。


 コロナが猛威的に吹き荒れている。北海道では3日連続200人越えである。こんな時にGo to!でもあるまい。以下「知床の旅」は「中止」いたします。

 


 雨宮処凛がゆく!  第535回:任命拒否という「見せしめ」〜日本学術会議の問題が投げかける菅政権のメッセージ〜の巻

2020年10月09日 | 野菜・花・植物
 
マガジン9  
  https://maga9.jp/201007-1/
 

 菅政権が始まったばかりだというのに、「末期症状」と言いたくなるようなことが続いている。

 例えば9月末の自民党議員・杉田水脈氏の「女性はいくらでも嘘をつけますから」という発言。その後、杉田議員はブログで謝罪したものの、これまでも多くの失言が見られた杉田議員に対して、自民党は口頭注意をしただけだ。

 そんな騒動と同時進行で起きたのが、日本学術会議の任命拒否問題。

 拒否された6人は、それぞれ政府の方針に異を唱えた経緯があったことが注目されている。翌日のワイドショーなどでは、「こういうことをしたから拒否されたのでは」などの憶測が飛び交っていたが、それを見ながら、私は静かに戦慄していた。こんなことがまかり通ってしまうのであれば、「政府を批判した」事実そのものがゆくゆくは「前科」のような扱いになっていくのでは、と。

 安倍政権の後半くらいから、常々思っていたことがある。それは、近い将来、政府批判をする人たちは「反社会性〇〇障害」みたいな形で「病気」「精神疾患」というレッテルを貼られていくのではないかということだ。そういう形にすれば言論は無効化され、場合によっては予防拘禁さえ可能になるかもしれない。そのようなことを漠然と考えていた身にとって、見せしめ的な排除がこれほど露骨に始まったことに戦慄したのだ。

 その矢先、今度は菅総理が記者たちとともにパンケーキ朝食会。ああ、ここまで来たか……と遠い目になった。

 この8年間、安倍政権は「敵」を名指し続けてきた。「日教組、日教組!」というヤジや選挙での「こんな人たち」発言。それだけではない。私たちはこの8年間、テレビから安倍批判をする人々が消えるのを見てきた。

 例えばネット上で多くの人から執拗な攻撃を受けている香山リカ氏は、『創』10月号の連載で以下のように書いている。

 「ここ十数年、とりわけこの5〜6年、私はネットを中心に多くの批判を浴びてきた。本を書いたり新聞でコラムを連載したりしているので批判は当然とは思いながらも、あまりの量、質に『なぜここまで』と少しは痛手を受けることもあった。たとえば、ある放送局の番組に出たところ、その制作部署とはまったく関係ない政治部からトップの人間が飛んできて、私の出演に関して周囲にも聞こえるような声で嫌みを言った、と担当ディレクターが教えてくれたことがある。そんなことがあると、当然、その部署のスタッフは『この人をキャスティングすると厄介なことになるんだ』と思い、控えるようになるだろう」

 それだけではない。自治体などが主催する講演が、妨害予告を受けて中止になったことも一度や二度ではないという。

 香山氏は、第二次安倍政権発足時、安倍元首相にSNSで「論外」と名指しで批判されている。

 メディア出演の場、講演の場を奪われることは、口を塞がれるのと同様に収入を失うことでもある。その点、香山氏は精神科医であり大学教員でもあるから収入面の心配はなさそうだ。しかし、もしこれがメディア出演が収入の多くを占める言論人だった場合、どうなっただろう? 仕事を失うことを恐れ、積極的に「政権寄り」の発言をするようになるかもしれない。実際、メディアには、この8年間でそのような人が目に見えて増えた。「批判が許されない空気/批判したら干されるかもしれない空気」は、菅政権で強化されることはあってもなくなることは決してないだろう。

 となると、今後、多くの人が「寝返って」いくかもしれないという「最悪の予想」もしている。多くの言論人は、香山氏のように医師ではない。大学教員は多いが、そうでない言論人は自然と口をつぐむようになってしまうかもしれない。私はこのような空気が、率直に、非常に怖い。それぞれが牽制し合い、時に密告するような空気が「勝手に」作られていったら。それはほぼ地獄である。

 もう一人、政権側の「見せしめ」として思い浮かぶのは前川喜平氏だ。前川氏と言えば、文部科学事務次官だった2017年、加計学園問題の「総理のご意向」文書の記者会見を開いたら「出会い系バー通い」が新聞や週刊誌で報復のように報じられた人である。前川氏はバー通いを女性の貧困調査と主張し、実際、のちにバーで前川氏に話を聞かれていた女性もメディアに登場して前川氏の潔白を訴えたわけだが、「バー通い」が報じられた際の菅氏の「冷笑」を、私は今も覚えている。

 「貧困問題のために出会い系バーに出入りし、かつ女性に小遣いを渡したということでありますが、さすがに強い違和感を覚えましたし、多くの方もそうだったんじゃないでしょうか。常識的に、教育行政の最高の責任者がそうした店に出入りし、小遣いを渡すようなことは到底考えられない」

 一人の人間の社会的生命を奪うには十分すぎる、侮蔑に満ちた表情だった。普段、滅多に顔に感情を出さない菅氏だったからこそ、この時の意地悪な笑いは非常に強く印象に残っている。

 ちなみにこの騒動からだいぶ経った後も、記者が前川氏について質問した際、菅氏が心からバカにしたように「あの人は、だってああいう人ですから」というようなことを薄笑いを浮かべて言うのを見たことがある。その顔を見て、ある一人の人間の発言や力を「無効化する」って、こういうやり方でやれてしまうんだ、と心底怖くなったことを覚えている。

 そんな表情は、官房長官時代、特定の記者に対してもなされてきた。東京新聞の望月衣塑子記者だ。彼女の質問に対して、「あなたに答える必要はありません」などと発言してきた菅氏。それだけでなく、気に入らない質問をする人に対してわざと黙る、その人がトンチンカンな質問をしているかのような空気をあえて作り出す、という手法は嫌というほど目にしてきた。そんなものを見るたび、なぜ、これほどの嫌がらせが公然と行われていることに誰も異議を唱えないのだろう、と心底不思議に思ってきた。

 当たり前だが、安倍元総理も菅総理も、その立場ゆえ、莫大な影響力を持っている。

 そんなふうに力を持つ者は、その権力を決して個人攻撃に使ってはいけないと私は思う。しかし、その大前提すらこの8年で崩れ、今、さらにタガが外れているように思えて仕方ない。

 この8年の流れから日本学術会議の問題を見ると、任命拒否は「これからさらに激しく個人攻撃を始めるからせいぜい気をつけろ」という政権のメッセージにすら思えてくるのだ。第二次安倍政権は、発足早々「生活保護基準引き下げ」を発表することで「弱者は見捨てるぞ」というメッセージを打ち出し、実際、そのような政治が行われてきた。が、菅政権のメッセージはさらに悪質ではないだろうか。

 今、とても不安だ。どうか「最悪の予想」が当たりませんように。祈るように思っている。


 昨日、栗の実をこのように盛り付けて道路脇に置いておいたのですが今朝見たら半分ほどなくなっています。人間様だったら全部持っていきますよね? ではだれが?
エゾリスでしょうか?

