まぐまぐニュース!2022.11.04
by 『きっこのメルマガ』
岸田首相が10月28日の記者会見で導入をぶち上げた、1世帯あたり4万5,000円の電気、ガス、ガソリン代負担軽減策。しかしほとんどの世帯は、「満額軽減」の恩恵を受けることが不可能なようです。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、「4万5,000円軽減策」が画餅でしかない理由を具体的な数字を挙げつつ解説。さらに国民が大きな負担軽減を実感できる「現金給付」や「消費税減税」を、自民党政権が頑なに拒む理由を明かしています。
4万5,000円軽減策は絵に描いた餅
岸田文雄首相は10月28日、「総合経済対策」を閣議決定し、夕方の記者会見で次のように述べました。
「今回の対策は、物価高克服、経済再生実現のための総合経済対策です。物価対策と景気対策を一体として行ない、国民の暮らし、雇用、事業を守るとともに、未来に向けて経済を強くしていきます」
岸田首相の説明によると、事業規模72兆円、財政支出39兆円の大型対策によって、GDPを4.6%押し上げ、消費者物価を1.2%以上引き下げるそうです。そして、物価対策の柱としては、電気、ガス、ガソリン代などの高騰に対し、標準的な家庭で来年1月から9月までに1世帯あたり4万5,000円の負担軽減策を導入すると述べました。そして、ツイッターでも次のツイートをしました。
39兆円の #総合経済対策 を閣議決定しました。
電気・ガス・ガソリンの負担軽減策で1家庭当たり総額4万5000円の支援。子育て世帯を応援するため10万円相当の子育て支援パッケージ創設。4万4000円の旅行支援などコロナ禍で縮んだ消費を取り戻す。
物価高克服、経済再生実現のための総合経済対策です。
午前0:17 2022年10月29日
ここまで聞くと、全国すべての世帯が、電気、ガス、ガソリンの負担軽減策によって、1世帯あたり4万5,000円の支援が受けられると思っちゃいますよね?でも、これは大嘘なのです。岸田首相は会見では「標準的な家庭で」という枕詞(まくらことば)を使いましたし、このツイートに貼られた一覧表にも「家計支援 電気・ガス・ガソリン合計4万5,000円負担軽減」のところに、小さな文字で「標準世帯」と明記されているのです。
で、この「標準世帯」って何?…というわけですが、これは政府が税や社会保障の給付や負担などを計算する上でのモデルケースとする世帯形態で、「夫婦2人と子ども2人の4人家族」のことなのですが、これには「働いているのは夫だけで、妻は専業主婦」という縛りがあるのです。
総務省が「家計調査」で「標準世帯」の調査を始めた1970年代には、このパターンの世帯が最も多かったので、これを「標準世帯」と定めたのです。しかし、夫の賃金が上がらずに物価ばかりが上がり続ける長年の自民党政権の悪政によって、「夫婦共働き」という、この「標準世帯」から外れる世帯が増え続けました。そして、その後は、少子化が進んで子ども2人の世帯が減少し、ひとりっ子世帯や夫婦のみの世帯、そして、結婚しない単身世帯が増加したのです。
2017年の時点で、最多は全世帯の約35%を占める「単身世帯」です。国立社会保障人口問題研究所の試算によると、このまま進むと2040年までに単身世帯が全世帯の4割を超えるそうです。一方、政府が「標準世帯」と定める世帯は、今では上から9番目で全世帯の4.6%しかありません。「夫婦共働きで子ども2人」の世帯も6.8%なので、「夫婦と子ども2人の4人家族」という世帯は、合計しても全世帯の11%ほどしかありません。
そして、このケースの世帯であれば、来年1月から9月まで毎月5,000円程度、計4万5,000円程度の負担軽減策が受けられると、岸田首相は述べたのです。つまり、日本で最多の単身世帯、夫婦だけで子どものいない世帯、ひとり親世帯、高齢者だけの世帯など、多くの世帯は、岸田首相が示したモデルケースよりも遥かに低い金額しか軽減されないのです。
今回の負担軽減策を具体的に説明すると、電気料金は、一般家庭は1キロワット時あたり7円、企業は1キロワット時あたり3.5円を国が補助するというもの。岸田首相がサンプルとした月300キロワット時の世帯では、現状で電気料金は基本料金などを加えた総額で約1万円になります。1キロワット時あたり7円の補助が受けられれば、7円×300=2,100円が減額されるので、約2割の負担軽減になります。これは、岸田首相の説明の通りです。
また、ガス料金については、都市ガスを1立方メートルあたり30円補助すると言うので、岸田首相がサンプルとした月30立方メートル使用する世帯なら、900円ほど減額されます。これで、電気とガスで計3,000円安くなりましたが、「月5,000円安くなるんじゃなかったの?」と思ったそこの奥さん、あとの2,000円は「ガソリン代の補助」なのです。国がガソリン元売り各社にバラ撒いている補助金はすでに3兆円を超えましたが、岸田首相は補助の期限を来年以降へと引き延ばしたのです。これが「標準世帯」の1世帯あたり約2,000円だと言うのです。
あまりにもツッコミどころが満載で、どの料理からお箸をつけようか迷ってしまいますが、上から順番に行くと、まずは電気料金。岸田首相は「月300キロワット時」というサンプルを方策の指針としましたが、日本で最多の単身世帯を始め、夫婦だけの世帯やひとり親世帯などで、こんなに電気を使う世帯などメッタにありませんよね。ちなみに、単身世帯の電気の使用量の平均は月150キロワット時なので、岸田首相が示したモデルケースの半分、約1,000円しか補助されません。
そして、ガス料金にしても、岸田首相が「月900円ほど減額」の根拠とした「月30立方メートル」という使用量は、電気と同じく「標準世帯」の平均値なのです。単身世帯の平均は月5平方メートル、2人世帯の平均は月10平方メートルなので、単身世帯は月150円、2人世帯は月300円しか補助されません。
さらには、これが驚きなのですが、岸田首相は「ガス料金についても電気料金と同等の措置を行なう」と言っておきながら、補助するのは都市ガスだけなのです。全国にはプロパンガスを利用している世帯も多いのに、都市ガス利用世帯だけを補助して、プロパンガス利用世帯のことは見て見ぬふりって、これ、憲法第14条が定める「法の下の平等」に違反していると思いませんか?
