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G7広島サミットの焦点 問われる「核なき世界」

2023年05月14日 | 社会・経済

「しんぶん赤旗」2023年5月14日

 主要7カ国首脳会議(G7サミット)が19~21日の日程で、被爆地・広島で開かれます。最大の焦点である「核兵器のない世界」への前進をめぐり、多くの被爆者や市民、非政府組織(NGO)は、各国首脳が被爆者との懇談などで被爆の実相に触れ、核兵器廃絶や核軍縮に向けた議論を望んでいます。議長を務める岸田文雄首相の対応が問われます。(石橋さくら)

 岸田首相は昨年5月の記者会見で、広島での開催を選んだ理由として、「核兵器の惨禍を人類が二度と起こさないとの誓いを示したい」と主張。今月8日の記者会見では、「核兵器のない世界」について成果文書に盛り込みたいとの考えを示しました。開会中は、G7首脳らとともに平和記念公園と原爆資料館を訪問する予定です。

核抑止強化狙い

 しかし岸田政権は、核兵器廃絶とは真逆の核抑止強化の動きを強めています。今年1月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)の共同発表は、昨年末の安保3文書の大軍拡方針に伴い、核兵器を含めた「米国の拡大抑止」は「日本の能力によって強化される」などと明言。長野県軽井沢町で先月開催されたG7外相会合の共同声明でも、「核兵器のない世界」の実現は「究極の目標」と先送りするにとどまらず、核兵器の存在は「防衛目的の役割を果たす」と正当化しました。さらに、7日の日韓首脳会談で、北朝鮮の挑発行為に対し、21日に広島で日米韓首脳会談を開き、核抑止である「拡大抑止」強化を協議することを確認しました。

 これに対し、被爆者団体などから「被爆地広島で、『核は必要』などと発信することは許されない」とする批判の声が続出。原水爆禁止日本協議会は10日、「核抑止」を強調する政府の姿勢を批判し、G7サミットで核兵器禁止を訴えるよう求める署名を外務省に提出しました。

 そもそも、G7メンバーのうち、米英仏の3カ国が核保有国で、ドイツ、イタリアには米国との「核共有」で戦術核が配備されています。日本とカナダも米国の「核の傘」のもとにあります。

 さらに、ロシアがウクライナ侵略で、核兵器の先制使用で威嚇していることにより、「核には核を」の逆流も強まっています。G7の中でも、英国が21年に核弾頭保有数の上限目標を引き上げる方針を表明。米国は最新鋭の核弾頭や、その運搬手段である原潜、戦略爆撃機の開発など、戦力の「近代化」を進めています。

禁止条約署名を

 こうした現状に対し、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は先月、G7加盟国の国会議員を迎えフォーラムを開催。ドイツのマーラ・スペラバーク氏(緑の党)は、長崎の被爆者で故人の谷口稜曄(すみてる)氏が人生をかけて核廃絶を訴えたことに言及し、「被爆地広島でG7は核廃絶に取り組まなければいけない」と強調。イタリアのラウラ・ボルドリーニ氏(民主党)は、核廃絶は国会議員の責務だと述べ、「この地球の未来を信じるなら核兵器禁止条約こそ必要だ」と力を込めるなど、自国政府に核兵器禁止条約への署名を求める決意を相次いで示しました。

“異議ない3点”発信を

 日本共産党の志位和夫委員長は、昨年8月の核不拡散条約(NPT)再検討会議の最終文書案に言及。同案には、(1)「核兵器の使用がもたらす壊滅的な人道的結末への深い懸念」(2)NPT6条のもとで合意されている「核兵器の全廃を達成するという核兵器国の明確な約束の再確認」(3)核兵器禁止条約の発効と第1回締約国会議の開催を「認識」する―とした3点が盛り込まれており、「この3点はG7参加国も異議をとなえなかった。ならば、G7サミットでは、少なくともこの3点を発信すべきだ」と提起しました。

