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統合失調症に苦しむ男を描いた本作はなかなかその正体を現さない複雑さと多層性が魅力だ。果たしてこれは恐怖映画なのか、難病映画なのか、はたまた黙示録的SF映画なのか。僕はこれを難病を抱えた男とその家族の物語と見た。お金、仕事、子供、そして自分と同じ年齢で精神を病んだ母親の影…様々な要因で人は追い詰められていく。マイケル・シャノンのヒリヒリするような焦燥と孤独は、観客を安全な場所に置いておかない。
これがデビュー作となったジェフ・ニコルズ監督は次作『MUD』と全くジャンルが違うものの、同様に70年代映画との地続きを感じさせ、本作は特にポランスキー映画の影響が色濃い。主人公を苦しめる悪夢のヴィジュアルは出色の怖さであり、ラストシーンは見る者の心を静かにざわつかせるだろう。以後、アメリカ映画の継承者として充実のフィルモグラフィを形成していく。注目監督の1人だ。
『テイク・シェルター』11・米
監督 ジェフ・ニコルズ
出演 マイケル・シャノン、ジェシカ・チャステイン
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