長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『ヒックとドラゴン2』

2018-02-28 | 映画レビュー(ひ)

大成功を収めた前作から5年、待望のシリーズ第2弾は今回も世界中で大ヒットを記録し、ゴールデングローブ賞、アニー賞を受賞。アカデミー賞にもノミネートされたが、今や映画鎖国と言ってもいい日本ではソフトスルーに終わった。主人公ヒックと竜トゥースの友情を丁寧に描いた前作同様、今回も一見ファミリー映画のルックながら子供騙しでは終わらない大人の語り口である。前作が少年時代の終わりを描いたものなら、今回は親を超え、青春時代を終える事がテーマだ。子供よりも同伴する親の方がグッとくる場面が多いのではないか。

前半で登場するヒックの母親にはドキっとするようなリアリティがある。幼い頃に死別したと思われた母は竜達の楽園でドラゴンマスターとして生きていた。一見するとそれだけの設定なのだが、竜との対決路線を崩せなかった夫との価値観の相違から家を出て、仕事に没頭した事が伺える。気品と芯を持ったケイト・ブランシェットのボイスアクトから「仕事が面白かったのよ」というニュアンスも伝わるのだ。

そんな母との再会がヒックの価値観を広げ、瞬く間に親をも超える成長へと繋がっていく。父の死に過剰な感傷を持ち込まない演出の節度が素晴らしく、僕たちは親という存在がいつだって突然に、さらりと去ってしまうのだと知らされる。時は待ってくれない。そうして1人の人間として自立していかなくてはならないのだ。母が語りかける息子への言葉は涙失くして見られない名場面だった。

 ヒックとトゥースの関係よりも両親との関係に時間が割かれている。米アニメ界が“子供向け”という既成概念を超えつつある、エポックメイキングとなるかも知れない傑作続編だ。


『ヒックとドラゴン2』14・米
監督 ディーン・デュボワ
出演 ジェイ・バルチェル、ジェラルド・バトラー、ケイト・ブランシェット
 

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