外交 排除か包摂か

 主要7カ国(G7)首脳会議では、ロシアによるウクライナ侵略や、東シナ海、南シナ海で覇権主義的行動を強める中国への対応も主要議題となる中、外交努力による緊張緩和が求められています。

 ウクライナ支援をめぐっては、同国のゼレンスキー大統領がオンラインで会合に出席。新たな支援策やロシアへの追加制裁などが注目されます。

 中国をめぐっては、4月のG7外相会合の共同声明で、事実上の中国包囲網である「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)の重要性を強調。一方、「ASEAN(東南アジア諸国連合)インド太平洋構想」(AOIP)に言及するなど、中国を含めた包摂的枠組みへの関与も示唆しました。

 立場の違いによる対立が深まっている今、必要なことは、相手との関係を遮断するのでなく、関係国を含んだ対話の枠組みを積極的につくり、真剣な対話と協力を進めることです。戦争の悲惨さを物語る被爆地広島で、軍事衝突の危険を高める「排除」に向かうのか、中国・米国も取り込む平和の枠組みをつくる「包摂」に向かうのかが問われています。

 アフリカ諸国をはじめとした新興途上国「グローバル・サウス」との連携も重要になっています。これら諸国はG7諸国とも中ロとも等距離をとっている国が多く、「多数派」形成の観点から連携強化が重要焦点になっています。こうした地政学的な観点でなく、ロシアのウクライナ侵略による食料・エネルギー価格高騰に苦しむ途上国への積極的貢献こそ求められます。

多様性 日本の対応は

自民へ批判必至

 G7サミットでは、LGBTを含む性的少数者の権利保護も議題になり、共同声明に盛り込まれる見通しです。これまでもG7サミットではジェンダー平等の推進が強調されてきました。昨年6月にドイツのエルマウで開催された会合での共同声明で「性自認や性的指向に関係なく、差別や暴力から保護することへの完全な関与」を宣言。今年4月の外相会合でも、共同声明で性的少数者らの権利に関し、G7が世界を主導することを確認しました。

 こうした中、G7諸国の中で唯一、同性婚を認める法制度やLGBTへの差別を禁止する法制度がない日本の対応が問われています。今年2月、荒井勝喜首相秘書官(当時)が性的少数者について「見るのも嫌だ」「(同性婚導入で)国を捨てる人も出てくる」などと差別発言をしたことを受け、G7サミット前の法制化を目指し、超党派でLGBTの理解増進法案がまとめられました。しかし、「差別は許されない」などの文言に自民党内の右派が反対し、動きは止まってしまいました。

 一方、1日の「共同」世論調査では、同性婚を「認めるほうがよい」との回答が71%に上るなど、G7サミットを前に同性婚の法制度を実現すべきだとの声が高まっています。さらに、米国などからも日本の対応の遅れにクギをさす発言が相次ぎました。こうした内外世論に押された自民党は12日、サミット前に修正案を国会提出することで合意しましたが、超党派でまとめた法案を否定しながら、国際世論に配慮する形であわてて法案を提出する自民党の姿勢に批判が高まりそうです。

G7とは

発言力強める途上国 存在意義に疑問の声も

 1970年代に入り、ニクソン・ショック(ドルを基軸とした通貨体制の崩壊)や第1次石油危機などに直面した西側諸国の結束を強めるため、75年、日本を含む6カ国で第1回サミットを開催。76年にカナダが加わり、「G7」に。90年代からロシアも参加し、「G8」になりましたが、2014年のクリミア侵略でロシアの参加が停止。G7に戻りました。

 当初は世界経済や金融が主要議題でしたが、近年は地球温暖化、貧困、人権など幅広いテーマが議題になっています。また、中国やインドが台頭し、多くの途上国が発言力を強めるなか、「東西冷戦」の産物であるG7の存在意義が繰り返し問われています。

 日本での開催は1979年の東京サミット以来、今回で7回目。


「被爆地広島で、『核は必要』などと発信することは許されない」
これにつきます。

園のようす。



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