庭にこんなものがありました。なんでしょう? 草丈は1mくらいです。


きのこの効用

2020年10月04日 | 野菜・花・植物

「きのこ―健康とのかかわりを科学する」よりhttps://www.nittokusin.jp/kinoko/contents/cooking/cooking.html

きのこの栄養と調理

きのこの成分と栄養

  きのこ類の一般成分は野菜類に似ていますが、食物繊維、ビタミンB類、ビタミンD2、ミネラルなどの栄養素を豊富に含んだ低カロリー食品といえます。日本食品成分表によると、乾シイタケの食物繊維の含有率は40%強で、乾燥重量当たりに換算しても大根やネギよりもはるかに多いです。したがって、きのこ類を食べることで便通が良くなることが確認され、成人病の予防効果もあると考えられます。また、きのこにはミネラルのカリウムが多いため、塩分の過剰摂取を抑制することが期待できます。この他、たんぱく質や脂質が比較的多いのもきのこの特徴といえます。

  シイタケはビタミンD2の宝庫として知られていますが、食用きのこ類の多くはビタミンD2の元になる物質エルゴステロールを含みます。日光をあてるとエルゴステロールはビタミンD2に変わります。たとえば、乾シイタケのD2含量は通常100g当たり20μg(マイクログラム)以下ですが、日光に2時間程度あてるだけで数十倍に跳ね上がります。一度増えたビタミンD2はなかなか分解せず、乾シイタケを冷蔵庫内で保存すれば半年たっても含量はほぼ同じです。

きのこのおいしさと上手な調理法

  きのこの味を左右するのは、旨味や香り成分の種類と量、及び肉質(歯触り)です。シイタケなど多くのきのこ類はグアニル酸を含み、グアニル酸は昆布のグルタミン酸、鰹節のイノシン酸と並ぶ三大旨味成分の一つです。

  グアニル酸はグルタミン酸と混ざると数十倍に旨味が強くなることが知られており、シイタケと昆布でダシを取ると非常においしい理由はここにあります。

  グアニル酸の量は、グアニル酸の元であるリボ核酸、リボ核酸を分解してグアニル酸を生成する酵素、及びグアニル酸を分解する酵素とのバランスによって決まります。グアニル酸生成に関与する酵素は比較的熱に安定で60~70℃で活性が高く、一方、グアニル酸を分解する酵素は60℃では大部分が壊れます。したがって、グアニル酸の量を増やすためには調理時に60~70℃の温度を与えてやることが大切です。また、乾シイタケの水戻しでは、旨味成分の元であるリボ核酸を減少させないように冷蔵庫のなかで必要最小限行うのが基本です。この他、遊離アミノ酸も水戻し時にたんぱく質が分解されて増加しますが、比較的温度が高い条件で長時間水戻しをすると苦みのある疎水性アミノ酸の割合が増える傾向があり、注意する必要があります。加熱調理時はアミノ酸の量はほとんど変化しません。

  香りが強いきのこの王様はマツタケで、香り成分は1-オクテン-3-オールや桂皮酸メチルです。乾シイタケも香りが強く、その成分はレンチオニンです。レンチオニンは生シイタケを乾燥するときの加温や乾シイタケの水戻し時に、2種類の酵素が関与して生成されます。なお、調理時には20分程度の煮沸によってレンチオニンの大部分は消失しますので、香りを残すためには煮沸時間を短くします。

  シイタケの食感に関する調査では、傘肉が厚いものの方が薄いものよりもおいしく感じる人が多いようです。

 

 

「キッコーマン ホームクッキング」より

https://www.kikkoman.co.jp/homecook/doctor/appare/07.html

注目の「菌食」の最たるもの

最近注目されている「菌食(菌類質食品)」は、きのこのような菌類そのものや、菌類の発酵作用を利用したものを食べることをいいます。日本の伝統食でいうと、しょうゆ・みそ・漬物・納豆・かつおぶしなどです。また、パン・チーズ・ヨーグルトなども菌食にあたります。

これらの菌が身体の免疫力を高めるともいわれ、中でもきのこは、自然が育てた有効成分を含む菌そのものを食べることができる、菌食の王様といえるのです。

生活習慣病予防にもなる「きのこ」

きのこは主に腸内の調整・保護、免疫力増強、ガン・生活習慣病・感染症などの予防に効果的といわれています(表参照)。食用きのこ類の多くはビタミンD2を多く含み、とくにしいたけはビタミンD2の宝庫として知られています。

食用きのこの主な効用

しいたけ              骨の発育促進作用、コレステロール・血圧の降下作用、抗酸化作用、肝障害抑制作用、抗インフルエンザ作用など

えのきたけ           免疫賦活作用、抗腫瘍作用

まいたけ              免疫賦活作用、抗腫瘍作用

ぶなしめじ           抗酸化作用、抗アレルギー作用、抗菌・抗ウイルス作用など

きくらげ              血糖値降下作用、抗がん剤副作用軽減作用、抗炎症作用など

マッシュルーム    抗酸化作用、コレステロール除去作用など

(日本特用林産振興会ホームページより抜粋)

きのこの「だし」は、なぜおいしいか?

しいたけなど、多くのきのこ類はグアニル酸を含み、グアニル酸は昆布のグルタミン酸、かつお節のイノシン酸と並ぶ三大うまみ成分の一つです。グアニル酸はグルタミン酸と混ざると数十倍に旨味が強くなることが知られており、干ししいたけと昆布でとっただしがおいしい理由はここにあります。

そのまま料理しても、また、だしとしても貴重な味わいを持つきのこ。食卓を豊かにヘルシーにするきのこを活用して、健康な食生活を目指しましょう。

 

 「きのこ百科」日本きのこセンター

https://www.kinokonet.com/kinoko/cat1/

きのこの栄養・健康成分

★しいたけの健康パワーのひみつ(栄養・健康成分)

昔から日本人が大好きなしいたけは、おいしいだけじゃなく健康で丈夫なからだをつくる健康成分をたくさん含んでいるんだよ。しいたけがもっている4つの健康パワーのひみつをみてみよう!

血液さらさらパワーのひみつ

シイタケに含まれるレンチオニンとグアニル酸には、血液に含まれる成分の一つである血小板の凝集(血小板どうしが集まって塊になること)を抑える作用があり、血液をサラサラにする効果が期待されるんだ。

健康で丈夫な骨作りパワーのひみつ

シイタケは、ビタミンD2をたくさん含む食材として知られているんだ。ビタミンDはカルシウムやリンの吸収を促進し、新しく丈夫で健康な骨を作るんだよ。

メタボ対策パワーのひみつ

不飽和脂肪酸や食物繊維を多く含むきのこ類などを摂取することによって血中コレステロール値を抑えることができると言われているんだ。

免疫力向上&抗ガンパワーのひみつ

食用きのこ類にはβ-グルカンと呼ばれる多糖類が含まれているんだ。 β-グルカンは食物繊維の一種ですが、免疫力を高め、アレルギーの予防や改善効果また、抗腫瘍効果があると考えられているんだよ。

その他にも食用きのこ類には健康成分がたくさん

食物繊維、ビタミンB類、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、抗酸化性成分など、きのこ類にはたくさんの健康成分が含まれているんだ。

【抗酸化性成分】

多くのきのこ類には、天然の抗酸化物質であるエルゴチオネインが含まれているんだ。

皮膚の老化防止作用に関する報告があるんだよ。


きのこのシーズン真っ盛り。
スーパーで買ってくるきのこでも、意識的に食べるといいですね。
今日はまた裏から落葉キノコを採ってきましたので、それを食べることにしましょう。



医療費削減の先にある恐怖…アメリカのパンデミックが収束しない理由を内田樹と岩田健太郎が指摘

2020年09月30日 | 野菜・花・植物

2020.9.30 .#朝日新聞出版の本#読書

 コロナ・パンデミックは、「医療は商品である」という原理の無効性を可視化させた。そう語るのは、思想家の内田樹さんと医師の岩田健太郎さんだ。二人の対談が収められた『コロナと生きる』(朝日新書)から、なぜアメリカのパンデミックは収束しないのか、その背景について紹介する。

