『スピーク・ノー・イーブル』の原作映画がオランダ、デンマーク合作の“ヨーロッパ映画”だからって、何も高尚な読み解きをする必要はない。他者の懐にするりと潜り込み、全てを奪い取るサイコパスの恐ろしさを描いている?強権的な政治に搾取される衆愚のメタファー?ミヒャエル・ハネケの『ファニーゲーム』から思想性を取り除いたような本作に、そんな擁護は不要だろう。ほとんど憎悪のようなクライマックスにあなたは(例えウォーキズムにかぶれていなくても)「けしからん!」と声を上げるかもしれない。
『スピーク・ノー・イーブル』が原作映画のエッセンスを巧みに抽出していることがよくわかる。一方、ハリウッドリメイクではよくわからなかったディテールが『胸騒ぎ』では明らかであり、不思議なことにこの2作は前後編のような関係になっているのが面白い。ハリウッドライクの安易なアレンジを責めるのは今更野暮。むしろ筆者はけしからん『胸騒ぎ』に“鉄槌”を下した『スピーク・ノー・イーブル』の改変を断固、支持したい。
『胸騒ぎ』22・デンマーク、オランダ
監督 クリスチャン・タフドルップ
出演 モルテン・ブリアン、スイセル・スィーム・コク、フェジャン・ファン・フェット、カリーナ・スムルダース、リーバ・フォシュペリ、マリウス・ダムスレフ
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