このコロナショックを受け、世界中の映画館が閉館を余儀なくされている今、Netflixの会員数が急増している。MCUの雷神ソー役でお馴染み、クリス・ヘムズワース主演の本作は全世界9000万世帯で視聴される大ヒットとなり、映画ファンの飢餓感に応えた格好だ。近年、アカデミー賞における処遇などハリウッドの論争の的となってきた配信映画だが、コロナショックという思いがけない現象によって早々に立場を変える事になるかも知れない。
Netflixがオリジナルコンテンツの開発に力を入れているインドでの撮影が効果を上げており、群衆で溢れかえったストリートでの激しいカーアクションや薄汚れた屋内での近接戦闘など、MCUやチャド・スタエルスキー映画で活躍したスタントマン出身サム・ハーグレイヴ監督によるアクション設計が目新しく、豪放で重量感あるヘムズワースとの相性もいい。脇を固めるのもあまり馴染みのないインド系俳優達であり、Netflixならではのグローバルな製作体制は既にコロナショック後の新たなスタンダードを意識させてくれる。
ハーグレイヴ監督はカメラを手に自らの身体をボンネットにくくりつけ、前半早々に長回しの凄まじいカーアクションを撮影する奮闘ぶり(長ければ長いほどTPS的なゲームっぽさが出てしまうのだが)。方や脚本を『アベンジャーズ/エンドゲーム』のジョー・ルッソが手掛けており、この手のアクション映画としては殊の外、丁寧に作られている。ランボーよろしく、ヘムズワースが世界各地の紛争地域を転戦するシリーズ化も期待できるのではないか。新作映画が公開されなかった2020年上半期において記憶しておきたい1本である。
『タイラー・レイク 命の奪還』20・米
監督 サム・ハーグレイヴ
出演 クリス・ヘムズワ-ス、デヴィッド・ハーバー、ゴルシフテ・ファラハニ、デレク・ルーク、ランディ・プ・フダ
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