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観光列車

2016年02月27日 | 日記・エッセイ・コラム

なぜ、山手線に観光列車が走らないのか

アイティメディア株式会社 - ITmedia ビジネスONLiNE - 2016年2月19日

●北海道版「ななつ星in九州」の要望も

今年3月の北海道新幹線の開業を控え、北海道の観光ビジネスに注目が集まっている。

北海道新幹線はとりあえず新函館北斗まで開通するが、ここは広大な北海道の入り口に過ぎない。ただし、JR北海道は函館〜新函館北斗〜札幌間の特急「北斗」「スーパー北斗」を増発する予定だし、札幌と函館を結ぶ高速バスも新函館北斗を経由する。

私の知人が新函館北斗発の一番列車を狙って北海道へ渡ろうとしたら、既に北海道新幹線の開業日前日のホテルに空きがなかった。しかし一番列車の出発は見届けたい。そこで彼が考えたルートは、前日に旅客機で新千歳空港へ飛び、札幌から函館行きの夜行バスのチケットを取った。このバスは翌朝5時ごろに新函館北斗駅前に着くから、東京行き「はやぶさ」の始発列車に十分間に合う。このバスは開業日ではなくても、今後、札幌〜本州間で使えるルートだ。本当はJR北海道に札幌〜函館間で夜行列車を運行してほしかったけれど、そこまで需要予測は立たないのか。もったいない。

JR北海道は新幹線と安全への投資に集中し、観光列車は削減する方向だ。しかし、北海道と自治体側は観光列車を望む声が高まっている。例えば、オホーツク海沿岸を走る「流氷ノロッコ号」について、JR北海道は「機関車の老朽化で来期の運行が難しい」と沿線自治体に伝えた。その発言を受けた自治体が「別の観光列車を走らせてほしい」と要望している。流氷ノロッコ号は今、日本国内の需要よりも、中国、台湾からのインバウンドの受け皿という意味合いが強くなっている。JR北海道も中国語通訳を乗務させて対応しているほどだ。

北海道版「ななつ星in九州」というべき豪華観光列車の要望もある。2月3日午前、道東地域の白糠町や本別町、道北の豊富町など5つの町の首長が北海道庁を訪れ、道東や道北を巡る豪華観光列車の提言書を高橋はるみ知事に提出した。知事は午後の記者会見で、長期的な課題として取り組み、今年度の補正予算案に調査費などを盛り込む考えを明らかにした。翌日4日の北海道新聞は「道が26日開会予定の定例道議会に提出する本年度補正予算案に調査費約800万円を計上する方向」と報じている。意思決定の速さに驚く。

JR北海道は全路線が赤字という厳しい経営状況だ。道内の453駅のうち、年間平均乗降客が1人以下が58駅。10人以下が101駅。これだけ乗客が少ない路線で、観光列車を走らせて集客できるか、という疑問もわくだろう。しかし、レジャー産業の視点で見れば、こうした閑散路線こそ好立地だ。東京・大阪などの人口が多い地域よりもビジネスチャンスがある。

●山手線という「一等地」に観光列車は不要

全国で観光列車が続々と誕生している。しかし、どれも三大都市圏から離れた路線を走っている。JR北海道の流氷ノロッコは札幌からも300キロメートル以上、JR九州の「指宿のたまて箱」は博多から280キロメートル以上も離れている。起点駅が空港のある中核都市であれば乗りやすいけれど、東北や中国地方には、かなり集客に苦労しそうな列車もある。しかし実際のところ、運行が続いている状況を見ると、成功しているとみて良さそうだ。

そんなに苦労しなくても、人口が多く乗客を見込める大都市で観光列車を運行すればいい。もっともうかるはずだ。その通りである。しかし、大都市で観光列車は走らない。例外があるとすれば、博多を発着する「ななつ星in九州」や、JR西日本が運行する「特別なトワイライトエクスプレス」の大阪・京都発着などだ。しかし、これらの列車のメインとなる運行地域は都市圏外であり、博多や大阪の発着は、乗客を送迎する意味しかない。

