長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『自由を愛した男』

2024-12-09 | 映画レビュー(し)

 俳優監督が百花繚乱の今日、中でも精力的に新作を撮り続けているのがフランスのメラニー・ロランだろう。多くの映画作家が望む作品に着手できなければ、ろくに劇場公開も叶わない時代に、ロランはAmazonに軸足を置いてストリーミング限定作品を次々と手掛けている。そして彼女も数少ない懸命な映画人と同様、“普通の娯楽作”に意識的だ。2021年の勝負作『社会から虐げられた女たち』を経て、2023年はNetflixでキャッツアイ風の怪盗モノ『ヴォルーズ』を、そして今年はAmazon Prime Videoから本作『自由を愛した男』をリリースだ。

 1980年代にフランスに実在した義賊強盗ブルーノ・スラクの人生を“芸術的観点から脚色した”とする本作は、その美男子ぶりから人気を博したというスラクのキャラクター性や破滅的なアウトロー像に、往年のアラン・ドロン作品をはじめとした仏産犯罪映画のロマンを漂わせ、なんともいいムードなのだ。

 Netflixの人気TVシリーズ『エミリー、パリへ行く』で主人公の恋のお相手を演じた好漢リュカ・ブラボーをドロンになぞらえる気はさらさらないが、やはり娯楽映画の華は美男美女であり、色っぽい唇のヒロイン役レア・リュス・ブザートを起用するロランは相変わらず女優のセンスもいい。巻頭の強盗シーンはカメラの置き方に冴えがあり、やはり彼女の才はクライムスリラーに秀でるのだ。『ヴォルーズ』といい、後半ややセンチメンタルに流れすぎるきらいはあるものの、あと10分刈り込めば職人監督としてさらなる洗練を獲得していくことだろう。


『自由を愛した男』24・仏
監督 メラニー・ロラン
出演 リュカ・ブラボー、レア・リュス・ブザート
 

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