主人公デボラはインテリアデザイン会社を経営する敏腕デザイナー。結婚には2度失敗したが、3人の子ども達を立派に成人させ、今は出会い系サイトで新しいパートナー探しに余念がない。さすがにどの相手もピンと来ないと感じていたある日、運命の出会いが訪れる。医師を名乗るジョンとたちまち恋に落ち、電撃結婚。幸せな新生活を送り始めるが、ジョンには恐ろしい秘密があった…。
出会い系サイトで知り合ったばかりの男に自宅まで迎えに来てもらったり、年甲斐もなくラスベガスで電撃結婚(なんて怖ろしい街だ)など、何かと主人公の脇の甘さが気になるが仕方ない。『ダーティ・ジョン』は実際の事件を基にした実録ドラマだ。ジョンは巧妙にデボラに取り入り、家族と分断させ、財産を奪い取ろうとする。彼は各地で暴行や経歴詐称、横領を繰り返してきた凶悪なストーカーだったのだ。
次から次へと信じがたい事態が起きる中、本作は悪化の原因がデボラの人格を形成した家庭環境にあると注目している。彼女の姉は結婚相手に銃殺されており、それを母は信仰上の信念から"赦し”たのだ。現実はTVドラマで見るような予定調和もお約束の展開もない。恐怖に直面すれば人は驚きすくみ、立ち向かう事もままならないだろう。従来のフィクション作品ではなかなか起こり得ない展開だからこそ「(この災難は)誰にでも降りかかり得るのでは」という得体の知れない怖さを感じた。中盤からデボラ役コニー・ブリットンも目がテンになって右往左往するばかりである。
実際の事件を映像化した作品では近年『アメリカン・クライム・ストーリー』が記憶に新しいが、残念ながら本作にはライアン・マーフィーが見せた同時代性のある解釈、事件の再構築といった作家性は見受けられなかった。ジョン役エリック・バナ、ジュノー・テンプル、ジュリア・ガーナーら実力派キャストと丁寧な演出で牽引する豪華な"再現ドラマ"の域を出ていない。
とはいえ、巷にはこの手の実録犯罪再現ドラマはあふれているワケで、僕も1話40分全8話を一気に見てしまった。野次馬根性を刺激するジャンルであるのも間違いない。
『ダーティ・ジョン-秘密と嘘-』18・米
出演 コニー・ブリットン、エリック・バナ、ジュノー・テンプル、ジュリア・ガーナー
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