ソフィア・ローレン御年86歳、10年ぶりの映画出演作だ。
老いたりと言えど、激しく生きたイタリア女の気性は衰えず、かつて『ひまわり』で見せた気丈は威厳へと円熟した。セネガル移民の少年との交流を描いたヒューマンドラマは、多分に我々のソフィア・ローレンに対する映画記憶に依っている部分が大きいが、彼女には『運び屋』におけるクリント・イーストウッドのような得難い深味があり、何より繊細な表現力に何一つ翳りがない事に驚かされる。
老いたりと言えど、激しく生きたイタリア女の気性は衰えず、かつて『ひまわり』で見せた気丈は威厳へと円熟した。セネガル移民の少年との交流を描いたヒューマンドラマは、多分に我々のソフィア・ローレンに対する映画記憶に依っている部分が大きいが、彼女には『運び屋』におけるクリント・イーストウッドのような得難い深味があり、何より繊細な表現力に何一つ翳りがない事に驚かされる。
映画の主人公はイブラヒマ・ゲイェが演じる移民の少年モモだ。両親から見捨てられ、イタリアで移民として蔑まされてきた彼は犯罪に走る。やはりNetflixからリリースされた『獣の棲む家』もヨーロッパにおける黒人移民の迫害がテーマであり、アメリカでBlack Lives Matterが激化した2020年、やや異なる背景で同じ問題が注目されていることを見逃してはならない。
そんな少年モモとローレン扮するマダム・ローザの背景にあるのがホロコーストだ。第二次大戦中、日本含めドイツと三国同盟を結んでいたイタリアにおいて、ユダヤ人であった事の過酷さは想像するに余りある。映画は安易に回想シーンやモノローグに頼ることなく、僕たちの映画記憶の中のローレンを通じてマダム・ローザの人生を見出していく。
ソフィア・ローレンの存在によってこれだけのドラマを紡げたのであれば、監督エドアルド・ボンティも語りの歩みを急ぐ必要はなかっただろう。同じアウトサイダーである事を知ったモモが改心していく作劇は、やや急展開が過ぎる。ランニングタイムはわずか95分。エンドロールの選曲といい、創り手の志向が本作を“フィールグッド・ムービー”に留めてしまったのが惜しい。
『これからの人生』20・伊
監督 エドアルド・ボンティ
出演 ソフィア・ローレン、イブラヒマ・ゲイェ
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