*  *  *

■コロナが晒した新自由主義の限界

内田:医療費の増加は、ここ20年ぐらい日本が抱える財政上の最大の問題とされてきました。国家財政を逼迫させているのは医療費である、だから医療費削減を達成することが焦眉の課題なんだと、政府も経済評論家も口を揃えて言い続けてきた。その結果、病床数を減らし、保健所を減らし、医薬品や医療器材の備蓄を減らすことになった。そうやって医療体制が十分に脆弱になったところに、今回のコロナのパンデミックが到来した。どう考えても医療費を削減させながら感染症に対応することはできません。

岩田:そうですね。

内田:国民の健康という点では何のプラスももたらさないはずの医療費削減政策がさしたる国民的な抵抗もなしにこれまですらすらと通って来たのは、新自由主義的な「医療とは商品である」という発想が国民の間に浸み込んでいたからなんじゃないかと僕は思います。医療は市場で金を出して買う商品である。だから、金があれば良質の医療を受けることができるけれど、金がなければ身の丈にあった医療しか受けることができない。不動産や自動車と同じで。そういうふうに考える人がいつの間にか多数派を占めるようになった。だから、「すべての国民が等しく良質の医療を受ける権利がある」と考える人は、今はむしろ少数派になったんじゃないでしょうか。

 金のある人、あるいは社会的有用性の高い人、生産性の高い人は医療を受ける権利があるが、そうでない人の治療のために公金を投じるべきではない。ちゃんとした治療を受けられないのは当人の自己責任だ、という冷たい考え方をする人がほんとうに増えた。一般の疾病でしたら、そういう理屈も通るかもしれませんけれど、感染症にはこれを適用することができない。医療を受けられない人たちが感染源となっていつまでも社会のなかにとどまる限り、感染症は永遠に制御不能だからです。

新しいウイルスによる感染症はこれからも数年おきに必ず起こります。ウイルスから社会を守ろうと思ったら、「医療は商品ではない。すべての人は等しく良質の医療を受ける権利がある」という原理を「世界の常識」として採択するしかない。アメリカの現状を見れば、誰でもそう考えるはずです。

強硬トランプ、切実ジョンソン

岩田:基本的に僕も内田先生と同じ考えですが、アメリカはトランプ大統領が「失敗してない」って言い張ってますからね(笑)。これで一気に変わるかどうかは、わからないのが正直なところです。

内田:僕はアメリカの医療現場のことは知らないんですけれど、3千万人近い無保険者の人たちというのは、病気になったときにどうしているんですか? まったく受けられないということはないですよね?

岩田:いやもうあの国は、保険がなければ救急車すら呼べないですからね。救急車呼ぶのに無保険だと、日本円に換算して数十万も請求されるんです。実際にコロナに罹った人が街で倒れたのに救急車が呼べず、放置されて感染を広げてしまったケースもありました。

 結局コロナに関しては議会で問題になって、無保険の人たちもちゃんと助けてあげようって話になりました。でも制度が決まったときにはもう時すでに遅しで、感染が蔓延してしまったんです。内田先生がおっしゃるように「貧乏人はほっとけばいい」という姿勢を国が続けると、感染症が起こったときに国民みんなが倒れちゃうんですね。

 アメリカ型の新自由主義に基づく医療と、感染症のパンデミックは、非常に相性が悪いことが今回世界中の人に思い知らされたのは確かです。イタリアもコロナでとても痛い目に遭ってますが、やはりその背景には近年の同国における医療の効率化がありました。おそらく今後、ヨーロッパでは多くの国が医療制度について再考を始めるはずです。

内田:実際にイギリスでは、コロナに感染して入院していたボリス・ジョンソン首相が退院した後に、国民健康保険であるNHS(National Health Service)の効用をほめたたえていましたね。

岩田:はい。あれにはかなり驚きました(笑)。

内田:サッチャーの時代から、イギリス保守党はNHSを目の敵にして、ずっと潰しにかかってきましたからね。ところがジョンソン首相は、自分がコロナに罹ってお世話になったら、急に手のひらを返したように、「NHSのおかげです」と言い始めた(笑)。

岩田:いや~、あれを見て僕は、「日本の政治家も一回はコロナに罹ったほうがいいんじゃないか」とか一瞬考えかけて、慌てて否定しました(笑)。ボリス・ジョンソンを見ていて、やっぱり病気は身を以て体験すると、考えが変わるんだなとつくづくわかりましたね。

内田:僕はボリス・ジョンソンの「変節」は評価しますよ。「君子豹変す」ですから、いいんです。あれで医療政策についての流れが変わると思います。

岩田:国民皆保険が定着している日本の場合は、アメリカと逆の問題があるんですよね。お金を払わないと救急車が呼べないのがアメリカの病理だとすると、「ちょっとお腹が痛いから、救急車でも呼ぼうか」みたいなモラルハザードが起きているのが日本の難点です。国民皆保険による安くてアクセスしやすい医療が、一部の国民の食い物にされている状況があるんです。

 高級スーパーで買い物すると、会計を終えた商品を店員さんが過剰なまでに包装してくれますよね。患者さんのなかには医療も同じように考えている人がいて、「もっとちゃんと包んでくれ」みたいな過剰な要求を医療者にしてくるんです。これまで日本の医療サービスは、水道の蛇口をひねると水が出てくるように、「受けられて当たり前」と思っている人がほとんどでした。でも本当は、そんなに無尽蔵にリソースがあるわけじゃなく、使い倒せばなくなってしまうことを、国民みんなで認識してほしい。医療に関しては日米ともに極端な方向に行き過ぎてしまったので、将来的に変えていく必要があるでしょうね。

 

■内田樹(うちだ・たつる)

1950年東京都生まれ。神戸女学院大学名誉教授。東京大学文学部仏文科卒業。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程中退。著書に『私家版・ユダヤ文化論』、『日本辺境論』、『日本習合論』、街場シリーズなど多数。

 

■岩田健太郎(いわた・けんたろう)

1971年島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科教授。島根医科大学(現・島根大学)卒業。ニューヨーク、北京で医療勤務後、2004年帰国。08年より神戸大学。著書に『新型コロナウイルスの真実』『感染症は実在しない』など多数。


庭の花


EUで使用禁止の農薬が大量に日本へ

2020年09月12日 | 野菜・花・植物

 猪瀬聖 | ジャーナリスト

    YAHOO!ニュース(個人)9/12(土) 

 

    人への影響が懸念されることから、欧州連合(EU)域内での使用が禁止されている農薬が、EUから日本に大量に輸出されていることが、国際環境保護団体グリンピースなどの調べでわかった。欧州やアジア諸国に比べて農薬の規制が緩いと言われている日本が、世界の農薬メーカーの草刈り場になっている構図が浮かび上がった。

第3位の輸出先

    農薬によってはEU内で使用が禁止されていても製造や輸出は可能で、輸出する場合は当局に届け出なければならい。今回、グリンピースとスイスの市民団体パブリックアイが、欧州化学物質庁(ECHA)や各国政府への情報公開請求を通じて農薬メーカーや輸出業者が届け出た書類を入手し、国別や農薬別にまとめた。

    2018年に届け出された書類によると、EU内での使用が禁止されている「禁止農薬」の輸出は、合計で81,615トンに達した。最も輸出量が多かったのは英国で、EU全体の約4割に達する32,200トンを輸出し、他国を大きく引き離した。2位はイタリアで9,500トン、3位は8,100トンのドイツだった。

    一方、禁止農薬の最大の輸入国は米国で、2018年の輸入量は断トツの26,000トン。日本はブラジルに次ぐ3位で、6,700トンだった。日本は単純に量だけ見れば米国の4分の1だが、農地面積が米国の1%しかないことを考えれば、非常に多い輸入量とも言える。

