星野之宣氏の20年前の作品。
星野氏の絵がもっとも繊細で完成期を迎えた時代。
この作品は当時のSFブームの中で最も「SF」した作品だろう。
人類の宇宙進出をテーマに、その始まりから終わりを描く。
宇宙ブームが下火になり始め、この作品発表の数年後にはバブルがはじける事を考えると、また感慨深いものを感じる。
科学の進歩はやがてこの作品を「過去」にしてしまう事だろう。だが、そうなった後にも20世紀の傑作として語り継がれる作品のひとつであるはずだ。
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作品との出会いは1巻が発行された年の年末、2巻が発行された頃だ。よく売れたようで毎月のように再刷を繰り返していたらしく、1巻はすでに4刷であった。
その後3巻に出会うことなく20年が経ってしまった。その3巻の存在を知ったのはパソコンを手に入れ、ネットで情報が得られるようになったからだ。
ネットをはじめたからといってすぐに情報が得られたわけではない。調べようとするきっかけが必要である。それはすでに自分の中で風化しかけていた「ガンダム」と「SF」だった。ブログでそれを楽しんでいる人々に感謝である。また、簡単に本を手に入れられる「amazon」と宅配の関係者にも感謝。
あっ、いきなり無理!
地球に向かう巨大小惑星を、ナノブラックホールにより軌道変更するが、それにより月が消滅。ここは我慢しよう。
環境の変わった地球を安定させるために、木星の衛星エウロパを持ってくる?
それが正義であるような描かれ方をされているが、それも計画に反対するアメリカ以外の「大国」のエゴであると気付かないだろうか。それだけの技術と資金があれば、他の生き残る手段があっただろう。
エンターテイメントにはしったアメリカ映画的な作品作り。決して悪くは無いが、他の人にやらせておけばいいじゃないかと思ってしまう。
アイデア優先で構想不足だったのではないだろうか。
同じテーストの作品では、木星を太陽に変えた「巨人たちの伝説」の方がはるかに好きだ。
なにが気に入らないのだろう。
まずは必然性。国の事情の背景描写をもっとすべき。そうした上でのエウロパ計画なら納得する。
そして、地球と人類に起きた悲劇を描くべきだろう。
私が納得するエンディングは「傲慢な人類のエウロパ計画により地球消滅」「小国は協力して脱出し、人類の芽を残す」的なものである。
星野之宣先生の作品の中でも、「お宝」からはずしたい一作であった。>それでも入れちゃうファン心理