面白く、そして下らない

私は批判をして何かを為した気になっている大衆の一人に過ぎないが、何か少しでも波紋を起こす小石になれればと書いている。

日経新聞コラム『大機小機』を批判する

2021-12-15 20:57:50 | 経済
財務省矢野康治事務次官が文藝春秋に寄稿してから御用新聞・日経新聞が騒がしい。日経新聞を購読しているわけではないので一通り目を通すこともしていないのだが、財政出動を財政再建派の立場から妨害する記事、社説、コラムばかりなのだ。

そこで今日はそのなかでも特に酷いコラム『大機小機』を批判したい。

~~引用ここから~~

財政拡大がそぐ経済の活力

財政支出の拡大をめぐり、自民党ではMMT(現代貨幣理論)を背景に積極的な「財政政策検討本部」と慎重な「財政健全化推進本部」の対立が注目されて...

日本経済新聞

 


大機小機
2021年12月15日 2:00

財政支出の拡大をめぐり、自民党ではMMT(現代貨幣理論)を背景に積極的な「財政政策検討本部」と慎重な「財政健全化推進本部」の対立が注目されている。岸田文雄総理は所信表明演説で、「危機に対する必要な財政支出は躊躇(ちゅうちょ)なく」行うと述べた。財政制度等審議会は建議でケインズのアニマルスピリットを引き合いに、過度な財政支出は民間企業の活力をそぐとの見解を表明している。

実は過度な財政支出は、民間企業だけでなく日本経済全体の活力もそいでしまうという問題を抱えている。それはケインズ経済学の基本が教えるところだ。ケインズ政策の効果としてよく知られているのは財政拡大が不況からの回復をもたらすというものだが、同時に経済成長はもたらさないことも教えている。それを聞いた人がケインズに、では何が経済成長をもたらすのかと聞いたことへの答えがアニマルスピリットだった。

ケインズ政策の財政拡大が経済成長をもたらさないことからは、不況でない時の財政拡大は経済のバブル状況をもたらすという帰結が出てくる。現在、多くの企業が過去最高益を記録し不況とはいえない。とすると現下の財政拡大はバブル状況をもたらす。バブルは必ずはじける。財政拡大で持ち上げられた景気は、その効果が切れたところで落ち込む。それを避けようと財政拡大を追加発動しても、効果が切れれば同じこと。何回繰り返しても、成長率は高まらずに財政赤字だけが累積していくことになる。

そのメカニズムがわが国の失われた30年の基本的な姿だったのだ。それは経済政策と言いながら経済成長をもたらさなかったという意味で、バラマキ政策を繰り返した姿だったといえよう。

アニマルスピリットとは、人々がよりよい生活の実現に向けてチャレンジしていくことだ。それは所信表明演説で総理が述べた、国の礎は「人」だということにも通じる。今必要なのは、新型コロナウイルスへの危機対応に加えて国民のアニマルスピリットを喚起する政策だ。そこを押さえずに財政支出の拡大ばかりを求めていては、失われた30年が続き、日本はアジアの中でも貧しい国になっていってしまう。既に平均賃金で韓国にも抜かれているのだ。

(唯識)
~~引用ここまで~~


>財政支出の拡大をめぐり、自民党ではMMT(現代貨幣理論)を背景に積極的な「財政政策検討本部」と慎重な「財政健全化推進本部」の対立が注目されている。岸田文雄総理は所信表明演説で、「危機に対する必要な財政支出は躊躇(ちゅうちょ)なく」行うと述べた。財政制度等審議会は建議でケインズのアニマルスピリットを引き合いに、過度な財政支出は民間企業の活力をそぐとの見解を表明している。

ツイッターで書いたことだが、財政制度等審議会は財務省の「報道局」に過ぎない。御用学者を集めて財務省の立場を代弁させるのだ。御用学者は肩書きだけは立派だからそれなりの説得力がある。また財務官僚は悪賢いからなかなか表に出てこない。その点矢野康治事務次官が表に出てきたのは失敗であった。積極財政派の立場からするとチャンスだ。

>実は過度な財政支出は、民間企業だけでなく日本経済全体の活力もそいでしまうという問題を抱えている。それはケインズ経済学の基本が教えるところだ。ケインズ政策の効果としてよく知られているのは財政拡大が不況からの回復をもたらすというものだが、同時に経済成長はもたらさないことも教えている。それを聞いた人がケインズに、では何が経済成長をもたらすのかと聞いたことへの答えがアニマルスピリットだった。

