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児童虐待死、救うには 

2016年02月17日 | 社会・経済

 

今朝の風景。ここしばらく雪が降り続いています。湿った重い雪です。
春よ来い、はぁやく来い!

児童虐待が絶えません。いじめによる自殺も・・・
2つも3つも仕事を掛け持ちして極限状態で暮らすシングルマザー。その一方で”口利き”で金や高級車を要求する「政治屋」。消費税など国民から搾り取れるだけ搾り取り政党助成金で「暮らす」これら「政治屋」には解り得ないものなんでしょう。

児童虐待死、救うには 現場を歩いて考える 東京・大田/埼玉・狭山

毎日新聞2016年2月16日 東京夕刊

 3歳の女児が亡くなった部屋の前には、お菓子やジュースが供えられていた。 あまりにも悲しく、胸が痛む。先月、東京都大田区と埼玉県狭山市で、虐待の疑いで幼い子の命が失われた。虐待が減ったというニュースは聞いたことがない。なんとか命を救う手はないのか。現場を歩いて考えた。【江畑佳明】

 工業の街として知られる大田区。中小の工場が建ち並び、その間に住宅が顔を出す。事件の起きたマンションは築30年超にみえるが、ゴミの散乱などはなく、管理が行き届いている様子だ。

 「きちんとした生活環境という印象を受けますね」。そう語るのは、ルポライターの杉山春さんだ。記者の依頼で現場を一緒に訪れた。杉山さんは16年前から児童虐待の取材を続け、家族と社会を見つめている。大阪市内のマンションで母親が2児を部屋に置き去りにして死亡させた事件(2010年)や、神奈川県厚木市で父親が5歳の男児を放置して死亡させた事件(14年発覚)などを取材した。

 事件のあらましはこうだ。1月27日、新井礼人(あやと)君(3)が病院に緊急搬送されて死亡が確認された。両頬などに複数のあざがあり、警視庁は母親の交際相手で暴力団組員の永富直也容疑者(20)を傷害容疑で逮捕。容疑は同月25日夜、礼人君に殴る蹴るの暴行を加え重傷を負わせたとしている。永富容疑者は「(礼人君が)にらんだので頭にきた」と認めている。永富容疑者は母親と昨年6月ごろSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通じて知り合い、1月8日ごろから礼人君の母親のマンションで同居していた。

 同じマンションに住む女性は「礼人君はかわいい子。お母さんは礼人君が廊下を走っても優しく注意して、いい親子だと思ってました。その男の人も見たことがなかったから、びっくりして」と肩を落とした。また近所の別の女性は「犬の散歩中に、礼人君が『ワンワンだ!』と近寄ってきました。お母さんはおとなしい感じ。まさかこんなことになるなんて……」と声を詰まらせた。

 これまでの報道では、身長190センチ超という永富容疑者の残酷な行為がフォーカスされている。だが杉山さんの視点はやや違っていた。「虐待をする人が幼少時に虐待を受けていた、という事例はよくあります。同居の男性はどうだったのでしょうか。少年期に夜間に徘徊(はいかい)していたとの報道もあり、もし社会が彼や彼の家庭を支えられていたら、今回のような事件に至らなかったかもしれない。『あんな残酷なことをする人間が悪い』と個人批判するだけでは、児童虐待はなくなりません。児童虐待は、社会のひずみの表れだと思います」

 行政との関わりが知りたくて、大田区役所を訪ねた。子育て支援課の担当者によると、礼人君は乳幼児健診はすべて受診していた。杉山さんは「お母さんには子供をきちんと育てたい、という気持ちがあったと感じられますよね。それなのにこんなことになってしまって……」と残念がった。

 また礼人君が通っていた保育園でもあざなどは確認できなかった。担当者は「男性と同居中という情報は入っていなかった。今後は対応の『感度』を上げる必要があると考えています」と話した。

 この事件では女性は息子を奪われた被害者だが、杉山さんはシングルマザーの多くが抱える「困難さ」にも社会全体がより関心を寄せてほしいと主張する。「20代のシングルマザーの8割が相対的貧困にあるという推計があります。困窮によって自己肯定感が下がると、行政から低い評価を受けるのを恐れ、行政との接点を自ら絶ってしまうケースが見られます。そして親のストレスのはけ口が立場の弱い子供に向かい、虐待に至ることも考えられる。この悪い流れを止めるには、まず、ひとり親を尊重し敬意を持って接しようという社会的なコンセンサスを築き、ひとり親でも経済的に安定して子育てができる環境を整えることが必要だと思います」

社会のひずみ、ひとり親への敬意持って

 警察庁の統計によると、最近の児童虐待の検挙件数は、10年352件▽11年384件▽12年472件▽13年467件▽14年698件−−と増加傾向にある。04年(228件)比では3倍以上になった。

 むろん、国も対策を講じてはいる。昨年12月、子供の貧困対策や児童虐待対策を盛り込んだ「すべての子どもの安心と希望の実現プロジェクト」を決定。ひとり親家庭への児童扶養手当増額や、妊娠から子育てまで相談に応じる「子育て世代包括支援センター」の全国整備などを掲げた。

 関西学院大の才村純教授(児童福祉論)は「これまでは厚生労働省中心で、政府を挙げて取り組む姿勢はあまりなかった」と一定の評価をしながらも、厳しい口調になった。「従来の対策の拡充や延長が目立ち、抜本的な改革とはいえない。児童相談所が対応する虐待件数は過去最多の8万件を突破するなど、現場の人手不足は深刻。虐待した親のメンタルケアを裁判所が命じるなどの措置が求められているのに、踏み込んでいない。不十分です」。そしてこうも指摘する。「貧困や地域の人間関係の希薄化などで明らかに子育てをしにくい時代。将来の日本を支える子供たちだから、今こそ思い切った財源を投入すべきです」

夜中の泣き声、警察通報したが…

 もうひとつの事件の現場へ向かった。

 先月9日、狭山市のマンションで藤本羽月ちゃん(3)がやけどなどの外傷がある状態で死亡しているのを、駆けつけた消防隊員が発見。埼玉県警は母の藤本彩香容疑者(22)と同居の大河原優樹容疑者(24)を保護責任者遺棄容疑で逮捕、さらにネクタイなどで両手を縛るなどの暴行をした容疑で再逮捕した。

 「もっと何度も通報していればよかった、と思うんです」。同じマンションに住む男性(30)は、声を絞り出すように語った。男性は昨年6、7月に計2回、夜中などに女児の泣き声がやまないため虐待を疑い、110番通報した。県警狭山署員が駆けつけたが、いずれもあざなどは確認されなかったとのことだった。その後もしばしば泣き声を耳にしたが「何回も通報したら、逆に僕の方がおかしいと思われてしまう」とためらった。

 実は女児が亡くなる数日前にも「開けて」と泣き叫ぶ声を耳にしている。「外出する用事があったので、帰宅時もまだ泣いていたら通報しようと考えたのですが、もう聞こえなくなっていたんです」と悔やむ。自分を責めているようだった。
 「地域の人がもっと関わってあげられたらよかったけど、余裕がないからね。警察や行政は事件を深刻に受け止め、連携してほしい。でないと同じようなことが繰り返されてしまう」。男性は声を大にして言った。

 外に出ると、母親と手をつないで楽しそうに歩く男児の姿があった。この
子の笑顔が続く社会をつくらねばならない−−そう痛感した。