鴻海(ホンハイ)のシャープ買収は、成功するのか?:
「鴻飛千里、海納百川」(鴻(大 きな雁)は千里を飛び、海はすべての川を納める) という意味で、企業が大きく羽ばたくよう期待し た縁起がいいネーミングであるそうである。
もっとも、70年代半ばには、所詮、テレビの選局チャネルのプラスチック部品を生産していたという中小企業が、後に、EMS事業でパソコン生産・アップルとの協業などへ、進出成功しようとは、同業者や、創業者ですら、想像だにしたであろうか?実際、数多くの当時の同業他社は、消え去ってしまったのも事実であるが、、、、、、。これまでの鴻海が辿ってきた『勝利の方程式』が、将来も、そのまま、通用するのであろうか?中国での安い労働力を活用して成長した、OEM事業や、BTOから、CTO(Configuration to order)へという流れや、その最中でのアップルのスマホ事業も、必ずしも、今や、盤石とは言い切れない、中国国内での人件費の高騰やスマホの成長の鈍化と新規商品の不透明性など、様々な不安定要素が、顕在化しつつあるのも、事実である。実に、『国外への技術の流出を阻止する』などというお題目は、圧倒的な、買収金額の前には、何の意味がないことを、今般の交渉は、皮肉っぽく、考えさせられてしまう。それなら、何が何でも、いくら金を積んででも、そうするべきではないかと思うし、尤も、その反面で、ホンマかいな?という懐疑心が、心の底にないわけではない。そんな産業再生機構へ国家官僚が、自分の責任と命を懸けた様な決断をするわけがないだろうに、、、、、、とも、思ってしまうのは、困ったものである。今日、後藤新平のような、そんな骨太の官僚などは、いるのであろうか?可笑しなことに、散々、高付加価値を追求してきたブランド側も、実際、これまで、その歴史的な発展を辿ってみれば、ナショナルでも、初めは、電灯のソケットや、自転車のランプの電池から、或いは、オランダのフィリップスから、技術を買いまくって、研究したのであるから、鴻海のことをとやかく言う立場にないのも、事実であるが、日本人というモノは、いつまでたっても、やる側から、『やられる側』にまわってしまったことに、気が付くのも遅いモノである。実に、別の意味からすれば日本人には、よいチャンスなのかも知れない。どうみても、おぼこい、のほほんとしたシャープの経営者の面構えと、山東省出身の創業者とでは、既に、勝負は、何年も前から、ついていたのかも知れない。それを日本人は、訳の分からぬ、『技術の海外流出の阻止』などという民族主義的な、感情的な、情緒に訴えるところから、始めては、既に、この時点で、官僚は、負けてしまっているのかも知れない。堪らないのは、それでも、そこで、働く労働者であり、その家族であることは間違いない。残念乍ら、いつも、日本には、そういう『メニュー』が、初めから、用意されていないし、経営者は、用意することをしない。郭台銘(テリー・ゴウ= Terry Gou)は、将来に向けてのそんな準備は、しているのであろうか?気に掛かるところである。