パーキンソン病と関連の可能性

    農薬の種類別に見ると、輸出量が最も多かったのは、除草剤のパラコートで28,200トン。次が殺虫剤の1,3-ジクロロプロペンで15,000トン。2種類で全輸出量の5割強を占めた。日本は2018年、1,3-ジクロロプロペンを4,000トン、パラコートを250トン、いずれも英国から輸入したことになっている。

    1,3-ジクロロプロペンは人への発がん性が疑われているほか、地下水の汚染や、野鳥や野生の哺乳類、水生生物などの繁殖への影響が懸念されている。日本では主に、農作物に被害をもたらす土中の線虫類を駆除するために使用されている。

    パラコートは、強い毒性に加えてパーキンソン病との関連が疑われ、EUは2007年に域内での使用を禁止した。米国では先月、パラコートや殺虫剤のネオニコチノイドなど特に危険と見なされる農薬を禁止する法案が議会に提出されたが、この法案に対し、パーキンソン病と闘う俳優のマイケル・J・フォックスさんが設立した「マイケル・J・フォックス財団」は、強い支持を表明している。

アジアでは使用禁止の流れ

    また、台湾やタイ、マレーシアなどアジアの国や地域も、昨年から今年にかけてパラコートの禁止に動くなど、パラコート追放は世界的な流れになりつつある。

    日本でも、パラコートによる自殺やパラコートを誤って吸引したことによる中毒事故が多発したことから、徐々に規制強化はされてきてはいるが、全面禁止にまでは至っていない。

    グリンピースの調査内容を報じた英高級紙ガーディアンは、「規制の抜け穴によって化学物質が途上国や米国、日本、オーストラリアに送られている」とし、禁止農薬が事実上、自由に輸出できてしまう規制のあり方に疑問を呈した。

    同じく、このニュースを伝えた英放送局BBCは、自分たちの人権や自然環境保護は人一倍重視するのに、輸出先の人たちの人権や自然環境を軽視するような行いをするのは、EUの「ダブルスタンダード」だとする批判的な意見を紹介した。

    欧州の市民団体は、禁止農薬の輸出禁止を各国政府に働きかけている。フランスは2022年から禁止する方針だが、他国は農薬メーカーに輸出中止を強いることは今のところ消極的という。

行き場を失った農薬が日本に向かう

    欧州やアジアの多くの国や地域では、パラコートだけでなく、除草剤のグリホサートや殺虫剤のネオニコチノイド、クロルピリホスなど、人や自然の生態系への影響が強く憂慮されている農薬の規制を強化する動きが急速に広がっている。国レベルでは規制が緩やかな米国でも、自治体レベルでは規制強化が進み始めている。

    そうした世界的な規制強化の結果、行き場を失った禁止農薬が日本に向かったり、日本からそれらの地域に輸出できなくなった農薬が、国内の消費に回されたりしている可能性が、今回の調査から読み取れる。


  釧路のブロガーさんによると落葉キノコが出てきたという。ということは、そろそろこちらにも・・・・・
一応裏山をチェック。まだです。今年は山の管理ができなくて、笹が生い茂っている。間に合うように笹刈りをしなくっちゃ!

なんてキノコかわかりませんが。

アロニアの枝に作られたハチの巣。拡張工事中なのでしょうか?

こちらは山ぶどう。たくさん実をつけています。


障害者手帳をもつ私は「死んでもいい命」?「働かざる者、食うべからず」の日本は生きにくい。

2020年08月26日 | 野菜・花・植物

ハフポスト2020年08月26日 

 

 他者との意思疎通が難しいとされている人、働けずにいる人は本当に不要な存在なのだろうか?不安な日本を襲う、「優生思想」について少し考えていこうと思う。

小林エリコ文筆家・漫画家

 ここ数年、「優生思想」の言説をSNSで見かけるようになった。4年前に起こった県立知的障害者施設「津久井やまゆり園」での障害者連続殺傷事件、先日起きたALS(筋萎縮性側索硬化症)患者への医師による嘱託殺人事件。他者との意思疎通が難しいとされている人、働けずにいる人は本当に不要な存在なのだろうか?

不安な日本を襲う、この思想について少し考えていこうと思う。

日本は「障害者のいらない」国なのか

日本に存在していた旧優生保護法という法律をご存知だろうか?

 旧優生保護法とは1948〜1996年にかけて国で施行されていた政策であり、優生学上の見地から、不良な子孫の出生を防止するとともに、母性の生命・健康を保護することを目的として障害者の強制不妊手術を行なっていたものである。

 当時、精神科に通院していた私にとって障害者の問題は他人事ではなかった。しかし、当時はネットもなく、情報をあまり見つけることができないし、文献も何を読んでいいかわからない。ただ自分の中に「自分は子供を産むべきではない存在、または生まれてこない方がいい人間」という意識だけが植え付けられた。

 成人してから引きこもりになり、障害者手帳を取得してからは、一層その気持ちが強くなった。現在、旧優生保護法自体は無くなっているけれど、自分の住んでいる国が「障害者はいらない者」として、堂々と障害者の不妊手術を行うことができたという事実はあまりにも衝撃的だった。ナチス・ドイツでもされていたような行いががつい最近まで、この国で行われていたことが怖かった。

 旧優生保護法に基づく強制不妊手術が行われた件数はわかっているだけでも、およそ1万6500件に上り、その対象は遺伝性疾患だけでなく、ハンセン病や、精神疾患、精神薄弱とされた。本人の同意を得て行われた手術もあるけれど、同意を得ていないものもある。

働きたくても働けない現実

 障害者や治らない重い病気を持っている人は、この社会ではいらない人間なのだろうか。私はこの問いを長いこと持ち続けている。

なぜなら、20代を精神科のデイケアで過ごし、入退院を繰り返していた私は、「生産性」がなく、社会から見たら「お荷物」だった。自分でお金を稼ぐことができず、実家で母と暮らし、障害者年金を受給し、そのお金でフラフラと買い物をし、遊びに行っているだけの存在だった。側から見れば「楽そうでいいね」などと言われそうだが、就職活動をしても受からず、バイトの面接を受けても落ち続けていて、働きたくても働けないというのが現実だった。

 思い出すと、90年代終わり頃から、日本は急激に変化していった。高度経済成長が終わり、派遣労働者が増え、昔のような安定した雇用から多くの人が弾き出されていった。

 正社員のイスに座れたものはいいが、座れなかったものは憎しみと悲しみを腹の底に貯めるしかない。自分の置かれた環境は彼らのせいではないのだが、自分たちの月収よりも高い年金で暮らしているお年寄りに嫉妬し、生活保護を憎む人もいる。差別という感情は、自分の内面が危うくなっているときに起こるものだ。「自分は生きる価値がないのではないか?」という考えをなくすため、自分より劣っていると感じられるものを見つけて差別することにより精神の安定を保つのだ。

 しかし、自分を守るために社会的弱者である高齢者や生活保護、障害者などに怒りが向くということは、この国では健康で働ける世代でありながら、彼らよりも生活水準が低い人たちが多いという証なのだろう。そういった人たちがネットで怒りを吐き出すのだと思う。

「ナマポ(生活保護)は俺たちの税金で飯を食うな!」「在日特権を廃止せよ!」

 生活保護を受けている人も在日韓国・朝鮮人も、恵まれた環境で生きているわけではない。彼らが本当に怒りを向けるべき相手は国であると私は思うが、彼らはそうは考えない。なぜなのだろうか。

私は「死んでもいい命」だと思われる側の人間

相模原市の津久井やまゆり園で起きた障害者連続殺傷事件の植松聖死刑囚は「障害者は周りに迷惑をかける存在だから」という理由で殺した。障害者や福祉にかかる税金が多額で、日本はたくさんの借金を抱えている。そのためには障害者を殺した方がいい、というのが彼の言い分のひとつだった。彼の中には「死んでもいい命」と「死ななくていい命」があり、前者が障害者にあたる。