なぜ、山手線や大阪環状線、東京メトロや各地の地下鉄で観光列車を走らせないか。「普段と同じ街の景色ではおもしろくない」「乗車時間が短い」という見方もできる。しかし、観光列車の主な要素は車窓の景色だけではない。熊本から天草方面へ向かう観光列車「A列車で行こう」のメインテーマは「音楽と酒」で、車内はBARである。その空間を楽しむ人の中には、景色を問わない人もいるだろう。車窓という「動く風景画」がある空間として列車を楽しむ。それで十分だ。

それなら、都会型観光列車も考えられる。山手線や大阪環状線の電車にBARラウンジカーや食堂車を連結して周回させてもいいし、地下鉄なら往復させてもいい。窓のないレストランやBARなんて都会では珍しくない。むしろ壁を使った装飾で勝負する店舗もある。

しかし、大都市圏の通勤路線は観光列車には向かない。理由は簡単だ。手間をかけたほど儲からないし、そもそも通勤路線に観光列車という付加価値を与える必要はないからだ。

乗車率の高い通勤路線の場合、レストランやバー車両のように定員の少ない車両を入れても儲からない。定期券の乗客をギュッと詰め込んだほうが利益率が高い。車両を追加するなら通勤車両だ。それで混雑が緩和されると、ほかの路線からの乗客流入を期待できる。都心の通勤路線は、いわば都心のビルの一等地だ。便利と言うだけで、テナントとして飲食店より手間のかからないオフィスが入居してくれる。

つまり、通勤路線として売り上げを増やす手段があり、集客のための観光的な付加価値は不要。増結しても通勤客で満たされる。テナントビルに例えると、増床しても飲食店である必要はなく、オフィスが入ってくれるというわけだ。

●レジャー産業は「裏通り」ビジネスである

大都市の通勤路線を一等地とするなら、地方の路線は三等地以下だ。線路も列車も余っている。しかし人は来ない。だから路線に付加価値を与えて集客し、単価を上げるというビジネスモデルが成り立つ。まさにレジャー産業の考え方である。

バブル景気のころに乱立した会員制ゴルフコースが「不動産付加価値ビジネス」の典型だ。駅から離れた二束三文の山林をデベロッパーが買い取り、造成して利益を乗せ、分割して会員権として売りさばく。例えば、土地を1億円で買い、3億円で整備する。そこに4億円の粗利を乗せると総額は8億円。これを100分割すると800万円になる。800万円の会員権が100人分できる。

ゴルフ会員権を買えば共同オーナーという気分になるわけだけど、会員権が売り出された時点で、既に800万円の不動産的価値はない。400万円分はデベロッパーの利益で消える。300万円分はいずれ償却される施設費。土地の所有価値は100万円にすぎず、会員権購入価格の8分の1である。バブル景気のころ、ゴルフ会員権はどこも値上がりして高値で取引されたけれど、それはすべて「共同オーナー気分」という付加価値でしかなかった。だからバブル崩壊とともに暴落したわけだ。

都会型レジャー産業の場合は、やはりバブル景気に流行した「ディスコ」や「デザイナーズカフェ・バー」などが当てはまる。遊食産業とも言われていた。当時、ビルのテナント料は3年契約だった。3年分の賃料と保証金が固定費。そこから店内装飾などの費用が積み増される。さらに3年間で見込む利益を乗せて、その金額を基に客単価を決定し、メニューが決まる。食材原価は少なく、味よりも雰囲気で勝負する店になる。こういう店は早く飽きられる。だから当時の流行型飲食店の多くは、ほぼ3年ごとに閉店して次の業態に転換していた。

店舗の付加価値などは3年間だけ維持できれば十分だ。客に飽きられる前に閉店し、新しい流行にチャレンジする。そうしたチャレンジができる賃貸物件は限られる。一等地ではなく裏通りだ。新業態は賃料の安い裏通りから発生する。古くは赤坂に対する銀座、バブルのころは渋谷に対する六本木が裏通りビジネスの発信地だった。だから六本木にはユニークな店が多かった。

