長唄三味線/杵屋徳桜の「お稽古のツボ」

三味線の音色にのせて、
主に東経140度北緯36度付近での
来たりし空、去り行く風…etc.を紡ぎます。

Time to say goodbye

2021年07月14日 11時28分10秒 | 折々の情景
 “ある日のことでございます。お釈迦様は極楽の蓮池のふちを独りでぶらぶらお歩きになっていらっしゃいました…”
 …なんて、お盆だものだから、芥川の蜘蛛の糸の書き出しを思い出し乍ら、何とも云えない好い匂いの、咲き初めたばかりの檸檬の花へお水を上げようと、ベランダに出た朝のことでございます。



 ふと、今年の春、丸い鉢に植え替えた鈴蘭の方へ目をやりますと、何かふわふわと空中に動くものがございます。



 ……!!
 なんと、鷹揚と艶やかな翅を広げた一頭のアゲハチョウが、今まさに外界へ飛び立とうとしているところなのでした。



 お前はみどり丸ではないか…!
 お隣との境界線の仕切りの辺りから、漂うように浮上してきたので、今朝方羽化したものと思われます。
 何という邂逅、なんという奇跡の廻り合わせ。

 どたばたと部屋に戻り、携帯をひっつかんで、やっと写真が二枚撮れました。
 みどり丸は優雅に網の下を潜り、昨晩の雷雨で梅雨明けも近いと思われる青空へ、揚々と翔び上って見えなくなりました。
 


 何という賢いみどり丸。私が案じていたのを察してか、挨拶に来てくれたのでしょうか。
 思えば、プレみどり丸時代の白黒のブチだった時から、寝床と食餌にする葉っぱを別にしていた賢い幼虫でした。
 緊急事態宣言下の羽をもがれた芸人は、自宅に籠って昆虫観察に余念がなかったのです。



 みどり丸が埴生の宿たる左上の枝葉と、開花2日目の別鉢の檸檬樹。
 みどり丸が去っていった青い空の向こう。




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