東京大学教授 鈴木宣弘さん
「しんぶん赤旗」2021年6月29日
新型コロナウイルスの感染拡大のもと、コメなどの農産物は、需要の急減による価格暴落に直面しています。一方、コロナ禍生活が困窮し「食べたくても買えない」という人も増えています。求められる対策や、あるべき農業政策について、鈴木宣弘・東京大学教授に聞きました。(内田達朗)
――米価暴落の現状をどう評価されていますか。
コメの需要は、人口減などに加えて貧困と格差の広がりで減少が続き、コロナ感染拡大による利用客の減少や外食を中心とした営業自粛・時短でさらに減少に拍車がかかりました。コロナ禍が長引くなか、離農や廃業に拍車がかかり、国内生産の基盤が崩壊しかねない状態です。地域経済、地域社会にも大きな影響を及ぼします。
一方、政府は在庫が「過剰」だといいますが、備蓄米は十分な水準を確保しているとはいえません。そのうえ、WTO(世界貿易機関)協定によるミニマムアクセス米を輸入しており、国産米が圧迫されています。
政府は、コメの作付面積の削減を求めていますが、本末転倒です。しかもコロナ禍で深刻化する生活困窮のために「食べたいけど食べられない」人が急増している現実を直視するべきです。
――農民からは、過剰在庫を買い上げ、必要とする人に届けるよう求める声が広がっています。
当然の要求です。アメリカや欧州でも実施されています。
アメリカは、昨年4月に190億ドル(約2・1兆円)のコロナ禍での農業の緊急支援策を決めました。約1・7兆円を農家への直接支援(1戸につき最大約2700万円)にあて、約3300億円で、食肉・乳製品・野菜の買い上げを実施しました。農務省が毎月、生鮮食品、乳製品、肉製品を1億ドルずつ買い、フードバンクや教会、支援団体に提供しました。
日本は、買い上げて、提供するという政策がありません。「政府備蓄米をフードバンクに出しています」といってもわずかな量です。
――なぜこのような差があるのでしょうか。
基本的な農業・食料政策の違いがあると思います。
よく「アメリカの農業は大規模で効率的だが、日本は補助金漬けだから競争力がない」という宣伝が行き渡っていますが、まったくの誤りです。
アメリカやヨーロッパ各国は、食料の確保を安全保障政策の核に位置付けて、手厚い支援をしています。
アメリカでは、生産費をもとに農産物の「目標価格」が定められ、市場価格が下回った場合は差額を政府が補てんする不足払い制度があります。
また、一定の価格を下回れば、生産者は政府に農産物を「質入れ」し、代わりにお金を受け取る制度があります。価格が上がれば、作物を引き取って販売し、下がったままなら、「質流れ」にすることもできます。
農業予算(約11兆円)の6割以上が「SNAP」と呼ばれる消費者の食料購入支援に使われています。消費者支援は、購買力を支え、価格も支える効果があります。
アメリカでは、これらの対策の上に、コロナ禍で前述の支援策が行われています。
――日本はまったく異なりますね。
日本では、アメリカ、自動車などグローバル大企業の利益のために農業を犠牲にする政治が続いています。アメリカからの輸入米(ミニマムアクセス米)の押し付けもそうです。特に、安倍政権以降、コメ農家への戸別所得補償制度の廃止など、価格や所得を保障する制度が解体されました。
農産物販売収入の減少分の一部を補う収入保険がありますが、基準は過去5年の平均収入とされるため、価格が長期的に下がるもとでは、基準も下がります。生産者を守ることはできません。
一番必要なのは、生産を支える価格保障・所得補償です。離農を食い止め、後継者を確保するうえでも不可欠の課題です。
世界の飢餓人口は10億人とも言われています。しっかり生産できるよう政府が支援し、国民と困窮する各国に届けることが、人々のいのちを守り、日本と世界の安全保障のためにもなります。
――農民運動が果たす役割は。
これまでに述べた政策は、大企業やアメリカにものが言えない現在の政権ではできません。政治を変えるたたかいが必要です。日本で長年続けられてきた「産直」など消費者と生産者が草の根でつながる運動を強め、農業破壊の攻撃をはね返してほしいと思います。
すずき・のぶひろ 1958年三重県生まれ。東京大学卒業後、農林水産省に入省。九州大学教授などを経て現職。『食料・農業の深層と針路』、『悪夢の食卓 TPP批准・農協解体がもたらす未来』など著書多数
昼までは☂マークなどなかったのだが、急遽現れた。大歓迎である。しかし、よく調べると3時間の☂マークで2時間は0.5mm1時間が1mm。これじゃあ、お湿りにもならない。帰る途中、結構な雨が降ってきた。これが畑に降ってくれればと、うらめしや~。
派手に咲き誇る「蜘蛛の巣万代草」
それをおろそかにする政府のやり方は、命を大事にすることの正反対ですね。
クモノスバンダイソウという花、初めて見たような気がします。
まだまだ知らない花がたくさんありそうです!
この花、石の上にへばりついて雪の中で越冬するのです。すごい生命力です。