奈良のむし探検 第32弾
7月10日朝の散歩は近くの田んぼの畔で虫探しをしました。いろいろな虫がいたのですが、小さなハエが多くて、撮影しなければよいのですが、ついつい撮影してしまうので、後が大変です。今回はそのハエだけに絞って出します。
最初はこのハエです。写真を見ていても手掛かりがないので、とりあえず、分かる範囲で翅脈を見てみました。
名称は合っているかどうか分かりませんが、こんな感じの翅脈を持っています。特徴としては、sc切目だけがあって、h切目がありません。CuA+CuP融合脈らしき脈がこんなに湾曲しているところです。ハエが羽ばたくときに翅を上に上げるときは空気抵抗を少なくするために翅を折り、翅を打ち下ろすときは翅をいっぱいに広げることで空気抵抗を増して、飛翔ができるようになります。切目はその翅の折り目に当たります。ハエの種類により、また、翅の折り方により、まったく切目のない種、Sc脈が太い前縁脈(C脈)に合流するところに切目のあるsc切目、それに肩横脈(h横脈)近くに折り目のあるh切目があります。検索もこの切目の場所により大きく分かれます。例えば、切目のないものとしてはシマバエ科、ヤチバエ科など、sc切目のみあるものはクロツヤバエ科、キモグリバエ科など。sc切目とh切目の両方を持つものとしてはミバエ科、ミギワバエ科、ショウジョウバエ科などがあります。この辺のことは、「絵解きで調べる昆虫」に載っています。この写真のハエはsc切目だけなのと、CuA+CuP融合脈らしき脈が大きく湾曲している点と、外観からクロツヤバエ科かなと思ったのですが、違っているかもしれません。
次はこのハエです。外観はイエバエ科とか、ハナバエ科などに似ています。
これも翅脈を見てみました。今度はsc切目とh切目の両方を持っています。先ほどの切目の例として挙げた科は無弁類といって、翅の基部に胸弁という膜がないものばかりだったのですが、イエバエ科などは有弁類といって胸弁のあるものを指します。この写真でも翅の基部にそれらしいものが微かに見えていますが、基本的に採集しないと分かりません。
有弁類の特徴としてはM1+2脈、CuA+CuP融合脈、A1脈に注目します。このハエではM1+2脈が直線的ですが、イエバエ科の一部、クロバエ科、ニクバエ科、ヤドリバエ科などはM1+2脈が前縁側に大きく曲がって、R4+5脈に接近します。このことと外観から、イエバエ科、ハナバエ科、ヒメイエバエ科などが考えられます。その時はCuA+CuP融合脈が翅縁まで達するかどうかを見ます。このハエは翅縁まで達しているように見えるので、このことからハナバエ科が考えられます。イエバエ科とヒメイエバエ科は翅縁まで達しません。このほか、A1脈の曲がり方も分類のときに役立ちます。なお、翅脈名に+と-の記号を付けたのは、翅面に対して上に凸、下に凸になっている翅脈を指しています。これらは交互に配置されているため、翅脈の名称を付けるときに役立ちます。ただし、A脈は何本あっても一般的に上に凸の脈なのですが、写真でははっきりしなかったので、書いてありません。
これはユスリカですが、こんな風に腹部に帯状の模様があるのは、エリユスリカ亜科のツヤユスリカの仲間です。「図説日本のユスリカ」には絵が載っているのですが、それによるとフタスジツヤユスリカが考えられます。
それから、これはヒゲナガヤチバエ。
これは以前から見ているのですが、なかなか分からなかったハエです。ネットで探してみると、シマバエ科のMinettia属に似ています。そう思って、過去の記録を見ると、以前はヤブクロシマバエ Minettia (Frendelia) longipennisにしていました。これかもしれません。
これはまた、ヒゲナガヤチバエ。
これは何でしょうね。イエバエ科あたりで、腹部に斑紋があるので、これだけでも分かるかなと思って、「日本のイエバエ」の図版を見たのですが、見つかりません。
これは上のハナバエ科と一緒かもしれません。
最後はこのハエです。ちっともじっとしてくれないので、写真がはっきりしなかったのですが、これも翅脈を見てみました。
このハエではsc切目とh切目が両方ともあります。また、Sc脈がかなり急角度で曲り、前縁脈に合流しています。こんな翅脈の特徴を持つのはミバエ科です。記録を見ると、5月23日にも見ていて、その時はケブカミバエ亜科のノゲシケブカミバエ Ensina sonchiとしていました。たぶん、それかもしれません。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます