天正十年六月二日、そう言って、織田信長が本能寺で自害した。
バブル期前後ぐらいから、信長の革新的で独創的な天才的政治手腕が再評価されて、今では日本史上で一、二を争う人気キャラクターになっているそうなのだが、歌舞伎の世界では信長をヒーローにした作品はない。
大坂でできた人形浄瑠璃のネタはどうしたって、豊太閤が一番カッコいいキャラクターになってるのだし、江戸では徳川家に遠慮したこともあり、時事ネタでも古代から中世の間へ、時代を移したお話になっている。
明智光秀を主役に据えた「時今也桔梗旗揚(ときはいまききょうのはたあげ)」。俗にいう「馬盥」の光秀。うちの女紋は桔梗なので、何となく他人とは思えないところがあったりもする。
当代の團蔵さんが、襲名の時に演じたことがあった。平成になってからは、松嶋屋がかけてたこともあった。松嶋屋の面長の顔に、額の傷がよく映えるのだ。
信長は小田春永という役名の敵役で、ものすごく異常性格者的に光秀をいじめる。
歌舞伎の敵役って、悪過ぎてカッコいいキャラクターが多いのだが、この芝居では、いじめられる光秀くんのほうがやたらとカッコイイ。眉間を鉄扇で割られて、旗本退屈男みたいになる。
…いやいや、旗本退屈男が真似をしたのだから、これは逆ですね。この、男の生き面にキズ持つキャラクターのオリジナルは、たぶん、「先代萩」の仁木弾正だと思うけれど。
それから428年後の今月今夜。旧暦のことだから、今の暦日に置き換えるのも変だけれど、平成22年の6月2日。永田町で政変が起きた。
…いま再びの、是非に及ばず。
バブル期前後ぐらいから、信長の革新的で独創的な天才的政治手腕が再評価されて、今では日本史上で一、二を争う人気キャラクターになっているそうなのだが、歌舞伎の世界では信長をヒーローにした作品はない。
大坂でできた人形浄瑠璃のネタはどうしたって、豊太閤が一番カッコいいキャラクターになってるのだし、江戸では徳川家に遠慮したこともあり、時事ネタでも古代から中世の間へ、時代を移したお話になっている。
明智光秀を主役に据えた「時今也桔梗旗揚(ときはいまききょうのはたあげ)」。俗にいう「馬盥」の光秀。うちの女紋は桔梗なので、何となく他人とは思えないところがあったりもする。
当代の團蔵さんが、襲名の時に演じたことがあった。平成になってからは、松嶋屋がかけてたこともあった。松嶋屋の面長の顔に、額の傷がよく映えるのだ。
信長は小田春永という役名の敵役で、ものすごく異常性格者的に光秀をいじめる。
歌舞伎の敵役って、悪過ぎてカッコいいキャラクターが多いのだが、この芝居では、いじめられる光秀くんのほうがやたらとカッコイイ。眉間を鉄扇で割られて、旗本退屈男みたいになる。
…いやいや、旗本退屈男が真似をしたのだから、これは逆ですね。この、男の生き面にキズ持つキャラクターのオリジナルは、たぶん、「先代萩」の仁木弾正だと思うけれど。
それから428年後の今月今夜。旧暦のことだから、今の暦日に置き換えるのも変だけれど、平成22年の6月2日。永田町で政変が起きた。
…いま再びの、是非に及ばず。
明治維新では、正しいかどうかはさて置き、やるべきことが明確でしたが、現代はもはや八方塞がりで、明らかな方向性を誰も指し示せないのでは…。
信長くんの登場どころか、まだ三好・松永あたりなのかも…。