 4年前の2016年、私はこのニュースを知った時、とんでもない事件が起こったと恐怖したが、もっと怖かったのは、それに賛同する人がネット上にいたことだ。

 そして、私は精神疾患をもつ自分が、植松に「死んでもいい命」だと思われる側の人間だということが恐ろしかったし、自分自身、仕事をせず引きこもっている時、自分のことを「死んでもいい命」だと思っていた。社会に出ることができず、お金を稼ぐことができない自分は生きていても仕方がないと考えていた。そして、私は何度か自分で自分の命を断とうとした。

 植松の考えと、国が行った旧優生保護法と、私が自殺を試みたことは、一本の糸でつながっている。それは「生産性」というものだ。社会の役に立つ、お金を生み出す、それがないものはこの世界に存在してはいけないという考えだ。

 しかし、お金を生み出せない障害者本人が悪いのだろうか?私はそうは思わない。この社会が障害者にとって生きづらい社会なのが問題なのだと思う。問題は社会の側にあるのだ。

 街中でもっと障害者の姿を

 今、多くの駅にはエレベーターが設置されていて、ベビーカーの人やお年寄り、普通のサラリーマンや若い人も利用している。しかし、昔は駅に設置されていなかった。設置された経緯は車椅子を使う障害者たちが抗議活動を続けた結果、ようやく設置されたのだ。同じようにさまざまな活動の結果、2016年に障害者差別解消法も施行されてバリアフリーの環境も整備され、車椅子の人たちがやっと街に出て移動しやすくなった。そして、障害者らの努力によって設置されたエレベーターを健常者たちが使用しているのを見ると、障害者が生きやすい社会は健常者も生きやすい社会なのだと感じる。弱いものに歩幅を合わせた社会こそがすべての人間にとって生きやすい社会なのではないだろうか。

 街中にエレベーターやスロープが設置されるようになり、歩道には視覚障害者用のブロックがあるけれど、街中で障害者を見かける頻度は少ないと感じる。それを思うと、いまだにこの日本の社会は障害者が生きにくい社会なのだと感じる。

 私は街中でもっと障害者の姿を見かけても良いと思っている。学校、職場、コンビニ、デパート。障害を持っている人が街中で生き生きと暮らしている姿をたくさんの人が目にすれば、「障害者は死んだ方がいい」という考えは生まれないと思う。

 仕事をしていない人間に対する風当たりが強い

 植松は障害者施設で働いていても、彼らに対して「生き生きと生きている」という感覚を持つことができなかったのだろう。今回の事件についての本を何冊か読んだのだが、植松は控訴を取り下げて死刑が確定してしまい裁判が終わってしまったので、この事件の真相究明はこれ以上行われなくなってしまった。彼の目に社会がどう写っていたのかはとても気になる。         

 障害や重度の病気を持っている人にとって、この社会は生きにくい。日本には「働かざるもの食うべからず」ということわざがあるくらいで、仕事をしていない人間に対する風当たりはいまだに強い。            

 それでは、はるか昔の時代、障害者はどうやって生きていたのか。『母よ、殺すな!』の著者で、脳性マヒ者で障害者運動を牽引した故・横塚晃一氏によると、祭りなどに登場する「ひょっとこ」は脳性麻痺者を表すそうだ。かつて古代人が、火を守るという大切な仕事を、身体を自由に動かせない身体障害者や高齢者に任せていたことに由来するという。彼らの名前は最初「火を守る男」だったが「火男」となり「ひょっとこ」と呼ばれるようになった。ひょっとこは今ではお祭りのお面として親しまれている。昔の人たちは誰がどこで働くのが一番良いのかということを知っていたのだ。

障害当事者にとっては迷惑で、耐えられない

 仕事のことばかり書いてしまったが、全ての人間が働かなければいけないとは思わない。働けないもの、働かないものを包摂するのが社会である。

 そもそも、命は生きているというそれだけで意味があるのだ。それは誰にも脅かされないものでなければならない。他者が誰かの命を選別するということはあまりにも傲慢である。

 1970年、横浜で障害児二人を育てる母親が2歳の女児をエプロンの紐で締め殺すという事件が起こった。それに対して、減刑せよという運動が起こったことがある。「母親の苦労もわかるから、多めにみて欲しい」という言い分なのだが、それでは殺される当人の言い分はどうなるのか。当人は殺して欲しいと願うわけはなく、社会や家庭環境によって母親に勝手に「この子の将来は不幸」だと決めつけられたのだと私は思う。

 横塚氏も関わった「青い芝の会」という脳性麻痺の当事者団体があり、彼らのスローガンは「われらは愛と正義を否定する」である。植松の正義の思想も、子を殺す親の愛も、当事者である彼らは否定しなければならない。彼らの正義や愛は、彼らにとってのもので、障害当事者からすれば迷惑なものであり、耐えられないものとも考えられるからだ。

社会に殺される人々

 そして、もし、障害や重い病気を持っていて、自分は死んだ方がいいと考えている人がいるならば、それは社会によってそう考えさせられているのだと知って欲しい。死を望んだALS患者の彼女は社会の重圧に殺されたのだと私は思っているし、もし彼女がもう少し生きていたら、違った未来が見えていたと思いたい。

 そして、私たちは想像力を身につけなければならない。明日、交通事故に遭い、片足を失うかもしれない。突然、難病にかかるかもしれない。その時に自分が「死んだほうがマシだ」と思う社会より「生きていてよかった」と思える社会であって欲しい。何より、私たちは歳を取り、最終的に高齢者という弱者になる。安心して障害者になることができ、安心して難病と共に生き、安心して車椅子になれる社会であって欲しい。

 弱者にとって生きやすい社会こそが、すべての人間にとって生きやすい社会なのだ。   (編集:榊原すずみ)


 『労働は価値を生む』それが資本主義の大前提だ。だから人は労働によって評価される。「それは仕方のないこと」とあきらめれば明るい未来社会は見えてこない。人が人として「評価」される社会はどのように築かれれていくのか、コロナ禍後の「世界」を見据えながら今、考えなければならない重大課題である。

MRI検査を受けてきた。

 

 


五十嵐圭日子「バイオエコノミーはSDGsの達成にどう貢献するか」ー第56回農学部公開セミナー「100年後の地球に私たちは何ができるか」

2020年08月05日 | 野菜・花・植物

五十嵐圭日子「バイオエコノミーはSDGsの達成にどう貢献するか」ー第56回農学部公開セミナー「100年後の地球に私たちは何ができるか」


 1時間に満たないビデオです。忙しいあなたにこそ、ゆっくりと見ていただきたいのです。コロナ後の社会をどのように作り上げていくか。じっくりと考えてほしいのです。地球は1つしかありません。


種苗法改定案

2020年05月02日 | 野菜・花・植物

「日本の種子を守る会」アドバイザー 印鑰智哉さんに聞く
   「しんぶん赤旗」2020年4月28日


「自家増殖」権を奪う 食の多様性・消費者の安全こそ
 安倍政権が今国会での成立を狙う種苗法改定案は、農民の「自家増殖」を禁止するものです。「日本の種子(たね)を守る会」アドバイザーの印鑰(いんやく)智哉さんに問題点やたたかいの展望を聞きました。(内田達朗)

 種苗法は、新しい品種の開発者(個人、企業、公的機関)の知的財産を保護し、市場への流通を確保するという趣旨の法律です。
 改定案は国が認めた「登録品種」について農家の「自家増殖」を禁止します。「自家増殖」は、購入した種子・種苗を栽培して得られた種子・種苗を農家が採取して、栽培に利用することです。

