本庶さん受賞 基礎医学が人類を救う
東京新聞2018年10月2日【社説】
画期的ながん免疫療法を開発した本庶佑・京都大特別教授のノーベル医学生理学賞受賞が決まった。基礎研究が薬剤開発につながった。将来、がん克服の道が見え始めた。賞にふさわしい研究だ。
がんの治療法として免疫療法は注目されていたが、効果的な方法が見つからなかった。そうした中で、本庶さんの研究を基に開発された薬剤オプジーボは副作用が少なく、完治するという画期的な治療法となっている。
きっかけは体の不要な細胞を取り除く細胞死の研究だった。一九九二年にPD-1という遺伝子を発見し、免疫に関係していることが分かってから、臨床に応用できると考えたという。
治療薬として承認されたのは二〇一四年。新薬承認まで二十二年かかっている。
免疫療法によって、がんを克服できる日が来ることを本庶さんは確信している。昨晩の記者会見で「ペニシリンによって感染症が脅威でなくなったように」と語った。日本生まれの薬が人類を救う。その実現に向けて官民を挙げてバックアップしてほしい。
記者会見では研究者らしい発言が相次いだ。
がんが完治した患者からお礼を言われた様子を話して「これほどうれしいことはない」と述べた。基礎研究の大切さを強調して「もっと多くの人、特に若い人にお金をばらまいて」とずばり語った。
一昨年夏、静岡県立大薬学部の百周年記念講演で「大学の研究成果を製薬会社に移し、製薬会社の利益を大学に還元するウィンウィンの関係を早急につくる必要がある」と訴えたこともある。
今回の受賞は日本の問題点もあぶり出している。
本庶さんが臨床応用を目指したとき、国内の製薬企業は共同研究を断った。紆余(うよ)曲折があって小野薬品工業とブリストル・マイヤーズスクイブ社によって実用化された。国は創薬立国を目指しているが、新薬に挑戦できなかった事実を重く受け止める必要がある。
安倍晋三首相は受賞者の記者会見に割り込んでお祝いを言うのが好きらしいが、受賞者の話にもよく耳を傾けてほしい。基礎研究の重要性は、一昨年、医学生理学賞を受賞した大隅良典・東京工大栄誉教授も語っていた。研究に集中できる環境を整えるのも政治の役割である。科学の成果、イノベーション(革新)は意外なところから出てくるのは、経験則が示しているはずである。
そろそろ霜の心配だ。観葉植物などの鉢物を家の中に入れなければならないのだが、まだだいぶ残っている。ようやく部屋から出してすっきりしたのに、もうはや入れなくてはならない。
収穫量もだいぶ減ってきた。
今日の収穫。
オカワカメの花