おお、そうだ…と暦を捲ったら、今日は師走のお朔日なのだった。
月ごよみ、旧暦のお話です。
コロナ禍も二年越しともなりますと、世の中の不景気さも深刻度を増し、一般庶民の巷には終末観が帳(とばり)を下ろし、21世紀になってここ十年ばかりでしょうか、10月末のハロウィーンが過ぎると、これしかないのか、日本の歳時記にはもっといろんな行事があったのに、欧米化ここに極まれりだな…と憂国の思いやまぬ新年までの2カ月間、街じゅうをこれでもかと、柊と小鐘のリース、躍る赤と緑の色彩、銀粉を纏う装飾品の数々、そして無理にでも盛り上げようというXmasソングのBGM…etc.に代表されるクリスマス・フィーバーが訪れていたものでしたが、ついに力尽きたか、商店街も駅ビルもひっそりとしていました。
そんなわけで、なんだかなぁ…と年越しの実感もわかぬまま、秋末の緊急事態宣言解除の余波で、1年分の年度行事が圧縮され、幾つ目かのパンドラの箱をワッと飛び出す浮塵子の如き(ここは雲霞でなくてよいのです)諸々の事どもの妖精さんの持つ針に背中をどやされながら、人間というものは生きていくうえで、実に様々な生業以外の細かい地味な仕事に支えられているものなのですね…と呟きながら、気がつけば三が日が過ぎようとしていた。
あかん、あきまへんがな、初夢を見忘れてしもうたがな…
初夢は枕の下に七福神の御座ある宝船の絵を敷いて、恭しく二日の晩に見るものである。
令和3年の年の暮れに、憧れの心の師匠、文楽義太夫三味線の野澤錦糸師に、なんで来なかったの?と年来の不義理を優しく質され、申し訳ありません、大好きなお師匠さんにお教えを頂きながら、私は長唄を棄てることは出来ないのです…と号泣しながら詫びている、自分でも衝撃的な夢を見た。
思えば昨年一年間、錦糸師匠のオッカケも、スケジュールの都合が合う限り切符争奪戦に何とか勝ち残り、とてもとても楽しみにしていたのだが、すべて行けずじまいだった。
有馬記念の馬券の如く、チケットはただの紙屑となり中空に舞った。
空よりほかに見るものもなし。
ほんの瞬きの間に、富士山の影が溶明する空の色も変わる。
昨年末は、あまりにも春の来るのが待ち遠し過ぎて、冬至の一週間前の水曜日に、今日は冬至だね、明日からやっと明るくなるのね、などと、お弟子さんに吹聴してしまった。
みな、えっそうですか…と絶句していたが、私の嬉しそうな顔にギョッとして度肝を抜かれたのか、遠慮して師匠の過ちを正すでもなく、素直にお稽古して帰って行ったのだった。
ごめんなさい。
…しかし、よかった、まだ暦は暮れのうちなのだ…と私は胸をなでおろす。
月ごよみ、旧暦のお話です。
コロナ禍も二年越しともなりますと、世の中の不景気さも深刻度を増し、一般庶民の巷には終末観が帳(とばり)を下ろし、21世紀になってここ十年ばかりでしょうか、10月末のハロウィーンが過ぎると、これしかないのか、日本の歳時記にはもっといろんな行事があったのに、欧米化ここに極まれりだな…と憂国の思いやまぬ新年までの2カ月間、街じゅうをこれでもかと、柊と小鐘のリース、躍る赤と緑の色彩、銀粉を纏う装飾品の数々、そして無理にでも盛り上げようというXmasソングのBGM…etc.に代表されるクリスマス・フィーバーが訪れていたものでしたが、ついに力尽きたか、商店街も駅ビルもひっそりとしていました。
そんなわけで、なんだかなぁ…と年越しの実感もわかぬまま、秋末の緊急事態宣言解除の余波で、1年分の年度行事が圧縮され、幾つ目かのパンドラの箱をワッと飛び出す浮塵子の如き(ここは雲霞でなくてよいのです)諸々の事どもの妖精さんの持つ針に背中をどやされながら、人間というものは生きていくうえで、実に様々な生業以外の細かい地味な仕事に支えられているものなのですね…と呟きながら、気がつけば三が日が過ぎようとしていた。
あかん、あきまへんがな、初夢を見忘れてしもうたがな…
初夢は枕の下に七福神の御座ある宝船の絵を敷いて、恭しく二日の晩に見るものである。
令和3年の年の暮れに、憧れの心の師匠、文楽義太夫三味線の野澤錦糸師に、なんで来なかったの?と年来の不義理を優しく質され、申し訳ありません、大好きなお師匠さんにお教えを頂きながら、私は長唄を棄てることは出来ないのです…と号泣しながら詫びている、自分でも衝撃的な夢を見た。
思えば昨年一年間、錦糸師匠のオッカケも、スケジュールの都合が合う限り切符争奪戦に何とか勝ち残り、とてもとても楽しみにしていたのだが、すべて行けずじまいだった。
有馬記念の馬券の如く、チケットはただの紙屑となり中空に舞った。
空よりほかに見るものもなし。
ほんの瞬きの間に、富士山の影が溶明する空の色も変わる。
昨年末は、あまりにも春の来るのが待ち遠し過ぎて、冬至の一週間前の水曜日に、今日は冬至だね、明日からやっと明るくなるのね、などと、お弟子さんに吹聴してしまった。
みな、えっそうですか…と絶句していたが、私の嬉しそうな顔にギョッとして度肝を抜かれたのか、遠慮して師匠の過ちを正すでもなく、素直にお稽古して帰って行ったのだった。
ごめんなさい。
…しかし、よかった、まだ暦は暮れのうちなのだ…と私は胸をなでおろす。