多国籍企業優越
 多国籍アグリビジネス(農業関連企業)の要求にもとづくものです。種子はそもそも農民のものでしたが「植物の新品種の保護に関する国際条約」の改定(1991年)で、新品種を開発した企業の権利を優越させようということが大きな流れになりました。
 知的財産を守る必要はあります。日本もこの条約に沿って98年に種苗法を改定していますが、企業の知的財産権を守りながら、農民の自家増殖を認めるものでした。それを今度は加速させようというのです。
 しかし、この20年で百八十度、流れが変わり、農業の「工業化」が2008~07年の世界的な食料危機を契機に見直されました。

 環境を守りながら、安全な食料を安定供給するには、大規模化や化学肥料・農薬を多投入する工業化ではなく、小規模・家族農業を支援すべきだというものです。企業は利益が出なければ、生産をやめてしまいます。しかし、その地域で暮らしている小規模・家族農業は、そんなことはしません。地域で持続可能な形で農業を営むのです。この変化が「国連家族農業年」(14年)、「農民の権利宣言」(18年)、国連「家族農業の10年」(19年~28年)につながっています。

家族農業を破壊
 今回の改定は、まったく逆行しています。すでに、遺伝子組み換え食品の承認は、アメリカ以上の速さで進んでいます。安倍政権は、家族農業の切り捨て、農協など家族農業を支える制度も壊そうとしています。
 政府の言い分は、農家が自家増殖するから、企業の意欲をそいでいるというものですが、違います。

 今ある種子・種苗は、最初から現在の形質を持ち合わせていたわけではありません。農家がその土地の土壌や気候に合わせ、選抜・栽培を繰り返してきたなかで変化し、その土地に合った形質を獲得したのです。
 その土地に合わないものを無理に栽培しようとすると、化学肥料や農薬を多く使うことになります。農家の「自家増殖」は、食の多様性とともに消費者の安全にもつながっているのです。

 新型コロナウイルスの感染拡大のもと、農家が経営に追われ、集会など身動きができず、声もあげられないなかで拙速な審議は行うべきではありません。
 農家と消費者の連携をさらに深めることが重要です。例えば、学校給食を通じて子どもたちが地域の食、農業について知れば、主権者として育つのに大きな役割を果たせると思います。
 真実を知らせれば若い人が一番変わります。一緒に声をあげましょう。

*   *   *   *   *

柴咲コウ 種苗法改正案審議入りへ警鐘「日本の農家さんが窮地に…」 
   2020年4月30日 スポニチ 

 女優・柴咲コウ(38)が30日、自身の公式ツイッターで、新型コロナウイルス感染拡大の中、種苗法の改正が行われようとしていることに警鐘を鳴らした。 

 種苗法の改正案には、農作物を新たに生み出した人や法人に「育成者権」を与えることなどが盛り込まれる方向で、ゴールデンウイーク明けから国会で審議される見通し。育成者の知的財産権が保護される反面、各農家による株分けや種取りなどが制限され、農業崩壊が起きる可能性も指摘されている。

 そんな流れに対し、柴咲は「新型コロナの水面下で、『種苗法』改正が行われようとしています。自家採取禁止。このままでは日本の農家さんが窮地に立たされてしまいます。これは、他人事ではありません。自分たちの食卓に直結することです」とつづった。

 柴咲は以前から自給自足生活への憧れを語るなど、農業や環境問題に強い関心を持っていることを告白している。昨年は政府の環境特別広報大使にも任命された。


 コロナ後(中)に大食糧難が押し寄せるかもしれないといわれている昨今である。そんなときに「不要・不急」な法案の審議をするよりもコロナ対策で必要な緊急になさなければならないことが山積みしているはず。この時期、農家はとても忙しい、しかも「3密」で「集会」もままならず。こんな「火事場泥棒」アベ政権は一刻も早く潰さなければならない。

 なかなかハウスを閉められない気温で、帰りが遅くなる。


北こぶしも今日開花。高いところの日当たりの良いところから咲き始めた。

【閲覧注意】(カエル,サンショウオ)



エゾサンショウオ


こんな大きなカエルはここ3年ばかり前から。
名前わかれば教えてください。


種苗法改定案反対

2020年04月06日 | 野菜・花・植物

種苗法改定案反対 企業のもうけにするな
農民連 請願署名次つぎ “種子はみんなのもの”
  「しんぶん赤旗」2020年4月3日

 今国会に種苗法の改定案が提出されています。農民が長年営んできた種の「自家増殖」を禁止することに対し、農民や消費者から「種子はみんなのもの。企業のもうけにさせるな」などの声があがっています。
 農民はこれまで、購入した種子・種苗を利用し、栽培して、収穫したものから形状・品質のよいものを選び、翌年の栽培に利用する「自家増殖」を通じて、地域にあった農産物の生産を続けてきました。

自家増殖禁止
 種苗法改定案では、種苗のうち、独自の特性を持った品種として国に登録された「登録品種」について、農家による自家増殖を原則禁止。自家増殖するには育成者に対価を支払う「許諾制」とします。
 登録品種には、サツマイモの「紅はるか」、イチゴの「あまおう」などホームセンターでも購入可能なものもあります。農家の営みだけではなく、市民農園や家庭での栽培でも自家増殖ができなくなります。
 国は、国内で開発された種苗が海外に持ち出され、栽培されることを防止するとしていますが、種子法が2018年に廃止され、すでに種子に関する知見が民間事業者に提供されています。海外の事業者が知見を使って開発した品種を海外で登録することも可能です。農水省令でも自家増殖禁止の作物をどんどん増やしており、法改定により固定化されるのは必至です。
 農民連は「農民の自家増殖を禁止し、登録品種はすべて購入させることで、種子を企業のもうけの対象にすることが本当の狙いだ」と指摘します。
 安倍政権は18年に種子法を廃止し、種子の安定供給を危うくしました。種苗法を改定し、知的財産権の保護の名で、種子の公共性を覆し、アグリビジネス化へ道を開こうというのです。
 農民連は、種苗法改定に反対する国会請願署名をツイッターなどで提起。農民連本部の投稿は、1万2千件以上リツイートされました。改定反対のポスターも作成し、活用を呼びかけています。

消費者も賛同
 農民連本部には、北は北海道から南は沖縄まで、農家だけではなく、産直に取り組む消費者など多彩な人から封書、宅配便、ゆうパックなどで、紙のサイズも色合いもさまざまな署名が手紙とともに届き、3月末ごろから連日50通以上届いています。
 北海道岩見沢市の農家の女性は、種子法廃止に続く、種苗法改定に不安を感じていると述べるとともに、「タネ取りは農民として欠かせない行動です」「地域に根ざした、大切な農作物・遺伝資源が守られるようにするため、『種苗法』廃止には心から反対いたします」と語っています。
 消費者からは、農家への感謝の声とともに、「個々の力は小さいですが、集まれば、大きく、必ず改定案反対の思いが届くと信じています」などの声が添えられています。
 農民連の藤原麻子事務局次長は、“請願署名は初めて”“未成年でも署名できますか”など“いてもたってもいられない”という多くの市民が署名を寄せていると語ります。
 「育成者の権利は守られるべきです。一方で、農家の種子の権利を守ろうという国際条約が採択され、『農民の権利宣言』では、種子の権利が認められるなど、農民の権利を守ろうというのが世界の流れなのです」と力を込めます。
 笹渡義夫会長は、「種子・種苗は、育成者が開発しておしまい、ではありません。土地の気候や土壌などの条件に応じて改良していく生産者の努力があってこそ成り立ちます」と強調します。「農民、消費者に広く知らせ、世論を起こすとともに、法案に反対するよう求める衆院農水委員への電話・ファクスでの要請などを広げ、必ず廃案に追い込みたい」
 ◇
 署名用紙とポスターは、農民連のホームページからダウンロードできます。


