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アーロン・ソーキン監督の最新作は1950年代に国民的人気を博したTVドラマ『アイ・ラブ・ルーシー』製作の舞台裏だ。実生活でも夫婦であった主演ルシル・ボールとデジ・アーナズによって演じられたこのシットコムは、人気絶頂の最中「ルシル・ボールは共産主義者だ」と誤報を打たれたことで番組存続の危機に立たされる。しかし、それ以上に彼ら夫婦も危機的関係にあった。
巻頭早々、ソーキンらしい会話の応酬劇で魅せ、ルシル・ボール役ニコール・キッドマン、デジ・アーナズ役ハビエル・バルデムも好演。50年代当時の番組製作風景も楽しい。キッドマンはプロフェッショナリズムの塊であるルシルを気風良く演じており、アカデミー主演女優賞ノミネートもありそうだ。
しかし、ソーキンはこの魅力的な題材をまとめ切れていない。映画は製作から収録までの1週間と、ルシルとデジの出会いを何度も往復し、果たしてフェイクニュースとの闘いなのか、夫婦間の格差問題なのか、はたまた映像制作とプロフェッショナリズムについての話なのか判然とせず、駆動力に欠ける。これでJ・エドガー・フーヴァーのコメントを印籠にしてルシルの“身の潔白”を大団円とするクライマックスには、これが昨年『シカゴ7裁判』を撮った監督かと我が目を疑ってしまった。『アイ・ラブ・ルーシー』の向こうにはあまりに複雑で膨大な物語が隠されていたが、『愛すべき夫妻の秘密』は残念ながらそれに近づく事はできていないのだ。
『愛すべき夫妻の秘密』21・米
監督 アーロン・ソーキン
出演 ニコール・キッドマン、ハビエル・バルデム、J・K・シモンズ、ニーア・アリアンダ、トニー・ヘイル
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