長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『バーバリアン』

2022-11-11 | 映画レビュー(は)

 ハリウッド映画が次々と劇場公開を見送り、配信スルーとなるのは今や見慣れた光景で、映画ファンとしては劇場で見られないのがいささか寂しくもあるが、ザック・クレッガー監督作『バーバリアン』が全米ナンバーワン大ヒットから程なくしてストリーミングデビューとなったのはある意味、正解かも知れない。デトロイト郊外の廃墟群、そこにある民泊でヒロインは見知らぬ男とWブッキングしてしまい…これ以上は予備知識一切ナシで見るべき本作はまさに奇襲攻撃のような1本。瞬く間にスポイラーが飛び交う現代では電撃作戦的リリースこそ打ってつけなのだ。

 Wブッキング相手がビル・スカルスガルド(ペニーワイズ!)という冒頭からクレッガーは中盤以降の二転三転どころか四転五転のために周到なセッティングを行っており、「自分を驚かせるために作った」というシナリオはホラー好事家の酔狂では終わっていない。唯一、脚注を付けるなら自動車産業の崩壊後、スラムと化したデトロイト郊外には街灯もなければ警察も消防もなく、ここを舞台にしたのが『ドント・ブリーズ』『イット・フォローズ』である。『バーバリアン』はこれらに並ぶ“デトロイトホラー”の1本であり、トランプ誕生を後押ししたこの地域で“Me too”まで絡めた本作は文字通り、2022年のアメリカにおいて“誰が最も野蛮か?”と風刺するのである。


『バーバリアン』22・米
監督 ザック・クレッガー
出演 ジョージナ・キャンベル、ビル・スカルスガルド、ジャスティン・ロング

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