不安定な天気
 晴れたり曇ったり☂だったり、雪になったり、昼には霰(あられ)が積もるほどに。散歩に出ても手が冷たい。
 ハウスの巻き上げも付け終わり、内にもう1枚ビニールを張り、その中にさらにトンネル。2重のところでポータブル石油ストーブ2台。これで育苗場所の完成。住居の部屋で育苗中の苗をこちらまで運んでこなければならない。離れているだけに、温度管理が大変。


種苗法の改定案が、今国会に上程されようと・・・

2020年03月25日 | 野菜・花・植物

種苗法改定法案 日本の農業どうなるの?
種子を守る会事務局アドバイザー 印鑰智哉さんに聞く

   「しんぶん赤旗」2020年3月25日【くらし】

公的な事業を存続させ国民の食の安全守ろう
 種苗育成者の権利保護を定めた種苗法の改定案が、今国会に上程されようとしています。何が変えられようとしているのか、日本の種子(たね)を守る会事務局アドバイザーの印鑰智哉さんに聞きました。(都光子)


 ―種苗法とはなんですか? 何を変えようとしているのでしょうか?
 種や苗の新品種を育成した人の知的所有権を守って、登録された品種が市場で流通できることを目的にしたもので、対象はすべての農作物です。
 登録品種は総数600以上、トマトだけで148種類あります。コメでいうとゆめぴりかや、イチゴのあまおうなどが登録品種です。一方、在来種や登録期間が切れたものなどを農林水産省は一般品種と呼んでいます。
 今回の改定案では「種苗の知的財産権」を強化し、農家が登録品種を許諾を得ることなく栽培することを禁止し、農家の種苗法違反を訴えやすくしようとするものです。

サトウキビ 大きな打撃
 ―今回の種苗法改定では、農家の自家増殖禁止に注目が集まりますが、自家増殖とは?
 収穫したものの中から形や質が良いものを選んで、次回のタネや苗として再利用することで、タネなら自家採取ともいいます。現行では例外を除き、原則だれでも可能です。
 ―自家増殖できなくなるとどうなりますか?
 先日、沖縄・宮古島での学習会に呼ばれました。県内でも一番のサトウキビ生産地域ですが、種苗法改定は大打撃になるのではないかという話になりました。
 サトウキビは毎年植えるのではなく、収穫のあと、株から発芽させて育てる「株出し栽培」という手法がとられていて、欠かせないものになっています。ところが、株出し栽培は自家増殖にあたります。
 イモ類、イチゴ、コメでも自家増殖は重要です。
 そもそも農民から自家増殖の権利を奪っていいのか―。種子はだれのものかといえば、農民のものです。国連の「農民の権利宣言」で、種子に対する権利が農民にあることを明確にしています。

廃案にして在来種保存
 ―知的所有権を強化することはいいことのように聞こえますが、本当はどうなのでしょうか?
 農水省は、日本の優良品種が海外に持ち出されるのを防ぐことが目的だと説明しています。しかし、実際は国内ではなく海外で品種登録することが唯一の対策です。農水省自身、2017年11月にそう説明しています。
 しかも「日本の優良な種苗を流出させない」といいながら、17年にできた農業競争力強化支援法では、国や都道府県が持つ種苗の知見を多国籍企業を含む民間企業に渡すことを求めています。流出防止というのは単なる偽りの看板です。
 自家増殖禁止の本当の狙いは、国や地方自治体の公的な種苗事業が狙われているとみるべきです。
 インドでは多国籍企業の圧力で公的種苗事業はほぼ開店休業状態に追い込まれました。政府は公的種苗事業は農家が買って支えなければならないと強調します。なぜかといえば、公的種苗事業が安くて優秀な種苗を出していたら、多国籍企業は太刀打ちできないからです。だから公的事業を縮小させることが今回の改定の隠された意図だといえます。
 種苗は、私たちの命を支え、食文化の基礎となるものであり、公的種苗事業の存続は私たちの食の安全に直結します。
 ―日本の農業を守るためには何が必要ですか?
 今回の種苗法改定案は廃案にさせ、急速に失われている在来種を守ることで、種苗法以上に在来種保存のための法律など多様性を守り発展させることこそ必要でしょう。
 いま、世界は小規模農家による有機農業が急速に伸びています。それを可能にしているのは学校給食での有機化です。日本でもそうした動きを進め、その基礎となる種苗を公的に守る必要があります。


 昨日は、皮膚科の塗り薬が切れて札幌まで行ってきました。あまり氣が進まず、もう限界でした。いつものように友人と食事をし、それから娘の家まで行ったので、すっかり遅くなり更新できませんでした。

我が家の周り

家の前の畑にはまだこんなに・・・

江部乙では

チャイブが芽を出しました。

散歩道

 


除草剤に代わるもの

2020年03月23日 | 野菜・花・植物

    昨日、「除草剤] 2018年06月05日(https://blog.goo.ne.jp/mooru1949/s/除草剤/1)へのアクセスがダントツトップになった。除草剤に代わるものはないか安全な除草剤はないかと調べているようです。わたしは除草剤や化学肥料、トマトトーンのようなホルモン剤は使っていないのですが、大規模農家にとっては「必需品」(?)なのかもしれません。そんなわけで今期より除草剤に代わるものを探し、実験中です。おかげでミニトマトの苗、ほぼ全滅になってしまい、改めて種を取り寄せ播種したところです。効き目が実証されたわけです。

注目の「好熱菌」「超好熱菌」

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
 好熱菌(こうねつきん)は、至適生育温度が45°C以上、あるいは生育限界温度が55°C以上の微生物のこと、またはその総称。古細菌の多く、細菌の一部、ある種の菌類や藻類が含まれる。特に至適生育温度が80°C以上のものを超好熱菌と呼ぶ。極限環境微生物の一つ。 
 生息域は温泉や熱水域、強く発酵した堆肥、熱水噴出孔など。ボイラーなどの人工的熱水からも分離される。この他、地下生物圏という形で地殻内に相当量の好熱菌が存在するという推計がある。

バイオ21菌を使った資材(サカタ)
 バイオ21・バイテクバイオエース・プレミアムバイオエース

高い環境適応能力
活動温度 10℃~60℃
耐熱温度 -80℃~100℃
※活動温度外では芽胞で休眠
芽胞は、氷点下(冷凍庫)で数年間生存

好気条件でも絶対嫌気条件でも活動
乾燥条件でも多湿条件でも活動
(サカタのHPより)

 形状は普通の培土。-80℃まで耐性があるので融雪剤として散布することができます。この時は休眠状態でしょうが気温が上がってくると活性化するものと思います。地温上昇にも?
 高い濃度での施用は雑草の種や植物自体を枯らすものと思います。

さらに、冬季の無暖房化・無加温化につながるかもしれません。


これからいろいろと実験していきたいと思います。
 超好熱菌を利用した資材に「若葉1号」(寒冷地向け)発売フロンテイア光栄(株)などが販売されています。いろいろググってみてください。


雪囲い外し
ブルーベリー

アロニア

鉢植えの梅を路地に植えたのですが、無事冬を越しました。しかし、ネズミにやられています。下の部分はしっかりと金網を巻いていましたので無事でした。新しい芽が出てくるでしょう。

ハウス脇の杉の木を上の方で切りました。日陰になりミニトマトに病気が出て氣になっていたのです。

裏の白樺樹を採っている山。汗だくで上っても万歩計は数百。

 


林業の実態と新たな希望。

2020年01月27日 | 野菜・花・植物

「スマート林業」が掲げられるも厳しい林業の実態 新たな希望を模索する動きも – 田中淳夫

農林水産業のミライhttps://blogos.com/article/430733/
   野菜や魚の生産・供給、森林の活用・保全など国民の生活を支える「第一次産業」。しかし、現場では深刻な人手不足や従事者の高齢化によって、これまで通りの生産維持が危ぶまれる地域も生まれています。そんな窮地を救うべく、発展目覚ましいテクノロジーの導入や、ブレイクスルーを目指す人々の取り組みを紹介します。 2020年01月21日 
 
