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やれやれ、どっちを向いてもスパイだらけだ。『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』でジェームズ・ボンドを引退したダニエル・クレイグの後釜を狙っているワケでもないだろうに、昨年の『グレイマン』、同じくルッソ兄弟プロデュースによるTVシリーズ『シタデル』に続き、今度はワンダーウーマンことガル・ガドットが諜報機関を超えたスパイ組織“チャーター”の凄腕スパイ、コードネーム“ハートの9”として登場する。『ザ・フラッシュ』でのワンダーウーマン客演も記憶に新しいガドットだが、祖国イスラエルでの兵役経験もあるだけにフィジカルアクションこそが彼女の本領。『ハート・オブ・ストーン』では巻頭早々、パラシュートでの山岳滑走から市中でのカーチェイス、銃撃戦に近接格闘、高高度からのスカイダイビングとあの手この手のシチェーションで八面六臂の活躍を見せる。
製作を『ミッション:インポッシブル』シリーズのSKYDANCEが手掛けていることから、ガドット版MIシリーズを標榜していることは大いに想像がつくものの、残念ながら『ハート・オブ・ストーン』は『デッドレコニング』でもなければ哀しいかな、ガル・ガドットもトム・クルーズではない。ほぼ全てのアクションシークエンスに過剰なまでに施されたCGがTVゲームっぽさを増すばかりで、ここにはトムが到達していたスラップスティックなまでの活気は皆無。時折、ハードなスタントシーンにユーモアを込めようとする素振りはあるものの、尽く不発に終わっている。ガドットもクールなアクションヒロイン以上の魅力を得るには至っていないのだ。
おそらくNetflix夏の目玉作品として大金が掛けられているであろう本作は、皮肉にも直前に劇場公開された『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング』の破格の面白さとトム・クルーズの偉大さを逆説的に証明し、いつもの“B級Netflix映画”の枠に収まってしまった。いやはや、困ったもんである。
『ハート・オブ・ストーン』23・米
監督 トム・ハーパー
出演 ガル・ガドット、ジェイミー・ドーナン、アーリヤー・バット、ソフィー・オコネドー、マティアス・シュヴァイクホファー、ジン・ルージ、ポール・レディ
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