しかし、裏通りも人気が出れば一等地になってしまう。その結果、バブル末期はどの街も一等地で、どこにでもあるようなチェーン店が並んだ。今や六本木は新業態がチャレンジできる街ではない。では、第2の六本木はどこか。当時はウォーターフロントが注目されていたことをご記憶だろうか。ディスコの「インクスティック芝浦ファクトリー」「ジュリアナ東京」に代表されるエリア。そのウォーターフロントもバブル景気が終息すると倉庫街に戻った。

バブル景気はレジャー産業にとって「安い土地・賃貸物件に対し、どれだけの付加価値を与えて客単価を上げていくか」というビジネスモデルを根付かせた。従って、集客が見込めるからといって、都心に18コースのゴルフクラブはできない。土地が高すぎて、付加価値を乗せると会員価格が高額になりすぎ買い手が付かない。オフィスビルや商業ビルのほうが付加価値の総額を高められるし、客の回転率も高く、利益を得やすい。

●閑散路線こそが付加価値ビジネスの本領

観光列車の話に戻す。前々回の連載で、観光列車を「風景や車内での特別な食事、特別なショッピングなど、一般的な観光需要を満たし、定められた区間を専用車両で運行する列車」と定義した。特別な食事、特別な物販、特別な専用車両(空間)、これはまさに、レジャー産業が追求してきた付加価値ビジネスである。

レジャー産業になぞらえれば、観光列車は立地にこだわらない。むしろ裏通りの路線が良い。乗客が少なく、運賃単価の低い路線に観光列車を走らせて、飲食や物販という付加価値を与えて客単価を上げていく。これが観光列車の本領であり、正しいビジネスモデルである。大都市の混雑路線は立地が良すぎて、付加価値を与えても見返りが少ない。しかし、閑散とした地方路線なら、付加価値の高い観光列車を運行して利益を上げられる。

そう考えると、現在の観光列車が都会ではなく地方に存在する理由も分かる。JR東日本が上越新幹線の美術館列車「現美新幹線」を新潟エリアに限定し、山形新幹線の足湯列車「とれいゆつばさ」を福島以北として東京駅に乗り入れない理由も、付加価値が生きる地域を選んでいるからだ。

の法則に反して、都心に観光列車を乗り入れるとしたら、一等地にふさわしい、かなり高い付加価値を持つ列車に限られる。それが博多駅発着のななつ星in九州であり、2017年に登場する豪華列車、上野駅発着の「トランスイート四季島」であり、京都駅・大阪駅発着の「トワイライトエクスプレス 瑞風」である。

冒頭で紹介した北海道の豪華観光列車構想が成立するか否か。レジャー産業の定石から考えれば間違いなく成功する。北海道の鉄道路線は札幌付近を除けばすべて閑散路線。北海道には失礼ながら、ほぼすべて裏通りである。付加価値を高めて客単価を上げる要素は十分にある。レジャービジネスにとってうまみの多い立地だ。

日本の富裕層市場は立ち上がったばかり。しかし中国などアジアの富裕層は今すぐにでも日本で遊びたがっている。流氷、雪原など、南方の富裕層が体験できない自然もある。そこは、ななつ星in九州に勝てる要素でもある。

せっかく北海道新幹線に乗って北海道に上陸しても、さらに列車の旅を楽しむ目的地がない。富裕層を楽しませる仕掛けもない。機会損失も甚だしい。本当にもったいない。JR北海道が尻込みするなら、いっそJR北海道を上下分離し、豪華観光列車運行会社を設立してはどうか。北海道や自治体が発起人となった第3セクターなら、参加する地元企業もあるかもしれない。(杉山淳一)


いや、目的地は無数にある。それを仕掛ける頭がない、仕掛けがないのだ。大小の温泉、1軒宿の温泉で雪景色を楽しむ露天風呂。みすぼらしい無人駅。ホテルの不足。ならば超スロー夜行寝台列車を走らせよう。来道者に意見、要望に、聴く耳を持つことだ。