 「林業の成長産業化」は机上の空論
    近年、森林と林業には多くの期待が寄せられている。
まず森林は、温暖化ガスの吸収源や生物多様性の核として。さらに心癒す場としても。また木材は、環境負荷の低いマテリアルであり、化石燃料代替のエネルギー源にもなる。そして林業は、山村地域の活性化や田舎暮らしなどオルタナティブな生活の場と職業として注目を集め始めた。
    だから「林業の成長産業化」が叫ばれている。事実、ここ数年、木材生産量は右肩上がりであり、木材自給率も20年前の2倍まで伸びた。林業への若者就業率も高まっている。そのため機械化を進め、ICTを導入した「スマート林業」の推進が掲げられている。
    だが現場を見れば、それらが机上の空論であり、肝心の森林とその地で生きる人々を置き去りにしていることに気づくだろう。

    たとえば木材生産量が伸びたといっても、そこには莫大な補助金が注ぎ込まれていることを忘れてはならない。植えても伐っても補助金が出る。その総額は林業からの産出額を上回るのだ。つまり赤字である。これで成長産業と言えるわけがない。
    それでも林業に携わる人々(森林所有者、林業従事者など)が潤っているのならまだ救われる。しかし、現状はほど遠いのだ。具体的な数字で見ると、1985年は丸太価格のうち59%が山主の取り分だったが、2015年では22%になった。製材品価格では28%から4%に落ちた。
    しかも丸太価格がこの30年で半減しているのだから、単純計算では山主の利益は約5分の1になったことになる。森林・林業白書によると、森林所有者の林業所得は平均で年間11万円(20ヘクタール以上所有。2017年)にすぎない。これでは林業経営を続ける意欲も失われるだろう。
    そこで作業(伐採搬出)の低コスト化と生産量を増やすため大型林業機械の導入が推進されている。しかし、それらの価格は軽く数千万円する。伐採から搬出まで必要な台数を揃えると億単位の資金が必要だ。加えてランニングコストも、燃料費だけで月に数百万円。メンテナンス代も馬鹿にならない。
    そして機械を効率よく動かすには十分な作業面積が必要だが、日本の山は地形や所有規模の関係で大面積の確保が難しい。小面積の山林で大型機械を稼動させても効率よく作業できず、コストは増すばかり。
    しかも伐採量の増加は、森林資源の枯渇を招く。林業の持続性を失わせ環境を劣化させてしまうだろう。実際、全国各地にはげ山が広がり始めた。

筆者提供
    本来は伐採したら再造林しなければならないが、最近は放置が増えている。造林したらわずかな利益も吹っ飛んでしまうからだ。せっかく植えても苗をシカなどに食われて生育しないケースも多い。それを言い訳に再造林をしないケースもある。
最悪なのが、働く人々の待遇だ。給与は、いまだに日当方式が大半。働いた日数分しか払われないのだ。有給休暇はないしボーナスも期待薄。何より労働災害が多すぎる。全国に4万5000人しかいない林業従事者なのに、毎年二桁の死者を出す。4日以上休業する怪我(労災の認定基準)は全産業平均の十数倍という数字も出ている。
    加えて労災保険の適用をしぶる経営者も少なくない。労災保険を申請する、つまり事故を起こした事業体は、公共事業などの入札で不利になるからだ。


木材供給と需要のミスマッチが多発している
    では、増産された木材はどうなっているのだろうか。
残念ながら、売れ行きは芳しくない。木材の大きな需要である住宅建築が奮わないのだ。人口減少が続く日本では住宅着工件数は減る一方だし、家族数が減れば家も小さくなる。そして非木材系の住宅も増えた。木材を使わずとも家は建つのである。
    代わりに増えているのが合板原料やバイオマス発電燃料の用途だ。おかげで見た目の木材消費量は増えている。だが、これらは価格が安いことが必須条件だ。建築材に使われる真っ直ぐな木材(A材)に比べて何割も安い木材を求められる。売れなかったA材も、合板や燃料用に回されるのである。おかげで木材価格はどんどん安くなっている。

    また、これは従来からの問題点だが、木材供給と需要のミスマッチがあまりに多い。求められるところに合致した木材を供給されにくいのである。林業家はどこの誰がどんな木材を必要としているか情報を持たず、消費者や加工業者も自らが欲している木材がどこにあるのかわからない有り様だ。
    結果的に使うのを諦めるか、商社が仕切る外材に頼る。そうした問題を解決するためにICTの活用が叫ばれているが、いまだに実験レベル。そもそも林業家自身が、自分の山のどこにどんな木があるのか知らないのである。そうしたデータを収集するところから始めなければならない。
    このように現在の日本林業の問題点を並べると、もはやどこから改革すればよいのかわからなくなり、絶望してしまう。林業に希望は見出せないのか。


森林の新たな利用を模索し小さな「希望」も
    近年、国が進める林業の大規模化、画一化の動きから外れた道を選ぶ林業家や自治体が登場し始めた。めざすは木を一本一本丁寧に扱い、付加価値を高くして出荷すること。また木材生産だけでなく森を利用して収益を上げる仕組みづくりに挑んでいる。
    たとえば北海道の中川町は、町有林の皆伐禁止、私有林の皆伐制限を決めた。そして残されている天然林から広葉樹を持続的に伐り出し、旭川の家具メーカーに出荷している。通常、家具材は建築材の5、6倍の価格だから利益率は高い。
    同じく群馬県のみなかみ町は、天然林や雑木林の活用を進めている。これまで雑木として使われることのなかった木々を家具木工用や木の器用に出荷することで収益を上げる計画だ。最初から用途を決めて丁寧に無駄なく利用することで付加価値を高めるのである。
    一方、森林の新たな利用という点からの模索も各地で行われている。林内で養蜂を行ったり樹下で薬草栽培をしたり、あるいは森のようちえん(森を活かした幼児教育)の開設……とさまざまな方法が試されているが、その一つに「冒険の森」事業がある。

筆者提供
    長らく放置された人工林を利用して作られたレジャー施設だ。樹上をロープ頼りに歩いたり飛び移ったり、さらに森の中に張ったワイヤーを滑車で滑り下りるジップラインなどを設えている。
    通常のアスレチック場よりも大人向きで、インストラクターと安全装置をしっかり付けて臨む。これが人気で多くの都市住民を招き入れている。おかげで木材生産よりも多くの収益を上げているだけでなく、新たな雇用も生み出している。
主体の企業はいくつかあるが、すでにフランチャイズ方式で全国に広がっている。いずれも森の有効利用を掲げ、収益を森林整備につなげている。
顧客も、単なるレジャーに留まらず環境教育や企業の新人研修にも利用されるようになってきた。都市の住民がここで楽しみつつ、森林や林業への理解を深める役割を果たしているわけだ。
    こうした試みは、まだ小さな「希望」にすぎない。林業の建て直しは、そう簡単ではないだろう。だが次世代の林業を築くためには、当事者が森林の持続を考え新たな方策をいろいろ試みることが大切だ。それが絶望から希望への道のりである。


筆者プロフィール
田中淳夫(たなか あつお)
1959年大阪生まれ。静岡大学農学部林学科を卒業後、出版社、新聞社等を経て、フリーの森林ジャーナリストに。主に森林や林業をテーマに執筆活動を続けている。著作に『絶望の林業』『森は怪しいワンダーランド』(ともに新泉社)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)、『森林異変』『森と日本人の1500年』(ともに平凡社新書)など多数。