ダンス、アクション、コメディ、と何でもござれのフットワークを見せるチャニング・テイタム。彼が下積み時代にやっていたアルバイトを原案にしたというのが本作だ。なんと彼はステージネーム“マジック・マイク”で夜ごと女性たちを熱狂させたストリッパーだったのだ!それも『フル・モンティ』のようなにわか仕込みではない。徹底的に鍛え上げ、いかに観客を楽しませるか追及されたエンターテイメントショーだ。バカバカしくもプロフェッショナルなパフォーマンスの数々に笑いと畏敬の念がこみ上げるではないか。
とはいえ、映画はショウビジネスの光と闇を描く“ストリップ版『キャバレー』”ではなく、伝統的な青春映画の作劇であり、それを彩る監督スティーブン・ソダーバーグのテクニックは本作のグレードを1つも2つも上げている。シャンパンカラーのような美しいカラーコーディネート、キレキレの選曲…題材に反してその筆致は実にエレガントである。オスカー受賞後、再び実験色の強いインディーズ作家となっていた感があったが、いつの間にかそのセンスに磨きをかけ、ネクストステージに立っていたのである(その後、ハリウッドの誰よりも早くTVへ活躍の場を移し、その先見の明を実証した)。
さらに本作で新たなステージに立ったのがマシュー・マコノヒーである。ストリップバーのオーナーに扮した彼は下卑たナルシズムをワセリンのようにテカらせ、周囲を圧倒する怪演である。あらゆるシーンで場をさらうハイテンション演技はオスカー受賞作『ダラス・バイヤーズクラブ』につながる名演技ラッシュ“マコネッサンス”を世に知らしめた。
特殊な職業への好奇心をくすぐりながら映画は後味さわやかな着地を見せる。低予算ながら大ヒットを記録したのは女性の黄色い声援だけではないと頷けるウェルメイドな1本だ。
『マジック・マイク』12・米
監督 スティーブン・ソダーバーグ
出演 チャニング・テイタム、アレックス・ペティファー、マシュー・マコノヒー、コディ・ホーン
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