長唄三味線/杵屋徳桜の「お稽古のツボ」

三味線の音色にのせて、
主に東経140度北緯36度付近での
来たりし空、去り行く風…etc.を紡ぎます。

是非に及ばず

2010年06月02日 23時50分00秒 | キラめく言葉
 天正十年六月二日、そう言って、織田信長が本能寺で自害した。
 バブル期前後ぐらいから、信長の革新的で独創的な天才的政治手腕が再評価されて、今では日本史上で一、二を争う人気キャラクターになっているそうなのだが、歌舞伎の世界では信長をヒーローにした作品はない。
 大坂でできた人形浄瑠璃のネタはどうしたって、豊太閤が一番カッコいいキャラクターになってるのだし、江戸では徳川家に遠慮したこともあり、時事ネタでも古代から中世の間へ、時代を移したお話になっている。

 明智光秀を主役に据えた「時今也桔梗旗揚(ときはいまききょうのはたあげ)」。俗にいう「馬盥」の光秀。うちの女紋は桔梗なので、何となく他人とは思えないところがあったりもする。
 当代の團蔵さんが、襲名の時に演じたことがあった。平成になってからは、松嶋屋がかけてたこともあった。松嶋屋の面長の顔に、額の傷がよく映えるのだ。
 信長は小田春永という役名の敵役で、ものすごく異常性格者的に光秀をいじめる。
 歌舞伎の敵役って、悪過ぎてカッコいいキャラクターが多いのだが、この芝居では、いじめられる光秀くんのほうがやたらとカッコイイ。眉間を鉄扇で割られて、旗本退屈男みたいになる。
 …いやいや、旗本退屈男が真似をしたのだから、これは逆ですね。この、男の生き面にキズ持つキャラクターのオリジナルは、たぶん、「先代萩」の仁木弾正だと思うけれど。

 それから428年後の今月今夜。旧暦のことだから、今の暦日に置き換えるのも変だけれど、平成22年の6月2日。永田町で政変が起きた。
 …いま再びの、是非に及ばず。
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2 コメント

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織田くん (おばちゃま)
2010-06-03 01:40:52
新聞の川柳欄に、スケート男子のかたが靴ひも切れちゃったでしょ? あのあと「信成くん あなたの先祖も 油断した」というのがあったわよ(笑)。
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時は戦国… (徳桜)
2010-06-04 01:30:31
昨年の政権交代を、明治維新にたとえた向きもありましたが、私はむしろ、応仁の乱っぽいのでは…と。
明治維新では、正しいかどうかはさて置き、やるべきことが明確でしたが、現代はもはや八方塞がりで、明らかな方向性を誰も指し示せないのでは…。
信長くんの登場どころか、まだ三好・松永あたりなのかも…。
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