アニマルスピリットは需要が十分にあるという前提での経営者が投資するという精神だ。デフレ不況の今は需要がない。アニマルスピリットだろうがなんだろうが、この景気で果敢に投資するのは自殺行為というものだ。

>ケインズ政策の財政拡大が経済成長をもたらさないことからは、不況でない時の財政拡大は経済のバブル状況をもたらすという帰結が出てくる。現在、多くの企業が過去最高益を記録し不況とはいえない。とすると現下の財政拡大はバブル状況をもたらす。バブルは必ずはじける。財政拡大で持ち上げられた景気は、その効果が切れたところで落ち込む。それを避けようと財政拡大を追加発動しても、効果が切れれば同じこと。何回繰り返しても、成長率は高まらずに財政赤字だけが累積していくことになる
>そのメカニズムがわが国の失われた30年の基本的な姿だったのだ。それは経済政策と言いながら経済成長をもたらさなかったという意味で、バラマキ政策を繰り返した姿だったといえよう。

日経新聞は本当に企業の側にしか立っていない。実質賃金は100万円も減り、非正規労働者は労働者の4割を占め、ワーキングプアは2000万人。消費税は10%。税と社会保険料の国民負担率は44.6%になるのに不況ではないとは驚くより呆れる。労働分配率を引き下げているから企業は労働者を搾取して過去最高益なのだ。

不況から脱出するには積極財政、財政出動しかない。中途半端に財政出動をして少し景気が良くなると財政赤字が気に掛かるとすぐ止めてしまうから不況から脱出できなかった。バブルなど影も見えない。

それにバブルは悪ではない。ハードランディングさせなければ良いのだ。バブルをコントロールするのは政府・財務省、中央銀行(日銀)にも難易度が高いが上手くできれば一気に経済を高度成長させられる。大蔵省銀行局が総量規制により破裂させるまでのバブル景気にはそういう面もあった。国民も好景気を謳歌できる。

>アニマルスピリットとは、人々がよりよい生活の実現に向けてチャレンジしていくことだ。それは所信表明演説で総理が述べた、国の礎は「人」だということにも通じる。今必要なのは、新型コロナウイルスへの危機対応に加えて国民のアニマルスピリットを喚起する政策だ。そこを押さえずに財政支出の拡大ばかりを求めていては、失われた30年が続き、日本はアジアの中でも貧しい国になっていってしまう。既に平均賃金で韓国にも抜かれているのだ。

需要がないなかでアニマルスピリットなど喚起できない。不況時にアニマルスピリットなどあっても倒産するだけだ。何しろ投資しても需要がないのだから。

国の礎が「人」だというならば教育費、科学技術予算に金を費やすべきだろう。日本はOECD加盟国で公教育に掛けるGDPの割合は最低なのだ。大学を卒業させるまで子供一人二千万円掛かるとされる。少子化の一因だ。子供をあと一人生みたいと思っても躊躇してしまう。大学で40歳以下の若手教官の7割が非正規契約だという。これでは腰を据えた研究などできるわけがない。これも「アニマルスピリット」とやらでどうにかできるのか?

財政出動を十分にしないから失われた30年なのだ。それを間違えてはいけない。日経新聞に騙されてはいけない。平均賃金が韓国に抜かれたのは衝撃だが、それもこれも財務省を筆頭に財政破綻派が必要な財政出動を阻んできたせいだ。

「普通の国民」は日経新聞を購読しないだろう。普通の国民の利益に反する存在だからだ。だが200万世帯が、電子版も含めて、日経新聞を購読すれば日経新聞は存続できてしまう。それならば財務省や大企業の社員など200万世帯なら「上級国民」を対象とする新聞になれば良い。大企業は広告も出す。新聞広告は減る一方だが。

大機小機はこんな狂ったコラムだ。毎日批判したいくらいだ。だが毎日はつまらないだろう。読んでも仕方ないコラムだ。私は怒りを日経新聞、大機小機にぶつけるだけで記事が書けてしまうので楽ではあるのだが。


(参考サイト)

三橋貴明『アニマル・スピリット』

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三橋貴明オフィシャルブログ「新世紀のビッグブラザーへ blog」Powered by Ameba

 

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