ちなみに、資源エネルギー庁の公式データによると、全国の都市ガスの需要は約2,900万世帯で全体の53%、プロパンガスの需要は約2,500万世帯で全体の44%です。都市ガスのほうが若干多いとは言え、44%を占めるプロパンガス世帯を丸ごと無視しておきながら、岸田首相は一体どの口で「国民の暮らしを守る」などと抜かしたのでしょうか?
さらには、岸田首相が「総合経済対策」を発表したその直後に、大手都市ガス4社が12月からガス料金を値上げすると発表したのです。東京ガスは289円、大阪ガスは337円、東邦ガスは295円、西部ガスは379円の値上げです。これだけ値上げされた翌月から、単身世帯は平均150円、2人世帯は平均300円を減額されても、ほとんど「焼け石に水」と言うか、補助額より値上げ額のほうが大きい世帯も出て来ます。
それから、月2,000円と試算されている「ガソリン代の補助」です。ガソリンは1リッターあたり30円の補助なので、月に67リッター以上、毎月1万1,000円以上のガソリン代を使っている人しか「月2,000円の補助」は受けられていません。あたしは原チャリしか持っていなくて、月に2回ほど給油して計8リッターほどなので、月240円しか補助されていません。そして、車やバイクを持っていない人は、当然、1円も補助されていません。
ここまで読めば分かったと思いますが、日本で最多の単身世帯の場合、プロパンガスを使っていて、車もバイクも持っていない人は、軽減されるのは電気料金のみで、それも月1,000円、合計で9,000円しか補助されないのです。他にも、夫婦だけの世帯とか、ひとり親世帯とか、あたしのような母さんとの2人暮らしとかは、とても月5,000円、9カ月で4万5,000円の補助など受けられないのです。
それなのに、あたかも全世帯が「4万5,000円」の負担軽減策を受けられるかのように発表した岸田首相。これなら、全国民に一律10万円の「特別定額給付金」を配布した安倍晋三元首相のほうが遥かにマシです。当初は「おこめ券」だの「お肉券」だの「半分を現金で半分をクーポン券で」などと言っていた安倍元首相は、野党の声に押されて仕方なく全国民に一律10万円を配布しましたが、この時の予算総額は約12兆7,300億円でした。
一方、今回の岸田首相の「負担軽減策」は、財政支出39兆円のうち、約6兆円が投じられます。それなのに、大半の世帯は実質的に数千円の補助しか受けられないのです。全国民に一律10万円の「特別定額給付金」の時の約半分の予算を投じるのですから、同じように現金給付にすれば、全国民に4万5,000円ずつ配布できるのです。政府の言う「標準世帯」であれば、4人家族なので18万円になります。また、消費税の税収は年間約20兆円ですから、この6兆円の予算を時限的な「消費税軽減策」に投入すれば、現在10%の消費税を来年1年間、7%に引き下げることができます。
本当に「物価高騰に苦しむ国民のための負担軽減策」だと言うのなら、都市ガスを使っている人しか補助されない、車やバイクでたくさんガソリンを使っている人しか補助されない、こんな不公平な政策に6兆円もバラ撒いて「やってます感」をアピールするのではなく、あたしたち国民が軽減を実感できるように、全国民に平等な「現金給付」か「消費税減税」、このどちらかに変更すべきだと思いませんか?
たとえば、岸田首相の説明通りに、9カ月間で4万5,000円の軽減策を受けることができる「標準世帯」であっても、「現金給付」であれば4倍の18万円の給付が受けられるのです。また「消費税減税」であれば、電気、ガス、ガソリンも減税対象になりますし、4人家族の1年分の消費税が3%減額されるのですから、負担軽減の総額は数十万円になります。
このほうが遥かに「国民のため」なのに、どうして自民党政権が「現金給付」や「消費税減税」を嫌うのかと言えば、それは自分たちにとって「うま味」がないからです。同じ給付でも現金でなくクーポン券やポイントにすればシステムが複雑化するため、大手広告代理店を始めとした自民党のスポンサー企業に事業を請け負わせ、そこに相互利益の利権システムを構築することができるのです。一方、間にスポンサー企業が入る余地のない「現金給付」や「消費税減税」などのダイレクトな政策は、予算の大半が国民へ行ってしまい、自分たちはほとんどピンハネできないのです。
結局のところ、何でも安倍派の言いなりの岸田首相にできることは、あたかも全世帯が「4万5,000円」の負担軽減を受けられるかのように印象操作した「絵に描いた餅」を掲げることぐらいで、あたしたち国民の厳しい生活は、まだまだ続いて行くのです。その上、こんなバカバカしい「やってる感」だけの政策の原資も、今の子どもたち、若者たちに借金を背負わせる「国債の発行」なのですから、懐かしい死語で使わせてもらえば、それこそ「なんだかな~」と言った感じです。
(『きっこのメルマガ』2022年11月2日号より一部抜粋・文中敬称略)
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もはや、岸田内閣には見切りをつけたほうがよっそうです。
「岸田内閣打倒!」
初雪降る。
とうとう白いのが降ってきました。
朝までにどうなるでしょう?
タイヤ交換まだ。ハウスのビニール降ろしもまだ。